さて、この時期になれば健全な男子生徒諸君は少なからず意識してしまうものではないだろうか。
そうバレンタインデー。
たくさんの女子からもらいまくる男。
義理でも誰かからもらえるあてがある男。
もらえないと思っていても心のどこかで期待してしまう男。
最初から完全にあきらめている男。
そもそもこの日を意識していない男。
そうバレンタインデー。
たくさんの女子からもらいまくる男。
義理でも誰かからもらえるあてがある男。
もらえないと思っていても心のどこかで期待してしまう男。
最初から完全にあきらめている男。
そもそもこの日を意識していない男。
憧れの男子に想いを馳せて贈り物を作る女。
友達に多くの義理チョコを振舞う女。
恥ずかしくて上手く渡せずやきもきしている女。
そんなことに全く興味がない女
様々な男女の想いが交錯するこのシーズン、さてここ聖タチバナ学園野球部ではどういったエピソードが見られるのか。
友達に多くの義理チョコを振舞う女。
恥ずかしくて上手く渡せずやきもきしている女。
そんなことに全く興味がない女
様々な男女の想いが交錯するこのシーズン、さてここ聖タチバナ学園野球部ではどういったエピソードが見られるのか。
『笑顔花開くとき』
まずは自己紹介を、俺の名前は小波優。
聖タチバナ学園野球部主将及びエースを務めさせてもらっていた身だがすでにもう引退し、
ありがたいことにプロ入りも確定している。
が、どうしても学校は卒業したいため、無理を言って春季キャンプ合流を待っていただいている。
今はトレーニングを毎日一定量こなしつつたまには同じ3年生でプロ入りが確定した矢部くんやみずきちゃんと一緒に
聖ちゃん率いる新生聖タチバナ野球部の様子を見に行ったり、やたらといまさら勉学に励んでみたり、
と残り少ない高校生活を満喫している。
ずっと学園長をみずきちゃんと一緒に欺いていたがようやくその重圧からも開放され、ほっとしている今日この頃である。
この件に関してはみずきちゃんのお姉さんや神童元プロに感謝せねばならないだろう。
聖タチバナ学園野球部主将及びエースを務めさせてもらっていた身だがすでにもう引退し、
ありがたいことにプロ入りも確定している。
が、どうしても学校は卒業したいため、無理を言って春季キャンプ合流を待っていただいている。
今はトレーニングを毎日一定量こなしつつたまには同じ3年生でプロ入りが確定した矢部くんやみずきちゃんと一緒に
聖ちゃん率いる新生聖タチバナ野球部の様子を見に行ったり、やたらといまさら勉学に励んでみたり、
と残り少ない高校生活を満喫している。
ずっと学園長をみずきちゃんと一緒に欺いていたがようやくその重圧からも開放され、ほっとしている今日この頃である。
この件に関してはみずきちゃんのお姉さんや神童元プロに感謝せねばならないだろう。
そんなこんなで何もかもが順調で幸せな道を突き進んでいた俺だがまさかプロ入りが確定したあとにこんなに悩む場面が
最後に待ち受けているなんて思わなかったんだ・・・
始まりから順を追って話していこうかと思う。
最後に待ち受けているなんて思わなかったんだ・・・
始まりから順を追って話していこうかと思う。
「小波くん、もうすぐバレンタインデーでやんすね」
2年前からこのシーズンに必ず聞く親友の少し憂鬱そうな言葉に俺はそうだねと適当に返す。
「小波くんは何度も本命もらった経験があるからいいでやんす! おいらなんて、おいらなんて・・・」
年を重ねるごとに彼の言葉のテンションが下がっていくのももはや予想通りである。
「何いってるんだよ矢部くん、マネージャーやみずきちゃん、聖ちゃんからももらっただろ?」
「でもあれは部員全員に配ってたものでやんす! おいらだけのがいいでやんす!」
もらえるだけ幸せだろうにと言おうと思ったが自分が言っても説得力がないので言葉を呑む。
「大体小波くん! 毎年毎年あんな可愛い女の子たちに告白されて全部蹴るとは何事でやんすか!?
怒りを通り越したあきれをさらに通り越してまた怒りへとおいらは達したでやんすよ!!」
「そんなこと言われてもなぁ、外見が可愛いから付き合うってわけじゃないし」
2年前からこのシーズンに必ず聞く親友の少し憂鬱そうな言葉に俺はそうだねと適当に返す。
「小波くんは何度も本命もらった経験があるからいいでやんす! おいらなんて、おいらなんて・・・」
年を重ねるごとに彼の言葉のテンションが下がっていくのももはや予想通りである。
「何いってるんだよ矢部くん、マネージャーやみずきちゃん、聖ちゃんからももらっただろ?」
「でもあれは部員全員に配ってたものでやんす! おいらだけのがいいでやんす!」
もらえるだけ幸せだろうにと言おうと思ったが自分が言っても説得力がないので言葉を呑む。
「大体小波くん! 毎年毎年あんな可愛い女の子たちに告白されて全部蹴るとは何事でやんすか!?
怒りを通り越したあきれをさらに通り越してまた怒りへとおいらは達したでやんすよ!!」
「そんなこと言われてもなぁ、外見が可愛いから付き合うってわけじゃないし」
今のやり取りで察してもらえたとは思うが俺は自分で言うのもなんだが”もらえる側”の人間だ。
しかし大して面識の無い子から唐突に告白されたりするのは正直困る。
やはりこういうのは互いのことをよく知ってからのほうが良いと思うのが個人的な意見だ。
しかし大して面識の無い子から唐突に告白されたりするのは正直困る。
やはりこういうのは互いのことをよく知ってからのほうが良いと思うのが個人的な意見だ。
まぁこうしてこのシーズンになんともありがちなやり取りをしていた俺たちだが・・・
「優くーん、次の土曜日聖に聞いたら部活やるってさ、一緒に練習行かない?」
このみずきちゃんの問いに何も考えずに矢部くんとともに二つ返事で頷いてしまったのが全ての始まりだった。
「優くーん、次の土曜日聖に聞いたら部活やるってさ、一緒に練習行かない?」
このみずきちゃんの問いに何も考えずに矢部くんとともに二つ返事で頷いてしまったのが全ての始まりだった。
そうこの土曜日こそがかの有名な司祭(だったか?)が処刑された日だったのである。
そんなことは当時地平線の彼方かどっかに忘れてきた俺だ。何も考えずに早朝ランニングを済ませ、
支度をして学校へと向かった。
「む、小波先輩。おはようございます」
新キャプテンの聖ちゃんが俺を発見すると挨拶をしてきた。丁寧に頭まで下げて。
らしくない挨拶だ、動きもなんかぎこちない。
「おう? おはよう、どうしたの今日はかしこまってさ」
「いや! 深い意味はないんだ、気分だ気分」
「なんじゃそりゃ」
すぐにもとの調子に戻った聖ちゃんを見て安心しつつも更衣室へと向かった。
「あ、そういえば聖ちゃん。みずきちゃんはまだ来てないの?」
歩みを止めて再び聖ちゃんのほうへと振り返る。
「まだ、だな」
「なんだよ〜いいだしっぺなら遅刻するなよな」
みずきちゃんと設定した時間は現役生の集合時間の30分後だ。矢部くんはすでに更衣室へ入っている。
独り言のつもりで何気なく言った言葉だったが聖ちゃんは複雑な表情を見せて
「実は今日私も遅刻したんだ。自分で時間を設定しておいて情けない限りだが」
と言ってきた。信じられないなと視線で言いつつ言葉を返す。
「聖ちゃんが? またまた珍しい。どうしたの?」
「や、そ、その・・・準備にちょっと手間取ってしまってな」
いつものキレがない声だ。何か恥ずかしい理由でもあるのだろうか。
主語のない聖ちゃんの言葉に俺はそのとき勝手に部活へ行く準備がと解釈してしまったのだが、
部活が終了した後にそれは違うということを俺は知ることになる。
そんなことは当時地平線の彼方かどっかに忘れてきた俺だ。何も考えずに早朝ランニングを済ませ、
支度をして学校へと向かった。
「む、小波先輩。おはようございます」
新キャプテンの聖ちゃんが俺を発見すると挨拶をしてきた。丁寧に頭まで下げて。
らしくない挨拶だ、動きもなんかぎこちない。
「おう? おはよう、どうしたの今日はかしこまってさ」
「いや! 深い意味はないんだ、気分だ気分」
「なんじゃそりゃ」
すぐにもとの調子に戻った聖ちゃんを見て安心しつつも更衣室へと向かった。
「あ、そういえば聖ちゃん。みずきちゃんはまだ来てないの?」
歩みを止めて再び聖ちゃんのほうへと振り返る。
「まだ、だな」
「なんだよ〜いいだしっぺなら遅刻するなよな」
みずきちゃんと設定した時間は現役生の集合時間の30分後だ。矢部くんはすでに更衣室へ入っている。
独り言のつもりで何気なく言った言葉だったが聖ちゃんは複雑な表情を見せて
「実は今日私も遅刻したんだ。自分で時間を設定しておいて情けない限りだが」
と言ってきた。信じられないなと視線で言いつつ言葉を返す。
「聖ちゃんが? またまた珍しい。どうしたの?」
「や、そ、その・・・準備にちょっと手間取ってしまってな」
いつものキレがない声だ。何か恥ずかしい理由でもあるのだろうか。
主語のない聖ちゃんの言葉に俺はそのとき勝手に部活へ行く準備がと解釈してしまったのだが、
部活が終了した後にそれは違うということを俺は知ることになる。
「全く、いいだしっぺのみずきちゃんが遅刻なんて」
着替え終わったころにみずきちゃんが息を切らせてやってきた。自転車でとばしてきたらしい。
「ごめんね〜準備に手間取っちゃってさ」
あれ?ついさっきおんなじような理由を聞いた気がする。
まぁいいか。
・・・実は全然よくなかったのだが。
着替え終わったころにみずきちゃんが息を切らせてやってきた。自転車でとばしてきたらしい。
「ごめんね〜準備に手間取っちゃってさ」
あれ?ついさっきおんなじような理由を聞いた気がする。
まぁいいか。
・・・実は全然よくなかったのだが。
「小波くん! 今日はバッティングで勝負でやんす!」
「ほほぅ、俺がひたすら投げてるだけだったと思わないことだな」
「望むところでやんす!」
ヘルメットを装着し、二人で笑いあう。
「じゃあ私が投げるわ、プロ確定の二人相手に腕試しってところかしら」
「なら球は私が受けよう。異論はないな? 先輩方」
聖タチバナ黄金の女性バッテリーの復活に部員たちは練習の手をやめて4人に見入っている。
「あちゃ〜まずバッティングにならないかもよ矢部くん?」
「なんでおいらに振るでやんすか!」
「じゃあ一番成績が悪かった人が他のみんなにパワ堂で奢りね♪」
自信満々にウインクをするみずきちゃん。こら後輩ども。顔を赤くしてんじゃねぇ。
「よし燃えてきたー!」
「ほほぅ、俺がひたすら投げてるだけだったと思わないことだな」
「望むところでやんす!」
ヘルメットを装着し、二人で笑いあう。
「じゃあ私が投げるわ、プロ確定の二人相手に腕試しってところかしら」
「なら球は私が受けよう。異論はないな? 先輩方」
聖タチバナ黄金の女性バッテリーの復活に部員たちは練習の手をやめて4人に見入っている。
「あちゃ〜まずバッティングにならないかもよ矢部くん?」
「なんでおいらに振るでやんすか!」
「じゃあ一番成績が悪かった人が他のみんなにパワ堂で奢りね♪」
自信満々にウインクをするみずきちゃん。こら後輩ども。顔を赤くしてんじゃねぇ。
「よし燃えてきたー!」
結果から言わせてもらうと面白みがない結果で大変申し訳ないがほとんど引き分けの成績で幕を閉じた。
後日みんなで割り勘で行く約束をしてこの勝負は終わった。
そして部活終了のミーティングへと場面は移行する。
後日みんなで割り勘で行く約束をしてこの勝負は終わった。
そして部活終了のミーティングへと場面は移行する。
「では本日の練習はここまで!」
監督のいつもの言葉で締められ、部活は終了を告げる。
「はぁ〜い! みんなー! チョコもって来たよ!」
「待ってましたー!」「ありがとうございまーす!」
みずきちゃんの言葉に光のような速さで後輩たちが反応する。今の超反応を試合で見せてくれ。
「私も持ってきている。どうぞ召し上がれだ」
そういえば今日こそがそのバレンタインだったなと俺は思い出していた。
良かったね矢部くん学校の無い土曜日ならダメージを軽減できるよ。
内心そんなことを思いながら目の前の光景を観察する。
我が学園でも指折りの美少女たちからのチョコだ、たとえ義理だと分かっていても大半の野郎のテンションは
それはそれはもううなぎ上りという言葉が一番相応しいに違いない。
しかも二人ともおかしづくりの腕前は折り紙つきだ。
「さ、優くんもどうぞ!」「先輩、召し上がれだ」
断る理由など塵ほどにもない。ありがたく頂戴することにする。
「ん、ありがとう」
それぞれをまず一口ずつ順番に口の中へ入れる。
美味い・・・練習あとで糖分を脳が欲しているのもあるだろうが美味い。
「美味いよ、二人ともさすがだねぇ」
思ったままの素直な感想を述べる。
これに対して二人のリアクションはもちろん異なったが共通しているのは喜び、かな。
監督のいつもの言葉で締められ、部活は終了を告げる。
「はぁ〜い! みんなー! チョコもって来たよ!」
「待ってましたー!」「ありがとうございまーす!」
みずきちゃんの言葉に光のような速さで後輩たちが反応する。今の超反応を試合で見せてくれ。
「私も持ってきている。どうぞ召し上がれだ」
そういえば今日こそがそのバレンタインだったなと俺は思い出していた。
良かったね矢部くん学校の無い土曜日ならダメージを軽減できるよ。
内心そんなことを思いながら目の前の光景を観察する。
我が学園でも指折りの美少女たちからのチョコだ、たとえ義理だと分かっていても大半の野郎のテンションは
それはそれはもううなぎ上りという言葉が一番相応しいに違いない。
しかも二人ともおかしづくりの腕前は折り紙つきだ。
「さ、優くんもどうぞ!」「先輩、召し上がれだ」
断る理由など塵ほどにもない。ありがたく頂戴することにする。
「ん、ありがとう」
それぞれをまず一口ずつ順番に口の中へ入れる。
美味い・・・練習あとで糖分を脳が欲しているのもあるだろうが美味い。
「美味いよ、二人ともさすがだねぇ」
思ったままの素直な感想を述べる。
これに対して二人のリアクションはもちろん異なったが共通しているのは喜び、かな。
「さて、いい汗かいたし糖分補給もばっちりだしそろそろ帰るかな」
独り言のように言い、俺は更衣室へと向かった。そのときである、更衣室から見慣れた人影が出てきた。
「あれ? 大京じゃないか、どうしたんだ?」
「あぁ、ちょっと忘れ物をしてしまって・・・」
「なるほどね、まぁたまには部活にも顔出しなよ・・・つっても受験終わるまでは無理か」
「そうですね、はは。・・・それでは」
「おう、じゃあなー」
独り言のように言い、俺は更衣室へと向かった。そのときである、更衣室から見慣れた人影が出てきた。
「あれ? 大京じゃないか、どうしたんだ?」
「あぁ、ちょっと忘れ物をしてしまって・・・」
「なるほどね、まぁたまには部活にも顔出しなよ・・・つっても受験終わるまでは無理か」
「そうですね、はは。・・・それでは」
「おう、じゃあなー」
大京と別れ、更衣室へ入り、自分のロッカーを開ける。
入れた覚えの無い箱型の物体が二つ。丁寧にリボンがかわいらしくあしらわれている箱と、
これまた丁寧に包装されたどことなく雅な雰囲気のする箱の2つ。
自分の今いる場所やタイミング、箱の雰囲気で差出人は予想できてしまう。
しかも彼女たちは義理チョコをみんなに配っていた。つまりは・・・そういうこと・・・なのか?
ん? 手紙らしきものが・・・
入れた覚えの無い箱型の物体が二つ。丁寧にリボンがかわいらしくあしらわれている箱と、
これまた丁寧に包装されたどことなく雅な雰囲気のする箱の2つ。
自分の今いる場所やタイミング、箱の雰囲気で差出人は予想できてしまう。
しかも彼女たちは義理チョコをみんなに配っていた。つまりは・・・そういうこと・・・なのか?
ん? 手紙らしきものが・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時を少しさかのぼり、部活の昼休みのことである。
「あら、聖。どうしたの?」
いつもとは違う神妙な面持ちでみずきが聖に問う。
「いや・・・みずきこそどうしたんだ?」
これまた同じく複雑な表情を見せてみずきに返答し、質問を返す聖。
「私は・・・」
「・・・みずきは・・・小波先輩にそれをあげるのか?」
みずきが持っていた小さな箱に視線を移し、聖が言う。
「うん、そっか・・・聖も、なんだね」
同じように小さな箱を携えた聖を見てみずきはまた複雑な面持ちとなった。
ここで聖は小さく頷き、場が沈黙する。
いつもとは違う神妙な面持ちでみずきが聖に問う。
「いや・・・みずきこそどうしたんだ?」
これまた同じく複雑な表情を見せてみずきに返答し、質問を返す聖。
「私は・・・」
「・・・みずきは・・・小波先輩にそれをあげるのか?」
みずきが持っていた小さな箱に視線を移し、聖が言う。
「うん、そっか・・・聖も、なんだね」
同じように小さな箱を携えた聖を見てみずきはまた複雑な面持ちとなった。
ここで聖は小さく頷き、場が沈黙する。
「ひとつだけ、約束をしない?」
みずきの提案に聖は視線だけで答える。
「彼が、優くんがどっちを選ぼうとも恨みっこなし! まぁどっちも断られる可能性もあるけどね」
ぺろっと舌を出して笑うみずき。
「そうだな、恨みっこなしだ。最後に決めるのは先輩の意思だしな」
ふっと小さく聖が微笑する。
みずきの提案に聖は視線だけで答える。
「彼が、優くんがどっちを選ぼうとも恨みっこなし! まぁどっちも断られる可能性もあるけどね」
ぺろっと舌を出して笑うみずき。
「そうだな、恨みっこなしだ。最後に決めるのは先輩の意思だしな」
ふっと小さく聖が微笑する。
「直接渡そうかと思ってたけどそれなら話は別ね。部活が終わったら、優くんに決めてもらおう?」
再び聖は頷いた。
「みずきは・・・先輩のどこが好きなんだ?」
「私? 私は———」
再び聖は頷いた。
「みずきは・・・先輩のどこが好きなんだ?」
「私? 私は———」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あっ! 二人とも! この箱は、つまり・・・そういうことだよね?」
更衣を済ませた俺は校門前の二人を発見し、問いかける。
「一緒にくっついてた手紙は読んだでしょ? そのとおりに解釈してもらってかまわないわ」
「私もだ」
「そっか・・・うん。こういうのは立ってする話じゃないね。いい喫茶店を知ってるんだ。そこで、話をしよう」
この提案に二人は異を唱えることもなく素直に応じてきてくれた。
外見は落ち着いてるフリをしていた俺だが内心は本気で悩んでいた。
第3者からみればうらやましがられるような状況かもしれないが本当にきつい・・・
「それにしても二人とも、直接渡してくれればよかったのに」
沈黙はあまりに気まずいのでひとまず話を振る。
言いたいことは遠慮しない二人らしからぬ行為について問うことにした。
更衣を済ませた俺は校門前の二人を発見し、問いかける。
「一緒にくっついてた手紙は読んだでしょ? そのとおりに解釈してもらってかまわないわ」
「私もだ」
「そっか・・・うん。こういうのは立ってする話じゃないね。いい喫茶店を知ってるんだ。そこで、話をしよう」
この提案に二人は異を唱えることもなく素直に応じてきてくれた。
外見は落ち着いてるフリをしていた俺だが内心は本気で悩んでいた。
第3者からみればうらやましがられるような状況かもしれないが本当にきつい・・・
「それにしても二人とも、直接渡してくれればよかったのに」
沈黙はあまりに気まずいのでひとまず話を振る。
言いたいことは遠慮しない二人らしからぬ行為について問うことにした。
「先輩が二人のどっちを選んでも、どっちも選ばなくても恨みはしない覚悟が出来た、といったとこだな」
「右に同じく〜」
「右に同じく〜」
喫茶店に到着。結局考えはまとまらず、適当に飲み物を注文して俺は悩んでいた。
別に二人とも嫌だけど断るに断れないわけではない。むしろ逆だ。
二人のことを好きか嫌いかで答えるとしたら間違いなくそれこそ光のような速さで好きと答えれる自信がある。
対照的な二人だけど、2人ともそれぞれの魅力を持っている。
みずきちゃんの太陽のような明るさは一緒にいて元気が出るし1日を楽しく過ごせそうな気分にしてくれる。
だけど聖ちゃんと過ごす穏やかで落ち着いた時間はそれはそれで素敵に違いないものだ。
時々見せる素の表情に何度どきっとしたか分からない。
優柔不断と言われるかもしれないが2人のことは好きだ。だからこそ腹をくくらなければならないだろう。
それが2人に対する礼儀というものだ。俺は———
別に二人とも嫌だけど断るに断れないわけではない。むしろ逆だ。
二人のことを好きか嫌いかで答えるとしたら間違いなくそれこそ光のような速さで好きと答えれる自信がある。
対照的な二人だけど、2人ともそれぞれの魅力を持っている。
みずきちゃんの太陽のような明るさは一緒にいて元気が出るし1日を楽しく過ごせそうな気分にしてくれる。
だけど聖ちゃんと過ごす穏やかで落ち着いた時間はそれはそれで素敵に違いないものだ。
時々見せる素の表情に何度どきっとしたか分からない。
優柔不断と言われるかもしれないが2人のことは好きだ。だからこそ腹をくくらなければならないだろう。
それが2人に対する礼儀というものだ。俺は———
「考えがまとまった。俺が付き合うのは———」
もちろんみずきさんですよね?というあなたはこのまま続きを
聖かわいいよ聖な方は1つ飛ばして読んでください。
聖かわいいよ聖な方は1つ飛ばして読んでください。
「俺が付き合うのは———」
二人が俺をみつめる。俺は目を閉じ、その名を告げた。
二人が俺をみつめる。俺は目を閉じ、その名を告げた。
「みずきちゃんだ」
再び目を開くとそこには信じられないといわんばかりに目を見開いたみずきちゃんと
悟ったような表情で目を閉じ沈黙を貫く聖ちゃんの姿が映っていた。
「恨みっこなし・・・だからな。私はここで帰らせてもらう」
荷物を手に取り、聖ちゃんが立ち上がる。
「聖ちゃん・・・」
「だが、あの贈り物だけはもらってほしい。私の、好意と感謝の印に。もちろん先輩がよければだが」
「・・・ありがとう、聖ちゃん」
「っ! ・・・先輩は、優しい・・・な」
顔をそらし、聖ちゃんは走り去っていった。
今までこの日に何人も女子を振ってきたがこんなに心が痛んだことはなかった。
だがそれでも俺は目の前の彼女と付き合うと決めたんだ。前を見よう。
悟ったような表情で目を閉じ沈黙を貫く聖ちゃんの姿が映っていた。
「恨みっこなし・・・だからな。私はここで帰らせてもらう」
荷物を手に取り、聖ちゃんが立ち上がる。
「聖ちゃん・・・」
「だが、あの贈り物だけはもらってほしい。私の、好意と感謝の印に。もちろん先輩がよければだが」
「・・・ありがとう、聖ちゃん」
「っ! ・・・先輩は、優しい・・・な」
顔をそらし、聖ちゃんは走り去っていった。
今までこの日に何人も女子を振ってきたがこんなに心が痛んだことはなかった。
だがそれでも俺は目の前の彼女と付き合うと決めたんだ。前を見よう。
「ほ・・・」
ようやく言葉を発しようとするみずきちゃん。
「本当に私でいいの? あ、あんなにたくさん迷惑かけたのに?」
そんなこと考えてたのか、と内心思いつつも俺は言葉をつむいだ。
「最初はね、迷惑だなぁって思ってたけどね。でもいつのまにかその明るさに元気付けられてる自分がいたんだ、
あの偽りの関係だって本物になっても悪くないなって考えたこともあった。だからちゃんと言うよ。
・・・好きだ、みずきちゃん」
「っ!!」
声にならない声をあげてみずきちゃんが俺に抱きついてきた。
「ありがとう、優くん」
「ひとつだけ、どうして俺を好きになったのか教えて?」
「ん、正直に言うと具体的な理由は自分でもよく分かってないの。
ただいつの間にか優くんがいない日々が考えられなくなってたの、曖昧な理由でごめんね?」
不安げな表情、自然と生じる上目遣い、普段からは想像できない弱弱しい声。
いかん、くらっと来た。
「で、でも優くんのことは本当に好きでっ! その、えーっと・・・だからゆ・・・んふっ?!」
・・・反射だ。
え?なにがって反射的にみずきちゃんにキスをしてしまったのだ。互いを抱きしめる力が強くなる。
「これまでもそうだったように、これからも俺らならやっていける」
唇を離し、俺は言った。その言葉の先には・・・
ようやく言葉を発しようとするみずきちゃん。
「本当に私でいいの? あ、あんなにたくさん迷惑かけたのに?」
そんなこと考えてたのか、と内心思いつつも俺は言葉をつむいだ。
「最初はね、迷惑だなぁって思ってたけどね。でもいつのまにかその明るさに元気付けられてる自分がいたんだ、
あの偽りの関係だって本物になっても悪くないなって考えたこともあった。だからちゃんと言うよ。
・・・好きだ、みずきちゃん」
「っ!!」
声にならない声をあげてみずきちゃんが俺に抱きついてきた。
「ありがとう、優くん」
「ひとつだけ、どうして俺を好きになったのか教えて?」
「ん、正直に言うと具体的な理由は自分でもよく分かってないの。
ただいつの間にか優くんがいない日々が考えられなくなってたの、曖昧な理由でごめんね?」
不安げな表情、自然と生じる上目遣い、普段からは想像できない弱弱しい声。
いかん、くらっと来た。
「で、でも優くんのことは本当に好きでっ! その、えーっと・・・だからゆ・・・んふっ?!」
・・・反射だ。
え?なにがって反射的にみずきちゃんにキスをしてしまったのだ。互いを抱きしめる力が強くなる。
「これまでもそうだったように、これからも俺らならやっていける」
唇を離し、俺は言った。その言葉の先には・・・
「うん! んー大好きだよダーリンっ!」
笑顔が良く似合う女の子が一人いた。
笑顔が良く似合う女の子が一人いた。
みずきルートおしまい
「俺が付き合うのは———」
二人が俺をみつめる。俺は目を閉じ、その名を告げた。
二人が俺をみつめる。俺は目を閉じ、その名を告げた。
「聖ちゃんだ」
再び目を開くとそこには答えを知っていたかのような表情のみずきちゃんと
こちらを見つめたまま固まっている聖ちゃんの姿だった。
「ん、そっか。うん・・・じゃあ私は帰るね、迷惑ばっかかけてごめんね?」
荷物を手に取り、みずきちゃんが立ち上がる。
「そんなことない。こっちこそごめん、そしてありがとう」
「っ! もう! 付き合うって決めた女の子の前でそんなこと言わない!
聖まで泣かせることがあったらそれこそ泣くまで精神を注入してやるんだから!」
そう言い残し、みずきちゃんはその場を去った。テーブルに落ちた一滴の水に俺は
今までにないほど胸に痛みを覚えたがそれでも俺は目の前の彼女と付き合うと決めたんだ。前を見よう。
こちらを見つめたまま固まっている聖ちゃんの姿だった。
「ん、そっか。うん・・・じゃあ私は帰るね、迷惑ばっかかけてごめんね?」
荷物を手に取り、みずきちゃんが立ち上がる。
「そんなことない。こっちこそごめん、そしてありがとう」
「っ! もう! 付き合うって決めた女の子の前でそんなこと言わない!
聖まで泣かせることがあったらそれこそ泣くまで精神を注入してやるんだから!」
そう言い残し、みずきちゃんはその場を去った。テーブルに落ちた一滴の水に俺は
今までにないほど胸に痛みを覚えたがそれでも俺は目の前の彼女と付き合うと決めたんだ。前を見よう。
「で、聖ちゃん? 意識あります?」
「む、なんだか実感が湧かないんだ。いいのか先輩? 私なんかを選ぶなんて・・・
全然女らしくないし、みずきみたいに見た目も可愛くないし、一緒にいて退屈じゃないか?」
よかろう、今聖ちゃんが言った3つの要素全てを否定してやる。
「女らしくないって・・・聖ちゃんこそが大和撫子って感じだけどな、それに前も言ったでしょ、笑顔が可愛いねって。
仲が別に対して良くない奴との間に生じる沈黙は退屈で苦痛だけど聖ちゃんは違うよ。
なんか落ち着いて、穏やかでいい時間だなって思う」
順を追って3つ全てを否定する。
笑顔の件に関しては微笑み程度のものだが当時の俺はそれにかなりの衝撃を受けてこんなことを口走ったのだ。
「む、なんだか実感が湧かないんだ。いいのか先輩? 私なんかを選ぶなんて・・・
全然女らしくないし、みずきみたいに見た目も可愛くないし、一緒にいて退屈じゃないか?」
よかろう、今聖ちゃんが言った3つの要素全てを否定してやる。
「女らしくないって・・・聖ちゃんこそが大和撫子って感じだけどな、それに前も言ったでしょ、笑顔が可愛いねって。
仲が別に対して良くない奴との間に生じる沈黙は退屈で苦痛だけど聖ちゃんは違うよ。
なんか落ち着いて、穏やかでいい時間だなって思う」
順を追って3つ全てを否定する。
笑顔の件に関しては微笑み程度のものだが当時の俺はそれにかなりの衝撃を受けてこんなことを口走ったのだ。
『あっ! 今笑ったね、聖ちゃんは笑ってるほうが可愛いよ?』
今も告白に答えたテンションだからこんなことが言えるのだ。
「その先輩の言葉を聞いたあとからなんとなく、先輩のことが気になって仕方なかった。
それで先輩たちが引退して確信したんだ。私は、先輩のことが好きなんだと」
落ち着いた様子で淡々と話す聖ちゃん。
「あれは俺にとっても衝撃的な日だったからね。打ち解けていくと表情も豊かになってく気がして、
いつの間にか聖ちゃんの表情に魅入ってたときもあったくらい」
「そういわれると恥ずかしい、な」
と言った聖ちゃんの表情も正直かなり可愛かったのだがこれ以上の発言は変態扱いされかねないので自重する。
「なぁ先輩? 隣に行ってもいいか?」
テーブルの向かいの聖ちゃんが言った。黙って首肯する。これを拒否する輩がいるなら名乗れ、
俺が一人一人制裁してやる。
隣にやってきた聖ちゃんは微妙に距離を空けて座り、感慨深げにつぶやいた。
「私、先輩と付き合うんだな」
「何か問題ある?」
この問いに聖ちゃんは
「ない、そんなものはない、よ?」
そして空いていた微妙な距離を埋めるように聖ちゃんが俺のほうへ寄り、言った。
「その先輩の言葉を聞いたあとからなんとなく、先輩のことが気になって仕方なかった。
それで先輩たちが引退して確信したんだ。私は、先輩のことが好きなんだと」
落ち着いた様子で淡々と話す聖ちゃん。
「あれは俺にとっても衝撃的な日だったからね。打ち解けていくと表情も豊かになってく気がして、
いつの間にか聖ちゃんの表情に魅入ってたときもあったくらい」
「そういわれると恥ずかしい、な」
と言った聖ちゃんの表情も正直かなり可愛かったのだがこれ以上の発言は変態扱いされかねないので自重する。
「なぁ先輩? 隣に行ってもいいか?」
テーブルの向かいの聖ちゃんが言った。黙って首肯する。これを拒否する輩がいるなら名乗れ、
俺が一人一人制裁してやる。
隣にやってきた聖ちゃんは微妙に距離を空けて座り、感慨深げにつぶやいた。
「私、先輩と付き合うんだな」
「何か問題ある?」
この問いに聖ちゃんは
「ない、そんなものはない、よ?」
そして空いていた微妙な距離を埋めるように聖ちゃんが俺のほうへ寄り、言った。
「先輩、私を選んでくれてありがとう」
満開の、笑顔がそこにあった。俺がその笑顔の虜になってしまったのも無理はないと思う。
聖ちゃん、その笑顔は反則だよ。
満開の、笑顔がそこにあった。俺がその笑顔の虜になってしまったのも無理はないと思う。
聖ちゃん、その笑顔は反則だよ。
聖ルートおしまい