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序章『波紋の世界』

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orisuta

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序章




「―――模(バク)、おまえの名前は『まねる』。真似て学ぶという意味の『模倣』からとったのだ。」

「我が家に伝わる勤勉な精神、それを受け継いでいくのがおまえの、我ら杖谷家の使命だ。そして―――」







2010年5月、杜王町を悲しみに包んだ連続殺人事件から10年以上たち、住人にとってこの事件はすでに過去のものとなった。

最近は地震も多く、不景気と相まって杜王町の中心産業である観光業は大きな打撃を受けているらしい。

しかし、ここに住む私たちにとってみれば、この街の温かさはちっともかわらなかった。

殺人事件の犠牲者が出たというここ私立ぶどうヶ丘校も、今ではすっかり平穏を取り戻している。

私、「一之瀬紅葉(イチノセ クレハ)」もいつもどおりの高校生活を送っている。

*「まあ、悪くない調子だな。あと、もうちょっと頑張れるんじゃないか?」

教師に睨まれない程度に勉強をこなし、

*「紅葉ちゃんて、ちょっとブアイソすぎねー?」

低俗な女どもには関わらず、

なるべく静かに、ひとりで生きている。

友達は、つくらない。仲間は『弱さ』だ。仲間を作ると、人は『弱さ』を露呈する。

私は強くあるために、私の生き方を貫く。信じられるのは自分だけだから。







放課後、家に帰ろうと教室を出たところ、廊下に耳障りな声が響いた。

銀次郎「うおおおおおおおおお!!!紅葉紅葉紅葉ァァァァ!!!」

紅葉「……暑苦しい。汗かいたまま近寄るなよ。」

銀次郎「…ッハッ…ハッ……今日こそ……今日こそ……」

紅葉「アンタが私のこと好きだってのはもうよくわかったよ。」

銀次郎「ちっ、ちちちちっげーよ!!今日こそ、お前に勝つ!!男の分際で、柔道部部長として女に負け続けるわけにはいかねえんだ!!」

柔道部部長の鎌倉銀次郎だ。体がでかいのをいいことに校内で幅を利かせててよく校内の女子にちょっかいを出している。

こないだ私につっかかってきて、返り討ちにしてやったらこんな感じでつきまとわれるようになったが、まあこいつは別に覚えなくていい。

紅葉「はー、下心まるだしだ。」

銀次郎「ちちちっちげーちげーちげーし!こここコノヤロウ、合気道だかなんだかわからんが今度こそ見返してやるッ!」

覚えてもらいたいのは、……この日私が出会った、私のこれからを大きく変えた男だ。

紅葉「合気道?……あー…そうね、そうそう。だからアンタが私を押したおそ―ったって絶対ムリなのよ。」

銀次郎「あ゛あ゛あ゛あ゛ッ ! ! ? 言わせておけばッ!なめんじゃあねェ~~ぜッ!!」

銀次郎は私に向かって詰め寄って……というより突進してきた。だが、『用意はできている。』そう、考えた瞬間。







間に誰かが入ってきて、…………そして、ふっとばされた。

ふっとばされたその『男』は、持っていた本とカバンをぶちまけ、うつぶせで倒れていた。

???「う……うう…………」

銀次郎「んだテメーーーっ!邪魔してんじゃねェーーーーッ!」

???「ご……ごめんなさい…本を読んでいて、ま、前を見ていなかったんです……。」

その『男』はペコペコ頭を下げながらも、銀次郎には目を合わせようとせず自分の持ち物をかき集めていた。

この時は少なくとも……強い『意志』があるようにも、暴力に抵抗する力をもっているようには見えなかった。

銀次郎「アアン??女の子を助けるヒーローのつもりかゴラァァ!!」

銀次郎は床に四つん這いになって持ち物をかき集めているその男の胸ぐらをつかみ、むりやり引き立たせた。

男の身長はそれほど高いわけでもなく、私と同じ170cmか…むしろそれ以下にも見えた。

学ランの下に、ひし形のタイルを敷き詰めたトランプのような柄のシャツを着て、腕には三角形の模様のリストバンドをつけていた。

お世辞にも強そうには見えない男は、胸ぐらをつかまれたまま、下を向いてぶつぶつつぶやいていた。

そして銀次郎が殴りかかろうと右腕を振り上げた瞬間、その『奇妙』な出来事は起こった。







銀次郎が振りかぶった右腕は動きを止め、握っていた拳を開いた。

そして男の胸ぐらを左腕でつかんだまま、跳ねあがったのだ。

……いや、跳ねあがったというよりは、体を反り返らせたりして、もだえているように見えた。

銀次郎「……んがっ!……かっ……クッ…………!」

銀次郎が左手を男から離すと、銀次郎は廊下に倒れこみ、ピクピク動きながら悶えた。

銀次郎から解放された男は、そそくさと廊下に散らばった持ち物をまとめ、足早に去ろうとしていた。

紅葉「ちょっと!」

???「!」

私の声に驚いたのか男は体をビクッとさせてこっちを振り向いた。

紅葉「……アンタ、名前は?」

???「…………………」







???「……バク…………。」

模「杖谷……模…です。」

紅葉「ツエタニ……バク。」

杖谷模と名乗った男はすぐに振り向いて正面出口のほうに向かっていった。







あの時私は見たのだ。杖谷が胸ぐらをつかまれていたとき、彼の体から出ていたモノ……。

「人の形をした、人ならぬ者。」彼から出ていた「それ」は顔に時計のような、レーダーのようなものがついていて、

両手の甲には星のマークが写されていた。







紅葉「あれは………『スタンド』………。」

そして私は杖谷がつぶやいていた言葉を思い出した。



模「『波紋疾走』……」



紅葉「……『波紋』?」





「我が家に伝わる勤勉な精神、それを受け継いでいくのがおまえの、我ら杖谷家の使命だ。そして―――

 そして、『波紋』。これを我らは習得し、後代に伝え続けなければならないのだ。」




床に転がってた銀次郎がようやく起き上がってきた。



序章 -波紋の世界- END




to be continued...



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