…化手術、薬物投与がそれぞれ過去一回ずつ。結果はどちらも成功しています」
(…あれ、誰だっけ?この看護婦さん。チチでけぇ)
「Oh!パイオニア!彼ナラ今回ノ手術ニモ必ズ応エテクレルデショウ!成功ヲ以テ!」
(っせぇハゲだな。…あぁ。またあの夢か)
「はい博士。成功率は30%程となります」
「ワカリマシタ。デハ開始シマス」
「ワカリマシタ。デハ開始シマス」
(…あれ、なんか体痛くね?あっ、痛い痛い夢なのに痛い!)
「…脳波に異常。代謝機能及び身体値低下。どうやら失敗ですね」
「…科学ノ発展ニ犠牲ハ付キモノデス」
「ええ。道理です博士。
…では、このサンプルは記憶を消去し廃棄処分。以後の被験者リストから除外します。お疲れ様でした」
「後ノ処理ハ任セマース!ゲドー君」
「…科学ノ発展ニ犠牲ハ付キモノデス」
「ええ。道理です博士。
…では、このサンプルは記憶を消去し廃棄処分。以後の被験者リストから除外します。お疲れ様でした」
「後ノ処理ハ任セマース!ゲドー君」
---
「という夢を見たんだ」
「…こわ!人体実験やないか!」
「…こわ!人体実験やないか!」
半年ほど時は過ぎた。小南はタチバナ学園の二年生となり、入学式その他を終えて部室へ向かう。
共に歩む原啓太が、小南が語る生々しい昨夜の悪夢に身震いした。
「前にもおんなじような夢みたんだけど、そん時は「oh!great!」とかぬかしてたから成功だったっぽいんだよ。痛くなかったし」
「…小南もうやめてーや!聞いてるだけで痛いわぁ。
…ちょっとトイレ行ってくる」
原は怖い話に弱かった。小南はネタがあるとまずは彼と矢部に話す。原のマジな反応は見ていて飽きなかった。
「先行ってるよー」
共に歩む原啓太が、小南が語る生々しい昨夜の悪夢に身震いした。
「前にもおんなじような夢みたんだけど、そん時は「oh!great!」とかぬかしてたから成功だったっぽいんだよ。痛くなかったし」
「…小南もうやめてーや!聞いてるだけで痛いわぁ。
…ちょっとトイレ行ってくる」
原は怖い話に弱かった。小南はネタがあるとまずは彼と矢部に話す。原のマジな反応は見ていて飽きなかった。
「先行ってるよー」
---
部室に着いてドアに手をかけると、鍵は掛かっていなかった。
「…あれ、誰か来てる」
そのままドアを開けると、見知らぬ女の子が椅子に座っていた。
「…誰あんた?」
小南の声に、群青色の髪を裏で結わえたその子が赤い瞳を彼へ向けた。
「人に名を尋ねる際は、まず自分の名を告げるのが礼儀だろう?」
「おっと失礼嬢ちゃん。俺は小南っていいます」
「誰が嬢ちゃんだ。
私は六道聖。ここの野球部に入ることになった。…どうかよろしく」
彼女はぺこりと頭を下げ、小南も「はいよろしく」とそれに応じた。そして顔を上げ、小南に部室の鍵を渡す。
「みずきからの預かり物だ。「ごっめ~ん!今日遅れる!」だそうだ」
「ああそう?わかった」
そのまま、聖はすたすたと部室を後にした。見たことの無い顔なので、おそらくは新入生だろう。
「…入部するって…、マネージャーかな」
「…あれ、誰か来てる」
そのままドアを開けると、見知らぬ女の子が椅子に座っていた。
「…誰あんた?」
小南の声に、群青色の髪を裏で結わえたその子が赤い瞳を彼へ向けた。
「人に名を尋ねる際は、まず自分の名を告げるのが礼儀だろう?」
「おっと失礼嬢ちゃん。俺は小南っていいます」
「誰が嬢ちゃんだ。
私は六道聖。ここの野球部に入ることになった。…どうかよろしく」
彼女はぺこりと頭を下げ、小南も「はいよろしく」とそれに応じた。そして顔を上げ、小南に部室の鍵を渡す。
「みずきからの預かり物だ。「ごっめ~ん!今日遅れる!」だそうだ」
「ああそう?わかった」
そのまま、聖はすたすたと部室を後にした。見たことの無い顔なので、おそらくは新入生だろう。
「…入部するって…、マネージャーかな」
小南は少し考えたが、すぐに彼女を忘れる。みずきと知り合いのようだったので、後で聞けばいい。と、そう考えた。
小南は、この短い部室までの距離を、バッグを持って歩いてきただけで息切れしていた自分に気付かなかった。
気付いたとしても、「やめて半年経ってもタバコの毒は抜けないもんだな」とでも彼は思った事だろう。
気付いたとしても、「やめて半年経ってもタバコの毒は抜けないもんだな」とでも彼は思った事だろう。
そうではなかったのに。
練習の開始から一時間半程が経過した頃、遅れると言っていたみずきがようやく参じる。
彼女の横には、どこかの中学のユニフォームに身を包んだ女の子がいた。紛れも無く、先程部室にいた子だった。
「おせーよみずき。何サボってんの」
「サボりじゃないわよ!てゆーかアンタにだけは言われたくないんだけど!」
「…あー、それもそーだな。
…ところでその子は何者なのさ?確か…、六道輪廻ちゃん?」
自嘲気味に笑んだ小南は、先程みずきに聞こうとしていた事を思い出す。
「六道 聖 だ。失礼な男め」
彼は人の名前を覚えるのが苦手であった。
「…それは御尤で」
「この子新しく入部するのよ。ちょっと早いけど、練習参加させてもいいでしょ?」
みずきが主将に判断を仰ぐ。彼がすぐ快諾すると、みずきと六道は更衣室へと入っていった。
彼女の横には、どこかの中学のユニフォームに身を包んだ女の子がいた。紛れも無く、先程部室にいた子だった。
「おせーよみずき。何サボってんの」
「サボりじゃないわよ!てゆーかアンタにだけは言われたくないんだけど!」
「…あー、それもそーだな。
…ところでその子は何者なのさ?確か…、六道輪廻ちゃん?」
自嘲気味に笑んだ小南は、先程みずきに聞こうとしていた事を思い出す。
「六道 聖 だ。失礼な男め」
彼は人の名前を覚えるのが苦手であった。
「…それは御尤で」
「この子新しく入部するのよ。ちょっと早いけど、練習参加させてもいいでしょ?」
みずきが主将に判断を仰ぐ。彼がすぐ快諾すると、みずきと六道は更衣室へと入っていった。
「…あ。キャプテン、みずきらが来たし休憩入れない?」
何かに気付いたそう小南が提案する。区切りが良かった事もあってか、主将はそれに従い各々に休憩を促した。
何かに気付いたそう小南が提案する。区切りが良かった事もあってか、主将はそれに従い各々に休憩を促した。
プロテクタ等とミットを外した小南が、グラウンドの端の方へと歩いてゆく。
向かう先には、今野早矢がいた。いつしかと同じ道を通り、彼女は小南達の練習を見に来たのだった。
「迷わなかった?早矢ちゃん」
「…はい。途中まで、おじさんといっしょでしたから。…はじめてじゃないですし」
「そうか。…で、その手に持ってるのは何?」
早矢は、竹片か藁のような物で織られた大きめの篭を持っていた。
「あ、あの…、みんなで…食べてくれますか」
それには、彼女が作った部員への差し入れ…、和洋様々な菓子が入っていた。
「…すげ、早矢ちゃん作ったの?」
早矢が遠慮がちに頷く。小南はそれを受け取り、部員を呼んだ。飢えた彼等はすぐ集まった。
向かう先には、今野早矢がいた。いつしかと同じ道を通り、彼女は小南達の練習を見に来たのだった。
「迷わなかった?早矢ちゃん」
「…はい。途中まで、おじさんといっしょでしたから。…はじめてじゃないですし」
「そうか。…で、その手に持ってるのは何?」
早矢は、竹片か藁のような物で織られた大きめの篭を持っていた。
「あ、あの…、みんなで…食べてくれますか」
それには、彼女が作った部員への差し入れ…、和洋様々な菓子が入っていた。
「…すげ、早矢ちゃん作ったの?」
早矢が遠慮がちに頷く。小南はそれを受け取り、部員を呼んだ。飢えた彼等はすぐ集まった。
「俺の友達からの差し入れ。食べていーよ」
そう促すが、部員はそれにすぐ手を付けようとはせず、小南に問いだ。
「…誰や小南?あの子は?友達?ウソ付くなや」
「誰でやんすか!髪サラサラでやんす!可愛いでやんす!人形みたいでやんす!」
原と矢部同時に小南へ詰め寄る。小南は焦り、部員達の視線が一斉に向けられた早矢もたじろ「だ。
「う゛…、パチンコ屋で知り合ったおっさんの姪っ子だよ。俺とは別に何にもないから!
…今のところは」
そんな風に小南は必死に弁明するが、部員達の追及はなかなか落ち着かない。
そして部室のドアが開き、着替えを終えたみずきと六道が出て来た。
六道はなんとキャッチャーミットを持っている。
そう促すが、部員はそれにすぐ手を付けようとはせず、小南に問いだ。
「…誰や小南?あの子は?友達?ウソ付くなや」
「誰でやんすか!髪サラサラでやんす!可愛いでやんす!人形みたいでやんす!」
原と矢部同時に小南へ詰め寄る。小南は焦り、部員達の視線が一斉に向けられた早矢もたじろ「だ。
「う゛…、パチンコ屋で知り合ったおっさんの姪っ子だよ。俺とは別に何にもないから!
…今のところは」
そんな風に小南は必死に弁明するが、部員達の追及はなかなか落ち着かない。
そして部室のドアが開き、着替えを終えたみずきと六道が出て来た。
六道はなんとキャッチャーミットを持っている。
「…む。この匂いは!」
聖が小南に近づき、篭の中身を見る。
「おい、これはどうした」
聖の視線は、その中のおはぎに向けられているようだ。
「あー、俺の知り合いの子が作ってくれた差し入れ。ほれ、あの子」
小南が示した先にいる早矢に聖は視線を向け、彼女の元へ歩み寄った。
「…い、戴いていいか」
一瞬驚いた早矢だったが、目を輝かせる六道に対しそれをすぐ快諾する。
「は、はい。…どうぞ。み、みなさんも、どうぞ」
聖が小南に近づき、篭の中身を見る。
「おい、これはどうした」
聖の視線は、その中のおはぎに向けられているようだ。
「あー、俺の知り合いの子が作ってくれた差し入れ。ほれ、あの子」
小南が示した先にいる早矢に聖は視線を向け、彼女の元へ歩み寄った。
「…い、戴いていいか」
一瞬驚いた早矢だったが、目を輝かせる六道に対しそれをすぐ快諾する。
「は、はい。…どうぞ。み、みなさんも、どうぞ」
小南への質問攻めはとりあえず落ち着き、皆が差し入れをつまみ始める。
その隙を突き、小南は部室裏へとそそくさと逃げていった。
その隙を突き、小南は部室裏へとそそくさと逃げていった。
---
「…おはぎなのにこし餡!?つぶ餡はダメか?…しかしこれも悪くないな。どこのを使ってるんだ?まさか餡も自家製か?」
「い、いえ…、パワ堂さんであんこは買いました。あそこのがいちばんおいしいと…思って」
「む…、私も同意だ。なかなか話が合うな。
…だが、もう少し甘い方が私は~」
「い、いえ…、パワ堂さんであんこは買いました。あそこのがいちばんおいしいと…思って」
「む…、私も同意だ。なかなか話が合うな。
…だが、もう少し甘い方が私は~」
部員達が差し入れを食べ、聖と早矢がおはぎ談議を繰り広げる中、そこを抜け出す事に成功した小南は、いつものように煙草を吸い始めようとしていた。
だが、とっくの昔に禁煙を誓い、それを遵守し続けている事をすぐに思い出す。
面倒事や都合が悪くなったらここに逃げ込む癖。喫煙はしないまでも、長く続いた習慣は中々変わらないものだ。
だが、とっくの昔に禁煙を誓い、それを遵守し続けている事をすぐに思い出す。
面倒事や都合が悪くなったらここに逃げ込む癖。喫煙はしないまでも、長く続いた習慣は中々変わらないものだ。
「…あーあ。クセが抜けねぇな。そのうち吸っちゃうかも…」
「…小南さん」
「はっ、はい!」
いきなりの後ろからの声に小南は焦ったが、振り向いた先にいた早矢を見て、彼は大きく溜息をついた。
「…早矢ちゃんか。どうかした?六道と話は終わったの?」
「…はい。えっと、小南さんは…食べてくれました?」
早矢は小南の横に腰を下ろし、そう聞いた。
「あぁ…、まだ食べてない。…なんか朝から体調悪くてさ」
「はっ、はい!」
いきなりの後ろからの声に小南は焦ったが、振り向いた先にいた早矢を見て、彼は大きく溜息をついた。
「…早矢ちゃんか。どうかした?六道と話は終わったの?」
「…はい。えっと、小南さんは…食べてくれました?」
早矢は小南の横に腰を下ろし、そう聞いた。
「あぁ…、まだ食べてない。…なんか朝から体調悪くてさ」
そう言った小南は、前言を心の中で撤回する。少なくとも早矢の前では決して吸うまい。彼は改めてそう誓った。
「…そう、ですか」
普段あまり表情を変える事のない早矢だが、小南の答えを聞いた彼女のそれには、明らかに落胆の意が混じっていた。
「…あぁっ、まだあんまり動いてないからだよ!ほら!あ、甘い物だしさ?もう少し動けば食べたくなるよ!」
小南は焦った。
「・・・」
「…ごめん。」
彼は普段、あまり人を気遣わない。ゆえに、しきりに早矢を気にする小南のこの様子は、彼女が小南にとってどれだけ特別かという事を示していた。
「…そう、ですか」
普段あまり表情を変える事のない早矢だが、小南の答えを聞いた彼女のそれには、明らかに落胆の意が混じっていた。
「…あぁっ、まだあんまり動いてないからだよ!ほら!あ、甘い物だしさ?もう少し動けば食べたくなるよ!」
小南は焦った。
「・・・」
「…ごめん。」
彼は普段、あまり人を気遣わない。ゆえに、しきりに早矢を気にする小南のこの様子は、彼女が小南にとってどれだけ特別かという事を示していた。
「…小南さんに、…つくってきたんですよ…?」
一方の早矢も、普段は他人の為に食べ物を拵る事など殆ど無いし、感想を求めたりなどはしない。
小南に食べてもらっていない事実を悲しがる彼女の様も、小南が早矢にとって他人とは一線を画している事の顕れだった。
「…わかってる」
横にいる早矢の肩に手を回し、小南は彼女を寄せる。
横にいる早矢の肩に手を回し、小南は彼女を寄せる。
人に触れられるのは決して好きではなかった。今も昔も、そして…これからも。
だが、唯一進んで触れてくる存在となった小南。早矢は、彼に触れられるのが心地良かった。そしてそれがとても嬉しかった。かつては彼から漂ったタバコの残り香すらも愛おしく感じた。
だが、唯一進んで触れてくる存在となった小南。早矢は、彼に触れられるのが心地良かった。そしてそれがとても嬉しかった。かつては彼から漂ったタバコの残り香すらも愛おしく感じた。
この半年程の月日は、二人の距離をそれだけ縮めていた。
「…泣いてる?早矢ちゃん」
「…泣いてません」
泣いてこそいないが、ほんの少しの強がり。彼女がちょっと拗ねてみせたり、頬を膨れさせたりする唯一無二の相手は彼。
「…もう練習戻るけど、何か一個取っておいてくれたら…嬉しいかな」
「…泣いてません」
泣いてこそいないが、ほんの少しの強がり。彼女がちょっと拗ねてみせたり、頬を膨れさせたりする唯一無二の相手は彼。
「…もう練習戻るけど、何か一個取っておいてくれたら…嬉しいかな」
「…はい」
顔を上げた早矢はいつもの表情に戻っていた。やや紅潮しているようにも見えるが。
小南はそれに安心し、早矢の頭を撫でる。目を閉じてそれを受け入れる彼女に小南は笑いかけた。
顔を上げた早矢はいつもの表情に戻っていた。やや紅潮しているようにも見えるが。
小南はそれに安心し、早矢の頭を撫でる。目を閉じてそれを受け入れる彼女に小南は笑いかけた。
そして彼は練習に戻っていった。
グラウンドの風が、少し強くなっていた。
グラウンドの風が、少し強くなっていた。
「シンカーいっくよ!聖!」
「わかった。来い」
「…おっ?」
グラウンドに小南が戻ると、みずきが聖相手に投げ込みをしていた。握りで球種を示し、投げ、聖が余す事なくそれらを補球する。
時たま酷くイレギュラーするも、聖は決して零さなかった。
その度に部員達から感嘆の声が上がった。
「…おぉーすげえ。やるねぇ」
「あんな完璧に捕れんの他に小南位じゃね?」
「いやいや、可愛いぶんこっちが上でやんす」
「あーそれ間違いないわ」
「わかった。来い」
「…おっ?」
グラウンドに小南が戻ると、みずきが聖相手に投げ込みをしていた。握りで球種を示し、投げ、聖が余す事なくそれらを補球する。
時たま酷くイレギュラーするも、聖は決して零さなかった。
その度に部員達から感嘆の声が上がった。
「…おぉーすげえ。やるねぇ」
「あんな完璧に捕れんの他に小南位じゃね?」
「いやいや、可愛いぶんこっちが上でやんす」
「あーそれ間違いないわ」
「…たいしたもんだな」
小南も思わず感心する。聖は少なくとも捕球に関しては本当に上手かった。
後に貧打弱肩鈍足である事も明らかとなったが、それでも十分お釣りが来る程だ。
むしろそれがまたカワイイんじゃないか!との意見の方が多いかもしれない。
少なくとも、入部した時の自分よりゃ幾分まともだろう。彼はそう思った。
小南も思わず感心する。聖は少なくとも捕球に関しては本当に上手かった。
後に貧打弱肩鈍足である事も明らかとなったが、それでも十分お釣りが来る程だ。
むしろそれがまたカワイイんじゃないか!との意見の方が多いかもしれない。
少なくとも、入部した時の自分よりゃ幾分まともだろう。彼はそう思った。
聖に群れる人の輪を避け、小南は再びブルペンに戻って主将の球を受け始める。ミットに収まった球を主将に投げ返す度に、小南の額からは嫌な汗が滲み出た。
早矢は、一つだけ残したおはぎを大事そうに抱え、ブルペンの横でその様子をただ見守った。
早矢は、一つだけ残したおはぎを大事そうに抱え、ブルペンの横でその様子をただ見守った。
「…ぐっ」
小南が52球目を主将に返した時、同時に苦痛を訴えるかのような声を上げた。それを聞き取った主将が怪訝そうな顔をする。
「…どーかした?小南」
「ん、…なんでもない」
「…?そうか」
小南の否定を受け、その場は何事も無く流され投げ込みは続いた。
小南が52球目を主将に返した時、同時に苦痛を訴えるかのような声を上げた。それを聞き取った主将が怪訝そうな顔をする。
「…どーかした?小南」
「ん、…なんでもない」
「…?そうか」
小南の否定を受け、その場は何事も無く流され投げ込みは続いた。
それは、さらに20球の後だった。
「…っぐぅっ!!」
同じく球を投げ返そうとした小南は、奇声とも取れる声を発すると共にそれを断念する。
球は地面に零れ落ち、主将がすぐさま小南に駆け寄り、早矢は思わず立ち上がった。
「…おい!?どーした?」
「…っぐぅっ!!」
同じく球を投げ返そうとした小南は、奇声とも取れる声を発すると共にそれを断念する。
球は地面に零れ落ち、主将がすぐさま小南に駆け寄り、早矢は思わず立ち上がった。
「…おい!?どーした?」
「…肩が…、肩が痛いよ…!」
ミットで右肩を押さえ込む小南。顔は苦痛に歪み、尋常ではない汗を滲ませていた。
ミットで右肩を押さえ込む小南。顔は苦痛に歪み、尋常ではない汗を滲ませていた。
「…みずき!加藤先生呼べ!早く!!矢部君!大京!手ぇ貸してくれ!!」
フリー打撃の守備に付いていた二人が、異常に気付いて駆け寄ってくる。その投手を務めていたみずきは校舎へと急いだ。
フリー打撃の守備に付いていた二人が、異常に気付いて駆け寄ってくる。その投手を務めていたみずきは校舎へと急いだ。
「…小南さん…?」
早矢はただそこに立ち尽くした。担架で医務室へと運ばれてゆく小南をただ見送る事しか出来なかった。
早矢はただそこに立ち尽くした。担架で医務室へと運ばれてゆく小南をただ見送る事しか出来なかった。
春風が、地に散った桜の花びらを再び舞い上げる。早矢の髪と共に。
力無く膝を崩した彼女は、春が少しだけ嫌いになった。
---
「酷いわね…」
聖タチバナの保健医、加藤 理香は、小南の肩を見て溜息と共に率直な意見を漏らした。
聖タチバナの保健医、加藤 理香は、小南の肩を見て溜息と共に率直な意見を漏らした。
小南の右肩は、赤黒く内出血を起こし、左と比較し大きく腫れ上がっていた。
同時に、裂傷にも似た傷が数箇所あり、今にも血が滲んできそうだ。
「(…この傷痕は…、間違い無く博士のメスの痕。この子は被験者…、いえ、被害者だわ)」
同時に、裂傷にも似た傷が数箇所あり、今にも血が滲んできそうだ。
「(…この傷痕は…、間違い無く博士のメスの痕。この子は被験者…、いえ、被害者だわ)」
「…生?…先生!」
橘みずきの声に、加藤はハッと我に還る。
「はい!…え、ええ。何かしら?みずきさん」
「小南くんの肩は…、小南くんは大丈夫なんですか!?」
然るべき…且つ核心を突くその問いに、加藤は首を縦にも横にも振れなかった。
「…まだ何とも言えないわ。ごめんなさい。色々検査してみないと」
「・・・」
半ば予想された答えに、みずきは俯いた。今にも泣きそうな顔をして。
「…とにかく。彼の事は私達に任せて、あなたは練習にお戻りなさい。…他の部員の子達にも、そう伝えてなだめてあげて。…ね?」
「…はい」
みずきは力無くうなだれたまま、医務室からグラウンドへと戻っていった。
それを見届けて、加藤は再び大きく溜息をつく。そして、鎮痛剤により眠りにつく小南の肩に手を置き、独り呟いた。
「…こんな事…、いつまで続けるのかしらね。あの人達は」
橘みずきの声に、加藤はハッと我に還る。
「はい!…え、ええ。何かしら?みずきさん」
「小南くんの肩は…、小南くんは大丈夫なんですか!?」
然るべき…且つ核心を突くその問いに、加藤は首を縦にも横にも振れなかった。
「…まだ何とも言えないわ。ごめんなさい。色々検査してみないと」
「・・・」
半ば予想された答えに、みずきは俯いた。今にも泣きそうな顔をして。
「…とにかく。彼の事は私達に任せて、あなたは練習にお戻りなさい。…他の部員の子達にも、そう伝えてなだめてあげて。…ね?」
「…はい」
みずきは力無くうなだれたまま、医務室からグラウンドへと戻っていった。
それを見届けて、加藤は再び大きく溜息をつく。そして、鎮痛剤により眠りにつく小南の肩に手を置き、独り呟いた。
「…こんな事…、いつまで続けるのかしらね。あの人達は」
---
目を醒ました小南は病院にいた。右肩には幾重にも包帯が巻かれており、その上からギブスで固められていた。
「・・・」
包帯の下には、確かな肩の感覚があった。やや熱を帯びている気がするが、不思議と痛みはなかった。麻酔を打たれただけかもしれないが。
「・・・」
包帯の下には、確かな肩の感覚があった。やや熱を帯びている気がするが、不思議と痛みはなかった。麻酔を打たれただけかもしれないが。
「おはよう。小南くん」
いつの間にか、もしくは最初から病室にいた加藤理香が小南に声をかけた。小南は気配を感じなかったが、驚きもしなかった。
「…先生。…どうも」
ぺこりと首だけを動かして挨拶をする。
「具合はどう?痛くはないかしら」
「はぁ…、おかげさまで」
加藤は何やらカルテのような物をテーブルに置き、ベッドの傍の椅子に腰掛ける。
そして長い沈黙が作られ、彼女が重く口を開いた。
いつの間にか、もしくは最初から病室にいた加藤理香が小南に声をかけた。小南は気配を感じなかったが、驚きもしなかった。
「…先生。…どうも」
ぺこりと首だけを動かして挨拶をする。
「具合はどう?痛くはないかしら」
「はぁ…、おかげさまで」
加藤は何やらカルテのような物をテーブルに置き、ベッドの傍の椅子に腰掛ける。
そして長い沈黙が作られ、彼女が重く口を開いた。
「…私の話…、聞くのは怖い?」
小南は外を見ていた。夕日が沈みきる寸前の空は、あまりに綺麗な群青色をしていた。
「いいえ。…つーよりむしろその前置きが怖いすけど」
「…そうね」
互いの返事は短く、間を置かずに加藤は述べ始める。
小南は外を見ていた。夕日が沈みきる寸前の空は、あまりに綺麗な群青色をしていた。
「いいえ。…つーよりむしろその前置きが怖いすけど」
「…そうね」
互いの返事は短く、間を置かずに加藤は述べ始める。
607 :名無しさん@ピンキー:2009/01/03(土) 00:07:41 ID:P2QKJmBE
まず、小南の肩はもう治らないであろうという事。肘と下半身にも同様の危険がある事。
よって野球を続けるのは不可能である事。
小南は返事も相槌もうたず、ただ外を見ながらそれを聞いていた。結論を聞き終わる頃、ちょうど夕日は水平線の向こうに消えた。
「…あなたの全身は今、切れ込みの入ったゴムのように危険なの。強い負荷がかかれば、いつでも弾け飛ぶ恐れがある」
まず、小南の肩はもう治らないであろうという事。肘と下半身にも同様の危険がある事。
よって野球を続けるのは不可能である事。
小南は返事も相槌もうたず、ただ外を見ながらそれを聞いていた。結論を聞き終わる頃、ちょうど夕日は水平線の向こうに消えた。
「…あなたの全身は今、切れ込みの入ったゴムのように危険なの。強い負荷がかかれば、いつでも弾け飛ぶ恐れがある」
今まで博士の手術の犠牲となってきた数多の野球少年達が、例外無くそうだったように。
「…だから、野球はもう…」
「言う事はっきり言いますよね。先生って」
小南が加藤の言葉を遮った。
「…あ…」
加藤が、やや申し訳なさそうな顔をする。
「言う事はっきり言いますよね。先生って」
小南が加藤の言葉を遮った。
「…あ…」
加藤が、やや申し訳なさそうな顔をする。
「そーいうトコ、嫌いじゃないすよ」
そう言って振り向いた小南は、いつもと変わらない顔をしていた。
「…残念だわ。本当に」
そう言って振り向いた小南は、いつもと変わらない顔をしていた。
「…残念だわ。本当に」
壁掛け時計の秒針だけが、二人きりの部屋に響いた。
「先生」
「…なにかしら」
再び光の消えた外を見ていた小南が加藤を呼ぶ。彼女がすぐにそれに応じた。
「…なにかしら」
再び光の消えた外を見ていた小南が加藤を呼ぶ。彼女がすぐにそれに応じた。
「少し、外してもらっていいすかね」
「…ええ」
その短い返事と共に、加藤は部屋を後にする。ドアが静かに閉まった後、小南は天を仰いだ。
「…ええ」
その短い返事と共に、加藤は部屋を後にする。ドアが静かに閉まった後、小南は天を仰いだ。
---
「電灯もつけてないのか?」
暗がりで突然響く声。そしてほぼ同時に部屋に明かりが燈った。六道聖がドアの前に立っていた。制服に着替え、手に何か持っている。
「あー…、嬢ちゃんは確か…」
「…六道聖だ。いい加減覚えろ、失礼な奴め」
小南が「ああ」と頷く。
「そうそう六道さん。どうした?練習終わったの?」
聖が表情を変えずに小南に近づき、持っていた物をテーブルに置いた。お中元にでもありそうな、各種パワリンの詰め合わせだった。
「…どしたのコレ」
「みんなで買ったお見舞いだ。入院するかなぞ知らないが、まぁ飲んでくれ」
「…ありがと。キャプテンとかみずきは?」
聖が椅子に腰掛ける。頭の後ろで結ばれた髪の毛の先端がふわふわ揺れた。
「みずきは先輩がやたら心配らしく、ぎゃあぎゃあ騒いでたのでキャプテンが連れ帰った。そしてそれを渡してくれと頼まれた」
安易に想像出来る状況に、思わず小南は苦笑した。
「…じゃあ「あんま心配すんな」っつっといてくれや」
「承る。…では私は帰るぞ」
そう言って聖は立ち上がり、さらに言葉を連ねた。
「治った後は今以上に身体を労り、決して無理はしない事だな。先輩」
そして、ぺこりと頭を垂れ踵を返す。
暗がりで突然響く声。そしてほぼ同時に部屋に明かりが燈った。六道聖がドアの前に立っていた。制服に着替え、手に何か持っている。
「あー…、嬢ちゃんは確か…」
「…六道聖だ。いい加減覚えろ、失礼な奴め」
小南が「ああ」と頷く。
「そうそう六道さん。どうした?練習終わったの?」
聖が表情を変えずに小南に近づき、持っていた物をテーブルに置いた。お中元にでもありそうな、各種パワリンの詰め合わせだった。
「…どしたのコレ」
「みんなで買ったお見舞いだ。入院するかなぞ知らないが、まぁ飲んでくれ」
「…ありがと。キャプテンとかみずきは?」
聖が椅子に腰掛ける。頭の後ろで結ばれた髪の毛の先端がふわふわ揺れた。
「みずきは先輩がやたら心配らしく、ぎゃあぎゃあ騒いでたのでキャプテンが連れ帰った。そしてそれを渡してくれと頼まれた」
安易に想像出来る状況に、思わず小南は苦笑した。
「…じゃあ「あんま心配すんな」っつっといてくれや」
「承る。…では私は帰るぞ」
そう言って聖は立ち上がり、さらに言葉を連ねた。
「治った後は今以上に身体を労り、決して無理はしない事だな。先輩」
そして、ぺこりと頭を垂れ踵を返す。
「六道」
ドアノブに手をかけた所で、小南が聖を呼び止めた。
「なんだ」
聖が振り向く。あまり感情の伺えない赤い瞳が、再び小南に向けられた。
ドアノブに手をかけた所で、小南が聖を呼び止めた。
「なんだ」
聖が振り向く。あまり感情の伺えない赤い瞳が、再び小南に向けられた。
「…おまえ、みずきの球しっかり捕れるか?」
聖の瞳が一瞬大きくなった。
「…?ああ。ほとんど零さないで捕れる…と思うが」
「うちの主将の球は?受けられそう?バカみたく速いけど」
小南がそう続け、聖がやや考えてから答える。
「…おそらくは。今日見た感じでは…だけど」
「ならいいや。…それだけだ。引き止めて悪かったな」
やや不自然な話の終え方が聖は気になったが、深い詮索はせんとした。聞ける程に親しい間柄ではない。
「…昨日今日入部したばかりの私は、多々なるご迷惑をかける事と思う。しかしながら、誠心誠意頑張っていくつもりだ。
同じ捕手の先輩として、指導の御鞭撻の程を…」
「あー。勿論だ」
聖は再び頭を垂れ、部屋を出て行かんとドアノブに手をかける。小南は既に聖を見てはいなかった。
聖の瞳が一瞬大きくなった。
「…?ああ。ほとんど零さないで捕れる…と思うが」
「うちの主将の球は?受けられそう?バカみたく速いけど」
小南がそう続け、聖がやや考えてから答える。
「…おそらくは。今日見た感じでは…だけど」
「ならいいや。…それだけだ。引き止めて悪かったな」
やや不自然な話の終え方が聖は気になったが、深い詮索はせんとした。聞ける程に親しい間柄ではない。
「…昨日今日入部したばかりの私は、多々なるご迷惑をかける事と思う。しかしながら、誠心誠意頑張っていくつもりだ。
同じ捕手の先輩として、指導の御鞭撻の程を…」
「あー。勿論だ」
聖は再び頭を垂れ、部屋を出て行かんとドアノブに手をかける。小南は既に聖を見てはいなかった。
「お…来たな。後は任せるぞ」
よって、聖と入れ代わりで入室してきた者に気付くのが遅れる。元々希薄な彼女の気配も、それに拍車をかけた。
「小南さん…」
彼女は小南の名を呼んだ。虚に窓を見つめる小南は、すぐさまそれに気付く。
彼女は小南の名を呼んだ。虚に窓を見つめる小南は、すぐさまそれに気付く。
今、一番会いたい人の声だった。今の自分を一番知られたくない人だった。先の加藤保健医からの通達。それを知られるのは怖かった。
「…早矢ちゃんか」
取り繕う言葉を思索しつつ、ゆっくりと振り向く。ドアの前に立っているは、他の誰でもない今野早矢。
「…早矢ちゃんか」
取り繕う言葉を思索しつつ、ゆっくりと振り向く。ドアの前に立っているは、他の誰でもない今野早矢。
「…みんなと…一緒に来
小南が紡がんとした言葉は、早矢に抱き着かれた事により途切れた。彼女の髪と匂いがふわりと舞い、小南の視界は遮られる。
小南が紡がんとした言葉は、早矢に抱き着かれた事により途切れた。彼女の髪と匂いがふわりと舞い、小南の視界は遮られる。
「…しんぱい…しんぱいしたんですよ…?小南さん、死んじゃうかもって、わたし…!」
初めて見る、早矢の泣き顔。紫紺の瞳から溢るる涙。嘘偽るための苟且の言葉などは、瞬く間にかき消された。
「…心配かけたかな。うん…、俺は大丈夫。大丈夫だから…」
自分の胸に収まる早矢の頭を撫でると、彼女が顔を上げた。
自分の胸に収まる早矢の頭を撫でると、彼女が顔を上げた。
「…ほんとに?」
「うん。ほんとに」
「うん。ほんとに」
小南が早矢と知り合って約半年。小南が何かに誘えば彼女は必ず来てくれたし、いつも楽しく笑ってくれた。小南はそれが嬉しかった。
『知り合いの姪と遊ぶ』に過ぎなかった二人の間柄は、ここで明確な終わりを告げる。
『知り合いの姪と遊ぶ』に過ぎなかった二人の間柄は、ここで明確な終わりを告げる。
唇を重ねてみても、早矢はさほど驚かなかった。ちょっと目をぱちくりさせたが、それだけだった。
「んっ、…ん…ぅ」
「んっ、…ん…ぅ」
物心付くか付かない頃に、母親がしてくれた気がした。極めて親しい間柄の者同士が行う愛情表現。
…もう、これからの私には永劫縁のないもの。半年前まではずっとそう思ってた。この人と知り合うまでは。
…もう、これからの私には永劫縁のないもの。半年前まではずっとそう思ってた。この人と知り合うまでは。
唇を離す二人。すると早矢がみるみる顔を赤くし、小南から目を逸らした。
「…ごめんなさい。あの…、なんか恥ずかし…くて」
「…ごめん」
小南が自らのキスを咎めているのかと考えた早矢は、首を横に振り否定した。
そして、俯きかけた小南に向かい今度は早矢からキスを贈った。
「…これで、おあいこ。」
「…ごめんなさい。あの…、なんか恥ずかし…くて」
「…ごめん」
小南が自らのキスを咎めているのかと考えた早矢は、首を横に振り否定した。
そして、俯きかけた小南に向かい今度は早矢からキスを贈った。
「…これで、おあいこ。」
二人の距離が、また縮まった。
(…幸せ者だな。先輩は)
ドアを隔てた向こうにいた聖が、一人ぼそりと呟いた。あわよくば小南の怪我の具合でも聞けるかと思い、こっそりと残っていたのだが、すぐに考えを改めた。
「…あまりに不躾だな。帰るか」
実は、早矢をここまで連れて来たのは聖だったりする。なんだかんだで面倒見のいい彼女の性分を知るのは、野球部ではまだみずき一人だけだっだ。
(…またお菓子作ってきてくれないかな…)
早矢が作った和菓子の味が、廊下を歩く聖の脳裏をよぎる。涎を垂らすかと思ったところで、彼女ははっと我に還った。
「…何を考えているんだ、私は」
ドアを隔てた向こうにいた聖が、一人ぼそりと呟いた。あわよくば小南の怪我の具合でも聞けるかと思い、こっそりと残っていたのだが、すぐに考えを改めた。
「…あまりに不躾だな。帰るか」
実は、早矢をここまで連れて来たのは聖だったりする。なんだかんだで面倒見のいい彼女の性分を知るのは、野球部ではまだみずき一人だけだっだ。
(…またお菓子作ってきてくれないかな…)
早矢が作った和菓子の味が、廊下を歩く聖の脳裏をよぎる。涎を垂らすかと思ったところで、彼女ははっと我に還った。
「…何を考えているんだ、私は」
---
コンコン。とのノックの音に続いて、がちゃりとドアが開く。視界はゼロと言える小南の病室に加藤理香が再び入ってきた。
「起きてるかしら?」
電灯が点いて部屋が照らされ、誰もいない室内が露になる。
「…帰っちゃったか。」
小南の今夜の入院の旨を伝えに来た彼女だったが、半ば予測していたようで、さほど驚きはしなかった。
「起きてるかしら?」
電灯が点いて部屋が照らされ、誰もいない室内が露になる。
「…帰っちゃったか。」
小南の今夜の入院の旨を伝えに来た彼女だったが、半ば予測していたようで、さほど驚きはしなかった。
「…若いっていいわね」
キスはもう初めてじゃない。といってもその初めてはついさっきだけど。
二人きりはとても落ち着く。彼のにおいがいっぱいする。小南さんのにおい。
二人で並んでベッドに座り、私の髪に触ってくれる。小南さんの掌が、髪から首へ。背中からわたしの胸へと回される。
人になんか絶対に触られたくないところ。人込みで触れ合うだけでも嫌。だからわたしは人込みは嫌い。
二人きりはとても落ち着く。彼のにおいがいっぱいする。小南さんのにおい。
二人で並んでベッドに座り、私の髪に触ってくれる。小南さんの掌が、髪から首へ。背中からわたしの胸へと回される。
人になんか絶対に触られたくないところ。人込みで触れ合うだけでも嫌。だからわたしは人込みは嫌い。
だけど、私に触れるために伸ばされるこの人の手を、わたしは拒まない。唯一無二の例外。
わたしの小南さん。
…体がむずむずする。息が荒くなる。くすぐったくてすごく恥ずかしい気がする。いや…ではない気もする。
「…万歳して」
「…?こう…ですか」
「…?こう…ですか」
言われるままに両手をあげたら上着をまとめて脱がされた。上は下着だけ。さすがに恥ずかしい。
わたしの胸はおおきい部類に入るみたい。両の掌であらためて触られて揉まれる。むにゅむにゅと玩ばれる。
「…はッ、あぁ…、んぅ…」
くすぐったいが強くなったみたいな感覚に襲われる。どんどん強くなる。
ベッドに倒されて、腰からお腹にくちづけされた。ちゅっちゅっとエッチな音がたつ。おへそを舌でちろちろとくすぐられる。すごく恥ずかしい。
「…はッ、あぁ…、んぅ…」
くすぐったいが強くなったみたいな感覚に襲われる。どんどん強くなる。
ベッドに倒されて、腰からお腹にくちづけされた。ちゅっちゅっとエッチな音がたつ。おへそを舌でちろちろとくすぐられる。すごく恥ずかしい。
「…くすぐったい、ですよぅ…。はぁ」
声に出てしまった。けど小南さんの動きは止まらない。
「…早矢ちゃん、すげぇかわいい。色っぽい」
…むしろ、わたしが喋ると小南さんが元気になってく気がする。気のせいかな…
「…肌真っ白だね。雪みたい」
…小南さんは、もっと焼けた肌のほうが好きなのかな…。そう考えたらちょっと悲しくなった。
今日見に行った小南さんの部活に、綺麗な女の人が二人いた。私のお菓子を褒めてくれた人と、私と正反対な…太陽みたいな活発な人。
もっと自分を前に出せたら。と私はずっと願ってきた。こんな私が大嫌いだった。
声に出てしまった。けど小南さんの動きは止まらない。
「…早矢ちゃん、すげぇかわいい。色っぽい」
…むしろ、わたしが喋ると小南さんが元気になってく気がする。気のせいかな…
「…肌真っ白だね。雪みたい」
…小南さんは、もっと焼けた肌のほうが好きなのかな…。そう考えたらちょっと悲しくなった。
今日見に行った小南さんの部活に、綺麗な女の人が二人いた。私のお菓子を褒めてくれた人と、私と正反対な…太陽みたいな活発な人。
もっと自分を前に出せたら。と私はずっと願ってきた。こんな私が大嫌いだった。
でも…今はもういいんです。こんな私でも好きになってくれる人はいたから。
「…あ。」
色んな事を考えていたら、いつの間にか上の下着が無くなっていた。わたしの胸が露わになって、小南さんにじっと見られてる。ものすごく恥ずかしい。
「…あ、あの!…あんまり見られるとわたし…
恥ずかしくて死んじゃいます…」
そうお願いして、わたしは顔を覆って視界を絶った。顔から火が出るって思った。
「…あっ!」
胸の先端に、濡れた人の体温を感じた。舐められて、吸われてる。もう片方は指でくりくりされてるみたい。
むず痒くて、くすぐったい。…でもちょっと気持ちいい。恥ずかしすぎて恥ずかしくなくなった。
色んな事を考えていたら、いつの間にか上の下着が無くなっていた。わたしの胸が露わになって、小南さんにじっと見られてる。ものすごく恥ずかしい。
「…あ、あの!…あんまり見られるとわたし…
恥ずかしくて死んじゃいます…」
そうお願いして、わたしは顔を覆って視界を絶った。顔から火が出るって思った。
「…あっ!」
胸の先端に、濡れた人の体温を感じた。舐められて、吸われてる。もう片方は指でくりくりされてるみたい。
むず痒くて、くすぐったい。…でもちょっと気持ちいい。恥ずかしすぎて恥ずかしくなくなった。
「…早矢ちゃんのおっぱい」
片方の胸の先からちゅぱちゅぱ音がして、もう片方はまんべんなく揉まれてる。頭がふわふわしてどこかに飛んで行っちゃいそうです…
片方の胸の先からちゅぱちゅぱ音がして、もう片方はまんべんなく揉まれてる。頭がふわふわしてどこかに飛んで行っちゃいそうです…
「…はぁっ、あっん!だめですよぅ…、吸わないでぇ」
小南さんがわたしにくれる感覚は、恥ずかしいけど嫌じゃない。
でもこのままだと、もっと恥ずかしい私の様を見られちゃう気がする。それは少し怖い。
「…はぁ、はぁ…、…ふぇ?」
胸から彼の体温が離れた。恐る恐る目隠しをとってみると、わたしのズボンが脱がされようとしていた。
ベルトが外されて、ボタンも外れて、ファスナーがジーって下ろされる。
「腰浮かせられる?」
「は…い」
結局言われるがままのわたし。おっぱいを隠しながら腰をあげる。
するするとズボンは脱がされて、パンツと靴下だけにされた。我ながらなんて格好だろう。考えるだけでくらくらする。
そして小南さんも服を脱ぐ。上下の上着が無くなると、固く巻かれた右肩の包帯が目についた。どうしたんだろう?
「…肩、だいじょうぶ…ですか」
「…ちょっと、包帯がキツイかな」
彼がははっと笑い、包帯をしゅるしゅると解いてゆく。私は言葉を失った。
そこは、内出血の集まりのように、赤黒く腫れていた。今にも血が滲んできそうだった。
小南さんがわたしにくれる感覚は、恥ずかしいけど嫌じゃない。
でもこのままだと、もっと恥ずかしい私の様を見られちゃう気がする。それは少し怖い。
「…はぁ、はぁ…、…ふぇ?」
胸から彼の体温が離れた。恐る恐る目隠しをとってみると、わたしのズボンが脱がされようとしていた。
ベルトが外されて、ボタンも外れて、ファスナーがジーって下ろされる。
「腰浮かせられる?」
「は…い」
結局言われるがままのわたし。おっぱいを隠しながら腰をあげる。
するするとズボンは脱がされて、パンツと靴下だけにされた。我ながらなんて格好だろう。考えるだけでくらくらする。
そして小南さんも服を脱ぐ。上下の上着が無くなると、固く巻かれた右肩の包帯が目についた。どうしたんだろう?
「…肩、だいじょうぶ…ですか」
「…ちょっと、包帯がキツイかな」
彼がははっと笑い、包帯をしゅるしゅると解いてゆく。私は言葉を失った。
そこは、内出血の集まりのように、赤黒く腫れていた。今にも血が滲んできそうだった。
「いたく、ないんですか…?」
「…麻酔されてるみたいでさ。痛くはないよ。少し熱持ってる気がするけど。
でも、手先まで感覚があるから不思議だよね」
そう言って小南さんは指先を開閉してみせる。わたしから見ても、明らかに軽くはない怪我なのに。
…わたしに見られて、痛くないように振る舞ってるとしか思えない。
でもわたしは深くは聞けなかった。
小南さんが、私を起こして抱き寄せる。おっぱいが彼の胸でふにゅっとつぶれた。
「…ふぁ」
おっぱいの先っぽと、キスされる首すじがくすぐったい。小南さんの吐息がすごく近い。
そして、いつの間にか目の前にある彼の右肩。とても痛々しい色。
小南さんの攻めが緩まったので、わたしは彼の肩に舌を這わせてみる。…ちょっと仕返し。
「…うぁっ」
…彼の肩はやっぱり熱かった。他のどの所よりも。くちびるも軽くくっつけて、少しだけ吸ってみた。
「あっ…、…早矢、ちゃん…」
舌でぺろぺろしていると、彼の体にざわざわと鳥肌がたってゆく。同時に、私のお腹の下…小南さんの股間から圧力を感じてくる。何かが盛り上がってくる。
「…ふぁ?」
気になったので口を離して見てみると、彼の下着がテントを張っていた。そしてびくびくとわずかに動いていた。…すごくエッチな気がする。
小南さんが器用に下着を脱ぐ。彼のそれは、反動をつけて反り返った。
でも、手先まで感覚があるから不思議だよね」
そう言って小南さんは指先を開閉してみせる。わたしから見ても、明らかに軽くはない怪我なのに。
…わたしに見られて、痛くないように振る舞ってるとしか思えない。
でもわたしは深くは聞けなかった。
小南さんが、私を起こして抱き寄せる。おっぱいが彼の胸でふにゅっとつぶれた。
「…ふぁ」
おっぱいの先っぽと、キスされる首すじがくすぐったい。小南さんの吐息がすごく近い。
そして、いつの間にか目の前にある彼の右肩。とても痛々しい色。
小南さんの攻めが緩まったので、わたしは彼の肩に舌を這わせてみる。…ちょっと仕返し。
「…うぁっ」
…彼の肩はやっぱり熱かった。他のどの所よりも。くちびるも軽くくっつけて、少しだけ吸ってみた。
「あっ…、…早矢、ちゃん…」
舌でぺろぺろしていると、彼の体にざわざわと鳥肌がたってゆく。同時に、私のお腹の下…小南さんの股間から圧力を感じてくる。何かが盛り上がってくる。
「…ふぁ?」
気になったので口を離して見てみると、彼の下着がテントを張っていた。そしてびくびくとわずかに動いていた。…すごくエッチな気がする。
小南さんが器用に下着を脱ぐ。彼のそれは、反動をつけて反り返った。
すっごくいやらしい形のそれは、小刻みに頭を上下させていた。剥けかけたような皮の先が、何かの汁で塗れていた。
「…わぁ」
後に、これがわたしのあそこに入ってくる…。想像もつかないけど。保健体育で習っただけの知識。なんて役にたたないんだろう。
「…早矢ちゃん…」
小南さんを見上げると、彼もわたしを見ていた。彼の目が「触ってほしい」と言ってる。そんな気がした。
「…わぁ」
後に、これがわたしのあそこに入ってくる…。想像もつかないけど。保健体育で習っただけの知識。なんて役にたたないんだろう。
「…早矢ちゃん…」
小南さんを見上げると、彼もわたしを見ていた。彼の目が「触ってほしい」と言ってる。そんな気がした。
恐る恐る指を伸ばして触れてみると、それはびくんと大きく動いた。…痛かったのかな。
「痛く…ないですか?」
ゆっくりと上手にこすりながらそう聞いてみる。どうやら、気持ちいいらしい。
「…うっ、く…、あ、は…早矢ちゃん、…握ってみて。…っく」
「…は、はい」
小指から順にかけてゆく。握りしめると、それの脈動が掌を通じて生々しく伝わってきた。
「…そのままっ…!…上下に擦って…みて」
言われるままにしゅっしゅとこすってみる。段々と、わたしの体を触られるのより恥ずかしい気がしてきた。
「き、きもち…いいんですか」
彼は答えず、首をわずかに縦に振る。小さく洩れる彼の喘ぎに、わたしは少し嬉しくなった。
「…うっ、あっ、あぁっ、早矢ちゃん…!」
わたしの手の中で、更に固くおっきくなってゆく。先っぽからの液体が、わたしの手に塗れてちゅっちゅっと音を立てた。
「痛く…ないですか?」
ゆっくりと上手にこすりながらそう聞いてみる。どうやら、気持ちいいらしい。
「…うっ、く…、あ、は…早矢ちゃん、…握ってみて。…っく」
「…は、はい」
小指から順にかけてゆく。握りしめると、それの脈動が掌を通じて生々しく伝わってきた。
「…そのままっ…!…上下に擦って…みて」
言われるままにしゅっしゅとこすってみる。段々と、わたしの体を触られるのより恥ずかしい気がしてきた。
「き、きもち…いいんですか」
彼は答えず、首をわずかに縦に振る。小さく洩れる彼の喘ぎに、わたしは少し嬉しくなった。
「…うっ、あっ、あぁっ、早矢ちゃん…!」
わたしの手の中で、更に固くおっきくなってゆく。先っぽからの液体が、わたしの手に塗れてちゅっちゅっと音を立てた。
「…く、…早矢ちゃん、もう…いいよ」
「わ、わかりました…」
しばらく続けていたら、小南さんから止められた。掌を広げると、粘液がぬちゃっと音を立てた。
「わ、わかりました…」
しばらく続けていたら、小南さんから止められた。掌を広げると、粘液がぬちゃっと音を立てた。
「…ひゃっ」
そしてわたしは再びベッドに押し倒される。同時に、わたしの最後の下着がするするとおろされる。
「そ、そこはっ…」
もじもじしてみたけど、たいした抵抗にはならなかった。
恥ずかしい毛を小南さんに見られてしまったと思えば、間を置かずに股を開かれて、もっと恥ずかしい所があらわにされた。
「…イヤっ。…イヤぁっ」
羞恥の余りに涙が出た。このまま見られ続けたらわたしは死ぬだろう。そう思った。
「…あっ!」
毛と入口が何かに撫でられる。体がびくんと震えた。
わたしの股の真上にある小南さんの顔。舌で舐められている。恥ずかしすぎる。
「…ふぁ、あっ、き、きたな…です…っよ、んぅ!はぁ…あっう」
小南さんの舌の動きははっきりと分かった。上下に撫でられ、入口を拡張され、中に押し込まれ、おしりの穴にも触れられる。
「はッ、あ!…っんぁっ!んぅ!ダメぇっ…!」
認めたくない感覚。初めて味わう口での愛撫。例え様のない快感。エッチな声が口から洩れる。
そしてわたしは再びベッドに押し倒される。同時に、わたしの最後の下着がするするとおろされる。
「そ、そこはっ…」
もじもじしてみたけど、たいした抵抗にはならなかった。
恥ずかしい毛を小南さんに見られてしまったと思えば、間を置かずに股を開かれて、もっと恥ずかしい所があらわにされた。
「…イヤっ。…イヤぁっ」
羞恥の余りに涙が出た。このまま見られ続けたらわたしは死ぬだろう。そう思った。
「…あっ!」
毛と入口が何かに撫でられる。体がびくんと震えた。
わたしの股の真上にある小南さんの顔。舌で舐められている。恥ずかしすぎる。
「…ふぁ、あっ、き、きたな…です…っよ、んぅ!はぁ…あっう」
小南さんの舌の動きははっきりと分かった。上下に撫でられ、入口を拡張され、中に押し込まれ、おしりの穴にも触れられる。
「はッ、あ!…っんぁっ!んぅ!ダメぇっ…!」
認めたくない感覚。初めて味わう口での愛撫。例え様のない快感。エッチな声が口から洩れる。
程なくして舌が離れると、恥ずかしさの緩和と淋しさが同時に訪れた。
「はぁ、…はぁっ、ふ…ぁ」
さっきわたしが擦ってた小南さんのあれが、ぐちょぐちょになってしまったあそこに向けられる。
そして、ねばねばとした粘液を纏い、股間同士が触れ合った。
「はぁ、…はぁっ、ふ…ぁ」
さっきわたしが擦ってた小南さんのあれが、ぐちょぐちょになってしまったあそこに向けられる。
そして、ねばねばとした粘液を纏い、股間同士が触れ合った。
「…入れていい?最初痛いかも」
なんにも考えられなくなったわたしは、頭をただ縦に振った。口から垂れるよだれすらも、気にかけてはいられない。
「んっ…」
体外からの別の体温の進入。熱をもった小南さんの固いものがわたしの中にめり込んでくる。
体外からの別の体温の進入。熱をもった小南さんの固いものがわたしの中にめり込んでくる。
「…くっ!」
「…んぁ!」
「…んぁ!」
ずぶり、と一気に突き刺された。痛い、痛くて熱い。小南さんのあれの形がはっきりとわかる。小南さんの鼓動が伝わる。
「あ…ぁ…!いっ…痛いよぉ…」
たまらず声に出た。すると小南さんは手を握ってくれて、キスをしてくれた。少しだけ痛みが引いていく気がした。
「ん…む…ぅ」
わたしからも舌を絡めてみる。濃厚でエッチなキスと共に、小南さんが腰を揺すりだす。
「んあっ…、あっ…、あっ!」
出たり入ったりを繰り返され、わたしは恥ずかしい声を漏らす。
「くぅ…、早矢ちゃん…」
小南さんは…気持ちよくなってくれてるみたい。彼の弛緩した顔を見ると、それだけで嬉しくなった。
淡々と繰り返される出し入れの所々で、小南さんはわたしの苦痛を和らげようと色々してくれた。
気持ちいいところを触ってくれたり、髪を撫でてくれたり。
痛みが消えたわけではないけど、それ以外の感覚も生まれた。依存性のある、甘美な感覚。
「早矢ちゃん…、早矢ちゃん!」
「あ…ぁ…!いっ…痛いよぉ…」
たまらず声に出た。すると小南さんは手を握ってくれて、キスをしてくれた。少しだけ痛みが引いていく気がした。
「ん…む…ぅ」
わたしからも舌を絡めてみる。濃厚でエッチなキスと共に、小南さんが腰を揺すりだす。
「んあっ…、あっ…、あっ!」
出たり入ったりを繰り返され、わたしは恥ずかしい声を漏らす。
「くぅ…、早矢ちゃん…」
小南さんは…気持ちよくなってくれてるみたい。彼の弛緩した顔を見ると、それだけで嬉しくなった。
淡々と繰り返される出し入れの所々で、小南さんはわたしの苦痛を和らげようと色々してくれた。
気持ちいいところを触ってくれたり、髪を撫でてくれたり。
痛みが消えたわけではないけど、それ以外の感覚も生まれた。依存性のある、甘美な感覚。
「早矢ちゃん…、早矢ちゃん!」
そしていつしか、小南さんは出し入れの速度を上げる。小南さんの汗がたくさんわたしに降りかかり、すごく切羽詰まった顔をしていた。
「小…南、さぁん…!」
わたしを呼ぶ声に、声を絞り出して応える。熱い、体が熱い。
終わりが近い事を悟ったわたしは、両手を広げて小南さんに抱擁をねだった。
彼がわたしの頭と背に手を回し、わたしを強く抱きしめてくれた。
もう何も怖くなかった。
「小…南、さぁん…!」
わたしを呼ぶ声に、声を絞り出して応える。熱い、体が熱い。
終わりが近い事を悟ったわたしは、両手を広げて小南さんに抱擁をねだった。
彼がわたしの頭と背に手を回し、わたしを強く抱きしめてくれた。
もう何も怖くなかった。
「…ああっ…く!」
「ふぁっ…あ…あぁ!?」
わたしの1番深いところで、小南さんの動きは止まる。
逆に、わたしに突き刺さった小南さんのあれはびくびくと動き、わたしの中に何かをたくさん出していた。とても熱い…何か。
麻薬か或いは麻酔か。わたしの傷口を充たしてゆくそれに、わたしは次第に睡んでいった…。
「ふぁっ…あ…あぁ!?」
わたしの1番深いところで、小南さんの動きは止まる。
逆に、わたしに突き刺さった小南さんのあれはびくびくと動き、わたしの中に何かをたくさん出していた。とても熱い…何か。
麻薬か或いは麻酔か。わたしの傷口を充たしてゆくそれに、わたしは次第に睡んでいった…。
しばらくして目覚めたわたしは、口で綺麗にしてっ」と言う小南さんのお願いを聞く事になった。
ついさっきまでわたしに刺さっていた小南さんのあれを、頬張るように舐めている。歯が当たると痛いらしい。
舌と唇、唾液を使って、細かいところまで浄める。最初、力無く縮んでたこれも、わたしの口の中でいつの間にか再び硬く大きくなっていた。
「はむ…、ん…ぶ、…ん」
「早矢ちゃん…うく…、そのままで…いいから、はぁっ…、聞いてくれる?」
「…ふぇ?」
見上げるわたしに小南さんは笑顔を向けてくれて、撫でてくれる。髪を擽る指はやっぱり気持ちいい。
ついさっきまでわたしに刺さっていた小南さんのあれを、頬張るように舐めている。歯が当たると痛いらしい。
舌と唇、唾液を使って、細かいところまで浄める。最初、力無く縮んでたこれも、わたしの口の中でいつの間にか再び硬く大きくなっていた。
「はむ…、ん…ぶ、…ん」
「早矢ちゃん…うく…、そのままで…いいから、はぁっ…、聞いてくれる?」
「…ふぇ?」
見上げるわたしに小南さんは笑顔を向けてくれて、撫でてくれる。髪を擽る指はやっぱり気持ちいい。
「あ…、早矢ちゃんゴメン!…くっ!」
「…ん!…んんぅ!」
「…ん!…んんぅ!」
…苦い。苦くてねばねばしたものがいっぱい口の中に飛び出してきた。わたしは思わず顔をしかめる。
小南さんは、白濁のとろりとしたそれを全て出し切り、わたしの口を拭ってくれる。
小南さんは、白濁のとろりとしたそれを全て出し切り、わたしの口を拭ってくれる。
「…ゴメンね」
「にがい…ですよぅ。
…きもちよかったですか?」
「…うん。すっごく」
「…えへへ」
「にがい…ですよぅ。
…きもちよかったですか?」
「…うん。すっごく」
「…えへへ」
でも、ちょっと嬉しかった。
---
小南がその後早矢に話した事は、嘘偽りの無い自分の現状。野球との決別。
話を聞き終えた早矢は、俯く小南に向けて変わらない笑顔を見せてくれた。
そして「これから、ずっと一緒に」との言葉をくれた。
天を仰いだ小南は、今一度早矢を抱きしめた。
そして、今自分の傍にいてくれる子が早矢であること。それを何かに感謝した。
そして、今自分の傍にいてくれる子が早矢であること。それを何かに感謝した。
「おう、橘みずきだな。猫手の選手寮へようこそ。荷物もあることだし、早速部屋に案内しよう」
「は、はい。よろしくお願いしますっ」
「は、はい。よろしくお願いしますっ」
今日、私橘みずきはミゾットキャットハンズ(以下猫手)へ入団する。先の甲子園大会及び予選の活躍のお陰か、高校生ドラフトで三位に引っかかる事ができた。
猫手には、女性プロ野球選手の先駆者となった早川あおい選手がいる。彼女に対しては、憧憬心とちょっとした家庭の諸事情で複雑な思いがある。
だけど私にそんな事は関係ない。同じ学校から猪狩カイザースに一位で入団した男と「シリーズで会う」と約束した。
この世界ではい上がってやると誓ったのだから。
猫手には、女性プロ野球選手の先駆者となった早川あおい選手がいる。彼女に対しては、憧憬心とちょっとした家庭の諸事情で複雑な思いがある。
だけど私にそんな事は関係ない。同じ学校から猪狩カイザースに一位で入団した男と「シリーズで会う」と約束した。
この世界ではい上がってやると誓ったのだから。
「…ここが、今日からあんたが暮らす部屋だ。一年目は引越しはできないからな。
…知ってると思うけど、ウチには今女のプロ野球選手が既にいる。まあ、もうこの寮にはいないけど。
他んとこよりは女の子でも生活しやすくなってるよ」
「…お気遣いありがとうございます。でも私は別に平気ですんで」
「そう?まぁみずきなら平気そーだな。
…あーそうそう。俺がここの寮長だ。よろしくな。何かあったら聞いてくれ」
…知ってると思うけど、ウチには今女のプロ野球選手が既にいる。まあ、もうこの寮にはいないけど。
他んとこよりは女の子でも生活しやすくなってるよ」
「…お気遣いありがとうございます。でも私は別に平気ですんで」
「そう?まぁみずきなら平気そーだな。
…あーそうそう。俺がここの寮長だ。よろしくな。何かあったら聞いてくれ」
部屋に案内され、私は多めの荷物を下ろす。さっそく私はそこのアホ男に一つ質問する事にした。
「寮長さん。じゃあ一つ聞いていいですか?」
「おー何だ?」
「寮長さん。じゃあ一つ聞いていいですか?」
「おー何だ?」
「…なんであんたがここにいんのよ小南くん!!」
寮長を名乗る小南 要を精神注入棒でみずきはどついた。ベチン!とゴム特有の高い音が響く。
「痛!…何しやがる!寮長に向かって!パワリン三つやんねーぞ!」
「いらないわよ!」
寮長を名乗る小南 要を精神注入棒でみずきはどついた。ベチン!とゴム特有の高い音が響く。
「痛!…何しやがる!寮長に向かって!パワリン三つやんねーぞ!」
「いらないわよ!」
「だーから俺が寮長だからだよ!ここの管理人がいないからって、おめーも知ってるカイザースの寮長に紹介されたの!」
それだけ聞いて、みずきはゴム製凶器を引っ込めた。
それだけ聞いて、みずきはゴム製凶器を引っ込めた。
「…卒業した後、連絡取れなくなって…、みんな心配してたんだよ?」
「…ああ、悪かったよ」
頭を掻きながら小南は詫びた。
「…ああ、悪かったよ」
頭を掻きながら小南は詫びた。
「後でゆっくり聞いてやるから。ほれ、練習でも行ってこいよ。元キャプテンに追い付くんだろ?カイザースの」
「…うん」
小南がパワリンを手渡すと、みずきは荷物からグラブとスパイクを引っ張り出した。
「…ってなんでその事知ってんの!?」
「この前キャプテンとは話したからな」
「私にも言いなさいってぇの!バカ!後でまた来るからね!プリンおごらせてやる!」
みずきは走って室外へと出ていく。練習に向かう彼女の瞳には力強さが宿り、小南は少し安心した。
「…うん」
小南がパワリンを手渡すと、みずきは荷物からグラブとスパイクを引っ張り出した。
「…ってなんでその事知ってんの!?」
「この前キャプテンとは話したからな」
「私にも言いなさいってぇの!バカ!後でまた来るからね!プリンおごらせてやる!」
みずきは走って室外へと出ていく。練習に向かう彼女の瞳には力強さが宿り、小南は少し安心した。
「…どうかしました?お客さん?」
部屋の奥から、長い髪を後ろで結わえた早矢が出てくる。彼女は今日のみずきの入寮に備え、部屋の掃除と準備をしていた。
「新人だよ。知り合いの。早矢ちゃんもたぶん知ってる奴」
「そう…ですか。…あの、お部屋の準備が終わりました」
「ふぅ」と早矢が袖で汗を拭う。汗をかいた今の彼女は、普段見えないうなじが覗ける髪型のせいもあってかとても新鮮だった。
部屋の奥から、長い髪を後ろで結わえた早矢が出てくる。彼女は今日のみずきの入寮に備え、部屋の掃除と準備をしていた。
「新人だよ。知り合いの。早矢ちゃんもたぶん知ってる奴」
「そう…ですか。…あの、お部屋の準備が終わりました」
「ふぅ」と早矢が袖で汗を拭う。汗をかいた今の彼女は、普段見えないうなじが覗ける髪型のせいもあってかとても新鮮だった。
「…あ、あんまり見ないでください。」
「…可愛いなぁその髪型も」
「…可愛いなぁその髪型も」
あの時くれた言葉の通り、小南要の第二の野球人生の傍らにも、ずっと今野早矢はいた。
やっぱりちょっと内気で言葉数の少ない彼女だが、昔よりも良く笑ってくれるようになった。
やっぱりちょっと内気で言葉数の少ない彼女だが、昔よりも良く笑ってくれるようになった。
この若輩者の選手寮長が、早矢の頭を撫でる。その時彼女がくれる笑顔はいつも変わらなかった。
「お疲れ様。早矢ちゃん」