アットウィキロゴ

PASTS

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

PASTS ◆Z9iNYeY9a2

「この儀式も大詰めか」

エデンバイタルの神殿を再現した空間。

集合無意識へと還っていく死者たちの記憶を見ながら、シャルルは一人呟く。

会場破壊へと行動を移した者達に向けて配下のラウンズの一部を差し向けた。
無論それで止められるとも思わないが、マリアンヌが向かうまでの時間稼ぎにはなるだろう。

暁美ほむらの見張り役がいなくなることが難点ではあるが、元々マリアンヌ自身が肩入れしていた少女だ、ここまで来たなら見張りの有無など些細なものだろう。

アクロマは逃亡、キュゥべえは単独で儀式参加者と接触を図り表向き彼らの脱出に手を貸し、現在のこちらで戦力として動かせる最大の存在は元々参加者であった暁美ほむらときた。
ただ一度、殺し合いというものを行うだけでもこうも場は乱れる。
それだけ参加させた者たちの因果が強いということなのだろうが。

ここから果たして儀式は望む方向に終わるのか、それとも失敗に終わるのか。
成功すれば世界を作り変える準備が整う。アカギの望む世界を、広範囲で創ることができるだろう。
もし失敗した時はどうなるだろうか。アカギは次の儀式の準備を迎えるのか、それとも諦めるのか。
いや、愚問だったかもしれない。おそらくアカギはその力が続く限り進み続けることだろう。

シャルルは回想する。アカギと出会い、この世に今一度現界を得たあの時のことを。


娘であるナナリーとの問答から敗北を受け入れ、集合無意識の中に消えていってからどれほどの時が流れたか。
あるいはエデンバイタルの時空の中では時の流れを数えることなど無意味であったかもしれない。

その間に何をしていたかなど覚えてはいない。自分が自分であったかどうかすら曖昧であったのだ。
多くの思念が流れ、消え、生まれ。
激流のごとく流れていくそれをただただ俯瞰するだけの刻。

それが満たされるものだったかといえばそうではない。
しかしこの身は敗北を受け入れた。過ちを飲み込んだ。だからこそ虚無に苦痛を感じることもなく、その永遠にも感じる時間に身を任せることもできた。


あの男、アカギによってこの身が呼び起こされるまでは。


アカギはエデンバイタルに迷い込んだ異物とでも言うべき存在だった。
破れた世界という世界の裏側から脱出を図りつつも己の目的を果たすための探索も続けていたという。

その破れた世界とエデンバイタル、共に世界の裏側であるということが何かしらの偶然で繋がりを持ってアカギの進入路として顕現したのかもしれない。

ともあれエデンバイタルに侵入したアカギ。本来であればこの多数の思念による情報の奔流に飲み込まれ精神を壊され消える運命だっただろう。
だがアカギは、その膨大な流れの中で心を揺るがされることなく己の意思を保ち。
情報の中からこのシャルル・ジ・ブリタニアの思念を引きずり出した。

何故呼び出したのが自分だったのか。
今にして思えば、最も力を持ち、アカギに近い思想で世界の破壊と創生を目指した者だったからなのだろう。
だがもし偶然であろうとこの身を見つけるのがもう少し遅ければ、アカギの精神も砕かれていたはず。
そう思えばアカギも強い強運、大きな因果を持っていたのだろう。

呼び出された後は思想の奔流から抜け出し、どことも言えぬ空間でアカギと対面していた。
アカギは時間と空間を司る力をその手に宿していたが、こちらもエデンバイタルの力の一端を手にしている。

「儂を呼び覚ましたのは貴様か」
「ああ、そうだ」
「このシャルル・ジ・ブリタニアを呼び起こして、何を望む?」
「この不安定な世界を破壊し、平穏で静かな、新世界の想像を」

言葉には一切の濁りも迷いもなく。
まるで嘘に塗れた現世を否定したかつての自分を見ているかのようだった。

そしてその男の瞳は、このシャルル・ジ・ブリタニアの力を望んでいることもすぐに察した。

「儂は既に世界の創生に失敗した敗北者。現世で力を振るうことなどできぬ。
 それでもこの力を欲するか?」
「お前が世界で現存するための手ならある。
 この世界の力を引き出せる者の力が必要だ」

ずっと警戒していたこちらに対して威嚇する様子もなく、アカギはそう言った。
アカギなりに、二人は対等な立場だと言いたかったのだろう。

「一つ条件がある。
 儂は嘘が嫌いだ。もし手を貸し、力を借りる関係を築きたいならば、お前の心をこちらに見せよ」
「いいだろう」

にべもなかった。

抵抗する素振りを微塵も見せることなく心を開放するアカギ。
その内にある願い、感情、希望、絶望、それら全てをエデンバイタルの力をもって読み込んだ。





「――――良かろう。今より、儂とお前は同じ目的を往く同志だ」


何故アカギに力を貸そうと思ったのか。
似た者同士であるが故の共感、同情だろうか。
この男が歩もうとする世界を見届けてみたいという興味からだろうか。

前者の方が近いかもしれない。だがそれだけではなかった。

かつて人が人を信じるという可能性の中で夢を諦めた。
そんな中でかつての自分を連想させる男が目の前に現れた。
シャルルにはこれが偶然とは思えなかった。

だからこそ世界に希望を託した娘への裏切りでもあることを承知で、この因果の行く末を確かめたかった。
この男との出会いに果たして何か意味があるのかどうか。


世界を見通していく中で、多くの場所に共通するものがあると感じた。
その世界における神、エデンバイタルにあたる者たちは、世界そのものが歩みを止めることを良しとしないことが多い。
例えばある世界では、神や真人が人に永劫の反映と安らぎを与えたがそれがその停滞に触れ、行き詰まったものとして切り捨てられているものがあった。

我らの試みは世界を停滞させてでも安寧の場所を作ろうとするもの。もしそれに触れることがあれば例え世界を創り出したとしてもいずれ消えゆくだろう。
逆に言えばその神さえいなくなるならば世界の創造は難しいものではない。

結局のところやることは自身に生があった時と変わりなかった。ただその範囲が広くなっただけ。
抵触する神のことごとくを滅ぼし、アカギの望む世界を創り出す。




エデンバイタル、世界の裏を越えて様々な世界の根源にあるものに触れてきて、その影響でこちらの存在を察知したものもいくつかいた様子だった。
その一つがインキュベーター、キュゥべえと名乗る異邦人だった。

その者は我らに宇宙の熱力死の法則を教え、同時にそれを避けるために宇宙へのエネルギーを集めていたという。
そしてそれは我らの願う世界の想像においても逃れられぬものだと。

キュゥべえは集めたエネルギーを一部自分たちの宇宙へ分けることを引き換えに、世界の創造へ向けた技術協力を申し出た。

アカギは気付いていたかどうかは知らないが、キュゥべえが嘘をつく存在だということを見破るにはそう時間はかからなかった。
正確に言えば、真実の中に告げない言葉を混ぜることで己の都合のいい形に物事を進める者だったというところか。

相容れない相手であるし拒絶することもできただろうが、申し入れを受け入れたアカギに従い敢えて見逃した。



最終的な結論として殺し合いの儀式という形となったのは実験的な意味合いが強かった。
ある世界において、一定の存在を殺し合わせることで集めたエネルギーを様々な目的に使用するというものが見られたことから出た発想だった。

アカギ、キュゥべえ、そして自分の世界。
集めた参加者はある程度恣意的なものがあったり、ランダムであったりと理由は様々だった。

そこからある程度の因果を備えたものや因果に影響を与えうるものを集めた。

そして自分の世界から選出する場合、世界を変えた己の息子や娘達の参加が避けられないものであった時も顔色一つ変えることなく受け入れた。
ここで嘘を言ったとて何もならない。既に自分は世界から外れた存在、思い返すことなどないのだから。


舞台を整えるための準備を行った。
外界からの干渉を遮断するための結界を用意し。
会場に置く参加者外の生命であるポケモンを制御するため科学者アクロマを勧誘し。
そして万が一に備えてこちらの戦力を収集。ナイトオブラウンズを蘇らせ、他にもいくつかの世界にあったものを手駒とした。

そうして、儀式が始まった。


この儀式自体は実験的なものであり、失敗を次に活かせるならばあるいはという考えも強かった。
だが、次があるかどうかも分からなくなりつつあった。

アクロマやキュゥべえの独断行動により会場の安定も崩れつつあり。
参加者達の因果も想定外の方向に向きつつある。
何より、ナナリーやルルーシュを贄としたことはマリアンヌにも少なからぬ反感を与えた様子だ。次の協力が望めるかどうかが怪しい。

今キュゥべえは参加者をこちらへとおびき寄せるためあの空間から脱する手段を参加者へと教えている。
だがそれだけが狙いでないことも知っている。

会場に置かれた柳洞時の聖杯。
あれには万が一の時に備えてキュゥべえ自身が余分にエネルギーを回収できるようにする機能が備えられていることも知っている。
キュゥべえは隠しているつもりだろうが、シャルルは既に見破っていた。
間桐桜を連れて行くように指示したのもそれを稼働させるためだろう。

ふと、自身の手に目を落とした。
大きな白い手の指先が、微かに綻んで形を崩しているように見えた。

(なるほど、次の猶予はない、ということか)

世界の修正力とでもいうのだろうか。
本来存在することが許されないものが、異世界の力をもってこうして顕現している。
まだ生があるアカギと違い、本来消滅しているべき自分が本来の世界の流れに逆らうことに限界が生じつつある。
干渉遮断フィールドが張られているうちは影響を最小限に抑えられるが、それがなくなればどうなるか。
マリアンヌにもその影響は出るだろうか。いや、彼女とラウンズはまだ呼び出して日が浅い。直ちに影響が出ることはないだろうが。

(フ、時間がないのは儂も同じか)

焦り急ぐ参加者達とキュゥべえにとやかく言うことはできないと自嘲する。

もしここで消えたとして、アカギは再びこの身を呼び起こすだろうか。
あるいはアカギの力でも干渉できないように消されるかもしれない。
もしそうなった場合、アカギの望みは誰が手を貸すことになるだろうか。

(だが、まだ消えるわけにはいかぬ)

その本来消えるべき亡者が多くのものを巻き込んでまで手を出したこの儀式だ。
消えることが避けられぬというなら、せめてアカギと今戦う者達の行く末だけでも見届けるまでは。

ラウンズと戦う枢木スザクや。
各々の運命と向き合う者たちの姿を、エデンバイタルの玉座の空間に映し出される映像から見ながら。

シャルル・ジ・ブリタニアは一人、誰に気づかれることもなく意思を固めた。

167:白き牙の飛翔 投下順に読む 169:I beg you
時系列順に読む
160:第四回定時放送 シャルル・ジ・ブリタニア 177:EndGame_LastBible


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー