理想郷は遥か遠く ◆Z9iNYeY9a2
今の私に騎士王、アルトリア・ペンドラゴンを名乗る資格はない。
戦いの中に、自分の理想を、願いを挟む余地はない。
戦いの中に、自分の理想を、願いを挟む余地はない。
私は多くの罪を犯した。
それがあの泥の影響によるものであったとしても、あの所業は全て自身の行いから出たものだったという事実は変わらないのだから。
それがあの泥の影響によるものであったとしても、あの所業は全て自身の行いから出たものだったという事実は変わらないのだから。
その中でも最大の罪。衛宮士郎の命をこの手で奪ったということ。
もしあの場で士郎がこの命を終わらせてくれていれば、このような罪を背負うこともなかったのだろう。
いや、今生きているという事実は逆なのだ。罪に対する罰を、己の死を持って償うことができればそれでいいなどと、そんな甘い考えを持っていた自分に対する戒めなのだろう。
士郎が託したもの、桜やイリヤスフィール。彼女達を守りぬくこと。それが今の自分にできる士郎への罪滅ぼしであり。
そして殺し合いに抗う者達に力を貸し、皆の脱出の礎となること。それがこれまでい行ってきた数々のことに対する贖罪。
その中に、アルトリア・ペンドラゴンという少女の意志は入ることはない。
いや、今生きているという事実は逆なのだ。罪に対する罰を、己の死を持って償うことができればそれでいいなどと、そんな甘い考えを持っていた自分に対する戒めなのだろう。
士郎が託したもの、桜やイリヤスフィール。彼女達を守りぬくこと。それが今の自分にできる士郎への罪滅ぼしであり。
そして殺し合いに抗う者達に力を貸し、皆の脱出の礎となること。それがこれまでい行ってきた数々のことに対する贖罪。
その中に、アルトリア・ペンドラゴンという少女の意志は入ることはない。
ただ、この身は一本の剣であればいいのだから。
◇
白銀の刀身が煌めく度に幾度となく高速の太刀筋が黒き仮面の男に向けて襲いかかる。
対する男は手に獲物を持たぬ、無手の状態。
しかしその内を見ると明らかに刀を持つ少女が不利だった。
対する男は手に獲物を持たぬ、無手の状態。
しかしその内を見ると明らかに刀を持つ少女が不利だった。
仮面の男は息を切らせることもなく拳を振るい続け。
少女は致命的な一撃を受けることだけは避けるように体を動かして躱し続ける。
少女は致命的な一撃を受けることだけは避けるように体を動かして躱し続ける。
「…くっ」
「どうした、その程度か」
「どうした、その程度か」
疲労の様子も見せぬ仮面の男、ゼロに対して。
向かい合う少女、セイバーの頬には汗が伝う。
向かい合う少女、セイバーの頬には汗が伝う。
セイバーの心中にあるのは強い焦り。
美遊と結花は自分の成すべきことを成すために立ち去り。
真理は木場勇治と共にここから離れ、Nもそんな二人を追っていった。
美遊と結花は自分の成すべきことを成すために立ち去り。
真理は木場勇治と共にここから離れ、Nもそんな二人を追っていった。
そう、皆が自分の手の届かぬ場所に。
今自分がしていること、ゼロという男を打ち倒すために剣を振るう。
それが不要なことである、とは決して思わない。むしろこうして自分がこの男を止めているからこそ、他の誰かがゼロの手にかかることを止められているのだ。
それが不要なことである、とは決して思わない。むしろこうして自分がこの男を止めているからこそ、他の誰かがゼロの手にかかることを止められているのだ。
だが、それでも。
こうしている間に、去っていった皆の元に別の何者かが襲いかかりその命を奪っているのではないか。
こうしている間に、去っていった皆の元に別の何者かが襲いかかりその命を奪っているのではないか。
そう考えてしまうと、どうしてもこの戦いを急ぎ終わらせなければならないという気持ちが先行してしまい、戦いのみに集中することができなかった。
「先に比べれば随分と剣筋が鈍っているようにも思えるが」
「…………」
「…………」
ゼロに指摘され口を噤むセイバー。
しかし戦いに遅れを取る理由はそれだけではない。
ゼロの持つ能力、こちらの力を無力化する力。
それがセイバーにあまりにも相性が悪かった。
それがセイバーにあまりにも相性が悪かった。
本来セイバーがサーヴァントとしての力を発揮することができるのは自身の持つ魔力放出のスキルによるおかげ。
細身の彼女の腕力は本来は魔術師とはいえ人間でしかなかった士郎にも遅れを取るもの。それを魔力を全身に纏わせることでバーサーカーのような怪力を持った相手とも打ち合うことができる。
細身の彼女の腕力は本来は魔術師とはいえ人間でしかなかった士郎にも遅れを取るもの。それを魔力を全身に纏わせることでバーサーカーのような怪力を持った相手とも打ち合うことができる。
だが、ゼロのあの光による無力化はそれによって纏った魔力すらも霧散させる。
そうなればこの魔人と打ち合う力はセイバーには残っていない。
あれを受けてしまった後再度魔力を纏わせる暇もなく吹き飛ばされてしまった際に殴られた腹部は未だに痛む。
そうなればこの魔人と打ち合う力はセイバーには残っていない。
あれを受けてしまった後再度魔力を纏わせる暇もなく吹き飛ばされてしまった際に殴られた腹部は未だに痛む。
だが幸いにしてその無力化の光が発される前兆を読むことができるようにはなってきている。
手に光が出る際の一撃だけは避けられるようにすれば魔力霧散による隙を晒すことは防ぐことができる。
手に光が出る際の一撃だけは避けられるようにすれば魔力霧散による隙を晒すことは防ぐことができる。
しかし。
ゼロが一気に距離を詰めてその右手に光を生み出す。
胸めがけて突き出されたそれを身を捻り避ける。
返す勢いで刀を振り抜き体を斬り付けようと振り抜き。
胸めがけて突き出されたそれを身を捻り避ける。
返す勢いで刀を振り抜き体を斬り付けようと振り抜き。
「…!!」
しかし咄嗟に地を蹴って離脱。
次の瞬間、己が今いたはずの場所を左ストレートの拳が振り抜かれていた。
次の瞬間、己が今いたはずの場所を左ストレートの拳が振り抜かれていた。
風圧は数メートル距離をつけた場所にまで僅かに届くほどのもの。もし直撃していれば頭部に大きなダメージを負うことは避けられなかっただろう。
そう、その事実に気付いて以降、ゼロはその光を逆にフェイントへと利用し始めた。
高ランクの直感スキルがなければ間違いなく受けていただろう。
高ランクの直感スキルがなければ間違いなく受けていただろう。
フェイントを避けること自体は難しいことではない。
しかし本命かフェイントか、それを意識したまま戦闘を続けることはセイバーにとって少なくない精神的負担をかける。
しかし本命かフェイントか、それを意識したまま戦闘を続けることはセイバーにとって少なくない精神的負担をかける。
努めて冷静さを失わずにいようとするセイバーだが、この均衡もいつまで持たせることができるか分からない。
「どうした、勘も鈍ったか?」
「黙れ…っ!」
「黙れ…っ!」
開いた距離を再度詰めて刃を振りぬくセイバーの刀を、ゼロは拳で受け止める。
風王結界による強化を受けたその刃、しかしゼロは刀身の側面から受けることで刃の進行を押し留めている。
風王結界による強化を受けたその刃、しかしゼロは刀身の側面から受けることで刃の進行を押し留めている。
素手と刃の押し合いにも関わらず、鍔迫り合いをしているかのような錯覚に陥るセイバー。
その拳、そして身体機能はそう感じさせるほどに常軌を逸したものだった。
その拳、そして身体機能はそう感じさせるほどに常軌を逸したものだった。
放出される魔力は突風となって吹き荒び、振動する大気は周囲の地面の形状を少しずつ変化させる。
しかし、それでも尚ゼロの体は揺るがない。
しかし、それでも尚ゼロの体は揺るがない。
「私の知るその刀の使い手はもっと愚直で、だが力強い太刀筋を持っていたが。
やつと比べれば確かに強いが、剣に関しては今のお前ではアイツには届かんな」
「…何を。今の私に迷いなどない」
「確かに迷いはないな。だが、その太刀にはお前自身の意志も宿ってない。言うなれば空っぽの刃だ。
騎士王、アーサー・ペンドラゴンの同位的存在として少しは興味を持ってみたものの、少し買い被っていたようだな」
「貴様…!」
やつと比べれば確かに強いが、剣に関しては今のお前ではアイツには届かんな」
「…何を。今の私に迷いなどない」
「確かに迷いはないな。だが、その太刀にはお前自身の意志も宿ってない。言うなれば空っぽの刃だ。
騎士王、アーサー・ペンドラゴンの同位的存在として少しは興味を持ってみたものの、少し買い被っていたようだな」
「貴様…!」
見透かしたようなことを言うゼロに憤りを感じるセイバーは、その刃に込めた力を更に増し、ゼロの拳すらも押し退けて叩きつける。
しかし振り下ろした刃の先にはゼロはいない。
しかし振り下ろした刃の先にはゼロはいない。
周囲を見回すセイバーの視界の端に、こちらへと飛び掛かる黒い影が映り込む。
そちらへと向き直すと同時、セイバーはその影を一つ、一つと切り払っていく。
襲い来る影は黒く変幻自在に動く布。ゼロのマントであることに気付くのは一撃目を切り払って以降。
その中から本体たるゼロの位置を探り出そうとするセイバー。しかし視界を覆い尽くすほどに膨張したマントはセイバーの目での探索を許さない。
己の神経を研ぎ澄まし、迫るそれを避けながら前進し続けるセイバーは、その中から襲いかかってきた一つに向けて反射的に大きく刀を振り下ろす。
そちらへと向き直すと同時、セイバーはその影を一つ、一つと切り払っていく。
襲い来る影は黒く変幻自在に動く布。ゼロのマントであることに気付くのは一撃目を切り払って以降。
その中から本体たるゼロの位置を探り出そうとするセイバー。しかし視界を覆い尽くすほどに膨張したマントはセイバーの目での探索を許さない。
己の神経を研ぎ澄まし、迫るそれを避けながら前進し続けるセイバーは、その中から襲いかかってきた一つに向けて反射的に大きく刀を振り下ろす。
布を斬るような音と共にすれ違うセイバー。そのマントが裂け、その中からゼロの黒い肉体が姿を見せる。
裂けたマントの奥から除く腕から一筋の血の雫が流れ落ち、地面に滴り落ちた。
裂けたマントの奥から除く腕から一筋の血の雫が流れ落ち、地面に滴り落ちた。
「なるほど、まだ勘は鈍り切ってはいないようだな」
ゼロは関心しつつ腕を振るい血を払い落とす。
血を流したとはいえ大した傷ではなかったのか、出血自体は既に止まっている。
血を流したとはいえ大した傷ではなかったのか、出血自体は既に止まっている。
(…やはり、この刀では……)
セイバーの剣技は両刃の西洋剣によって繰り出されるもの。
小さな力で引くことで切断力を発揮させる刀とは本質が異なっている。
竹刀と比べれば幾分かマシではあるが、ゼロとの戦いに対して対抗し得る武器ではなかった。
小さな力で引くことで切断力を発揮させる刀とは本質が異なっている。
竹刀と比べれば幾分かマシではあるが、ゼロとの戦いに対して対抗し得る武器ではなかった。
「己を捨て、理想のために剣を取ったものがいたという話があるが。しかし今のお前には何が残っているのかな?」
「…!貴様、何を知っている……」
「さあな。私の知ることしか知らんよ」
「…!貴様、何を知っている……」
「さあな。私の知ることしか知らんよ」
まるで自分のことを知っているかのように話すゼロの口調に、思わず問いかけるセイバー。
だがゼロはおどけてみせるのみでセイバーの質問には答えない。
だがゼロはおどけてみせるのみでセイバーの質問には答えない。
一体この男は自分の何を知っているのか。
それまでただの障害としか見ていなかったセイバーの視線に変化が生じる。
不気味な、未知のものを見る時の恐怖にも似たような感情が僅かに心を揺さぶる。
それまでただの障害としか見ていなかったセイバーの視線に変化が生じる。
不気味な、未知のものを見る時の恐怖にも似たような感情が僅かに心を揺さぶる。
目の前の男は、一体何を知っているのか。どうやって知ったのか。
分からないものに対する恐怖の感情、それはセイバーの心を焦らせるには充分であり。
分からないものに対する恐怖の感情、それはセイバーの心を焦らせるには充分であり。
だからこそ、それを払拭するように勝負に出た。
これまでのように一気に距離を詰めるように地を蹴る。
突風のごとき俊足でゼロの目前へと迫り、ゼロもまた迎え撃つ態勢を取るようにその手に光と共に羽ばたく鳥を連想させる紋様を生み出す。
突風のごとき俊足でゼロの目前へと迫り、ゼロもまた迎え撃つ態勢を取るようにその手に光と共に羽ばたく鳥を連想させる紋様を生み出す。
セイバーが刀を振り上げ、ゼロはそれに対しクロスカウンターのように掌を突き出す。
既にセイバーの速さは幾度となく見てきている。動きを読むのは難しくない。
既にセイバーの速さは幾度となく見てきている。動きを読むのは難しくない。
が、ゼロの目前、セイバーの体が光ったと同時、身に纏っていた鎧が消滅する。
そして己の防具と引き換えに、セイバーを覆っていた魔力が増大。
瞬時にセイバーの体が加速、不意の一撃にゼロの対応が遅れ。
そして己の防具と引き換えに、セイバーを覆っていた魔力が増大。
瞬時にセイバーの体が加速、不意の一撃にゼロの対応が遅れ。
ゼロがその手の光を突き出すより早く、セイバーの振り下ろした刀がその体を捉え。
すれ違いざまにゼロの肩から胸にかけて鮮血が吹き出す。
しかし同時にセイバーの刀もセイバー自身の力に耐え切れずへし折れ、音を立ててはじけ飛んでいく。
すれ違いざまにゼロの肩から胸にかけて鮮血が吹き出す。
しかし同時にセイバーの刀もセイバー自身の力に耐え切れずへし折れ、音を立ててはじけ飛んでいく。
(浅い…!)
それでもまだ決定打には至っていないと見たセイバーは振り向きざまに残った刀身を突き出し。
だがその一撃はゼロに当たることはなかった。
だがその一撃はゼロに当たることはなかった。
鋭い金属音と共に、残った刃の部分が砕け散る。
だが、セイバーの意識にあるのはゼロの手にあるもの。
だが、セイバーの意識にあるのはゼロの手にあるもの。
今ゼロが持つ、自分の刃を阻むまるで鞘のような黄金の物体は。
かつて自分が喪失したはずの宝具。
かつて自分が喪失したはずの宝具。
「……全て遠き理想郷(アヴァロン)…!」
「貴様の鞘だったな、これは」
「何故貴様がそれを……っ!」
「貴様の鞘だったな、これは」
「何故貴様がそれを……っ!」
答えることなく、ゼロはもう一方の腕を握りしめて突き出し、セイバーの体を吹き飛ばす。
鎧を解除したままの胸を強打された痛みに呻き後退し。
鎧を解除したままの胸を強打された痛みに呻き後退し。
「ガウェイン!!」
咄嗟のゼロの叫び声に思わず動きを止めるセイバー。
その時の彼女の心中を他所に、ゼロの目の前に巨大な影が顕現する。
黒を基調とした6メートルはあるだろう巨体の節々を装飾のように黄色く塗装された何か。
見るものを威圧するほどの巨体、その肩が開き赤い閃光が集中し。
その時の彼女の心中を他所に、ゼロの目の前に巨大な影が顕現する。
黒を基調とした6メートルはあるだろう巨体の節々を装飾のように黄色く塗装された何か。
見るものを威圧するほどの巨体、その肩が開き赤い閃光が集中し。
地面を焼くほどの膨大なエネルギーが放出された。
砂地を円を描くかのように黒く焼き焦がされた地面。
そこから少し離れた場所で、セイバーは膝をついたまま空を見上げていた。
そこから少し離れた場所で、セイバーは膝をついたまま空を見上げていた。
浮遊するのはたった今ゼロが生み出した巨人、ガウェイン。
その肩に乗ったゼロは手を組んだ状態でセイバーを見下ろしながら呼びかけた。
その肩に乗ったゼロは手を組んだ状態でセイバーを見下ろしながら呼びかけた。
「この勝負は一旦預けよう。最も、次に会う時まで貴様が生きていられれば、だが。
それまではこの鞘も預かっておくとしようか」
それまではこの鞘も預かっておくとしようか」
先のあの一撃を警戒するセイバー、しかし追撃はないままゼロはその機体を翻して飛び去って行く。
屈辱感に唇を噛み締める。
だが今のセイバーにはゼロを追撃する力はない。
だが今のセイバーにはゼロを追撃する力はない。
戦闘による魔力消耗、そして武器も損壊している。
竹刀は当然として、あの刀で持ってしても相手にするには役不足だった。
竹刀は当然として、あの刀で持ってしても相手にするには役不足だった。
(やはりやつを倒すには、宝具が必要か…)
幾度も打たれた箇所を抑えながら、セイバーの脳裏に自分の持つ一本の黄金の剣が浮かび上がる。
自身が本来持っている宝具、約束された勝利の剣。未だ見つかってはいないがこの会場のどこかに支給されている可能性が高い。
あれさえあれば、あるいはゼロを打ち倒すことも可能かもしれない。
自身が本来持っている宝具、約束された勝利の剣。未だ見つかってはいないがこの会場のどこかに支給されている可能性が高い。
あれさえあれば、あるいはゼロを打ち倒すことも可能かもしれない。
だが。
『お前自身の意志も宿ってない。言うなれば空っぽの刃だ』
ゼロに言われた言葉を思い出す。
セイバー自身、そんなことは分かっているつもりだった。
イリヤスフィールの目の前で士郎を殺したあの時から、アルトリア・ペンドラゴンとして生きる資格はないと、ただこの身を粉にしても贖罪のために尽くそうと思っていた。
そこに明確な自分としての意志は多くなかったことはわかっていた、はずだった。
今の自分に、理想を抱くことはできない、と。
イリヤスフィールの目の前で士郎を殺したあの時から、アルトリア・ペンドラゴンとして生きる資格はないと、ただこの身を粉にしても贖罪のために尽くそうと思っていた。
そこに明確な自分としての意志は多くなかったことはわかっていた、はずだった。
今の自分に、理想を抱くことはできない、と。
しかしいざこうして面と向かって言われたら、セイバーの胸に突き刺さるものがあったのも事実。
それもただ少し刃を交えただけの敵に言われれば、どうしても意識せざるを得なかった。
それもただ少し刃を交えただけの敵に言われれば、どうしても意識せざるを得なかった。
「しかし……ゼロ……。奴は一体…」
だが一方でどうしても気になることもあった。
戦いの最中、小さいものだがゼロが口にしたこと。
奴が自分の世界の人間ではないことは間桐邸での情報交換の中で知っている。ならば自分の望みを知っているはずはない。
戦いの最中、小さいものだがゼロが口にしたこと。
奴が自分の世界の人間ではないことは間桐邸での情報交換の中で知っている。ならば自分の望みを知っているはずはない。
一体あの男は、いや、あの存在は。
「何者だ…?」
◇
とある時代、とある場所に一つの島国が存在した。
大陸にあった帝国の崩壊と同時に、その庇護下にあったその国の力は衰え、異民族を始めとした様々な外敵に脅かされるようになった国。
大陸にあった帝国の崩壊と同時に、その庇護下にあったその国の力は衰え、異民族を始めとした様々な外敵に脅かされるようになった国。
そんな衰え続ける地を救う王を人々は求めてやまない、そんな時代。。
ある時一本の聖剣の前に立つ少女がいた。
『それを手にする前に、きちんと考えておいた方がいい。
それを手にしたが最後、君は人間ではなくなるよ。それだけじゃない。手にすればあらゆる人間に恨まれ、惨たらしい死を迎えるだろう』
それを手にしたが最後、君は人間ではなくなるよ。それだけじゃない。手にすればあらゆる人間に恨まれ、惨たらしい死を迎えるだろう』
魔術師は少女にそう問い掛けて、彼女の行動を思い留まらせようとした。
だが、彼女はそんな魔術師に向かって迷うことなく。
だが、彼女はそんな魔術師に向かって迷うことなく。
『多くの人が笑っていました。それはきっと、間違いではないと思います』
そう告げて剣を引き抜いた。
その日、島国・ブリテンという国に新しい王が生まれた。
◇
「なるほどな。あれが平行世界、ギアスの及ばぬ世界に済むアーサー・ペンドラゴンの一人、か」
ガウェインで浮遊して移動するゼロは呟く。
ゼロが異世界と呼ぶべきアルトリア・ペンドラゴンのことを認知している理由。
それはゼロ自身の持つ力、エデンバイタルとの接続が影響していた。
ゼロが異世界と呼ぶべきアルトリア・ペンドラゴンのことを認知している理由。
それはゼロ自身の持つ力、エデンバイタルとの接続が影響していた。
この場では接続が制限を受けていたことでエデンバイタルからの情報を引き出すことができなかった。
しかし放送の後で一つずつ開示されていくことを感じ取っていた。
現在二回まで放送が終わり、2つの世界が確認できるようになっている。その一つが彼女のいた世界だ。
しかし放送の後で一つずつ開示されていくことを感じ取っていた。
現在二回まで放送が終わり、2つの世界が確認できるようになっている。その一つが彼女のいた世界だ。
特に利用するつもりもなかったが、自分に支給されていた鞘、全て遠き理想郷。そしてあのセイバーという少女の存在。
それがゼロにエデンバイタルの接続を意識させた。
それがゼロにエデンバイタルの接続を意識させた。
アヴァロンは本来ゼロには不要なものではある。
本来の魔女の力に加えてコードを継承したことで肉体の耐久性、回復力は未だ健在。
しかしアヴァロンを用いれば更なる回復を望むことができる。
だが鞘はゼロを拒絶するかのように回復力を発揮させることはなかった。
取り込めばまだ可能性もあるのだろうが、発動しない点からも考えてこの肉体に埋め込むことに対して不確定要素があまりにも多い。
それでも木場に渡すこともなく手元に残しておいた理由は2つ。
いずれは戦うことになる相手にここまで強力な道具を渡す意味もないこと。
そしてブリテン由来の伝説の道具、という点に興味を惹かれるものがあり手元においておきたかったということ。
本来の魔女の力に加えてコードを継承したことで肉体の耐久性、回復力は未だ健在。
しかしアヴァロンを用いれば更なる回復を望むことができる。
だが鞘はゼロを拒絶するかのように回復力を発揮させることはなかった。
取り込めばまだ可能性もあるのだろうが、発動しない点からも考えてこの肉体に埋め込むことに対して不確定要素があまりにも多い。
それでも木場に渡すこともなく手元に残しておいた理由は2つ。
いずれは戦うことになる相手にここまで強力な道具を渡す意味もないこと。
そしてブリテン由来の伝説の道具、という点に興味を惹かれるものがあり手元においておきたかったということ。
「理想に準じた王、か。それがアーサー王物語に伝わる王の一つの形だというのなら、面白い。…が」
彼女がこの場に連れてこられるより以前の顛末はおおよそ把握できている。
サーヴァントという名目で過去から魂を呼び寄せられたこと。
そして戦いの中で、彼女は自分を失うほどの呪いを浴びて自身の理想に反する戦いを続けたこと。
だが、あそこにいるのはその黒化したアーサー・ペンドラゴンではない。それ以前の、正しく理想を追い求めていた時の彼女だ。
この場で何があったのかまでは知る由もないし、詳しく知りたいとも思わない。
サーヴァントという名目で過去から魂を呼び寄せられたこと。
そして戦いの中で、彼女は自分を失うほどの呪いを浴びて自身の理想に反する戦いを続けたこと。
だが、あそこにいるのはその黒化したアーサー・ペンドラゴンではない。それ以前の、正しく理想を追い求めていた時の彼女だ。
この場で何があったのかまでは知る由もないし、詳しく知りたいとも思わない。
体の傷をなぞるゼロ。
あの最後の一撃は確かにこの体に大きく傷を残していた。
時間をかければ治癒するとはいえ、もしあのまま戦いを続けていれば傷がすぐに治癒できない以上こちらが不利だっただろう。
故に今は一時撤退を選ぶことにした。
あの最後の一撃は確かにこの体に大きく傷を残していた。
時間をかければ治癒するとはいえ、もしあのまま戦いを続けていれば傷がすぐに治癒できない以上こちらが不利だっただろう。
故に今は一時撤退を選ぶことにした。
だが。
(もし貴様が本調子だったならば、あるいはこの命を奪えたかもしれないだろうに。鈍ったものだな)
その思考を占めるのは失望、しかしその中には一縷の期待も篭っていた。
「しかし、何故急にガウェインにかけられていた枷が解かれた?」
思考を切り替えた後、ゼロの意識に浮上したのは今自身の足下にあるナイトメアフレーム、ガウェインのことだった。
一度目の放送前に二度、その姿を出した際には飛行機能とハドロン砲を使用できず、巴マミや暁美ほむらといった相手に破壊される憂き目にあった。
故に今ガウェインを呼び出しても目眩まし以上の役割はなかったはず。だが呼び出した際に直感することができた。今のガウェインは先程かけられていた枷が緩んでいると。
一度目の放送前に二度、その姿を出した際には飛行機能とハドロン砲を使用できず、巴マミや暁美ほむらといった相手に破壊される憂き目にあった。
故に今ガウェインを呼び出しても目眩まし以上の役割はなかったはず。だが呼び出した際に直感することができた。今のガウェインは先程かけられていた枷が緩んでいると。
ハドロン砲は威力こそ落ちていたが放つことができ、飛行機能もこうして使用できている。
一度目の放送から今に至るまでの間に何かがあったというのだろうか。
もしかすればその何かしらが放送によって告げられるかもしれない。
もしかすればその何かしらが放送によって告げられるかもしれない。
思考を巡らせても答えは出ない問題だ。
ゼロはそれっきり思考を打ち切って空に目を向ける。
ゼロはそれっきり思考を打ち切って空に目を向ける。
「さて、放送の時間か」
その放送もそろそろだ。
この事実に関する情報があればよし、なければ考えられる範囲で考えるのみ。
この事実に関する情報があればよし、なければ考えられる範囲で考えるのみ。
その後は病院方面に向かったロロを迎えに行った後、木場の元へと向かうとしようか。
太陽が沈みつつある暗がりの空、エナジーウィングの光が小さく輝く中で。
18時を示す放送の音が鳴り始めた。
18時を示す放送の音が鳴り始めた。
【E-5/草原地帯/一日目 夕方】
【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(大)、右腕に切り傷(中:回復中)、肩から胸にかけて切り傷(大:回復中)、コード継承
[装備]:ガウェイン召喚中
[道具]:共通支給品一式、全て遠き理想郷@Fate/stay night、ランダム支給品0~2(本人確認済み、木場勇治も把握)
[思考・状況]
基本:参加者を全て殺害する(世界を混沌で活性化させる、魔王の役割を担う)
1:放送を聞いた後木場を追う。
2:木場と手を組むが、いずれ殺しあう
3:可能であるなら、今だけは木場のように同盟を組むに値する存在を探す
4:ロロ・ランペルージは己の駒として利用する、が………?
5:セイバーに若干の期待。いずれ決着をつける
[備考]
※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時
※第一回放送を聞き逃しましたが、木場勇治から情報を得ました
※C.C.よりコードを継承したため回復力が上がっています。また、(現時点では)ザ・ゼロの使用には影響が出ていない様子です
※制限緩和の影響によりガウェインのハドロン砲、飛行機能がある程度使用可能となっています
※放送を越えた影響による他作品の情報の一つはFate/stay nightの世界のものです。しかし必要以上にそれを見る気はないようです。
[状態]:疲労(大)、右腕に切り傷(中:回復中)、肩から胸にかけて切り傷(大:回復中)、コード継承
[装備]:ガウェイン召喚中
[道具]:共通支給品一式、全て遠き理想郷@Fate/stay night、ランダム支給品0~2(本人確認済み、木場勇治も把握)
[思考・状況]
基本:参加者を全て殺害する(世界を混沌で活性化させる、魔王の役割を担う)
1:放送を聞いた後木場を追う。
2:木場と手を組むが、いずれ殺しあう
3:可能であるなら、今だけは木場のように同盟を組むに値する存在を探す
4:ロロ・ランペルージは己の駒として利用する、が………?
5:セイバーに若干の期待。いずれ決着をつける
[備考]
※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時
※第一回放送を聞き逃しましたが、木場勇治から情報を得ました
※C.C.よりコードを継承したため回復力が上がっています。また、(現時点では)ザ・ゼロの使用には影響が出ていない様子です
※制限緩和の影響によりガウェインのハドロン砲、飛行機能がある程度使用可能となっています
※放送を越えた影響による他作品の情報の一つはFate/stay nightの世界のものです。しかし必要以上にそれを見る気はないようです。
【セイバー@Fate/stay night】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、魔力消費(大)、胸に打撲(大)
[装備]:スペツナズナイフ@現実
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:シロウの願いを継ぎ、桜とイリヤスフィールを守る
1:木場を追って真理を助ける。美遊や結花とも合流?
2:間桐桜を探す
3:約束された勝利の剣を探したい
4:ゼロとはいずれ決着をつけ、全て遠き理想郷も取り返す
[備考]
※破戒すべき全ての符によりアンリマユの呪縛から開放されセイバーへと戻りました
※枢木スザクの日本刀@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリーは破壊されました
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、魔力消費(大)、胸に打撲(大)
[装備]:スペツナズナイフ@現実
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:シロウの願いを継ぎ、桜とイリヤスフィールを守る
1:木場を追って真理を助ける。美遊や結花とも合流?
2:間桐桜を探す
3:約束された勝利の剣を探したい
4:ゼロとはいずれ決着をつけ、全て遠き理想郷も取り返す
[備考]
※破戒すべき全ての符によりアンリマユの呪縛から開放されセイバーへと戻りました
※枢木スザクの日本刀@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリーは破壊されました
| 133:神のいない世界の中で | 投下順に読む | 135:Guilty Girl |
| 時系列順に読む | ||
| 129:帝王のココロ | ゼロ | 140:パラダイス・ロスト |
| セイバー | 138:Saver of Revenger |