星が降るユメ

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星が降るユメ ◆Z9iNYeY9a2


放送の響き渡った後の、激戦の後を感じさせる森林地帯。
木々は焼け落ち、あるいは溶け落ちたかのように形を保てず崩れ落ちている。
地面は巨大な怪物が暴れた跡が残り、あちこちの地面が大きく抉れている。

そんな場所を、牛歩のような速度で歩みを進める者がいた。

『乾さん!ファイトですよ!!もっと速く!!』
「うるせえ!これでも急いでんだよ!これ以上は無理だろ!」

背に桜の体を、もう片腕でイリヤの体を抱えた状態で歩を進める乾巧。

放送を聞き、ゼロの死を確認。
当初に予定した他の皆が集まるべき場所として行くべきだろうと、今彼らは遊園地へと向けて進んでいた。

(草加…、さやか…、セイバー…)

しかし巧の心境は決して穏やかではなかった。
元々の仲間の中で最後の一人であった男、ともに戦った少女達。
放送で名を呼ばれた数は決して少なくなかった。

放送の直前、遊園地の方角から巨大な光の柱が立ち上るのを見た。
それはルビーが言うには宝具、強力な武器を使ったものがいるということで。
そしてそれを使える者、何よりその光を放ちうる者が遊園地には残っていたという。

ルビーいわく、もしその光をもって戦いを終わらせられ、結果ゼロの名が呼ばれたのだとすれば。
現在のあの場には大きな驚異はいないはずだ。

『まあとはいえ、私達が出発する前の状況と照らし合わせての話です。
 もしまだ何か残っているようだったら死ぬ気で逃げてくださいね』

とのことだったが、今の状況ですら息も絶え絶えなのにこれ以上急ぐとかふざけんなと心中で思いつつ。
他に選択肢や向かう場所もないため結局ルビーに従うしかなかったのだが。

やがて歩みを進める中で、ひっそりと佇む一軒の建物が視界に入った。

「おい、ちょっと休ませろ」
『えー、早くしないと遊園地禁止エリアになっちゃうんですよ~』
「ちょっとだけだよ。水飲んで一息ついたら出るから」

建物に入り、電気をつける。
中はショップのようで様々な商品の棚が見えるが、多くの人がすでに寄ったようでところどころの空きがかなり多い。

辺りを見回していると、ルビーがショップの中から見つけてきた布を敷く。
その上にイリヤと桜を横たえた巧は、背を壁に預けて座り込む。

バッグからペットボトルを開き、水を口に含む。

「はぁ…」

放送が始まるまでは待機時間であり肉体的に休んではいたものだったが、放送の内容を気にしていたため気は休まらず。
そこから放送を終えて一息ついたところで、襲いかかってきたのは虚無感だった。

もしあそこで美樹さやかやセイバー達と離れず留まっていれば、彼女達を守りながら戦うことができたのだろうか。
それにゼロはきっと木場を殺している。もしできることなら、自分の手でケリをつけたい相手でもあった。

『言っておきますが、もしあの時離れなかったら皆さんのこと守れたんじゃないか、とかは禁句ですよ。
 セイバーさん達はあの泥と相性が悪いんで、下手に二人を近寄らせたら黒い時のセイバーさんとか、あと巴マミさんの時みたいなことが再現されたかもしれないです。
 それに、あの遊園地の場にゼロに加えて間桐桜さんまでやってきてたら、もうシッチャカメッチャカですよ。もっと酷くなってたかもしれないです』
「うっせえ、分かってんだよそんなことは」

ルビーの言っていることは最もだ。
間違っていないからこそ、どこか腹立たしい。ルビーに対してではなく、こんな自分に対して。

そんな時、巧の聴覚が何かの音を確認した。
空気の中に混じる小さな機械音のようなもの。何かの乗り物のようなその音は、音から連想される速さと比べてゆっくりと進んでいる様子だ。


『おや、何か来ますね』

ルビーも気付いたようで、それを確認するために窓から外を覗いた。

「おい…!敵だったらどうするんだよ…!」

その音が巧に連想させたものは、かつて巴マミと別れた際に戦った金色のロボットの姿。
あれが何だったのか、そして誰が操っていたものかを未だに把握していない巧にとって安心できるものではなかった。

『あ、いえ。おそらく大丈夫です。あれは味方でしょう』

しかしルビーはそういって窓を開放。
どこからともなく取り出したライトを上に向けてちかちかと点灯させた。


やがて、光を追うようにやってきたその姿。

片腕が破損し、脚部にも破壊痕が目立ち、胸部にも大きな穴を開け中にいるものの姿が吹きさらしに近い状態となった、白いロボット。


『うっへぇ、随分と派手にやられましたね…』

激戦を思わせるその体の損傷に思わず呟くルビー。
その眼前でロボットは座り込み、その背にあるコンテナ状の何かが機動する。

開いたコンテナ状の何か、コックピットから姿を見せたのは、茶色い髪の少年。

「初めまして、枢木スザクだ」




同刻、放送が鳴り響いた頃のアヴァロン艦内。

放送半ば、これから禁止エリアについて流されようとしたタイミングで、艦橋から飛び出していった者が一人いた。

「月さん!!」

まどかの呼ぶ声も届かぬかのように、艦内を走り抜けていく月。
どこに向かおうとしているのかは分かっている。こうなることも予期していたものだ。

「ボクが追おう。君たちはここにいてくれ」

名乗りを上げたのは、あの戦いの後アヴァロンに着艦したNだった。


「私の方が早く追いつけるけど?」
「別にそこまで一刻を争っているわけじゃない。
 それに、そこの彼女もきっと彼と同じ心境のはずだ。出会ってすぐのボクよりは君がいてあげた方がいいだろう」

体の調子もだいぶ戻ってきたアリスが追うことを提案するが、そこまで急ぐわけでもないと、まどかのことを任せて走っていった。

「……言わなくて大丈夫、だったんですよね…?」

そう問いかけたのはまどかだった。


「Lさんが、別れる前に月さんには言わないでってジェスチャーをしてたから…。
 だけどそれって月さんにとって後回しにしただけだったんじゃないかって…」
「あの反応を見る限りなら、彼の判断は正しいわよ。
 さっきまでは非常事態だったんだもの。主柱になるような人がガタガタの心だったら、きっとあの戦いで全滅してたわ」

実際、月は必死に敵艦からの攻撃を、障壁操作や戦艦操舵で捌いていた。
まどかや織莉子は元より、アリスであってもここまで対応はできなかっただろう。もっと艦はボロボロだったかもしれない。

Lの判断はおそらく正しかったし、だからこそここまで隠しきったのだ。

「それで、あなたは大丈夫なの?」
「………」

涙はもう出なかった。放送が始まるまでの間、ずっと泣いていたような気がしたから。

ふと手の中にある小さな石を見る。
Nが渡してきたグリーフシード。かつて親友だったもので、彼女がいたことを示す唯一の証。


「今は、たぶん大丈夫です。でももうちょっと、気持ちの整理は必要かもしれないです…」

二人が出ていった先の道を見ながら、まどかはそう呟いていた。





目の前で眠っている男。
その表情は、最後に会話をした時に見たそれと寸分違わぬものだった。

背中と、それをもたれかからせていた壁を真っ赤に染めている様子を除けば。

「おい、L」

呼びかける。
返答はない。
目を覚ます気配もない。

「起きろよ、L!!」

体に触れる。
体温の抜けた体は、驚くほど冷たかった。

「なあおい、以前俺がお前を殺したって時の仕返しなんだろ…、ちょっと驚かそうとしてるだけなんだろ…!
 起きろよ…、起きてくれよ…!!」

動かぬ体を握りしめながら泣き崩れる月。

もしこの場に彼の正体と所業を知ったものがいれば偽りの姿にも見えたかもしれないその嗚咽は、しかし今の月には紛れもなく真実の姿だった。

「ようやく…ようやくお前に償いができると思ったんだ…、ようやく、ただの月としてお前と同じ場所が歩けるんじゃないかって思ったんだ…!!
 なのに、何で……!」

父の、夜神総一郎の二度目の死を目の当たりにした時は流れなかった涙が、こんなにも流れてくる。

悲しみと、何よりあの時気付かなかった自分に対しての悔しさで声が漏れ続ける。
カイザに斬りつけられた頬の傷が開き血が垂れてきても、その声は響き続けた。



そんな月の後ろに、Nは立っていた。

「彼は君にとって、友達だったのかい?」

ふとそんなことをNは問いかけていた。

「……、君はたしか、N、だったか」
「ああ」

若干その名に対して癪なものを感じながら顔を拭う月。
会って間もない相手なこともあって、自身の弱みを見せることに抵抗を感じて、一旦心を鎮めようと努めた。

「友達、そうだな、昔はそんな関係じゃなかったと思う。だけどこれから先、そんな関係になれたらいいって思ってた相手だ」
「そうか」

静かに、Lの亡骸の前で黙祷するように目を閉じるN。

「少し休むといい。君が落ち着くまでの間はボクが君の役割を受け持とう」

おそらく気を遣っているのだろう。Nは静かに立ち去っていく。


そうして数歩進んだところだった。

「待て」

背後から追いついた月の手が、Nの肩を掴んだ。

「僕の代わりをするっていうのはそう簡単にできることじゃない。
 何しろ僕は、Lからその名前を受け継いだ男なんだから。並大抵のやつじゃ、その役割は果たせないさ」


Nの横を通り過ぎて前を行こうとする月。

(昔お前は俺が負けず嫌いだって言ってたけど、そこはどうしても変わらないらしいな)

気持ちは落ち着いていない。悔しさで頭がどうにかなりそうだ。
だけど、自分に課せられた役割を他人に任せて泣いている自分が許容できるほど敗北者にはなれないみたいだった。


(お前がいなくても、やらなきゃいけないことは変わらないんだ。そうだよな、L)


涙を拭ったその顔はまだ赤く腫れていた。
しかし、瞳は前を向こうとしていた。

その姿にNは小さく笑みを浮かべ、動かぬLの体を抱き上げてその後を追った。





ランスロットに連れられて戻った4人。

眠り続けるイリヤと桜を休憩室のスペースに横たえた後、巧は自分を乗せてきたその機人をじっと見つめていた。


「これがどうかしたかい?」
「…いや、ちょっとこれに似たやつに嫌な思い出がな。
 あの時は金ピカに光るやつだったけど、それに襲われたことがあったからな」
「金色…、ヴィンセントか」
「知ってんのか?」
「ああ、ロロ・ヴィ・ブリタニアっていう名前の男のナイトメアフレーム…、人型機動兵器だ。
 僕の親友と同じ顔をしていて、それを活かしてこの殺し合いの中でも他の者を陥れようと暗躍していたみたいだった」

巧の脳裏に思い出す、マミがルルーシュと呼んだ男の姿。
状況が全く分かっていなかったが、想像するにあの時にはおそらく騙されていたのだろう。

「そいつは…、あんたがやったのか?」
「ああ、C.C.という仲間と、あと巴マミと一緒に倒した」
「……そうか」

自分の知らない間の巴マミの動向に思いを馳せる巧。
あの時何が起こったのか、何があったのかはぼんやりとしか分からなかったが、彼女の背負った重荷の一つは乗り越えられていた事実に少しだけ安堵した。


「…ん……、ここは…」

その頃目を覚ましたイリヤは状況把握のために周囲を見回しながら起き上がった。
体の痛みに顔を顰めながら歩き出し外に出ると、ルビーが飛び寄ってきた。

『イリヤさん、起きられましたか』
「あ、ここは…、私達戻ってきたんだ…。
 桜さんは?」
『別室で眠られています。諸々のダメージは大きいですが、命に別状はないみたいです。安心してください』
「そう…、よかった…」

ほっと息を撫で下ろしたイリヤ。

『というかイリヤさんのダメージも大概なんですよ。
 日常での支障にはならない程度には回復させましたけど』
「さっきから体が痛いのって、そういうことだったんだ…」
『あんな無茶はあの時限りです。
 ともあれイリヤさんは少し休んでいてください。おそらく来るでしょう次の戦いまではしばらく時間がありますし』
「………あの時限り……?」

ルビーの言葉に引っかかるものを感じたイリヤは、周囲を見回す。

『どうかしましたか?』
「ねえ、サファイアは?私のバッグにもいないみたいなんだけど」
『……サファイアちゃんは―――』


「…繋がったな」

その頃、ランスロットのコックピットで機材を触れていたスザクはモニターに反応を確認する。

「こちら枢木スザク、アヴァロン、応答願う!」
『――ク、――ァロン、こちらアヴァロン』

距離もあるしこの会場で使えるかどうかも分からない。
一か八かというところだったが、どうやらアヴァロンとの回線は生きていたらしい。

「月か」
『無事だったか、スザ……それが君の素顔か』

モニタに顔が映る。
その顔はスザクがしばらく共にいた男の顔だったが、片頬には大きなガーゼと包帯をつけていた。

「そっちも随分とやられたみたいだね」
『ああ、だがどうにか生きてるさ。
 そっちには皆揃っているか?情報交換がしたい』
「分かった。巧、イリヤスフィール、来てくれ。
 たぶん積もる話もあるだろうし、まとめて話しておきたい」

そうして巧と、イリヤの代理としてやってきたルビーと共に情報交換が始まった。



『大丈夫ですか乾さん?』
「……大丈夫だ、気にすんな。
 だけど、ちょっと一人にさせてくれ」

顔をしかめながらランスロット、正確に言えばその機材にケーブルを繋いで映像を中継していたルビーから離れていく巧。

情報交換の中で出てきた草加雅人のこと、そしてその最期を聞かされて、強いショックを受けていた。

『やっぱりきついでしょうねぇ。仲間が操られていて、皆さんに襲いかかってきたなんて』

草加雅人のことだけではないだろう。
情報交換の中で、セイバーのこと、美樹さやかのこと、その全てが巧の耳にも届いていた。

「イリヤスフィールは大丈夫なのか?彼女もだいぶショックを受けていた様子だったけど」
『まあ、こればっかりは時間の解決を望むしかないですかねぇ』

サファイアが壊れた理由の一端に関与している自分がイリヤの傍で何か言葉を言うべきではないと思ったルビーは、一人になりたいと出ていったイリヤに付き従うことなく情報交換についていた。

『こっちも色々あったからな。話の途中で次々に外に出ていって、ここで今君の話を聞いているのは僕だけだ』

モニタの向こうに映っているのは月のみ。
だが彼がいれば情報交換や考察は滞りなく行えるだろう。

「……一ついいか、月」
『何だ』
「僕はあまり入り組んだ考察は得意じゃない。それと君と僕は、顔を合わせるのは初めてだがそれなりに知った仲だ」
『そうなるな。少しは君が何を考えてるかは察せるくらいには』
「なら話が早いな」

振り返って、傍にいたルビーに目を向けるスザク。

「頼めるか?」
『人使いが荒いですね~。まあ、イリヤさんに関わることでもありますし、ちょっとこちらからもお願いさせてもらいましょうかね』



遊園地の芝生の上に座り込んで空を見上げているイリヤ。

視界に映る夜闇の空には多くの星が見える。
大きく輝いて見えるもの、小さく光るもの。分かるものが見ればその星々の中から星座を見つけられたかもしれない。

その一つ一つが、何だか散っていった皆のようにも見えた。

ふと気がついて横を見ると、2メートルほど離れた場所で巧が仰向けに寝転がって空を見上げていた。
互いに物思いに耽ていたせいか、その時まで存在に気付かなかった。

見た瞬間目が合い、思わず問いかけていた。

「…巧さん、サファイアは何か言ってました?」
「………。お前のせいじゃない、やるって決めたのは自分だから、気負うなって」
「そうですか…」

それだけ聞いて、しばらく沈黙の時が続いていった。


「正直、ここまで草加のやつが死ぬことにショック受けるなんて、俺自身驚いてんだよな」

やがてふと、巧はポツリと呟いた。

「……」
「俺みたいなオルフェノクは、一回死んで生き返ってんだ。だから死ぬってのがどんなものかは知ってる。でも死んだらどこに行くのかは分からない。
 みんなどこに行くのかも、それに俺たちが何をしてやれるのかも、何も分からないんだよ。
 なあ、お前だとどこに行くと思う?」
「…私には、分からないです。
 でも、これだけは分かる。それでも私達は生きなきゃいけないんだってことだけは」
「それでも、か」
「ああ、その通りだ」

やがてそこにスザクもやってきた。
寝転がることなく、地に足をつけたまま空を見上げている。

「情報交換の方ならあのステッキがやってくれている。
 少し様子が気になったからね。この顔をここで出した時間もそんなにないし、少しは話をしておこうと思って」
「そうか。
 ……あんたも、色々失ってきたのか?」

空を見るスザクの瞳の中に大きな虚無にも思えるものを見た巧はそう聞いていた。

「まあ、色々ね。自分の信じる道が正しいと戦ってきて、色んなものをねじ伏せてきて、その代償のように大切なものもたくさん失ってきた。
 あの仮面も、名も存在も全て捨てるっていう償いだったんだ」
「辛くはねえのか?」
「辛い、か。最初に大切なものを亡くした時が一番辛かったかな。
 そこからは、たぶん心が凍りついてたのかもしれない。悲しくはあったが、その時ほど辛くはなかった」

夜空を見ていた視線を巧へ向けて下ろすスザク。

「たぶんどこか間違ってると思いながらも進んでいた自分への罰だって思ってたのかもしれない。
 そういう意味だと、道を間違えることなく戦ってきたんだろうあなたのことは、ある意味では羨ましいと思う」

巧の失ったものへの後悔は自分の進んできた道を真っ直ぐに信じていたからだろうと、そう感じたスザクはそんな風に思った。

「以前あるやつに聞かれたことがあるんだ。『戦うことで何かを守れることがあると思うか』って。
 その時は答えられなかった。その後ちょっとしたら答えが見えた気がしたけど、結局迷ってた。
 あの時は10年後に生きてたら答えるって言ったんだけど、結局今でも分かんねえ」
「…10年も、戦うつもりなんですか?」
「さあな。俺にも答えが分かんなかったから、ただの方便だ」
「じゃあ聞き方を変えるけど、戦いを止めようとは思わないんですか?」

10年は嘘だとしても、戦いを止めるという選択肢はないのだろうか。そうイリヤは思っていた。
巧の背負ったものは想像でしか分からないが、それでも守ってきたものを考えれば逃げて責められるようなものではないはずだ。

「止めたいって何度も思ったんだけどな。守れなくて手から零れ落ちたもののことがどうしてもつっかえてんだよ。
 俺が戦わなきゃ、誰かが死ぬって思ったら気がついたらいつもこの手にベルトがあるんだよ」

上に掲げた手を目をやる巧の声は、イリヤには何かに怯えているようにも思えた。


「…『この先を生きるべきは生きて未来を持つ君のような者たちだ』、あの剣士の少女はそう言っていた。
 それが今こうして生きている僕たちの、責任……、いや、僕たちへの願いなのかもしれない」
「重いんだよな…、そういうの」

息を大きくつきながら起き上がる巧。

「…俺にとっては死ぬことよりも、失うことの方が怖いんだよ」

そう告げる巧の言葉に。
巧の背負ったものの一部を共に背負い、そして巧にも守られた者であるイリヤは、どう告げるべきか分からなかった。

皆が見上げた視線の先で、静かに星は輝き続けていた。




時を同じ頃。
上空高くを飛ぶアヴァロンの艦内。
その中で外の光景が見えるガラス張りになった一室で、巧達と同じ夜空を一人の少女が見ていた。

「………」

少女、鹿目まどかはグリーフシードを手に握ったままこの数時間で起こったことをどう飲み込むべきなのかと失った人々への思いを馳せていた。

(どうして、私は生きてるんだろう?
 ――どうして、私なんだろう?)

死ぬ状況は何度もあった。
その中で何度も助けられてきた。
そして、助けられた回数だけ、人が死んでいった。

シロナも、美遊も、草加雅人も、Lも、織莉子も、さやかも。

草加雅人の最期を話した時の、乾巧の苦しそうな表情がまどかの頭の中から離れなかった。

考えないようにしたいと思って星を見ていると、その星々が皆の顔にも見えてきてしまう。

じっとうずくまるまどか。
やがてその隣に、二人の人影が近づいてきた。

「隣、いい?」

まどかの右隣に座り込んだのはアリスで。
その右で立ったまま外を眺めているのはNだった。

「アリスちゃん、Nさん…」
「本当は向こうで一緒に考察するべきだったのかもしれないけどね。ちょっと表情に出てたらしい。
 あとのことは月が聞いておくから外に出てろって追い出されてね」

肩を竦めるN。その表情はどことなく悲しそうだった。

「君たちが許せないって思う気持ちは理解できる。憎む気持ちも」

前の空を見ながら、遠い目をして呟くN。

「ボクにとって、世界は狭い部屋の中と人間を憎むポケモンの声だけだった。
 思えばあれも意図したものだったのかもしれないし、全て彼の掌の上だったのかもしれない。
 だけど、それでもボクにとってゲーチスは父親だったんだ」

もしかすればいつかは分かり合えたのだろうかという望みも、斑鳩を特攻させようとした悪あがきを見た時点で決して分かり合えないのだと思い知らされた。
それでも可能性を信じたいという気持ちは今でもあった。

「美樹さやかは、強くなったと思う。それは君のような友達がいたからじゃないかともね」
「…そんな強さなんて、いらないんです。
 たださやかちゃんとは、いつもと同じように学校に行って、一緒に笑って、そんな当たり前に過ごしていければよかったんです。
 強くなったなんて、言われても全然嬉しくないんです…」
「………」

ただ一人の少女であればよかったと言うまどかに対し。
魔法少女として、戦士としての美樹さやかしか知らないNにはそれ以上の言葉をつげることはできなかった。

「私もね、前に言ったけど大事な友達、守れずに死なせちゃったんだ」

沈黙の中で言葉を繋げたのは、まどかの隣にいたアリスだった。

「そうならないために、一生懸命強くなって、あの子を守れるようになりたいって思ってたのに。
 実はあの子が私より強い力を持ってて。でもそのせいであんなことになって。
 結局伸ばした手は届いたんだけど、間に合わなかった」

アリスの友、ナナリーのことは聞いていた。
しかしその中にあった思いを聞くのは、まどかは初めてだった。

静かにアリスの言葉に耳を傾けるまどか。

「もしあの時一人だったら、頭の中堂々巡りになってただろうからさ。
 ほむらがあそこにいてくれて、だいぶ助けられたところもあった気がするんだ」

そのほむらも結局目の前で死んでいったけどね、と小さく付け加えるアリス。

「私にはまどかの気持ちが分かる、なんて言えないかもしれない。
 もしかしたらさやかって子の気持ちの方が分かるかもしれない。
 もしあなたのことが守れなかったら、きっと私と同じ気持ちを背負ったんじゃないかって思っちゃうから」
「アリスちゃん…」
「だいたい、そんなこと言ってたら私なんて敗残兵みたいなものだからね。
 何もできない間に友達を二度も失って、さっきの戦いでもあの男達にいいようにあしらわれてボロ負けして、恥を晒しながら生きてるんだから」

おどけるような口調で話すアリスだか、その言葉の裏の悲壮感を隠せないでいることに気付かぬのは本人だけだった。

「君は、そうまでして生きることに希望を持っているのかい?」

それでも後ろを向いてはいない少女に向けて、Nは問いかけていた。

「ええ。持っているわ」
「そうか」

何を、とは敢えて聞かなかった。
それはきっと彼女自身が胸にしまっておくべきものだと思ったから。

「…二人は、自分が生きてることに意味があるって、思いますか?」

ずっと守られてきた、そしてその人を一人ずつ失ってきたまどか。
自分の生に自信が持てなかった彼女だからこそ、今この意味を確認したいと思いそう問いかけていた。


「意味、もし私にあるとしたら、たぶんその希望のためなんだって思うのよね。
 例え儚い望みだったとしても、それに縋って生き続けることが私がここにいる意味だってね」

ナナリーの騎士としての、ナナリーとの再会。
口にこそしなかったが、それがアリスが今のアリスたらしめている望み。

そのために自分は生きているのだと。

「ボクは、正直分からない。これまで生きてきた道が嘘に塗り固められたものだって思い知らされた。
 願いも全部、ゲーチスに植え付けられた都合のいいものだった。
 だけど、ボクが見て、感じたことは確かな真実だった。
 生きている意味、それはその中から見つけたいって思う」

生きる意味、それを見つけるために生きたいと。
本当の願いを見つけたいと。
今のNにとっては、それが生きる意味だった。

「………」

それらの言葉を聞きながら、まどかは真っ直ぐと、外の夜闇を見続けていた。

月と星々が、小さく光り続ける夜空を。




そうして生き残った皆が、それでも少しずつ前に進もうとしている頃。

静寂の中で一人眠っていた少女は、静かにその虚無の瞳を開いていった。


【C-5/遊園地/二日目 深夜】


【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、皆の死に対する強い悔恨
[装備]:ファイズギア一式(ドライバー、フォン、ポインター、ショット、アクセル)@仮面ライダー555 、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品、クラスカード(ライダー(使用制限中))@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード(黒騎士のバーサーカー(使用制限中))、サファイアの破片
[思考・状況]
基本:ファイズとして、生きて戦い続ける
1:情報交換の結果に合わせて動く
2:見知った人や仲間がいなくなっていくことに対する喪失感
[備考]




【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(特大)、全身にダメージ(大)、ツヴァイフォーム使用による全身の負荷(回復中)、クロ帰還による魔力総量増大
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター(使用制限中))(ランサー(使用制限中))(アサシン(使用制限中))(アーチャー(使用制限中))@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:皆と共に絶対に帰る
1:サファイア…、美遊…
2:体が痛い…
[備考]



【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:「生きろ」ギアス継続中、疲労(大)、両足に軽い凍傷、腕や足に火傷
[服装]:ゼロの衣装(マントと仮面無し)@コードギアス 反逆のルルーシュ
[装備]:ランスロット・アルビオン(右足・ランドスピナー破損、右腕破損、胸部貫通)@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、スタングレネード(残り2)@現実
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:この場でだけ枢木スザクとして生き、皆の力となって帰還を目指す
2:アヴァロンの面々との情報交換の後どうするかを決める。
3:アカギの協力者にシャルル・ジ・ブリタニアがいる前提で考える
4:ランスロット・アルビオンを修理したい


【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化解除、右腕欠損、魔力消耗(大)、顔面の右目から頬にかけて切り傷、右目失明、視力障害、脳への負荷による何らかの後遺症(詳細は現状不明)、気絶中、目覚め?
[服装]:マグマ団幹部・カガリの服(ボロボロ)@ポケットモンスター(ゲーム)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕
[思考・状況]
基本:???????
1:??????
[備考]
※黒化はルールブレイカーにより解除されました。以降は泥の使役はできません。



【E-6/アヴァロン/二日目 深夜】

【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(小)、ゲーチスの言葉によるショック
[装備]:サトシのリザードン@ポケットモンスター(アニメ)、タケシのグレッグル&モンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品×2、割れたピンプクの石、ゾロアーク(スナッチボール)@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:ポケモン城に向かい、クローンポケモン達を救う
2:世界の秘密を解くための仲間を集める
3:ゲーチスの言葉に対するショック
[備考]
※モンスターボールに対し、参加者に対する魔女の口づけのような何かの制約が課せられており、それが参加者と同じようにポケモン達を縛っていると考察しています。



【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:疲労(特大)、右頬に大きな裂傷(応急処置済) 、視力にダメージ(平時には影響無し)
[服装]:ビジネススーツ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本:キラではない、夜神月として生きてみたい
1:情報交換を行い、これからのことを相談する
2:Lの代わりとして恥じないように生きる
3:メロから送られてきた(と思われる)文章の考察をする
[備考]
※死亡後からの参戦


【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、手足に小さな切り傷、背中に大きな傷(処置済み)、強い悲しみ
[服装]:見滝原中学校指定制服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~2(確認済み)、ハデスの隠れ兜@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、咲夜子のクナイ@コードギアス反逆のルルーシュ、グリーフシード(人魚の魔女)@魔法少女まどか☆マギカ、ブローニングハイパワー(13/13)@現実、 予備弾倉(9mmパラベラム×5)、トランシーバー(電池切れ)@現実 、医薬品
[思考・状況]
1:………
[備考]


【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:ダメージ(小)、ネモと一体化、全身に切り傷、左肩に打撲と骨にヒビ
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、ポッチャマ(気絶中)@ポケットモンスター(アニメ)、双眼鏡、 あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式、
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。
1:ナナリーの騎士としてあり続ける
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
最終目的:『儀式』からの脱出、その後可能であるならアカギから願いを叶えるという力を奪ってナナリーを生き返らせる
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※アリスのギアスにかかった制限はネモと同化したことである程度緩和されています。
魔導器『コードギアス』が呼び出せるかどうかは現状不明です。


161:ニャースとアクロマ・世界のカタチ 投下順に読む 163:Why その理由
時系列順に読む
156:believe 乾巧
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
間桐桜
157:零の話・仮面が砕ける時 枢木スザク
159:マギアレコード「答えは心の中に」 夜神月 163:Why その理由
鹿目まどか
N
アリス


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