No.1

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ここはどこ?


気が付いて最初に思ったことはそれだった。
分かったのはそこは広く薄暗い場所で、自分以外にも大勢の人がいるということ。
いや、人ではない者、人とは思えない者もごく一部だがみえる。
そして、それぞれ紺色と灰色をした大きな怪獣が浮いているということだけだった。
そこは夢かとも思えるほどに現実味のない場所。
もしそれがなければ本当に夢だと思っていただろう。


「ディアルガ!パルキア!しっかりしろ!!」
「ピカピ!!」


一人の少年と謎の黄色い生き物が二匹の怪獣に呼びかけ、黄色い生き物は必死に閃光を発しているという光景がそこにはあった。


「くそ、この鎖が壊せない…。ピカチュウ、ボルテッカーだ!」
「ピーカーピーカー、チュー!!!」


どうやら二匹の怪獣には意識が無く、黄色い生き物は怪獣を縛る赤い何かを壊そうと攻撃しているようだった。
しかし、一向に効果は出ず、むしろ黄色い生き物を疲れさせているだけのようだった。
夢というにはあまりにリアルな光景。
しかしその手助けをしようという人は近くにはいなかった様子だ。
ある意味仕方のない事だ。私自身何が起こっているのか分からないのだから。


その時、他より高くなっている場所が不意に光り、一匹の生き物を映した。


「やあ、みんな目は覚めたかい?」


この時、私、暁美ほむらはこの光景が夢でないことを確信した。


「インキュベーター…!」
「お前か!ディアルガとパルキアにこんなことをしたのは!!
 早く解放――があっ!」
「ピカピ!!」

「少し静かにしてくれないかい?説明が聞こえなくなるじゃないか」


インキュベーター―キュゥべえが何かをしたのか、少年は痛みに倒れこんだ。


「今度は何を企んでいるの?インキュベーター」
「暁美ほむら、そこの少年が見えないのかい?
 今あまり会話を途切れさせて欲しくないんだ。
 そもそもここで僕にこうやって話しかける危険性が分からないのかい?」
「……」


そう言われると黙るしかない。この場所も周りの人間も分からない以上、むやみに話すのはまずいかもしれない。


「さて、僕の名前はキュゥべえ。
 こんな場所にみんなを集めた理由を説明するね。
 みんなにはこれから殺し合いをしてもらいたいんだ」


辺りはざわつき始めるが、倒れて動けない少年を前に動く者はいなかった。
いや、どうしたことか私も動けなかった。
だが殺し合い?あいつは何を言っているの?


「ルールを砕いていうならこうだね。
 ここにいるみんなで最後の一人になるまで殺し合うんだ。
 この場所から帰ることができるのはその一人だけと思ってもらっていい。
 もちろん、タダでとは言わないよ。
 最後の一人になった者にはどんな願いでも一つだけ叶えてあげる。
 富や名誉、死者蘇生や神になりたいといった願い事も可能だ」


確かにあいつにならそれができるだろう。だがこいつの胡散臭さはよく知っている。


「まあそれだけで殺し合ってくれるとは流石に思っていないからね。だからみんなにはちょっとした枷を付けさせてもらった
 胸の辺りに付いているものが分かるかい?」


その言葉で会場の多くの者が胸の辺りに手をやり、服の内側を確かめ始めた。
胸の辺り。確かめるが何も付いてはいない。
だが、周りで服をはだけさせて確かめている人には埋め込まれている物があった。
なんだか見覚えのある、宝石のような物。あれはまさか…


「それはそうだね、ソウルジェム、とでも呼ぼうか。
 君達の魂はその宝石に入っていると思ってくれ。それが君達への枷だ
 魂が入っているってことは、それが壊れると死ぬってことだ。しっかり守った方がいいよ。
 それは君達の生命力によって輝き、死に近付いていくほど色褪せ、濁っていく。
 そして濁りきった時にソウルジェムは砕けるんだ。
 まあ一部仕様の違う者もいるけどね」


一部。それはおそらく私達魔法少女のことだろうか。
さっきの少年もソウルジェムを通じてなにかをされたのだろう。
だが、なぜそんなことを?


「それを枷といった理由はこうだ。
 ソウルジェムが濁る条件はさっき言った肉体の損傷の他にこういうものがある
 殺し合いの会場から出てしまうこと。禁止エリアに一定時間留まってしまうこと。一定時間死者が出ないことだ。
 まず一つ目。
 いまから既定された会場へと移動させるけど、その決められた範囲から出ようとするとソウルジェムの濁りは加速する。
 砕けるまで止まることはないよ。
 あと禁止エリアだね。
 この会場では6時間おきに死亡者と禁止エリアについての放送を行う。
 そのエリアに、発表した時間になっても留まっていたり、禁止された後で侵入するとソウルジェムは濁るようになっている。
 30秒は猶予をあげるけど、それ以降は30秒くらいで濁りきるだろうね。
 最後のは、まあ起こり得ないだろうけど保険だ。
 24時間経って一人も死者が出なかった場合はみんなのソウルジェムは濁りきるようにしてある。
 この場合は優勝者は無しだ。
 最後の一人まで生き残った優勝者は元に戻そう」


つまりこういうことか。
どんな願いでも叶えるという餌で殺し合いをさせる。
それが滞り、このゲームから逃げようとするとその先にあるのは死。
そのために命をインキュベーターの都合のよい形にしておくことでゲームへの参加を促す。


ふざけるな。そんな物に乗るものか。


説明は終わったようだ。分かったのは、待っていた時間は無駄でしかなかったこと。
納得できる所など何もない。場所を移される前に捕まえて締め上げればいい。
そう思って時を止めようとしたとき、


「そうそう、ソウルジェムに魂が入っているって言っても信じられない人もいるみたいだし、ここで証明してみせようか」


そう言って不意に会場の一部分が明るくなった。
その中心にいたのは、緑の髪の少女と桃色の髪の少女。
志筑仁美、そして。
鹿目まどか


「っ!!ダメェェェェェェ!!!!」


思わず絶叫するのと同時に。


「え…?一体、どういうこt」ピキッ


ソウルジェムが砕ける音と共に紐を失った操り人形のように志筑仁美が倒れる。


「仁美ちゃん…?仁美ちゃん!!仁美ちゃん!!嫌ああああ!!!」


志筑仁美にすがり付いて泣きながらキュゥべえに問いかけるまどか。
しかしそんなまどかを意に返す様子も無くキュゥべえは話す。


「さて、じゃあこれから会場に移ってもらうね。
 武器や道具は必要最低限の物はこっちから支給させてもらうよ。あと君達の持ち物はある程度没収させてもらったからね。
 そうそう、別に僕達に逆らおうとしたところで何もしないから好きに動くといい。希望を持つのは君達の自由だ。
 それじゃあ頑張ってくれ」


しまった。
まどかに気を取られて時を止め損ねた。
体が消えていくのを感じ、慌てて砂時計を止めるが。



(?!どうして!?)


時間が止まらない。


「まど―」


消える寸前、最後に見えたのは自分が消えていくことを意に介さず、己の友人の抜け殻にすがり付いて泣く鹿目まどかの姿だった。




「便利な物だね。時間と空間を自在に操ることのできる力というのは
 暁美ほむらの能力にも干渉することができる」


志筑仁美の抜け殻とピクリとも動かぬディアルガ、パルキアだけが残った空間でキュゥべえは呟く。


「さて、彼女達は一体どういう動きをしてくれるのか、楽しみだね」


しかし、そんな言葉を呟くときも、ルールを説明するときも、仁美のソウルジェムを壊したときも。
彼の表情は普段どおりの、何の感情もみせない無表情のままだった。

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