舞人と志乃が結ばれて、早一週間が経とうとしていた。
あれ以来二人は、愛を確かめ合うため、そして魔力を増幅するためにことある毎に肌を重ねてきた。
「ねぇ……これはこれで幸せなんだけど、これでいいのかなぁ……」
今日も今日とて、舞人の朝勃ちジュニアをその体で治めた志乃は、舞人に寄りかかりながらもぽつりと呟く。
「んー……俺は別にこれでいいけど」
舞人は寄りかかってくる志乃の重さを心地よく感じながら、ぼへらっとした表情で答える。
「でも、このままじゃいつになったら帰れるか、分かったものじゃないよぅ」
「……」
「舞人とこうしていられるのは嬉しいよ。でも、やっぱりわたしは、元の世界で舞人と一緒にいたいよ」
不安げな志乃の呟き。
誰でも住み慣れた世界のほうがいいに決まっている。
現に舞人も、帰りたいと願ったからこそ、こうして帰る努力をしているのだ。
「確かに、このままじゃよくないかも……」
「……舞人とえっちするのもいいけど……それ以外でも、帰るためにもうちょっと頑張ったほうがいいかな、って」
「……そうだな。ちょっとその辺も考えてみるか」
あれ以来二人は、愛を確かめ合うため、そして魔力を増幅するためにことある毎に肌を重ねてきた。
「ねぇ……これはこれで幸せなんだけど、これでいいのかなぁ……」
今日も今日とて、舞人の朝勃ちジュニアをその体で治めた志乃は、舞人に寄りかかりながらもぽつりと呟く。
「んー……俺は別にこれでいいけど」
舞人は寄りかかってくる志乃の重さを心地よく感じながら、ぼへらっとした表情で答える。
「でも、このままじゃいつになったら帰れるか、分かったものじゃないよぅ」
「……」
「舞人とこうしていられるのは嬉しいよ。でも、やっぱりわたしは、元の世界で舞人と一緒にいたいよ」
不安げな志乃の呟き。
誰でも住み慣れた世界のほうがいいに決まっている。
現に舞人も、帰りたいと願ったからこそ、こうして帰る努力をしているのだ。
「確かに、このままじゃよくないかも……」
「……舞人とえっちするのもいいけど……それ以外でも、帰るためにもうちょっと頑張ったほうがいいかな、って」
「……そうだな。ちょっとその辺も考えてみるか」
(暗転)
「ということで我々は今、街道を歩いています」
「……誰に言ってるの、舞人?」
「お約束ってやつだ」
旅装に身を包んだ二人は、舞人のリポート通り街道を歩いていた。
理由は至極簡単。
修行のためである。
もっと俗っぽくいうなら、レベル上げとも言う。
「しっかしルネもこんなベタな提案するよなぁ……俺たちゃRPGキャラかよ」
「でも、ゲームでもこういう地道なことが大事なんじゃないの?」
「違いはないけどさ……」
舞人たちがもっと効率よく魔力を高めるためにどうするべきかルネに相談したところ、彼女が提案したのが修行の旅だった。
ルネが帰る方法を提示したときに言ったとおり、魔力は日々成長していくものである。
ただ生活しているならば、それは微々たる物でしかない。しかし、変化に富んだ生活や生命の危機に晒されることで、その成長率は劇的に変化する。
そのため、勇者や魔術師などといった人種は、人並み以上の魔力を身につけているらしい。
「しっかし、この世界で何一つファンタジーっぽいことしてない俺たちにやれんのかね……」
「でも舞人、魔法使えるじゃない」
「……言われてみれば、志乃も魔法道具出すよな」
「案外、適応しちゃってるね」
そういって微笑む志乃。
「それに、そんな長旅でもないしね。ルネさんから大事な用事も任されてるんだし、がんばろう」
もっとも、旅といっても行程は片道3日、ルネーニまで戻ってくる帰路を含めても一週間足らずの小旅行といったほうが正しいかもしれない。
そして、無論ただどこかへ行ってレベルを上げて帰って来いというわけではない。
ルネに頼まれごとを任されていた。
目的地の街まで行って、とある品物を売り、変わりに発注していた品物を受け取りに行ってほしいとのことだが――
「まさかルネの奴、俺たちを体のいいパシリに……」
「あ、あははは……前向き、前向きだよぅ」
志乃もちらっとだけ同じことを思ったのか、乾いた笑いを浮かべる。
「ま、がんばるって決めたもんな……志乃のためでもあるしな」
「舞人……」
その言葉に嬉しそうに微笑む志乃。
舞人も、その笑顔にドキリと胸が高鳴る。
「志乃……」
「まいとぉ……」
白昼堂々、二人の距離が近まる。
だが、それを諌める人影は誰も――
「おっおっおっ」
「お?」
いた。
謎の鳴き声が、二人のバカップルムードをブチ壊している。
「なんだ、どっからか声が……」
舞人は周囲に視線をめぐらせるが、そこに人影はやはりない。
「舞人、した、した」
「下?」
志乃がくいくいと舞人の袖を引っ張り、足元を指差す。
そこには、ブタのような鼻(のような器官)を持つ、人面花が咲いていた。
しかもただ咲くだけではなく、うごうごと蠢きながら鳴いている。
「この花が鳴いてたよ……」
「こ、これはモンスター……なのか?」
「たぶん……?」
「モンスターの相場といえばスライムがいいとこだと思ってたが……こんなチンケな花が?」
「おっおっ!!」
「……誰に言ってるの、舞人?」
「お約束ってやつだ」
旅装に身を包んだ二人は、舞人のリポート通り街道を歩いていた。
理由は至極簡単。
修行のためである。
もっと俗っぽくいうなら、レベル上げとも言う。
「しっかしルネもこんなベタな提案するよなぁ……俺たちゃRPGキャラかよ」
「でも、ゲームでもこういう地道なことが大事なんじゃないの?」
「違いはないけどさ……」
舞人たちがもっと効率よく魔力を高めるためにどうするべきかルネに相談したところ、彼女が提案したのが修行の旅だった。
ルネが帰る方法を提示したときに言ったとおり、魔力は日々成長していくものである。
ただ生活しているならば、それは微々たる物でしかない。しかし、変化に富んだ生活や生命の危機に晒されることで、その成長率は劇的に変化する。
そのため、勇者や魔術師などといった人種は、人並み以上の魔力を身につけているらしい。
「しっかし、この世界で何一つファンタジーっぽいことしてない俺たちにやれんのかね……」
「でも舞人、魔法使えるじゃない」
「……言われてみれば、志乃も魔法道具出すよな」
「案外、適応しちゃってるね」
そういって微笑む志乃。
「それに、そんな長旅でもないしね。ルネさんから大事な用事も任されてるんだし、がんばろう」
もっとも、旅といっても行程は片道3日、ルネーニまで戻ってくる帰路を含めても一週間足らずの小旅行といったほうが正しいかもしれない。
そして、無論ただどこかへ行ってレベルを上げて帰って来いというわけではない。
ルネに頼まれごとを任されていた。
目的地の街まで行って、とある品物を売り、変わりに発注していた品物を受け取りに行ってほしいとのことだが――
「まさかルネの奴、俺たちを体のいいパシリに……」
「あ、あははは……前向き、前向きだよぅ」
志乃もちらっとだけ同じことを思ったのか、乾いた笑いを浮かべる。
「ま、がんばるって決めたもんな……志乃のためでもあるしな」
「舞人……」
その言葉に嬉しそうに微笑む志乃。
舞人も、その笑顔にドキリと胸が高鳴る。
「志乃……」
「まいとぉ……」
白昼堂々、二人の距離が近まる。
だが、それを諌める人影は誰も――
「おっおっおっ」
「お?」
いた。
謎の鳴き声が、二人のバカップルムードをブチ壊している。
「なんだ、どっからか声が……」
舞人は周囲に視線をめぐらせるが、そこに人影はやはりない。
「舞人、した、した」
「下?」
志乃がくいくいと舞人の袖を引っ張り、足元を指差す。
そこには、ブタのような鼻(のような器官)を持つ、人面花が咲いていた。
しかもただ咲くだけではなく、うごうごと蠢きながら鳴いている。
「この花が鳴いてたよ……」
「こ、これはモンスター……なのか?」
「たぶん……?」
「モンスターの相場といえばスライムがいいとこだと思ってたが……こんなチンケな花が?」
「おっおっ!!」
ヒュンッ!!
「お……?」
何かが高速で舞人たちの間を通り抜け、少し遅れて舞人の頬から暖かいものがあふれ出した。
「ま、まま、まいとぉ! 血っ、血ー!」
舞人は頬に手をやって、ぬるりとした真っ赤なそれを拭い取った。
「うひょえええ!? き、キレてる! 俺キレさせたら大したもんですよ!?」
ならばこの花型モンスターも大した奴ということになる。
この動いて鳴く花は、その名もブタバナ。
先ほど舞人の頬を切り裂いた花弁カッターを武器にする、雑魚モンスターである。
「だおっ、だおーっ!!」
何かが高速で舞人たちの間を通り抜け、少し遅れて舞人の頬から暖かいものがあふれ出した。
「ま、まま、まいとぉ! 血っ、血ー!」
舞人は頬に手をやって、ぬるりとした真っ赤なそれを拭い取った。
「うひょえええ!? き、キレてる! 俺キレさせたら大したもんですよ!?」
ならばこの花型モンスターも大した奴ということになる。
この動いて鳴く花は、その名もブタバナ。
先ほど舞人の頬を切り裂いた花弁カッターを武器にする、雑魚モンスターである。
「だおっ、だおーっ!!」
ヒュンヒュン!!
「にょぼおおお!!」
「まいとぉ!」
さらにブタバナは連続してカッターを放ってくる。
チンケな花という言葉に怒っているのだろうか。
志乃の手を引き、きびすを返して逃げ出す舞人。
「舞人っ、戦わないとぉ!」
「どーやってモンスターと戦えと!!」
すっかり本来の目的を忘れている舞人。
「魔法、魔法!!」
「マホ?」
ずざざーっと砂煙を立ててブレーキをかける舞人。
「そうだ、俺には必殺魔法があったんだ!」
「なんか今更だよぉ……」
「よっしゃ、俺の後ろに隠れるんだ志乃!」
「なんだかなぁ……舞人っぽいといえば舞人っぽいけど……」
一応、そそくさと舞人の影に隠れる志乃。
「おっおっ!」
ブタバナは地面に根を生やしたまま、にょきにょきと新しい花弁カッターを生やし始めている。
「むぅ……弾は無限なのか?」
モンスターの理不尽さを痛感しながらも、舞人は全身の魔力を集中させるようにイメージする。
「だが補給中の敵を叩くのは基本! ホワイトベース隊だってやったことだ!」
魔力が一点に集中した――ような気がする。
「食らえ、ツンデイィィィン!!」
「まいとぉ!」
さらにブタバナは連続してカッターを放ってくる。
チンケな花という言葉に怒っているのだろうか。
志乃の手を引き、きびすを返して逃げ出す舞人。
「舞人っ、戦わないとぉ!」
「どーやってモンスターと戦えと!!」
すっかり本来の目的を忘れている舞人。
「魔法、魔法!!」
「マホ?」
ずざざーっと砂煙を立ててブレーキをかける舞人。
「そうだ、俺には必殺魔法があったんだ!」
「なんか今更だよぉ……」
「よっしゃ、俺の後ろに隠れるんだ志乃!」
「なんだかなぁ……舞人っぽいといえば舞人っぽいけど……」
一応、そそくさと舞人の影に隠れる志乃。
「おっおっ!」
ブタバナは地面に根を生やしたまま、にょきにょきと新しい花弁カッターを生やし始めている。
「むぅ……弾は無限なのか?」
モンスターの理不尽さを痛感しながらも、舞人は全身の魔力を集中させるようにイメージする。
「だが補給中の敵を叩くのは基本! ホワイトベース隊だってやったことだ!」
魔力が一点に集中した――ような気がする。
「食らえ、ツンデイィィィン!!」
ぴしゃああああんっ!!
晴れ渡った空から、突如降り注ぐ勇者の雷。
まさに晴天の霹靂とはこのことだ。
「わぁ……舞人すごぉい……!!」
初めて舞人の魔法を目にする志乃が、尊敬のまなざしを向ける。
だが、
「だおおおっ!!」
「なにぃっ!?」
雷が直撃する瞬間、ブタバナは地面から根っこを引き抜き、走って雷を避けたのだ。
「ま、魔法を避けるってアリか!?」
「わかんないよ……でも、目の前にあるのが現実だよぅ」
「や、やけにシビアなこといいますね志乃さん」
問答してる間にも、根っこで自立歩行を始めたブタバナは、花弁カッターの補給を済ませていた。
「おっおっおっ!!」
まさに晴天の霹靂とはこのことだ。
「わぁ……舞人すごぉい……!!」
初めて舞人の魔法を目にする志乃が、尊敬のまなざしを向ける。
だが、
「だおおおっ!!」
「なにぃっ!?」
雷が直撃する瞬間、ブタバナは地面から根っこを引き抜き、走って雷を避けたのだ。
「ま、魔法を避けるってアリか!?」
「わかんないよ……でも、目の前にあるのが現実だよぅ」
「や、やけにシビアなこといいますね志乃さん」
問答してる間にも、根っこで自立歩行を始めたブタバナは、花弁カッターの補給を済ませていた。
「おっおっおっ!!」
ヒュンヒュンヒュン!!
問答をしている舞人めがけて、無数の花弁が飛来する。
「やば……!!」
「舞人っ!!」
そんな舞人をかばうように、その体を突き飛ばして変わりに矢面に立つ志乃。
「やば……!!」
「舞人っ!!」
そんな舞人をかばうように、その体を突き飛ばして変わりに矢面に立つ志乃。
どかかかかっ!!
「志乃っ!!」
舞人の悲鳴じみた絶叫。
「だ、大丈夫だよぉ……」
だが、志乃は震えてはいるがしっかりとした声で答えていた。
その手には、巨大なまな板が握られていた。
「まな……板……?」
「うん……何でも切れる包丁の対になってるまな板なら、盾になるかと思って……」
志乃の想像通り、鉄をも両断する包丁に相対するまな板だけあり、花弁カッター程度ならば易々と防いでくれていた。
志乃は恐る恐るまな板を下げると、今度は自分の番だとばかりに頬を軽く叩いて気合を入れる。
「こ、今度はわたしのターンだよ!」
どこで覚えたのか、そんな台詞を吐きながら志乃は意識を集中させる。
「えい、出てこーい!」
戦闘中にしては少々間抜けな掛け声。
その呼び声に応じるように、虚空から一振りのフライパンが現れた。
「だお?」
「え、えぇぇぇい!!」
そしてそれを掴み、目の前の不可思議現象に戸惑う(?)ブタバナめがけて、気合一閃。
舞人の悲鳴じみた絶叫。
「だ、大丈夫だよぉ……」
だが、志乃は震えてはいるがしっかりとした声で答えていた。
その手には、巨大なまな板が握られていた。
「まな……板……?」
「うん……何でも切れる包丁の対になってるまな板なら、盾になるかと思って……」
志乃の想像通り、鉄をも両断する包丁に相対するまな板だけあり、花弁カッター程度ならば易々と防いでくれていた。
志乃は恐る恐るまな板を下げると、今度は自分の番だとばかりに頬を軽く叩いて気合を入れる。
「こ、今度はわたしのターンだよ!」
どこで覚えたのか、そんな台詞を吐きながら志乃は意識を集中させる。
「えい、出てこーい!」
戦闘中にしては少々間抜けな掛け声。
その呼び声に応じるように、虚空から一振りのフライパンが現れた。
「だお?」
「え、えぇぇぇい!!」
そしてそれを掴み、目の前の不可思議現象に戸惑う(?)ブタバナめがけて、気合一閃。
パッコォォォォン!!!
「だおー☆」
「おおぅ……星になった」
頼りない掛け声とは裏腹にブタバナを吹っ飛ばす志乃。
フライパンは衝撃波を生み出しながら、ブタバナをあっという間に星にしてしまう。
「や、やったよぉ……」
自分でもその効果に驚きつつも、へなへなとへたり込む志乃。
一見楽勝にも見えるが、初めてモンスターと対峙したのだ。その緊張は計り知れない。
「ていうか……志乃すげぇ」
「そ、そんなことないよぅ」
照れたように微笑む志乃。
「……ていうか、俺弱いな……」
勇者であるという自覚も誇りも一切持ち合わせていない舞人であったが、さすがに志乃との実力差をまざまざと見せ付けられたようで、しばらく鬱になるのであった。
「おおぅ……星になった」
頼りない掛け声とは裏腹にブタバナを吹っ飛ばす志乃。
フライパンは衝撃波を生み出しながら、ブタバナをあっという間に星にしてしまう。
「や、やったよぉ……」
自分でもその効果に驚きつつも、へなへなとへたり込む志乃。
一見楽勝にも見えるが、初めてモンスターと対峙したのだ。その緊張は計り知れない。
「ていうか……志乃すげぇ」
「そ、そんなことないよぅ」
照れたように微笑む志乃。
「……ていうか、俺弱いな……」
勇者であるという自覚も誇りも一切持ち合わせていない舞人であったが、さすがに志乃との実力差をまざまざと見せ付けられたようで、しばらく鬱になるのであった。
………
……
…
……
…
「……夜になったな」
「……うん」
疲労が色濃く浮かんだ舞人の言葉に、不安げに追従する志乃。
街道脇に立ち尽くす二人の周囲は、すでに薄暗い。
全国的に夜である。
「……ルネの話じゃ、3日間の行程で野宿の必要性はないって」
「……多分、道中で休憩しすぎたせいかも」
その言葉に、うっと言葉を詰まらせる舞人。
道中何度も休憩をしようと提案したのは、舞人である。
「はっはっは。フォスタリア人は健脚だなぁ」
「……舞人は日ごろ運動不足すぎるんだよぉ」
文明の利器に適応しきった現代っ子の舞人の体力は、想像以上にヘタレだった。
「ともかく、今日はここで野宿するしかないな」
「の、野宿……?」
不安の色を滲ませながら、志乃が呟く。
いくら街道脇は旅人たちのために野営がし易いよう整備されているとはいえ、昼間モンスターに襲われたばかりである。
怯えるのも無理はない。
「心配するな、こんなこともあろうかとルネからいろいろふんだくってきてある」
無駄に自信満々に宣言し、舞人は懐から財布らしきポーチを取り出した。
「四次元サイフ~☆」
某青色ネコ型ロボットの口調で高らかにそれを掲げる。
そのポーチこそ、召喚当初にルネからもらった魔法のサイフである。
中が文字通り異空間に繋がっているこのサイフは、物体の大きさも重さも無視していくらでも詰め込める優れものである。
「……まいと」
「そ、そんな目で見るな」
かわいそうなものを見るような目で見られ、舞人はたじろぐ。
「と、とりあえずこれを見てから言うんだ!」
舞人は名誉挽回するべく、サイフの中からアイテムを取り出す。
中にはルネから迷惑料としてまんまとせしめた100万ワロスの残りだけでなく、旅立ちにあたりルネから借りてきたさまざまな便利アイテムが詰まっているようだ。
「魔物避け3点グッズ~☆」
「……金10kgと交換するの?」
「なぜそれを!」
「だって、子供の頃見てたもん」
分かる人にしかわからない会話を繰り広げる二人。
「ごほん。とにかく、だ」
舞人は取り出した3つのアイテムを順番に並べていく。
「帽子と手旗とメガホン?」
「違うっ! まずはこれ、退魔のランタン」
レトロだがしっかりとした造りの、美術品としても価値の高そうなランタン。
「火をつけておけば魔物は寄ってこないらしいぞ。ただし、夜だけだそーだ」
さっそく火をつけてみると、淡い光が薄暗くなり始めたあたりを照らし出す。
さすがにランタンなのには変わりないようで、光量はさほどではない。
「お次に、悪意感知の鈴」
舞人が次に掲げたアイテムは、鈴というよりもハンドベルに近かった。
「これ、鳴らないよ?」
志乃が試しに手にとって振ってみるが、これっぽっちも音がならなかった。
「何でも、悪意がある人なりモンスターなりが近づいてくると勝手に音がなるそーだ」
「へぇ……でも、知らせてくれるだけ?」
「……まぁな」
気を取り直し、舞人は最後のアイテムを広げた。
「で、最後にエルヴン・シーツ」
舞人が最後に取り出したのは、金糸で刺繍の施された寝具だった。
「……ただの毛布みたいだけど」
「これに包まってると、気配が消えるらしいぞ」
ずらりと並んだ3つのアイテム。
「魔法のアイテムかぁ……あんまり実感はないけど、これだけあれば安心……だね」
「おうともさ。食料も詰め込んできたし、1日くらい大丈夫だろ」
そういってさも自分の手柄のように威張る舞人。
「うん……そうだね」
だが、志乃の不安はまだ払拭されていないようだ。
いよいよ太陽が沈み、周囲は本格的に暗くなってきていた。
「……うん」
疲労が色濃く浮かんだ舞人の言葉に、不安げに追従する志乃。
街道脇に立ち尽くす二人の周囲は、すでに薄暗い。
全国的に夜である。
「……ルネの話じゃ、3日間の行程で野宿の必要性はないって」
「……多分、道中で休憩しすぎたせいかも」
その言葉に、うっと言葉を詰まらせる舞人。
道中何度も休憩をしようと提案したのは、舞人である。
「はっはっは。フォスタリア人は健脚だなぁ」
「……舞人は日ごろ運動不足すぎるんだよぉ」
文明の利器に適応しきった現代っ子の舞人の体力は、想像以上にヘタレだった。
「ともかく、今日はここで野宿するしかないな」
「の、野宿……?」
不安の色を滲ませながら、志乃が呟く。
いくら街道脇は旅人たちのために野営がし易いよう整備されているとはいえ、昼間モンスターに襲われたばかりである。
怯えるのも無理はない。
「心配するな、こんなこともあろうかとルネからいろいろふんだくってきてある」
無駄に自信満々に宣言し、舞人は懐から財布らしきポーチを取り出した。
「四次元サイフ~☆」
某青色ネコ型ロボットの口調で高らかにそれを掲げる。
そのポーチこそ、召喚当初にルネからもらった魔法のサイフである。
中が文字通り異空間に繋がっているこのサイフは、物体の大きさも重さも無視していくらでも詰め込める優れものである。
「……まいと」
「そ、そんな目で見るな」
かわいそうなものを見るような目で見られ、舞人はたじろぐ。
「と、とりあえずこれを見てから言うんだ!」
舞人は名誉挽回するべく、サイフの中からアイテムを取り出す。
中にはルネから迷惑料としてまんまとせしめた100万ワロスの残りだけでなく、旅立ちにあたりルネから借りてきたさまざまな便利アイテムが詰まっているようだ。
「魔物避け3点グッズ~☆」
「……金10kgと交換するの?」
「なぜそれを!」
「だって、子供の頃見てたもん」
分かる人にしかわからない会話を繰り広げる二人。
「ごほん。とにかく、だ」
舞人は取り出した3つのアイテムを順番に並べていく。
「帽子と手旗とメガホン?」
「違うっ! まずはこれ、退魔のランタン」
レトロだがしっかりとした造りの、美術品としても価値の高そうなランタン。
「火をつけておけば魔物は寄ってこないらしいぞ。ただし、夜だけだそーだ」
さっそく火をつけてみると、淡い光が薄暗くなり始めたあたりを照らし出す。
さすがにランタンなのには変わりないようで、光量はさほどではない。
「お次に、悪意感知の鈴」
舞人が次に掲げたアイテムは、鈴というよりもハンドベルに近かった。
「これ、鳴らないよ?」
志乃が試しに手にとって振ってみるが、これっぽっちも音がならなかった。
「何でも、悪意がある人なりモンスターなりが近づいてくると勝手に音がなるそーだ」
「へぇ……でも、知らせてくれるだけ?」
「……まぁな」
気を取り直し、舞人は最後のアイテムを広げた。
「で、最後にエルヴン・シーツ」
舞人が最後に取り出したのは、金糸で刺繍の施された寝具だった。
「……ただの毛布みたいだけど」
「これに包まってると、気配が消えるらしいぞ」
ずらりと並んだ3つのアイテム。
「魔法のアイテムかぁ……あんまり実感はないけど、これだけあれば安心……だね」
「おうともさ。食料も詰め込んできたし、1日くらい大丈夫だろ」
そういってさも自分の手柄のように威張る舞人。
「うん……そうだね」
だが、志乃の不安はまだ払拭されていないようだ。
いよいよ太陽が沈み、周囲は本格的に暗くなってきていた。
………
……
…
……
…
「ふんふんふ~ん♪」
パチパチと焚き火が爆ぜ、魔法のランタンと共に周囲を照らし出す。
そんな中で、志乃は鼻歌を歌いながら野菜を刻んでいた。
先ほどまでの不安な様子は微塵も感じられない。
「にして、便利だな……」
「うん、そうだねー」
ぼんやりとその作業を眺めながら呟く舞人に、笑顔で答える志乃。
あっという間に形良く切られた野菜が、景気良く鍋に入れられる。
焚き火の火を使って料理をする志乃が使っているのは、自らの能力で呼び出した料理道具だ。
戦闘にも使えるそれらの道具は、もちろんこうした本来どおりの使い方も出来るようだ。
「あとは煮込むだけだよー」
「おう……美味そうだな、相変わらず」
材料の都合上、何の変哲もない野菜スープである。
この程度なら舞人でも作れそうな簡単な手順だったが、作り手が違うとこうも違うものかと思うほど美味しそうだった。
「もちろんだよぉ。舞人のために愛情込めて作ったんだもん」
「……おおう」
にこっと微笑み、破壊力満点の台詞を何のためらいもなく口にする志乃。
思わず赤面する舞人。
「そ、そういえば志乃に飯作ってもらうのもなんか久しぶりだな」
咳払いをして何事もなかったかのように装う舞人。
だが手遅れだったらしく、志乃はくすくすと笑っている。
「そうだね。舞人のお家にはよく遊びにいかせてもらったけど、ご飯を作ったのは初めてのとき以来かなぁ」
時折鍋の様子を確認しながら、口元に指を当てて思い出すような仕草をする志乃。
あれ以来、何度か舞人の家に遊びに来て、部屋にも上がりこんでいる。
だが、改めて思えば手料理をふるまったのは最初で最後だった。
「そういえばそうだっけ……」
「あのときのカレーに比べたら、今日のは質素だけど」
志乃はそう断りをいれ、新たにマグカップとスプーンを呼び出した。
「……それも一応、料理道具に含まれるんだ」
「食器関係は、割と制限甘いみたいだよ」
しかもご丁寧なことに、ペアカップだったりする。
「はい、どうぞ」
「ん……さんきゅ」
舞人はスープを受け取り、変わりに保存食の硬いパンを志乃に渡す。
「それじゃ……」
「いただきまぁす」
ぱん、と手を合わせてから食事を始める二人。
スープを一口。
「お……あっさり目だけど、美味いな」
「口にあってよかったよ」
微笑み、自分もスープに口をつける志乃。
「やっぱ、こうして作ってもらえるってのはいいよな……城の食事も悪くないけど、やっぱこれに勝るもんはないね」
固いパンをスープに浸して食べながら、舞人はささやかな手料理を褒めちぎる。
「えへへ……嬉しいよ。何なら、お城帰ってからもご飯、作ろうか?」
「え、いいの? ホントに?」
「うん。舞人の好きな味とか、覚えたいし……」
そこでいったん言葉を切り、もじもじと指をすり合わせ、上目遣いで舞人を見上げる。
「その、将来のためにも……」
「……っ」
続く言葉に、思わず仰け反る舞人。
見る見るうちに、志乃の頬が真っ赤に染まっていく。
「し、志乃……」
「まいと……」
今が食事中だということも忘れ、二人の距離が近くなっていく。
やがて、二人の影が重なり合った。
パチパチと焚き火が爆ぜ、魔法のランタンと共に周囲を照らし出す。
そんな中で、志乃は鼻歌を歌いながら野菜を刻んでいた。
先ほどまでの不安な様子は微塵も感じられない。
「にして、便利だな……」
「うん、そうだねー」
ぼんやりとその作業を眺めながら呟く舞人に、笑顔で答える志乃。
あっという間に形良く切られた野菜が、景気良く鍋に入れられる。
焚き火の火を使って料理をする志乃が使っているのは、自らの能力で呼び出した料理道具だ。
戦闘にも使えるそれらの道具は、もちろんこうした本来どおりの使い方も出来るようだ。
「あとは煮込むだけだよー」
「おう……美味そうだな、相変わらず」
材料の都合上、何の変哲もない野菜スープである。
この程度なら舞人でも作れそうな簡単な手順だったが、作り手が違うとこうも違うものかと思うほど美味しそうだった。
「もちろんだよぉ。舞人のために愛情込めて作ったんだもん」
「……おおう」
にこっと微笑み、破壊力満点の台詞を何のためらいもなく口にする志乃。
思わず赤面する舞人。
「そ、そういえば志乃に飯作ってもらうのもなんか久しぶりだな」
咳払いをして何事もなかったかのように装う舞人。
だが手遅れだったらしく、志乃はくすくすと笑っている。
「そうだね。舞人のお家にはよく遊びにいかせてもらったけど、ご飯を作ったのは初めてのとき以来かなぁ」
時折鍋の様子を確認しながら、口元に指を当てて思い出すような仕草をする志乃。
あれ以来、何度か舞人の家に遊びに来て、部屋にも上がりこんでいる。
だが、改めて思えば手料理をふるまったのは最初で最後だった。
「そういえばそうだっけ……」
「あのときのカレーに比べたら、今日のは質素だけど」
志乃はそう断りをいれ、新たにマグカップとスプーンを呼び出した。
「……それも一応、料理道具に含まれるんだ」
「食器関係は、割と制限甘いみたいだよ」
しかもご丁寧なことに、ペアカップだったりする。
「はい、どうぞ」
「ん……さんきゅ」
舞人はスープを受け取り、変わりに保存食の硬いパンを志乃に渡す。
「それじゃ……」
「いただきまぁす」
ぱん、と手を合わせてから食事を始める二人。
スープを一口。
「お……あっさり目だけど、美味いな」
「口にあってよかったよ」
微笑み、自分もスープに口をつける志乃。
「やっぱ、こうして作ってもらえるってのはいいよな……城の食事も悪くないけど、やっぱこれに勝るもんはないね」
固いパンをスープに浸して食べながら、舞人はささやかな手料理を褒めちぎる。
「えへへ……嬉しいよ。何なら、お城帰ってからもご飯、作ろうか?」
「え、いいの? ホントに?」
「うん。舞人の好きな味とか、覚えたいし……」
そこでいったん言葉を切り、もじもじと指をすり合わせ、上目遣いで舞人を見上げる。
「その、将来のためにも……」
「……っ」
続く言葉に、思わず仰け反る舞人。
見る見るうちに、志乃の頬が真っ赤に染まっていく。
「し、志乃……」
「まいと……」
今が食事中だということも忘れ、二人の距離が近くなっていく。
やがて、二人の影が重なり合った。
(暗転)
「………ん」
深夜。
魔法の毛布に包まった志乃が軽く身じろぎをした。
「………」
目をこすり、周囲を見渡す。
火の消えた焚き火。火の変わりに周囲を照らし出す魔物避けのランタン。
アイテムのおかげで、モンスターや人の気配はないと思う。
だが志乃の表情は、どこか不安げで、そしてどこか切羽詰っていた。
「……まいと」
志乃に抱きつくようにすっとぼけた顔で眠りこける舞人の体を、軽くゆする。
気配消しのシーツが一枚しかない以上、こうして使うのがもっとも効率がいい。
最も、最近では毎晩一緒に寝ているわけだから、いまさらではあったが。
「……ね、まいと……起きてよぅ」
ぐっすりと眠る舞人を、どうにか起こそうと必死にその体をゆすり続ける志乃。
次第に、切羽詰った様子が強くなっているように思える。
「んが……」
「まいとー……」
志乃の必死の思いが通じたのか、舞人は間抜けな声を上げて、うっすらと目を開けた。
「う……なに、どしたの、志乃……ふぁ」
もぞもぞとシーツから這い出し、でっかいあくびをかます。
「え、っと……」
志乃はもじもじと躊躇い、やがて意を決したように舞人の耳元でささやいた。
深夜。
魔法の毛布に包まった志乃が軽く身じろぎをした。
「………」
目をこすり、周囲を見渡す。
火の消えた焚き火。火の変わりに周囲を照らし出す魔物避けのランタン。
アイテムのおかげで、モンスターや人の気配はないと思う。
だが志乃の表情は、どこか不安げで、そしてどこか切羽詰っていた。
「……まいと」
志乃に抱きつくようにすっとぼけた顔で眠りこける舞人の体を、軽くゆする。
気配消しのシーツが一枚しかない以上、こうして使うのがもっとも効率がいい。
最も、最近では毎晩一緒に寝ているわけだから、いまさらではあったが。
「……ね、まいと……起きてよぅ」
ぐっすりと眠る舞人を、どうにか起こそうと必死にその体をゆすり続ける志乃。
次第に、切羽詰った様子が強くなっているように思える。
「んが……」
「まいとー……」
志乃の必死の思いが通じたのか、舞人は間抜けな声を上げて、うっすらと目を開けた。
「う……なに、どしたの、志乃……ふぁ」
もぞもぞとシーツから這い出し、でっかいあくびをかます。
「え、っと……」
志乃はもじもじと躊躇い、やがて意を決したように舞人の耳元でささやいた。
………
……
…
……
…
「トイレに行きたいならもっと早く言えばいいのに……ふぁ」
「だ、だってぇー……」
木の幹に寄りかかりながら、こらえきれずあくびをする舞人。
茂みの向こうから志乃が泣きそうな声でそれに返答する。
「は、恥ずかしいもん……」
「でも意外だな、志乃が暗いとこ苦手だったなんて」
「うぅー……む、昔停電で怖い目にあったんだよぅ」
「ま、志乃くらいの完璧超人には、それくらいあったほうが逆にかわいくていいけど」
「……あんまりうれしくないよぉ」
やはり泣きそうな声。
遅れて、ごそごそと衣擦れの音が聞こえてくる。
「……ゴ、ゴクリ」
無駄に研ぎ澄まされた聴覚が、その音を拾い上げてくる。
思わず生唾を飲み込む舞人。
「だ、だってぇー……」
木の幹に寄りかかりながら、こらえきれずあくびをする舞人。
茂みの向こうから志乃が泣きそうな声でそれに返答する。
「は、恥ずかしいもん……」
「でも意外だな、志乃が暗いとこ苦手だったなんて」
「うぅー……む、昔停電で怖い目にあったんだよぅ」
「ま、志乃くらいの完璧超人には、それくらいあったほうが逆にかわいくていいけど」
「……あんまりうれしくないよぉ」
やはり泣きそうな声。
遅れて、ごそごそと衣擦れの音が聞こえてくる。
「……ゴ、ゴクリ」
無駄に研ぎ澄まされた聴覚が、その音を拾い上げてくる。
思わず生唾を飲み込む舞人。