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帝王のココロ

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帝王のココロ ◆Z9iNYeY9a2



確かに覚悟はあった。
今の自分が元の仲間、海堂や結花と会えばどのような反応をされることになるか。
無論、敵対することになる可能性も想定していた。

だから、村上に言ったようにいざという時にはこの手で二人を殺す、と。

しかしいざ目の前にしてしまうと、躊躇してしまった。

海堂にトドメを刺すことは結局できなかった。
結花を見て戦うことを躊躇してしまった。






「ゼロ、君は親しい人はいるのか?」

それは数時間前。
まだスマートブレイン社が禁止エリアとして選ばれていなかった時にゼロとした会話。

「愚問だな、我々はこれから全ての参加者を殺すことを目的としている者同士だ。
 お前のようにオルフェノクを殺すのは間を置いてという協定はあるにせよ、そうでない者と相対した時にお前は躊躇いをもって戦うつもりか?」
「それはつまり、君には知り合いや親しい人…、死なせたくないような相手はいないということか?」
「知り合いはいる。だがそれだけだ。
 もし私の前に立ちふさがるのならば、例えかつての知人だろうと殺す。もし私のあずかり知らぬところで死ぬならそれで終わり。
 それだけの者しかいない」
「そうか」

そんなゼロの言葉。
自分のかつての仲間であっても迷いなく殺す、というそんなゼロの覚悟に。

「羨ましいよ。俺には君が」




あの時どうしてそう感じたのかは自分でもよく分からなかった。
だが、今なら何となくだが分かる気がする。

彼のように仲間も、自分の心さえも切り捨てることができれば。
もう自分が傷付くことはないのだから。





セイバーとN、リザードン。

目の前の存在に対して警戒を絶やさぬ二人は、しかし困惑している様子が僅かに見えていた。

美遊、結花の二人を風に乗せて送り出す行為。
それを見逃す理由はないはずだ。
だからもしそちらに意識が向くのであればその隙を一気に攻め込めるように態勢を整えていた。

だというのに、目の前の魔人達はそちらに意識を向けることなく二人を無視するかのように見送っていた。

「見え透いた誘いだな。
 あの二人を狙えば、その隙を突くつもりだったのだろう?」

そんな二人の考えなどお見通しだとでも言わんばかりに、ゼロは二人に向けてそう言い放つ。

「あの二人と比較した場合、この場で最も脅威となるのは騎士王、お前だ。
 ならば無闇に隙を作るよりも万全の状態でお前を迎え撃つべきだと判断したまでだ」
「――――…マリ、ここから離れてください」
「で、でも―――」
「乾巧ならば今は政庁に向かっているはずです。
 彼は今迷っている。あなたの存在は彼に必要だ」

そうセイバーは、真理に対しここからの撤退を促すように言葉をかけ。
同時にその手の刀に風を纏わせ、ゼロに向けて斬りかかった。

それと同時に、オーガも剣を構え、リザードンはそんな彼に向けて飛翔した。


「はぁっ!!」

騎士王の振るう剣がゼロの体を捉える。
風王結界による暴風を纏った武器が魔力放出により強化された筋力を持って振るわれる。
それはただの無銘の剣であっても岩をも打ち砕くほどの威力を叩き出す。

しかしゼロは、その一撃を掌で受け止める。

煌く紅き閃光の中で、セイバーの手中の剣の風が霧散。不可視の刀身が露わになる。
しかし風王結界が解除されたとて対峙する相手は素手、先ほどまでの竹刀での攻撃と違いそのまま押し込めればその体を傷つけられるはず。

だという状況で、セイバーはそのまま押しこむことなく刀身を引き距離を取った。

「…なるほど、竹刀を持っていた時の一撃が妙に軽いものしか打ち込めないことが気にかかっていましたが…」
「気付いたか。なかなかの勘だな」
「その光、風王結界のみならず私の魔力放出すらも無効にしていた、ということか」

セイバーの身体能力の源である魔力放出。
それを無効にされては基本的な身体機能はサーヴァントのそれというには大きく劣るものになってしまう。
もしあのまま体を下げなければカウンターを受けていただろう。

「ではどうする?勝てぬと判断し、このまま尻尾を巻いて逃げるか?」
「戯言を。その光が魔術や魔力を無効化させるものならば、それを受けねばいいだけのこと」

言うやいなやセイバーは再度その刀に風王結界を纏わせる。
あの手の光がその無効化能力の元凶であるならばそれにさえ気をつければ対処の仕様はある。

再度足の魔力を一気に放出し距離を詰めたセイバー。
そんな彼女に向けて突き出された腕を身を低くして回避。
漆黒の体に向けて思い切り刃を振りかざし。

しかしその一撃はゼロの背にあったマントが受け止める。

まるで生きているかのようにその不可視の刀身をグルリと絡めとった黒き布。
そのまま咄嗟に剣を引こうとするセイバーの体を宙に打ち上げる。

バランスを崩したまま宙を舞うセイバーの体に向けて、ゼロの拳が襲いかかる。

それでもセイバーは動揺することもなく剣の風を放出して態勢を取り戻し。
突き出された拳に対して重力を味方に思い切り剣を振り下ろした。

飛び上がったゼロの拳と重力と体重をかけて振り下ろされたセイバーの剣がぶつかり合い。
そのまま発生した衝撃に任せてゼロが着地し。
一瞬遅れてセイバーがそこから離れた場所で地に足を着けた。

「いい腕だ。それにその身に秘めた力、まるで人の身でありながら体の内に竜を飼っているかにも見えるな」
「…、お前こそ、その力は先天的に持っていたものではあるまい。一体己の何を差し出してそれほどの力を得た?」

セイバーは腕を振るい衝撃の残滓が残した痺れを振り払い。
ゼロは刀による切り傷の血が滲む拳を振り滴る血を払う。

再度向かい合う二人は、地を蹴って再度ぶつかり合った。







翼を広げて空を舞うリザードンの吐く火炎が黒き鎧を焼き焦がす。
しかしオーガはそれに動じることなく、銃剣形態のオーガストランザーを構え光弾を射出。
天を舞う竜を地に叩き落とさんと、地の帝王は銃を撃ち続ける。

「マリ、君の持ってたあの銃を貸してくれないか?」
「…どうするのよ」
「リザードンばかりに戦わせるわけにはいかない。僕も戦わなければ」
「それなら、私も――――」
「彼らは僕が引きつける。だから君はイヌイタクミのところに向かうんだ」

光線銃を受け取ったNは、そう言いかけたままオーガの元へ向けて走りだした。

「ゲコッ」

真理を静かに見つめるグレッグル。
タケシに託されたそのポケモンが何を伝えようとしているのか、真理には分からなかった。



オーガの体を火炎の渦が包み込む。
しかし次の瞬間には膨張したフォトンブラッドが大気にエネルギーを振りまきながら炎を吹き飛ばす。
続いてリザードンの口から放たれた竜の覇気がオーガの体へと襲いかかる。
それをオーガは長剣形態へと変形させたオーガストランザーで斬りつける。
真っ二つになったりゅうのいかりはオーガの背後に着弾。二つの爆発を引き起こす。

爆風で周囲の視界が阻まれる中、オーガは振り向きオーガストランザーを振るった。

一本の閃光を弾き飛ばした後視界の晴れた先を見ると光線銃を構えたNの姿。
再度オーガストランザーを構え直そうとした時違和感を感じ目をやると、手元にあったのは石のように固まった己の武器の姿。
次の瞬間襲いかかったりゅうのいかりを避けながら剣を変形させようとするも石化したそれは動かない。

「ちぃ!」

空を舞うリザードンに対する攻撃手段を一つ失ったことに舌打ちをする木場。

そのまま再度光線銃を向けるNに対し、オーガフォンを向けてその手の光線銃を撃ちぬく。
手から弾かれるように飛んでいった光線銃は宙で爆発、鉄屑となってパラパラと降り注ぐ。

が、追撃をかけようとしたところで風を切る音を耳にしたオーガは後ろに下がる。
背の巨大な翼を輝かせながらこちらに突撃をかけるリザードンの一撃を回避。

そのまま空に飛び上がり旋回しようとするリザードンに向けて、その手に生成した灰色の魔剣を投げつける。
回転しながらリザードンの身を切り裂かんと飛ぶそれにリザードンは気付き身を捩って避けたが、翼を掠めてしまい衝撃でバランスを崩す。

「グゥ!」

地面に墜落するリザードンに向けて、オーガは走りながら振りかぶった拳を思い切り叩きつけた。

「ガァ!!!」

悲鳴のような鳴き声を上げて吹き飛ばされるリザードン。

「リザードン!」

駆け寄ろうとするNの前に、オーガが立ちはだかる。
その手には石化した剣。変形機構などといった機械的な攻撃は行えないだろうが、人間を斬りつけて殺すだけなら十分に武器としての役目を果たすだろう。

「……」
「人間、だな?」

まるで何かを確かめるかのようにそう問いかけるオーガ。

「僕は、……どうなんだろうね。人間だと思うけど、自分でもよく分からない。
 君は、どうなんだい?」

人間であることに間違いはないのだろう。
だが、今この場で聞かれている人間とはそういうことではないはずだ。



しかし、Nにはそんな自分のことよりもそんな問いかけをしてくる目の前の彼のことの方が気になっていた。

木場勇治。
海堂直也の仲間で、人間とオルフェノクの共存を理想としていたはずの男。

「カイドウから聞いてる。人間とそうでない者が共に生きられる世界を夢見ていた男だ、と。
 そんな君が、本当にタケシを、海堂を殺したというのかい?」
「少なくともあの時向かってきたベルト所有者の男は殺した。
 それだけじゃない。啓太郎――こんな風になってもオレのことを受け入れてくれた男も殺した。名を知らぬ少女も斬った」

後ろから、まだその場に留まっていた真理が息を飲む声が聞こえた。

啓太郎。真理の言っていた仲間だったと思う。
少なくとも木場勇治にとっても浅い間柄の人物ではないだろう。それを殺したという。

一見すれば非情な事実。しかし、

―――こんな風になってもオレのことを受け入れてくれた男も殺した

Nにはその言葉にはまるで自分を戒めるかのような印象を受けるものが混じっていたように思われた。
まるで非情であることを自分自身に強いているかのような。

「なら、どうして僕のことをすぐに殺さない?人間かどうかなど確かめる前に殺してしまえばそれで済んだ話だ。
 君は、まだ迷っているんじゃないか?」
「――――」

その手から振り下ろされる剣。
しかしNにはそれは十分に避けられるもの。

回りこむようにオーガの後ろに移動し、リザードンの元へと駆け寄る。
苦しそうに呻くリザードンに、素早くバッグから取り出した傷薬を吹きかけると少し楽になったように俯いた。

そうして起き上がったこちらへと走りよるオーガに対して火炎放射を放ち牽制する。

「グルルルルル…」

唸るリザードン。まだ目の前の存在に対する怒りが収まっていない様子だ。
致し方ないことだが、しかしNはそんなリザードンを宥める。

「どうして君は理想を捨てたんだ?君の持っていたものは、そんな簡単に捨てられるようなものだったのか?」

畳み掛けるようにそう問うN。
海堂の言葉が正しいならば、彼は灰色の混沌とした世界に一つの形をもたらすような理想を持っていたはずだ。

だからこそそれをそうも簡単に捨てた理由が聞きたかった。

「…それを、裏切ったのはお前ら人間だ!!!」

しかしその問いかけに激昂するかのように声を荒らげて、オーガは勢いよくNへとむけて剣を突き出す。
それを後ろにいたリザードンがその翼を鋼のように硬質化させて受け止める。

ほんの一瞬、Nの脳裏にフラッシュバックした言葉を思い出す。
人とは違う力を持っていたことで化け物と蔑まれた、封印したはずの過去。
木場勇治という男はその時のような思いをいつも感じながらも理想を追っていたはずだ。


「人間がどうか、なんて関係ない!君はよりよい世界のために、自分の意志でその理想を追っていたんじゃないのか?!
 少なくともカイドウはそう信じていた!!だからこそ君に憧れていたはずだ!」
「黙れぇ!!」

―――Exceed Charge

電子音が響くと同時に、石化していたはずの剣の表面が崩れ、中から黄金色のエネルギーを纏った大剣が権限する。
全長にしてイワークやホエルオーのような大型ポケモンにも並ぶだろうその刃を、オーガは横殴りに振り払う。

周囲の木々を、草木をなぎ払い襲いかかるオーガストラッシュを、リザードンはNを抱えて飛び上がることで回避。
しかしそこからさらに伸びた光の刀身がその後を追うかのように振り上げられる。

急旋回して避けるが、先ほどと同じく翼を掠めたエネルギーがバランスを崩させ、リザードンを地面に叩き落とす。

抱えていたNにダメージがいかないように全ての衝撃をその身に受ける形で墜落したリザードン。
その体に受けたダメージは大きく、起き上がることができない。

「リザードン…!」

気にするな、とでも言うかのような目を向けるリザードン。
しかしそこから復帰しようとしても墜落のダメージが大きすぎた。
こちらに向かい来るオーガが剣でこの体を貫くのはきっと傷薬をリザードンに使うより速いだろう。
かといって、大きなダメージを負ったピカチュウを呼び出せるはずもない。









Nに向けて剣が突き出された、まさにその時だった。
その剣に向けて紫色の小さな光が連続して着弾する。

思わぬ不意の衝撃でオーガはバランスを崩して攻撃を逸らさせた。
Nのすぐ横を通り過ぎて行くオーガストラッシュ、そしてオーガ自身の体。

そこからどうにか踏ん張り態勢を持たせたオーガは、それでもNへの攻撃を止めず一歩横に動いた後突き出した剣を横へと振りかざした。
Nの胴体を切断するかのように迫るオーガストラッシュ。

そこに、何かを構えた影が割り込む。

構えた何かを剣の前へと翳し。
さらに構えられた何かに対して、その肩に乗った影が光る拳を叩きつけた。

バチッ、と構えられた何かは弾けて消し飛び。
影はNを巻き込んでオーガから離れるように吹き飛ばされた。

「―――!」

その結果、オーガの剣の間合いから一気に離れることには成功していた。

「っつつ……、やっぱり鉄製のポスターなんかじゃ無理があったか…」
「マリ、逃げろと言っただろう!」
「ごめん、だけどその前にどうしてもやっておかなきゃ…」

と、起き上がった真理の目の前に突き付けられる剣。
触れるか触れないかの数ミリというところで静止している。

「――!マリ?!」
「余所見している暇はないぞ」

セイバーは依然としてゼロと抑えることに精一杯。

リザードンに傷薬を使って撃退を、と考えたNだが、真理とオーガの距離があまりにも近すぎた。
真理の救出と真理を一刀の元に叩き伏せること、どちらが早いかなど論じるまでもない。

「………」
「………」

吹き飛んだ衝撃で肩から落ちたグレッグルも動くことができない。

じっと真理を見つめるオーガ。その視線を、真理は逸らすことなく受け止める。

「…私を殺したいんだよね?」
「………」

真理の問いかけに対しての返答は沈黙。
それを真理は肯定と受け取る。

「いいよ。その代わりお願いがあるの。
 ファイズギア、あれだけは巧のところに届けて欲しいの。
 それともう一つ、巧に伝えて。どんな姿になっても巧は巧だから、私はどんなになっても巧を受け入れるから、って」
「マリ!何を言ってるんだ!」
「もう嫌なの!タケシもナナリーちゃんも、みんな私を守って死んでいって!桜ちゃんがおかしくなってく時も、私だけ何もできなかった!」

守られてばかりの、そして自分の中にある巧への想いも振り切れていない最低の人間にはなりたくはなかった。
もしそれで巧が迷いを振り切ることができるなら、そしてN達を逃がせる時間が作れるなら、ここで死ぬことは無意味なことではないはずだと。

「な、桜!?マリは桜を知って―――っ」

ゼロと戦っていたセイバーが真理の叫んだ桜の名前に反応して動きを止める。
戦いの最中においては大きな隙。

しかしそこに追撃がくることはなかった。

もしその一瞬セイバーが視線を真理に向けていなければ、ゼロもセイバーと同じように一瞬の隙を作っていたことに気付けただろう。
セイバーが見たのは、隙を見逃すように間合いを開けたままこちらを睨みつける魔王の姿のみ。



「…それを何故俺に言う?」
「だって木場さんだから。木場さんはどんな時だって約束を破ったりはしなかったから」
「それは人間の時の俺だ。今の俺には関係がない」
「変わらないよ。木場さんだって、木場さんだから」
「――――」

真理には、木場のその仮面の下に隠された表情を伺うことはできない。
しかし、そう答えて数秒の沈黙の時間が周囲を覆い。

やがて木場は剣を下げた。

その様子に、木場の思惑が分からぬままも安心するN。

―――――――バキッ

そんな時だった。
辺りにまるで太いプラスチックの柱を叩き折ったかのような音が響き渡ったのは。

「………っ、ぁ………」

そして視線の先には足を抑えて蹲る真理の姿。
その右足は膝の辺りから関節が逆方向に曲がっている。

「マリ!!」
「貴様!」
「安心しろ、今は殺しはしない。あくまでも逃さないための保険だ」

セイバーが怒りを露わに木場へと向かおうとするがゼロに阻まれ。
Nが駆け寄ろうとすると真理の体を持ち上げて剣を突き付けた。それ以上近寄るならば殺す、ということだろう。

「女、乾巧が政庁にいるというのは本当だな?」
「…っ………!」

刀の柄でゼロの拳を受け止めながらも、問いかけられたセイバーは苦々しげに表情を歪めて首を小さく縦に振る。

「ゼロ」
「好きにしろ。
 だが、一つだけ言っておいてやろう。そうするのならばその女を無意味には死なせるなよ?」

一方でゼロは振り向くこともせず、セイバーとの鍔迫り合いを続けたまま、忠告でもするように木場にそう告げた。

「園田真理。君は乾巧の元に着くまでは生きていてもらおう。
 君を彼の目の前で殺せば、彼も覚悟を決めるだろう」
「…っ、い、いいよ、それでも……」

足の痛みに顔から血の気を引かせながらも喉から絞り出すように声を出す真理。
木場はそんな彼女を見下ろしながらオーガフォンをベルトから抜き取り、人間の木場勇治の姿へと戻り。
しかし間髪入れることもなくオルフェノクの、それも巨大な四肢を持った疾走態へと変化させた。

足が変な方向に曲がった真理をそのまま抱え上げる。

「ゲゲッ!!」

その出発を阻もうとホースオルフェノクへと跳びかかったグレッグルを、顔の向きを動かすことすらせずにその手に顕現させた盾で弾き飛ばした。
小さな体はあっさりと打ち返され宙を舞う。
地面に墜落しそうになったその体を、Nが走り受け止めた。



「ハッ!」

そのまま前足を持ち上げて地面に叩きつけ、その反動で後ろ足が浮き上がる瞬間に地面を蹴って駆け出した。


「リザードン!!」

いい傷薬をリザードンに吹きかけながら呼びかけるN。
言いたいことは悟ったように、起き上がったリザードンは両翼を広げその背を下げる。

「…、彼女をお願いします!この男は私が―――」

襲いかかるマントを一つ一つ切り払いながらそう叫ぶセイバー。
Nは振り返り、静かに頷いた後リザードンを飛翔させた。

「ゲゲゲー!」

焦るように汗を流しながら鳴くグレッグルをその肩に乗せて。


(ナナリーが命を賭して守った女、か)

後ろで去っていく木場を背中で見送りながら、ゼロは園田真理の言葉を思い出す。
あの心優しいナナリーのことだ。きっと自分に良くしてくれた園田真理を守るためにマークネモを駆って戦ったということなのだろう。

それで死んだ、ということはネモを持ってしても止められなかった相手か、あるいは別の第三者の介入があったのか。そこまでは分からない。
ただ一つ事実としてあるのは、この会場で園田真理がナナリーと心を通わせた一人であるということ。


「フ」

自嘲するように笑ってその想いを打ち切り、セイバーへと向き合う。

「これでお前は後ろを気にする必要はなくなったわけだな」
「…くっ!」

挑発するようにそうセイバーへと告げる。
無論そんなことはない。セイバーの心境としては一刻も早く真理を助けるために木場を追いたいという一心が大きいだろう。

「これまでの斬り合いで私の力量は分かっただろう?これでもまだ後ろに気を取られるようなら、死ぬぞ?」
「………」

セイバーは構えを取り直し息を吐き出し。
ほんの2秒、静かに瞳を閉じる。

一見隙だらけだが攻めれば予測し難い反撃を受ける可能性がある時間。
故に静かにその様子を構えて見据えるゼロ。

そしてセイバーが瞳を開いた時、焦りや迷いを打ち払ったかのように周囲の気は研ぎ澄まされていた。

「――――!」

地面がひび割れるほどの衝撃を互いに発しながら共に地を蹴った二人の拳と刃がぶつかり合った。



園田真理は、自分にとっては村上峡児に並ぶ、殺さなければならない存在だった。
彼女の密告があって結花は、海堂は命を落とすことになった事実は忘れていないのだから。

だが、それを彼女自身に向けて追求するつもりはなかった。
人間の汚さはさんざん思い知らされた。例え園田真理であってもそれが変わらない以上、深く追求したところで何も解決しないのだから。


しかし。
そんな彼女が、オルフェノクである乾巧を信じる、と言った。
そして、自分に残っている木場勇治としての俺を信じる、とも言った。



本来ならば俺たちを裏切った口がそんな言葉を言うのか、と激怒して然るべきだったのだろう。
なのに、人間を見限っていた、既に何も期待していないと思っていたはずの俺の中に浮かび上がったのは別の思いだった。


菊池啓太郎の時には決して生まれなかった、チラリと思ったかもしれないがそれでも振り切ることができた思い。
自分を裏切った園田真理がそんなことを言うことを想定していなかったこともあるのかもしれない。

―――あの時の園田真理は、本当に彼女だったのか?


―――もしかしたら、人間とオルフェノクも――――――――

しかしその先を考えてはいけなかった。
自分で決めたはずなのだから。オルフェノクとして生きる、と。
既に啓太郎を手に掛けた今、もう戻ることなどできない。

それでも一瞬生まれた迷いは心をじわじわと蝕む。
このままではオルフェノクとして生きる意志が壊されかねない、そう思った。

だからこそ、それら全てを彼に問うことに決めた。
ファイズに。闇を切り裂き光をもたらす救世主に。
乾巧に。

闇を切り裂くように、俺の迷いもあの男との戦いが消してくれるのではないか、と。

幸いにしてファイズギアは手元にある。
もしこれを渡して尚も戦えないようであるならば、もう彼に何かを期待することは止めるだろう。
そうならないための最後の保険が真理の存在だ。

別に今の彼女の足を折らずとも、彼女が逃げることはないというのは分かっている。
それでも迷いを表に出すわけにはいかない自分のせめてもの抵抗のようなものだった。


(ああ、やはり俺には君の存在が必要なようだな。乾巧)

彼を倒した時こそ、俺は完全にオルフェノクとなれる。

だから。

(―――それまでに死んでくれるな、俺を失望させてくれるな、乾)

迷える心の帝王は、しかし歩みはただひたすら一直線に。

救世主を求めて走り続ける。

求める相手が向かっているという政庁へと向けて。


【E-5/草原地帯/一日目 午後】

【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(中)、コード継承
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0~3(本人確認済み、木場勇治も把握)
[思考・状況]
基本:参加者を全て殺害する(世界を混沌で活性化させる、魔王の役割を担う)
1:セイバーを倒し木場を追う。
2:木場と手を組むが、いずれ殺しあう
3:可能であるなら、今だけは木場のように同盟を組むに値する存在を探す
4:ロロ・ランペルージは己の駒として利用する、が………?
[備考]
※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時
※第一回放送を聞き逃しましたが、木場勇治から情報を得ました
※C.C.よりコードを継承したため回復力が上がっています。また、(現時点では)ザ・ゼロの使用には影響が出ていない様子です

【セイバー@Fate/stay night】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、魔力消費(中)
[装備]:枢木スザクの日本刀@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー、スペツナズナイフ@現実
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:シロウの願いを継ぎ、桜とイリヤスフィールを守る
1:ゼロを倒し木場を追って真理を助ける
2:間桐桜を探す
3:余裕があれば約束された勝利の剣を探したい
[備考]
※破戒すべき全ての符によりアンリマユの呪縛から開放されセイバーへと戻りました




【D-4/市街地/一日目 午後】

【木場勇治@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、心を蝕むような迷い、ホースオルフェノク激情疾走態変身中
[装備]:オーガドライバー一式@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト
[道具]:基本支給品、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、アヴァロンのカードキー@コードギアス 反逆のルルーシュ、クラスカード(ランサー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ファイズギア@仮面ライダー555、コンビニ調達の食料(板チョコあり)、コンビニの売上金
[思考・状況]
基本:オルフェノクの保護、人間の抹殺、ゲームからの脱出
1:真理を連れて乾巧の元に向かい、彼と決着をつける
2:すべての人間を殺したあと、村上を殺す。
3:もし巧が迷い続けているならば真理を殺してでもその気にさせる。
[備考]
※コロシアムでの乾巧との決戦の途中からの参戦です


【園田真理@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:疲労(大)、身体の数カ所に掠り傷 、右膝骨折(真っ当な歩行は不可能)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、支給品0~1(確認済み)、グレッグルのモンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)、ファイズアクセル@仮面ライダー555、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:巧とファイズギアを探す
1:…………
[備考]
※参戦時期は巧がファイズブラスターフォームに変身する直前
※タケシと美遊、サファイアに『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えましたが、誰がオルフェノクかまでは教えていません    
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします
※不明支給品の一つは鉄製ポスター@Fate/stay nightでした

【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(小)
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:疲労(大)ダメージ(中)@ポケットモンスター(アニメ)、精神不安定?、ボール収納)、サトシのリザードン(疲労(小))@ポケットモンスター(アニメ)、タケシのグレッグル@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品×2、割れたピンプクの石、プロテクター@ポケットモンスター(ゲーム) 、傷薬×2@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:木場を追い、真理を助ける
2:世界の秘密を解くための仲間を集める
3:ポケモンセンターに向かいたいが…?
4:化け物…………
[備考]
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※並行世界の認識をしたが、他の世界の話は知らない。


128:あなたの存在は認めない/許さない 投下順に読む 130:魔法少女は絶望と戦いの果てに
125:Nobody to watch over me 時系列順に読む 122:マドルチェプリンセスの憂鬱
125:Nobody to watch over me 園田真理 130:魔法少女は絶望と戦いの果てに
N
木場勇治
ゼロ 134:理想郷は遥か遠く
セイバー


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