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第11話『フー・ザ・ファック・アー・アークティック・モンキーズ?(Who The Fuck Are Arctic Monkeys?)』その①

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orisuta

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~『組織』アジト・柏の私室 某時刻~

正直なところ、ここしばらくの間、柏はまともに寝れていなかった。
自分の手足とも呼べる『組織』に『ガン細胞』が見付かったあの日から、心の中に宿っていた平穏はどこかへ消えてしまった。
「倉井 未来」「虹村 那由多」「城嶋 丈二」・・・そして最近新たに見付かった「天野」という名の『ガン細胞』たち。
これら不明瞭で不安定な要因の存在が、柏に焦燥感を募らせ続けていた。

コンコン
検事「失礼します」ガチャリ

柏「来たか 座ってくれ」

検事「・・・・・・」スッ

厄介なことに、こいつらは『再発』する。一度取り除いても、挫けずにまた顔を出してくる。
彼らの、このたまらなく不快な執念深さが、柏の精神をじわじわと蝕んでいた。
潰さないといけない、今度こそ確実に。徹底的に。この悪性腫瘍が、全身に転移する前に。

柏「膝は大丈夫か?」

検事「ええ、おかげさまで・・・車椅子には乗らずにすみました」

柏「君の膝を撃ち抜いた『ガン細胞』・・・城嶋 丈二だが、実を言うととても困ってる
  ファイルは持ってきたか?」

検事「はい。これです。」

男がかばんから取り出した書類は、以前『組織』内にて捜査が行われたときに作成された工作員たちの調査書だった。
現在も検察局に勤めるこの男が自ら尋問を行い、引き出した情報を纏めた大変貴重な個人情報である。
テーブルに提出されたファイルは、阿部のチームのメンバーのものだった。

柏「率直に聞こう 阿部のチームの『スタンド使い』の中で・・・・・・
  一番危険なのは誰だと思う?」

検事「どういった意味でですか?」

柏「『スタンド能力』がでもいいし『性格』、『思想』、『行動』がでもいい・・・
  総合的な意見が欲しい。ヤツらを尋問した君ならわかると思った」

検事「・・・・・・」
 
 
 




検事「・・・最も危険なのは、福野 一樹の『ノー・リーズン』でしょう。福野自体はただのバカなガキですが、
   スタンド能力が凶悪です。頭の切れる人間に利用されては困る。」

柏「ほう」

検事「汎用性が高すぎます。攻撃や戦闘補助だけじゃない。
   私の尋問を、『自分の記憶をうやむやにして』切り抜けたんです。おかげで最後まで裏切りに気付かなかった」

柏「彼なら大丈夫だ、もう始末はついてる。
  ではその次に危険なのは誰だ?『桐本 琢磨』は抜いてくれていい、既に死んでいる」

検事「正直言って全員危険としか・・・阿部のチームにいたんですよ、そんじょそこらの能力者どもとはワケが違う。
   『エリート』ですよ、彼らは。プロ中のプロだ」

柏「わかってるよ、だが敢えて挙げるとしたら?」

検事「・・・・・・」

検事「・・・単純な破壊力で言えば、虹村 那由多の『リトル・ミス・サンシャイン』が危ないでしょうね。
   彼女は性格にも問題がある。怒りや悲しみといった感情のコントロールがまるでできていない。」

柏「虹村 那由多・・・ふむ・・・」パラパラ

テーブル上のファイルに目を通し、柏が一人納得したように小さく唸る。

検事「精神が子供のままというか、成長が止まっているというか・・・幼い悪意に満ちている。
   危なっかしい娘です。」

柏「・・・わかった、もう行っていい。呼び止めて悪かったな」

検事「はい・・・」スクッ

拘束を解かれ、安堵したように男が椅子から立ち上がり、部屋を出る。
ひとり部屋に残された柏は、机に肘を突いて頬杖を突きながらひたすらに目の前のファイルを眺め続けていた。

柏「・・・・・・」
 
 
 




~神奈川県内・○○総合病院 PM1:48~

『では、関節の痛みにはどういったリハビリが効果的なんでしょうか?』

那由多「・・・・・・」

先日の戦闘で負傷した那由多は、東京に戻らずそのまま神奈川の病院に入院することとなった。
両脚や肩、腕に深刻な裂傷のある彼女を二日後の作戦に参加させるのは危険と判断し、天野がここに残したのだ。

『なるほど!これならご家庭でも簡単にできちゃいますね!』

那由多「・・・ふわぁ・・・」

二日後、いよいよ『組織』との因縁に決着が付く。やつらの『計画』に合わせて、こちら側も『作戦』を準備していた。
今まで最も規模が大きいやつだ。無理だとはわかってはいても、やっぱり最後の作戦には参加したい。
この手で全てを焼き払いたかった。こんなところで、つまらないテレビを眺めているだけというのは辛すぎる。

ガラガラッ

病室のドアが開く。横たわりながら、横目でチラリと進入者を一瞥する。
そこに看護婦でない知った顔が見えたので、那由多は音の方へ体を起こして向き直した。

丈二「や」

那由多「丈二!どうしたの、わざわざ」

丈二「たまたま近くを通ったからね。様子を見に来たんだ」

那由多「たまたま近くを?アリーナでライヴでも見てたっていうの?」

丈二「まあそんなところだ」

那由多「ふふ」

入院してからの数日間でわかったことがある。それは自分が意外と孤独に弱いということ。
家族を失ってから、自分はずっと一人だった。孤独には慣れたつもりでいた。自分のメンタルはそこまでヤワではないと。
考えてみれば、今までは単に喧騒の中に身を置くことで、寂しさを紛らわせていただけなのかもしれない。
静かな部屋に一人取り残され、それまで触れないようにしてきた感情の蓋が開かれたような気がした。
ここで過ごす夜は辛い。寂しさに息が詰まりそうになる。

那由多「ね、それなに?」

丈二「お土産。ロクなもん食べてないと思ったから、アップルパイ買ってきた。好きだろ?」

那由多「・・・・・・あー・・・・ん~・・・・」

丈二「?」

那由多「スイートポテトパイが良かった」
 
 
 




丈二「そうか。じゃあこれは中庭の花壇にでも埋めておいてくれ」

那由多「ふふふっ」

懸命に余裕の表情を取り繕ってはいるが、内心はボロボロだった。涙が出そうになるくらい嬉しかった。
自分がこんなにも誰かの優しさを求めて続けていたんだと、ここで改めて気付かされた。
こんな場所までわざわざ会いに来てくれた彼に対しては、言葉では言い表せないほどの感謝の念でいっぱいだ。

丈二「ケガはどう?」

那由多「まだちょっと痛いけど、良くはなってるよ」

丈二「それはよかった。」

那由多「作戦はどうなってるの?うまくいきそう?」

丈二「みんな一丸となってる、俺も未来も真面目にやってるよ。君が参加できなくて残念だ」

那由多「ええ、本当に・・・。残念だわ。」

丈二「・・・・・・」

那由多「・・・まあでもたまには休みもいいかな、ここで『おじゃる丸』見ながら成功の報告を待つわ」

丈二「ふっ、『おじゃる丸』好きなのか?」

那由多「リモコンの電池が切れて、チャンネル変えられないの。一昨日からずっとNHK教育よ。
    看護婦さんに言ってもなかなか替えの電池持ってきてくれなくて」

丈二「はははっ、仕事熱心な看護婦だな」

那由多「ホントすごいわ。頑張ってるよね」

丈二「はは・・・おっと、そろそろ時間だ
   もう行くよ。次は電池を持ってこよう」スッ

那由多「もう帰るの?」

丈二「忙しいんだよ、作戦が終わったらまた来る」

那由多「それまでずっとNHK?」

丈二「『おじゃる丸』のDVDを後で届けるよ」
ガラガラ

那由多「もう!」

ドアを開け病室から去り行く背中に向かい、枕を投げつける。枕は扉に当たって床に落ちた。
わずか数分のおしゃべりだったが、あるとないとでは全然違う。
病室は急に、それまで以上に静かになった気がした。しんとした部屋の空気にすこしだけ、涙が零れそうになった。
 
 
 




一人になり、那由多はベッドの上で目を閉じる。
それからしばらくして、そろそろ眠りに落ちようといったところに、またも扉の開く音が彼女の耳へと飛び込んできた。
本日二回目の来客だ。

ガラガラッ

スタスタスタスタ・・・

那由多「・・・・・・・・・『おじゃる丸』ならいらないからね」

ベッドへ迫る足音に、背を向けながら声を掛ける。
那由多はてっきり、ちょっと前に帰った丈二がまた戻ってきたものだと思っていた。
それが全く別の人間だということに気付いたのは、彼女のベッドにその人物が腰掛けたときだった。

ドスン!

那由多「ん・・・・・・?
    ・・・・・・・・・・!!!」

柏「やあ」

ガシィッ!!

那由多「うぐっ」

ギリギリギリギリ・・・・

L・パレード『・・・・・・・・』ギリギリギリ・・・

訪問者の隣に、寄り添うように出現したドレス姿の精神エネルギーが、その腕を那由多の細い首に回して勢いよく力を込める。
首の締め付けで、気管が圧迫され肺への酸素供給がストップし、那由多の顔が青白く変色していく。

那由多「・・・っ、か・・・は・・・」ギリギリギリギリ・・・

柏「『リトル・ミス・サンシャイン』は君を助けてはくれないよ・・・スタンドの発動を数分『遅らせた』。
   さて・・・実は君に伝えておきたいことがあって来たんだ・・・」

那由多「・・・く・・・・うく・・・っ」
カチ、カチッ、カチッ

那由多の眼球にポツポツとした赤い斑点が出現する。溢血点と呼ばれるものだ。
点状出血を起こした那由多が、目を赤く染めて必死にナールコールへ手を伸ばす。
だが何度ボタンを押しても、看護師の応答はなかった。

柏「しーっ、よすんだ。ナースコールも、監視カメラも・・・・全て『遅らせて』いる。
  私の話を聞きなさい」
 
 
 




ギリギリギリギリギリ・・・・・・

柏「『虹村』・・・どこかで聞いた名だと思っていたよ。君のファイルを見させてもらった。
  君は・・・『虹村 泰億』の娘だったんだな」

那由多「くあ・・・・・・・・っ・・・・・・」

『レイト・パレード』に首根っこを掴まれた那由多が、手足をバタつかせ息苦しそうにもがく。
そんな彼女の姿を、まるで楽しんでいるかのように眺めながら、柏は淡々とした口調で話を続けた。

柏「君は私を覚えているかな?あの日・・・日曜の晩だ、君の家に『居た』んだよ私は
  君を『見逃して』やったんだ、幼い君をね」

那由多「・・・・・・・っ、あ・・・・・・・?」

ギリギリギリギリギリ・・・・・・

L・パレード『・・・・・・・・・・・・・』

柏「ソファーに座ってテレビを見ていたんだ君は。そして君の後ろで、私は『彼ら』の頭を撃ち抜いた。
  君のお父さんとお母さんの頭をな・・・・・・」

那由多「う・・・・・・・ぐ・・・・・」

柏「君は声も出さずに呆然としていた。本当は殺す予定だったが憐れに思えたから見逃してやったんだ。
  ただ、君のお姉さんはダメだった。利口すぎたんだな、警察を呼ばれそうになったので仕方なく首を折った」

那由多「ぐ・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・」

柏「何故こんな話をわざわざしにきたと思う?ん?こんなところまで。
  君たちに『ムカついているから』だよ、虹村 那由多。遊び相手が欲しいのなら街で適当な男引っ掛けて援助交際でもすればいい。
  くだらない君らの『お遊び』のせいで、私はここのところ体調がよろしくないんだ」

那由多「・・・・・・・・・・・・・・・・ぅ・・・・・・・」

柏「今どんな気分だ?私はとても気分が良い。
  まるで新しいパンツをはいたばかりの正月がん・・・・・・」
 
 
 




那由多「・・・・・」

柏「・・・ふん、もう聞こえないか まあいい」

文字通り彼女の『息の根』が止まったことを確認し、柏がスタンドを解除して腰掛けていたベッドから立ち上がる。
そばに置かれていたアップルパイを一口齧り、「美味い」と一言呟いてから部屋を立ち去った。

那由多「・・・・・」

『死』の間際、両の目尻から涙が一筋流れ出たのは、『死』への恐怖が理由ではない。
理不尽な『死』を突きつけられた家族を想ったわけでも、悔しさが胸をこみ上げたわけでもない。
ただ、寂しかった。那由多は悟ったのだ。『死』は『終着点』であり、完全な『無』であると。

天国や地獄などない。『死』の先にはなにもない。これから、自分はそこに置き去りにされる。
『死』は究極の『孤独』だ。
結局人は、最期はみんなひとりぼっちなんだ。

(サミシイヨ・・・)

ベッドの上に横たわる、『彼女』の抜け殻を駆け付けた看護師が発見したのは、
それから数分あとのことだった。
 
 
 
 スタンド:リトル・ミス・サンシャイン 
 本体:虹村 那由多 死亡 







作戦前日の朝、アジトに大きな木棺が届けられた。コネを使って届けさせたのだと天野は言っていた。
蓋を開くと、そこに彼女が青白い顔で眠っていた。
どうしたらいいのかわからないので、とりあえずしばらく眺めていた。

天野「終わったらそのまま火葬場に直行させる。お別れの言葉でもなんでもいい。
   向こうの部屋にいるから、気が済んだら教えてくれ」

未来「・・・・・・」

丈二「・・・・・・」

彼女の頬に触れてみる。まるで氷のようにひんやりとしていた。
死というものがどういうものかまだよくわからないけど、きっとこの冷たさが死なんだな。
しばらく見つめていたのち、そろそろ本格的に苦しくなってきたので、俺達は彼女の棺に蓋をすることにした。

未来「・・・・・・信じられない、まだ・・・」

丈二「・・・・・・」

未来「・・・・柏がやったんですか・・・?」

丈二「・・・おそらくな。監視カメラやナースコールに細工できるのはあの男くらいだ
   『レイト・パレード』・・・あいつのスタンドくらい・・・」

未来「こんなことって・・・・・・・・」

丈二「・・・・・・」

今だから言えるが、最初の頃は彼女が嫌いだった。他の奴らよりも仲良くなるのに時間がかかったのは、
『可愛い女は性格が悪い』という自分の捻くれた信条のせいだ。実際、これまでの人生で顔が可愛い女達には何度も泣かされてきた。

丈二「初めて会ったとき、見下されてる風に思ったんだ」

未来「那由多に?」

丈二「そう。まあ俺の勝手な被害妄想だったけど、最初は嫌な女だと思って距離を置いてた。
   可愛い女は性格が悪いから」

未来「ふ・・・すごい偏見ですね」

丈二「確かにな。今後はこの考えを捨てる。間違ってることに気付いた」

未来「・・・・・・」

丈二「那由多のために泣いてやりたい・・・でも悔しすぎて涙も出ない
   やっと友達になれたのに・・・」

丈二「このツケは・・・必ず払わせてやる。柏 龍太郎・・・・・・!」
 
 
 




~天野のアジト 作戦前日・正午~

ぞろぞろぞろ・・・

警官達「・・・」ザッザッザッ・・・

天野「来たか」

未来「おお・・・!」

今回の作戦は天野ら三人で遂行するのではなく、警察と協力して行うのだと聞かされた。
天野は色々と『コネ』を持つ男で、今回警察内部の協力者に連絡をとり、十数人の警官と共同戦線を張ることとなった。
丈二もまた、警視庁公安部の『知り合い』に電話を掛けてここへ呼び出していた。

榎木「丈二!」

丈二「榎木さん、来てくれてどうも」

榎木「いいんだ、連絡をありがとう。・・・彼が天野氏か?」

丈二「ああ、俺達に力を貸してくれてる」

榎木「そうか、挨拶してこないとな
   ・・・平田に裏切られたあの日、もう無理だと思った。『組織』を潰すなんて・・・」

丈二「俺もだ」

榎木「よくここまでたどり着けたな丈二。なんだか少し雰囲気が変わったように見える。
   硬くなったというか、鋭さが増した感じに」

丈二「そうかな?」

榎木「『ナイフ』みたいだ」

丈二「ふっ、ほめてんのかよそれ」
 
 
 




都内某所の廃屋となった小学校の体育館が、天野たちのアジトである。
広く寂れた館内に、テーブル、イスや電子機器類を運び込んで、作戦拠点としているのだ。
近隣住民はこの土地に新しく老人ホームが建つものだと思っているらしいが、それは間違いである。
この土地は天野が名義を変えて購入したもので、今回の作戦が終われば破棄される。
少なくとも空き地を老人ホーム屋が買うまでは、老人達は子供の家で面倒見てもらうというわけだ。

天野「集まってくれてありがとう。ではこれより作戦を説明する!
   中央のテーブルに集まってくれ」

榎木「始まるぞ」

丈二「ああ・・・」

体育館内の警官たちがぞろぞろと中央に集まり、天野が用意したホワイトボードを凝視する。
明日、この国に対して劣悪なテロ攻撃が行われる。この場にいる自分達だけが、それを阻止できるのだ。

天野「テロの首謀者は環境保護団体『グリーン・アース』のCEO、柏 龍太郎!
   私達が今回察知した情報によると、この男は都内の主要インフラに対し攻撃の予定と準備がある!」

警官1「情報の出所は?」

天野「私だ。この計画は、10年ほど前に私が発案したものだ」

警官達「!?」

榎木「それじゃあ貴方は・・・」

天野「わかってる。だが協力してるのは免責が欲しいからじゃない。柏を止めたいから、ただそれだけだ。
   私の友人だった男の、暴走を止めたい。」

丈二「・・・・・・」

天野「もちろん裁きは受ける。この作戦が終わったあとに。
   頼む、信用してくれ。協力してほしい」

警官2「・・・具体的には、どのような攻撃が予想されるんです?」
 
 
 




天野「『ウイルス』テロだ。伝染性は無いが致死率が非常に高い危険な『生物兵器』。
   これを柏は東京に撒こうとしている。」

丈二「どこに撒こうっていうんだ、インフラって言ったって・・・」

天野「電気、ガス、交通、通信・・・都内主要インフラへの攻撃を計画するとして、君なら何を狙う?丈二。
   武器は『ウイルス』。『ウイルス』は体内に入ることで初めて効果を得る。
   『ウイルス』を簡単に人体に注入する手段があるとしたら、それは一体なんだ?」

丈二「・・・『水道』」

警官達「す、水道だって・・・?」

天野「そうだ」

天野「テロの攻撃目標は『東京都水道局』!
   具体的には世田谷区の各『給水所』!これがヤツの狙いだ」

ざわ・・・ざわ・・・

榎木「つまりこういうことですか?柏は世田谷区の給水所に『ウイルス』を注入して
   『兵器』と化した水を各家庭に送水する・・・・と。」

天野「その通り。世田谷の人口は85万人。街は大量の死体で埋め尽くされるだろう
   それが明日、現実になろうとしている」

警官3「実行日が明日だとして、何故今日になって言うんです?しかもこの人員。
    明らかに足りない。間に合いません」

天野「テログループは至る所にその根を張っている。君たち警察内部にもな
   今日まで隠してきたのは情報流出を避けるため。信用できる人間だけを集めて、話したかった。」

警官達「・・・・・・」

ざわ・・・ざわ・・・
 
 
 




丈二「明日、俺達は何をすればいい」

天野「知り合いの『スタンド使い』を4人呼んだ。狙われる『給水所』は6つ。
   各給水所に君たちを1人ずつ配置する。警官隊の諸君らには彼らのバックアップをお願いしたい」

警官4「ちょっと待ってくれ、『スタンド使い』?何の話だが知らないがそんなやつらに任せる気なのか?
    まだガキじゃないか。一体どういうつもりなんだ」

天野「彼らは一般人じゃない、ハッキリ言うが君らよりこういうのに長けてる。
   なんたって『経験』の量が段違いだ」

警官4「なんだって・・・?」

榎木「・・・わかりました。やりましょう」

警官4「榎木さん!」

榎木「僕は彼らを知っている。力は本物だ・・・。協力しよう、それ以外に道はない」

警官4「・・・!」

天野「『ウイルス』は重要な証拠でもある、物証があれば『組織』を裁きの庭に引きずり出し、
   壊滅に追い込めるだろう!」

天野「最優先事項は『ウイルス』の確保!一つたりとも流出させるわけには行かない!
   なんとしても我々で回収するッ!」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

丈二「・・・」

未来「・・・」

天野「それでは各員、明日に備えて準備を始めてくれ!解散!」
 
 
 




~天野のアジト PM1:55~

丈二「・・・・く・・・っ!」ジリジリ・・・

作戦はいよいよ明日。だが実を言うと、丈二は少々困った事態に陥っていた。
対『レイト・パレード』用に強化した自身のスタンド、『アークティック・モンキーズ』がいくら力を込めても発現できないのだ。

未来「どうですか、丈二」

丈二「くそ!ダメだ出ない!」

未来「ミシェルは一晩経てば使えるようになると・・・」

丈二「ああ・・・だがもう試練を終えてから一週間になる!
   何で出ないんだ・・・!」

天野「まだダメか?」

未来「そうみたいです」

天野「参ったな・・・作戦は明日だ、明日までにどうにかしないと・・・」

丈二「くっ・・・」

天野「君のスタンドは切り札なんだ、なんとか柏にぶつけたい」

丈二「大丈夫だ、明日には使えるようになってるさ」

天野「本当か?」

丈二「ミシェルが間違えただけだよ、きっとこれは時間がかかるんだ
   だろ?未来」

未来「・・・え、ええ・・・」

天野「・・・」

天野「わかった、明朝まで待つ。だがもしダメなら未来、君に行ってもらうことになるがいいね?」

未来「わかりました」

天野「いいな?明日だ、丈二」

丈二「・・・・・・わかってるよ」

丈二(どうしたんだ『アークティック・モンキーズ』!どこ行ったんだよお前・・・!)




第11話前半 終了




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