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BAD END ~ドリーム・ハルマゲドン~

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2:はぐらかす

「お、俺は……仮にも勇者だし……」
「舞人……?」
志乃の泣きそうな声。
その瞳は、「昨日は帰ろうっていってたのに」と語っていた。
だが舞人はそんなことにも気づかない。
舞人の目は、必死にルネの様子を伺っていた。
「その、帰りたくないとは言わないけど、勇者として魔王を放っておくわけにも……」
曖昧な舞人の言葉。
「それにほら、期待されてるみたいじゃん? それに答えないと帰れないかなー、なんて……」
ルネの瞳がどんどん細くなっていき、次第にそれは冷たいオーラをまとっていく。
「だから、えっと……」
そんなルネを見て、余計に慌てて口ごもる舞人。
言い訳が思いつかなかった。
「……本当にそう思っていますか?」
射るようなルネの視線に、舞人は思わずたじろぐ。
志乃も必死になって舞人の裾を引っ張る。
だが、舞人はそれを無視して、ルネから視線をはずし覇気のない声で呟いた。
「お、おう……もちろん」
「………」
長い沈黙。
「……もう結構ですよ、勇者様。わかりました」
程なくしてルネは、はぁぁぁと大きなため息を吐くと、すっくと立ち上がった。
いつの間にか、冷たいオーラが消えている。
「な、なに?」
「もっと自分の気持ちに素直になることも、勇者の素質のひとつだと思いますよ」
「………え?」
冷たいオーラの代わりに、悲しそうな顔で告げるルネ。
「シノさんを見ていて、居た堪れなくなりました……彼女がかわいそうです」
舞人ははっとして隣の志乃に視線を向けると、積もる不安に耐え切れなくなった志乃がぼろぼろと涙をこぼしていた。
どうやら舞人の信頼は、両者から失われたらしい。
「お、俺はただ……」
「もう何も言わなくても構いません。勇者様も帰りたいのでしょう? ……でしたら、今すぐ元の世界へと帰して差し上げます」
ルネはいずこからか杖を取り出し、それを構えた。
「え……帰して……くれるのか?」
「志乃さんのためです。それに、確かに私の召喚魔法にも、少々強引なところがありましたから」
ルネは朗々とした声で呪文を詠唱しはじめる。
「では、短い間でしたが、ありがとうございました。さようなら勇者様。さようならシノさん」
「ル……!!」
「勇者様……もし、また次に会うことがありましたら……」
すぐ傍にいるはずなのに、ルネの声がどんどん遠くなっていく。
「勇者として立派な人物に……いえ、あなたを想ってくれる少女に応えてあげられる男になっていることを期待します」
その言葉を最後に、呪文は完成した。
瞬間、強大な魔力が満ち溢れた。
「万物よ原点に帰せ……終わりは遍く、等しく、それは夢幻の如く」
「……!!」
「ドリーム・ハルマゲドン」
誰の声も、魔力の渦に飲み込まれて聞こえなくなる。
「シノさん……次の世界では、お幸せに」
「え………?」
志乃の意識が光に飲み込まれる直前、そんな声が聞こえたような気がした。


【EF:フラッシュ】
(暗転)
【背景:黒バック】

………
……
…

【背景変更:舞人の自室】
【BGM:日常】

「……はっ!?」
舞人は椅子から飛び起きた。
周囲をせわしなく見渡す。
乱雑に詰まれた雑誌。くしゃくしゃのシーツとベッド。無数のゲーム機と小型テレビ。
そして目の前の、電源がつけっ放しのパソコン。
モニターには、ファンタジー世界でえっちな冒険をするというエロゲーが、BAD ENDの画面で止まっていた。
「……俺の部屋? 夢、だったのか……」
それにしてはやけにリアルな夢だった。
ファンタジー世界に召喚されて、クラスメイトと戦って……。
「……なんて世界だっけ。王様はえらく美少女だった気が……」
だが、所詮夢だ。
そこまで詳細な設定があるわけもなく、思い出せない。
「こんなエロゲやりながら寝落ちしたせいかな……」
ぼんやりと時計を見ると、8時半。
「やべぇ! 遅刻する!!」
舞人は大慌てで部屋着を脱ぎ捨て、1分で制服に着替える。
ぺらぺらのかばんをつかんで部屋を飛び出したのが2分後。
朝食の菓子パンの袋をつかみ、顔も洗わずに家を飛び出した。

(暗転)
【背景変更:教室】

「ふぃー、セーフ」
教室に滑り込んだとき、朝のホームルームのチャイム3分前だった。
「おーっす、おはよー、しのしの」
「っ!?」
自分の席に着きながら、隣の席で黙々と読書する志乃に挨拶をした。
だが、いつもならにっこりと笑って挨拶を返してくる志乃は、びくっと体を震わせたのだ。
「お、おはよう……八神くん」
「や、がみ……くん?」

【GBM:一時停止】

「あの、あのね……その、しのしのって、呼ばないでくれるかなぁ……そう呼ばれるの、あんまり好きじゃないんだ」
それだけをいって、目をそむけるように読書に戻る志乃。
「………」

【BGM:不可思議シーン用】

何かが違う。
何かが違うのだが――
「……えっと」
何が違うのか、舞人にはわからなかった。
大切な何かが失われている気がする。
必死に思い出そうとするが、思い出せなかった。
「……わ、悪い……有栖川さん」

なので舞人は、それ以上思い出すのをやめた。



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