Why その理由

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Why その理由 ◆Z9iNYeY9a2


「さて少し考察をしてみましょうか。
 できればまどかさんとさやかさんの両名にも加わってもらったほうがいいです」

それはまだLが生きていた時、アヴァロンと斑鳩が目視距離に入る前の時間の話。

Lと月の間で広げられていた会話の中にまどかとさやかの二人も加えられての情報交換が始まった。

「でも、私達そんな難しいことは分からないと思うんですけど…」
「構いません、会話をしている中で気がついたことや率直な意見などが教えてもらえれば。
 今回は我々だけでは常識の範疇から逃れられないかもしれないので、少しでも意見の数は欲しいんです」

と、Lはどこかから持ち出したホワイトボードを4人の前に立てた。

「議題はずばり、今回の殺し合いの目的と、そこからこの舞台からの脱出方法の発見です」

そこに、黒いマーカーで目的、そして我々のすべきことと、それぞれボードの半分の空間を取るように書き記した。

「余談ですが推理を行う場合にはいくつか種類がありまして。例えば誰が犯行を行ったのか、どうやって犯行を行ったのか、何故犯行を行ったのか、と言ったような。
 探偵モノの小説でもよく語られている概念です。
 今回考える上で、誰が行ったのかは既に分かっています。どうやって行ったのかは逆に常識外の事象も多いため絞るのは困難でしょう。
 ですが、何故。この殺し合いを行った理由を考えることはできるでしょう。
 こういった推理は一般的には『Why done it』と呼ばれますが」
「ほえー…、Lさんまるで探偵みたい」
「…探偵なんです」

さやかの言葉に少しばかり落ち込みながらも話を進める。


「まず殺し合いの目的そのものですが、アカギ本人の望みはシロナさんから聞いています。
 『心のない新世界を作る』、これが彼の目的です。
 彼はこの理念の元にこの殺し合いを行っていると考えてもいいでしょう。無論彼がシロナさんの知っているアカギ本人であるということが条件となりますが」
「じゃあもしそうじゃなかったらどうなるんです?」
「材料がなくなって推理自体が停止します。考える中でその可能性が見える材料が発見されればいいですが、今は一旦それを考えるのは置いておきましょう」

さやかの質問に答えて、Lはボードの隅にあれがアカギではない場合、と書く。以降のことを考えていく際に忘れないためだろう。

「それともう一つ、彼に対する協力者ですが。月君はあの先の放送者についての情報を持っているんですよね。
 改めて説明してもらってもいいですか?」
「ああ。分かった。これは一緒にいたあの仮面の男、枢木スザクから聞いた話だが」

月は、スザクから聞いたこと、アーニャ・アールストレイム、真の名をマリアンヌ・ヴィ・ブリタニア、そしてその上にいるであろうシャルル・ジ・ブリタニアという男についてを語る。

「嘘のない世界、ですか。ある意味ではアカギの目的とも通じるものがあるように思いますね」
「彼らはスザク達がその集合知の世界で消滅させたということらしい。その彼らが蘇ってアカギに力を貸しているんじゃないかとも」
「ふむ、興味深いですが、彼らの最終目的についてはこの辺りで一旦止めておくべきでしょうね。
 では次の議題です。この目的のために何故殺し合いなのかという点です」

言いながらボードに次々と話し合いの中で出た情報が綴られていく。


「シロナさん曰く、アカギが手にしようとした力は実際に世界を作ることを可能にするものであるというらしいです。
 そこに更に協力者までいて、何故その力で真っ先に世界を作らなかったのか」
「それは、それを止めようとしたシロナさん達に対する復讐もある、とか?」
「復讐が目的ならばまずアカギの野望を阻止したという人間がこの場にいないのは不自然です。
 いない理由を考えることもできますが、今はそうではない可能性から考えていきましょう」
「…そういえば」

と、月は記憶を手繰り寄せているかのように呟く。

「これは村上経由で見た情報なんだが、オルフェノクの王というものが彼の世界にいるらしいんだが。
 その存在は『九死に一生を得た子供』の中から生まれるものらしいんだ」
「九死に一生を得た子供、ですか」
「ああ、理屈は分からないが」
「私もセイバーさんや皆さんが集まったあの屋敷で得たものがあります。
 聖杯戦争という過去の英雄を呼び寄せての魔術師の競い合い…、いえ、殺し合いというものがあるらしいです。
 勝者は万能の願望機である聖杯を使うことでどんな願いも叶えられる、とのことです。こちらも裏がある様子ですが、そこに詳しい人からは話を聞けませんでした」


「日本古来には蜘蛛や百足などといった多数の有毒、肉食の虫を同じ壺に入れて共食いをさせ、最後に残った一匹を呪術に使うという呪いが存在すると言い伝えられています。
 おそらくですが、この殺し合い自体もそういった類のものなのでしょう」
「…あの、でもだったらどうして私みたいな戦えない人とか、あとLさんや他の皆さんみたいな人を殺さないって人を入れてるんでしょう?」
「確かにそうですね。本当に殺し合いをさせたければ、それこそ北崎さんのような戦闘狂をたくさん集めてくればいい。
 我々のような存在を入れてしまえば逆に破綻する可能性が高くなる。
 そこに殺し合いの理由があるんじゃないかって私は見ています」

ですが、とボードに別の丸を分けたグループのように記載するL。

「現状ではこれ以上のことは発展させられません。なので少しアプローチを変えて考えてみたいと思います。
 月くん」
「何だ」
「もし月くんがアカギのように、新世界を作るのに必要であるからこのような殺し合いを開くことになった場合、どうしますか?」
「………。お前、それ僕に聞かなきゃいけないことか?」
「ええ、私達には動機が仮想できないので。その点月くんであれば過去の経験から想像はしやすいでしょう?
 それにほら、ちょうど同じ新世界の神ですし」
「お前……、はあ、分かったよ。ちょっと想像だけしてみるさ」

反論する時間が惜しいと思った月はそれ以上言うのを諦め、顎下に手を当てて考え始めた。



「まあそうだな、まず場所だが。当然警察みたいな外部の手が及ばないような場所を選ぶだろうな。
 僕の想像ができる範囲なら、電波の届かない孤島とかが適当か。
 人は、まあキラとしての僕だったならさっきも言ったように犯罪者か、死刑囚とかを選んだだろうな。
 あとは僕たちがその島の様子を監視できる、かつ他の参加者の手にかからないような場所も必要だ。
 電波が届かない孤島だと仮定した場合、大型船か今乗ってるような飛行船とかになるだろう」

ひっくり返したボードに、Lが月の話した内容を次々と記載していく。

「そういえばこの首につけられた刻印は要するに鎖だろうな。生死の管理もこれで行っているんだろう。
 ただ僕の発想なら例えば首とか心臓付近に爆弾をつけるとか程度しか浮かばないだろうな。ノートでもそこまで複雑な指定はできそうにないし。
 …でもそういえばどうしてわざわざこんな手の混んだ鎖をつけたんだ?
 この縛り自体に目的があるのか…?」

ふと先程Lと共にまとめた情報を探る月。

「L、君の考えだと、この殺し合いは殺しに乗らない者が反抗の機を伺うことも想定の内と見られてるって言っていたよな?」
「ええ、それが何か?」
「例えばだが。もしもさっき言った殺し合いの動機が、蠱毒のような僕たちの知識を越えたものだったとしよう。
 だとすると、そこには何かしらの超自然的な力がどこかに発生して集まっているか集められているかしているんじゃないかって思う」
「なるほど」
「じゃあそれがどこに集められているのかを考えた時、大きく2つに分けられると思う。
 この空間の中か、あるいは外かだ」

参加者の中に蓄積されるのか、それともそれ以外の場所に蓄えられるものなのか。
そこまでは分からないが、会場の中か外かの二択は動かないはずだ。

「そしてもしみんなの中に蓄積されるものだとしても、この刻印が作用している可能性は高い」
「カレイドルビーさん曰く、この刻印はどこかに発生源となるものが存在しているはずということでしたが」
「もし僕がそれを会場の外か中かのどちらに置くかと言われたら、…いや、どっちだろうな。
 さっきの僕の仮定の話だと、破壊されるか逆探知されるかのどっちかのリスクを選ぶかということになるが」
「そこから考えると、会場の外からだと私は思いますがね。
 中に設置してわざわざそれを参加者の希望とする必要がない」

更に考えるように黙り込む月とL。

数秒の沈黙が空間を支配した頃だった。


「あの」

それまで話に加われてなかった少女が手を上げた。

「どうしましたかまどかさん」
「わざと、ってことはないですか?」

会話の中で出てきた希望という単語が、ふとまどかの中で一つの考えを思いつかせた。

「以前キュゥべえが言ってたんです。感情をエネルギーにして集める時、一番効率がいいのは、希望と絶望の、えっと、そうてんい…だったかな…、だって」
「相転移ですね。なるほど、言いたいことは分かりました。
 希望と絶望ですか、確かに希望がなければ絶望による振れ幅も大きくはならない。
 つまり本当にここから抜け出す手段となり得るものを置いてこそ、希望足り得るんじゃないかと」
「はい、たぶんそんな感じです」
「えっと…、どういうことですか?」
「さやかさん、分かりやすく例えるなら。
 -3と3の差は6ですよね。これをもし0からスタートした場合、同じ数値を出すのに6の力が必要になります。
 もし上限が決まっているなら、マイナス側から始めた方が大きな数値を得やすいでしょう?」
「うーん、分かるような納得できないような…」

眉をしかめながら首を傾けるさやか。
そんな少女から視線を外してLは話を進める。

「そうなるとやはりその候補として上がってくるのがポケモン城ですね」
「だけど仮に希望を残すとしてもそれは当然簡単に乗り越えられるものではないだろうな。僕ならそうする」
「ポケモン城が罠である可能性も低くはない。本命は他にあることも十分考えられる。
 それに聞いた情報から見れば、そこにも警備が引かれている。ある程度の戦力は当然必要でしょうね。
 向かう前に改めて、他の方達との合流を目指すべきでしょう」
「そうだな。今のところはメロの残した様子の情報とも照らし合わせて、もう少し考えてみよう」


斑鳩の接近による戦いが繰り広げられたのは、このしばらく後だった。





「と、ここまでがLと話した内容だ」
『ふむふむ、興味深い話ですね』
「加えてアリスが遭遇したというキュゥべえの件もある。
 もし何か考えられることがあるなら教えてほしいところだけど」

通信機ごしにルビーと話す月。
今会話をしているのはこの一人と一本だけだった。
他のメンバーは皆外に出ている。


『魔術的なことをいうとするなら、これだけの大掛かりな術を行う場合だと、相応の術式が必要になるんですよね。
 つまり行えるだけの魔術的な効率がよくて、その術式を組み込めるだけの広い空間のある場所を選ぶ必要があるんです』
「心当たりはあるのか?」
『セイバーさん経由の情報だったのですが。
 この会場にある柳洞寺、あれは元々の世界では優れた龍脈を持った土地だったらしく。
 ここでもそんな扱いなのかどうかは行ってみないと分かりませんが』
「ふむ、となるとポケモン城とどちらかということになるか?」
『あるいは両方とも、ということも有り得ます。
 そちらとこちら、現状だとメンバー的には戦力は足りてますかね?』
「正直なところ、こちらは戦艦とNのポケモン達とアリスが戦力といったところだ。
 だが城に入るとなれば戦艦は小回りが効かない。少し調整を頼みたいんだが」
『分かりました。じゃあ皆が集まったらその辺も相談しようと思います』
「頼んだ。それとNが言うにはニャースがそちらに向かっているかもしれないらしい。
 もし来たなら頼みたいと思う」
『はいは~い、っと。
 ところで、もう少し通信に付き合っていただいてもいいでしょうか?』
「何だ?」

通信機の向こうで、羽のような形の体を小さく動かしながら、ルビーは言った。

『今私の探査機が魔力反応の揺らぎを感知しました。
 桜さんが目を覚ましたようです』


【E-6/アヴァロン/二日目 深夜】

【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:疲労(特大)、右頬に大きな裂傷(応急処置済) 、視力にダメージ(平時には影響無し)
[服装]:ビジネススーツ(汚れ、血の跡有り)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本:キラではない、夜神月として生きてみたい
1:今後のことについて皆と相談する(ポケモン城に向かう人員の確認)
2:Lの代わりとして恥じないように生きる
3:間桐桜から話を聞く
[備考]
※死亡後からの参戦


162:星が降るユメ 投下順に読む
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