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あねくろ@臨時まとめ
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あねくろ@臨時まとめ

VSベア

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だれでも歓迎! 編集
[ミレイア]
「ブンはともかく、ジョルジュまで負けるとはねー」
[ジョルジュ]
「申し訳ありません」
[ブン]
「っていうか何気に酷い言われ様だお」
[ミレイア]
「じゃあ次はベア。あんた行ってきなさい」
[ベア]
「……御意」
[その他]
寡黙な獣人の戦士、ベアがゆっくりと立ち上がった。
角ばった顔にたっぷりと髭を蓄えた偉丈夫である。トゲトゲの肩アーマーを有する鎧がいかにもそれっぽい。
[ブン]
(おっおっ……こいつはちょっとピンチかもしれないお)
[ジョルジュ]
(……そうですねぇ。勇者を倒せるのはともかく、ベアさんにポイントを稼がれるのはいささか面白くありません)
[その他]
すでに敗走しているブンとジョルジュは小声で囁きあう。
魔王四天王最強とも謳われるラーレ・ベアは獣人であり、もともと魔族ではない。
なのに四天王の座にあり、さらには最強までと謳われては魔族であるブンやジョルジュがいい顔をしないのも頷ける話である。
[ブン]
(ベアに勇者をやっつけられたらご褒美もパーだお)
[ジョルジュ]
(まったく、そこが一番の問題ですね……ベアさん、むっつりですし)
[その他]
他の魔族たちには知られていないことだが、獣人であるベアがミレイアに付き従っているにはとある出来事が切っ掛けしていた。
獣人の王とも言われた最強の獣人ベアに目をつけたミレイアは、いっそ獣人をも我が軍に抱え込もうとベアを誘惑したのだ。
生まれてこの方女っ気のない生活を送ってきたベアにとって、それは未知の、そして魅惑の世界だった。

(回想)
[ベア]
「そんな誘惑にこのワシが……むおっ!?」
[ミレイア]
「あ~ら、このワシがどうしたのかしら?」
[ベア]
「くっ、う……んうっ!?」
[ミレイア]
「あはぁん。体は正直よぉん」
[ベア]
「このワシが……そのような色気に釣られ……クマーッ!!」
[ミレイア]
「きゃぁん☆ ようやく化けの皮がはがれたわねぇん」
(回想終わり)

[その他]
自分の未熟さを痛いほど知らされたベアは、それ以来ミレイアに付き従っている。
ベアに従っていた数多くの獣人たちも、真実を知らないままベアでさえ服従させる魔王に恐れをなし、忠誠を誓っている。
[ジョルジュ]
(そんなベアさんのことです。上辺ではあんな風でも……)
[ブン]
(褒美に釣られる可能性は大きいお)
[その他]
ブンとジョルジュは互いにこくりと頷きあった。
ミレイアの玉座の間を後にしたベアを二人は追いかける。
[ブン]
「おーい、待つおベア!」
[ベア]
「……なんだ」
[ジョルジュ]
「いえ、ひとつ助言をしておこうと思いまして」
[ベア]
「必要ない」
[ブン]
「おっおっ、先人の意見は聞くもんだお」
[ジョルジュ]
「その通り。ひとつイイコトを教えて差し上げましょう。勇者は魔法を苦手としています」
[その他]
もちろん、大嘘である。
だが、幸か不幸か、異世界の勇者舞人が持つマジック・アブソーブの能力を知っているのは実際に目の当たりにしたジョルジュと、報告を受けたミレイア、たまたまその報告を立ち聞きしいていたブンだけである。
わざと魔法をけしかけ、倍返しさせてベアに痛い目を見せようという算段である。
[ベア]
「……わざわざ弱点を突こうとは思わん。真正面から戦うのみだ。それにワシは魔法を使えん」
[その他]
ベアは強靭な肉体、比類なき戦闘技能を持っていたが、魔法に関してはからっきしだった。
[ブン]
「でも真正面から戦ったら勝ち目は薄いお! あいつは勇者ルーシィなんかよりよっぽど強いお!」
[ジョルジュ]
「それに向こうも二人なんですよ。わざわざ2対1という劣勢で戦う必要もないでしょう」
[ベア]
「……むぅ。確かに一理あるが」
[ジョルジュ]
「というわけで、我々からの餞別です」
[ブン]
「こいつを連れて行くといいお!」
[その他]
ジョルジュが口早に呪文を詠唱すると、空中に魔法陣が描き出され、1匹のモンスターを召喚した。
[ヒメゴン]
「メラー」
[ベア]
「……弱そうだな」
[ジョルジュ]
「はっは……見かけにだまされてはいけません。こいつは魔法怪獣ヒメゴン。このナリで、様々な魔法を使います」
[その他]
ジョルジュは自信たっぷりにいうが、デッサンの崩れたようなボディに頭から1本だけ生えたアホ毛は見るものを脱力させる印象だ。
[ベア]
「……まぁ、ないよりはマシだな。すまん、恩に着る」
[その他]
ベアは律儀に頭を下げ、ヒメゴンを連れてのしのしと歩いていく。
だが、途中で自分とヒメゴンの歩幅に大きな差があることに気づくと、ひょいとヒメゴンを持ち上げ肩に――乗せようとしてトゲトゲであることを思い出し、悩んだ末に頭の上に乗せてやり歩き出す。
[ブン]
「……意外に気に入ってるのかもしれないお」
[ジョルジュ]
「滑稽なはずなのに、いまいち笑えませんねぇ」
[その他]
ブンとジョルジュは、微妙な顔でベアとヒメゴンを見送るのであった。



[舞人]
「ふぐふぐふぐ……」
[ルーシィ]
「マイト、どう?」
[その他]
一方、ダブル勇者たちはルーシィの自宅で食事の真っ最中だった。
舞人は食卓に並んだ料理を口に運び――硬直した。
[舞人]
「ウ、ウマイゾ?」
[ルーシィ]
「ホント?」
[舞人]
「ホントダトモ」
[その他]
なぜかカクカクしたしゃべりの舞人だったが、ルーシィはその言葉にぱっと顔を輝かせる。
[ルーシィ]
「よかった! なら遠慮しないでもっと食べてよ!」
[舞人]
「……オ、オウ」
[その他]
現在食卓に並んでいる料理の数々は、珍しくもすべてルーシィの手作りの一品である。
今までは街の酒場や食堂に食べに行っていたというのに、今日は何を思ったかルーシィが自分で作ると言い出したのだ。
ルーシィの料理の腕前は知らなかったが、普段のルーシィを見ているとお世辞にも家事が得意そうには思えなかった。
だが、舞人の不安は食卓に並んだ料理を見て杞憂に終わったと思った。
見た目は凄くおいしそうだったのである。
見た目だけは。
[舞人]
「……おおう」
[その他]
しかし、口に運んだ瞬間、やっぱり不安は的中していたことを思い知る。
[舞人]
(塩辛い……)
[その他]
どうやったらこんなに塩辛くなるのだろうかと思うほどだ。それも、鶏肉の香草焼きがである。
香草焼きなのに香草の風味がなく塩辛いとはどういうことなのだろうか。
[舞人]
「……ずず」
[その他]
続いてスープに手を伸ばす。
[舞人]
(甘ッ!?)
[その他]
野菜メインのヘルシーなスープに見えるのに、なぜかお汁粉のように甘い。
[舞人]
「サ、サラダなら……」
[その他]
これなら野菜を切って盛って、ドレッシングをかけるだけである。どう見ても安牌である。
[舞人]
(……すっぺぇぇぇ!!!)
[その他]
ドレッシングが手製のものだったらしく、それが破壊的なまでの酸味を秘めていた。
ここまで見た目良く味を破壊できるのも珍しい。これはもう、ある種の能力である。
[ルーシィ]
「えへへへ」
[舞人]
「……」
[その他]
正直、地獄のランチかと思ったのだが、ルーシィがやけに嬉しそうな笑顔を浮かべているのを見て、舞人はギブアップを宣言する機会を逸していた。
しかもたちの悪いことに、ルーシィは「味見してたらおなかいっぱいになった」などといって完成品には手をつけていない。
[舞人]
(生き地獄だ)
[その他]
などと思いながらも健気に食事を続けていると、

[その他]
ゴンゴン

[ルーシィ]
「? 誰だろう……はーい」
[その他]
不意に玄関がノックされる音がした。
ルーシィは小走りで玄関に駆け寄り、扉を開けた。
[ルーシィ]
「どちらさ……!! お前は!!」
[舞人]
「ど、どうした?」
[その他]
ただならぬルーシィの声に、舞人はフォークを置いて玄関に顔を出す。
[???]
「……久しいな、勇者ルーシィ」
[その他]
そこには髭面の偉丈夫が立っていた。
[舞人]
「……突撃隣の昼ごはんか?」
[ルーシィ]
「こいつは……魔王四天王の一人、ラーレ・ベアだよ!」
[舞人]
「な、なんだってー!?」
[その他]
思わずお約束のリアクションをとる舞人。
[ルーシィ]
「でもなんでボクの家に……さては街を……!!」
[その他]
ルーシィは咄嗟に臨戦態勢をとるが、
[ベア]
「勘違いするな。ワシはミレイア様の命を受けお前たちを倒しに来た。だが、時間が時間だったものでな」
[その他]
ベアのいうとおり、現在はお昼時である。
ルーシィと舞人が郊外で特訓を始めるのは、決まって昼過ぎからだった。
[ベア]
「果し合いをしたい。……だが、ここでやるのはフェアではないな。郊外の森で待っているぞ」
[その他]
それだけを告げ、ベアは踵を返して街の外へと向かって歩いていく。
[舞人]
「な、なんか魔族っぽくないよな……でも、話してるだけですげー嫌な汗かいたぜ……」
[ルーシィ]
「あいつは今までの奴らよりも強敵だよ……気を引き締めておかないと」
[その他]
きりりと表情を引き締めるルーシィだったが、舞人はそれよりもどさくさにまぎれて生き地獄から開放されたことに歓喜していた。



[その他]
そして食後。
[舞人]
「うお、ホントに待ってた……」
[ルーシィ]
「罠とかもなにもなかったね……」
[その他]
道中、必要以上に注意を払いながら歩いてきたのだが、どこにも罠らしいものは仕掛けられていなかった。
ベアは宣言どおり、郊外の森で勇者たちを悠然と待ち構えていた。
どこから取り出したのか、先ほどは手にしていなかった巨大な大剣を携えている。
[ベア]
「逃げずにやってきたようだな」
[ルーシィ]
「当然……仮にもボクは勇者なんだぞ!」
[ベア]
「ほう……勇者の身分は捨てていたと聞いていたが……それでこそ、だ」
[その他]
ベアは貫禄のある笑みを浮かべ、得物を手にした。
[ベア]
「それでは勇者ルーシィ。貴殿はワシと死合おうぞ!」
[ルーシィ]
「応ッ!!」
[その他]
ルーシィは力強く答え、意志の力で太もものロストルムをドリルレイピアに変化させる。
[舞人]
「あのー……俺、放置プレイっすか?」
[ルーシィ]
「マイトはそっちのみみっちいのの相手でもしてて! それくらいは出来そうでしょ!」
[その他]
ルーシィはベアの傍に佇むヒメゴンを顎でしゃくる。
[舞人]
「あのアホ毛生物か……? なんだあれ?」
[ルーシィ]
「ボクにもわかんないよ!! 新種のモンスターじゃないの!?」
[その他]
などと受け答えするルーシィだったが、いよいよベアが突撃してくるのを見て正面の敵に集中した。
[ベア]
「おおおおおおっ!!」
[ルーシィ]
「てやああああっ!!」
[その他]
轟音を上げてたたきつけられるベアの大剣と、それを受け止めるルーシィのロストルム。
質量的にロストルムが劣っているようにも思えるが、そこは仮にも魔法の武器である。何倍もの質量を持つ大剣を受け止め、火花を散らす。
白熱したバトルを繰り広げる二人を、まるで別世界の住人のように眺める舞人。
[舞人]
「やっぱ俺、たまに出るゲーム間違えてるよな……」
[その他]
不意にヒメゴンを見やり、
[舞人]
「やっぱ妥当なところかもしれん」
[ヒメゴン]
「メラー」
[その他]
などと思い直すのもつかの間だった。
ヒメゴンがその外見からは想像もつかないような流暢な魔法語で詠唱をはじめたからだ。
[舞人]
「いっ!?」
[ヒメゴン]
「ブライトー!」

[その他]
ずばばばばばばばばぁぁぁんっ!!

[舞人]
「うどひゃあああああ!?」
[その他]
咄嗟に逃げ出した舞人の足元で、大量の小爆発が起こった。
ヒメゴンの放った弾幕魔法である。
[舞人]
「な、ななな、なんだこいつ!? このアホ面で魔法使うのかっ!?」
[その他]
逃げ出した舞人を追い撃つように、ヒメゴンは次の呪文を唱えた。
[ヒメゴン]
「ギガファイズー!」

[その他]
めぎゃあああああああんっ!!

[舞人]
「うひいいいいい!!」
[その他]
背後で起こる猛火の嵐に煽られ、吹き飛ぶ舞人。
[ベア]
「ふむ……なるほど、あれでなかなかやるようだな」
[その他]
ちらりと横目でヒメゴンの活躍を見たベアが意外そうに唸る。
逃げるばかりの舞人も視界に納め、魔法に弱いことは本当であるらしいと確信し、あちらはヒメゴンに任せても大丈夫だろうと高をくくった。
[ルーシィ]
「余所見してる暇なんてあるのっ!!」
[ベア]
「ふっ……この程度!!」
[その他]
隙を突いて鋭い突きを繰り出してくるルーシィを、片手一本で大剣を操って捌いてみせるベア。
手数で勝負するルーシィだが、ベアは巨体に似合わず体捌きが巧みである。
さらに一撃にもパワーがあり、避けきれない攻撃はすべてロストルムや魔法衣V.I.Pが防いでくれるとはいえ、ルーシィの体力を著しく削り取っていく。
[ルーシィ]
「はぁ……はぁ……」
[ベア]
「……もう限界か? 勇者ルーシィ」
[その他]
早くも息が上がりかけているルーシィを見下ろすように詰め寄るベア。
[ルーシィ]
「な、まだまだ……!!」
[ベア]
「ふんっ!!」

[その他]
ガキィィッ!!

[ルーシィ]
「わぁああっ!!」
[その他]
だが、体は正直だった。
無造作に叩きつけられた斬撃を受けきれず、吹っ飛ばされるルーシィ。
[ベア]
「お主に個人的な恨みはないが、ミレイア様の命だ……死んでもらうぞ」
[その他]
大剣を大上段に振り上げるベア。


[その他]
一方、
[舞人]
「うひょえええええ!!」
[その他]
舞人はまだ逃げ回っていた。
驚異的な運の強さですべての魔法をギリギリで回避しているが、いつまでそれが続くかはわからない。
[ヒメゴン]
「コケスー!」
[舞人]
「うどわっ!?」
[その他]
言っている傍から、ヒメゴンの転倒魔法が炸裂した。
突然舞人の足元がこんもりと盛り上がり、舞人はそれに蹴躓いて盛大にすっ転んだ。
[舞人]
「あだだだ……うおっ、なんかヤバげ……!?」
[その他]
慌てて立ち上がろうとした舞人の視界に、巨大な炎の塊が飛び込んできた。
[ヒメゴン]
「テラファイズー!!」
[その他]
地面にダイブしている隙に、ヒメゴンの強大な呪文の詠唱は終わっていたのだ。
太陽のような炎の塊が迫る――
[舞人]
「俺もとうとう死亡フラグですかーっ!? 結婚の約束だってしてないのに!!」

[その他]
ぼがあああああああああんっ!!!!

[その他]
舞人を飲み込み爆発する炎の塊。
[舞人]
「うはー……ついに俺死んだー……ぐわあああ……」
[その他]
などと苦しがっている舞人。
[舞人]
「最後の台詞考えとけばよかったな……俺が倒れても第2、第3の舞人が、とか……」
[その他]
死んだ人間にしては余裕しゃくしゃくである。
[舞人]
「……って、あれ? 俺、また死んでない?」
[その他]
そう。またしても強烈な魔法を食らったというのに、舞人はピンピンしていた。
それどころか、以前ジョルジュの魔法を食らったときのように、舞人を中心に強大な魔力が渦を巻いていた。
[舞人]
「なんかまた……」
[ヒメゴン]
「メラー?」
[舞人]
「 み な ぎ っ て き た ぜ ! 」
[その他]
舞人はまたしても自分の体に宿る強い力に気づいて、調子に乗りだした。
[舞人]
「って、うおっ!! 気づいたらルーシィのピンチ!!」
[その他]
ヒメゴンに追い回されてすっかりアウトオブ眼中だったが、今にもベアの大剣がルーシィをずんばらりんしようとしているところだった。
[舞人]
「これは明らかにフラグだろおおおお!!! 4倍ツンデイィィィィィィンッ!!!」



[ベア]
「終わりだ、勇者―――」

[その他]
ぴしゃあああああああああんっ!!!

[ベア]
「うぐおおおっ!?」
[ヒメゴン]
「メララララララ……!!」
[その他]
高らかに振り上げた大剣に、青白い雷撃が直撃した。
さらに、広範囲に落とされた雷撃はヒメゴンをも巻き込み、黒コゲになったモンスターはばたりと倒れて動かなくなった。
ベアも思わず剣を取り落とし、よろよろと後退して膝を着く。
[ルーシィ]
「ま、マイト?」
[舞人]
「おう、無事だったかルーシィ!!」
[その他]
今のツンデイン一発で渦を巻くほどの魔力は一瞬にして消え去っていたが、気絶だけは免れた舞人がルーシィに駆け寄る。
[ルーシィ]
「ボ、ボクは平気だよ……。舞人のほうこそ、大丈夫?」
[舞人]
「ああ。なんかまた、前みたいなことが起こったけどな」
[ルーシィ]
「魔法を無力化……吸収したの?」
[舞人]
「よくわかんないけど、たぶんそんな感じだ」
[ルーシィ]
「やっぱりマイトには特殊な……」
[その他]
と、そこで会話は途切れた。
[ベア]
「ぬぅ……!!」
[その他]
膝を突いていたベアがゆっくりと立ち上がったからだ。
しかも、前回までに戦った二人の四天王とは違い、ベアは髪がアフロにすらなっていなかったのだ。
[ベア]
「ブンとジョルジュめ……なにが魔法に弱いだ。また釣られてしまったようだな……」
[その他]
すっくと立ち上がり、パンパンと汚れを払い落とすように鎧を叩くベア。
[舞人]
「まさか……4倍ツンデインを食らっても立ち上がるってのか!?」
[ルーシィ]
「少なくともボクのギガツンデインよりも強力な魔法だったのに……!!」
[その他]
さすがのルーシィも驚愕を隠せない様子だ。
[ベア]
「ワシの力を甘く見てもらっては困るぞ……勝負はここからだ!」
[その他]
ベアが大剣を投げ捨て、
[ベア]
「WRYYYYYYYY!!!!」
[その他]
高らかに雄たけびを上げた。
次の瞬間、ベアの顔がゴキゴキと音を立てて熊のそれに変わっていく。
毛深かった腕にさらに体毛が伸びて、熊の四肢に変わっていく。
[ルーシィ]
「獣化……!!」
[ベア]
「そう……これがワシの本当の姿だ」
[舞人]
「うわ、なんてお約束の台詞」
[その他]
シリアスな二人を尻目に、ツッコミを忘れない律儀な舞人。
だが、目に見えてパワーアップしているその姿に、早くも逃げ腰になっていたりする。
[ベア]
「この姿になったワシを止められるかな? あのような剣では、ワシに傷ひとつつけられんぞ!!」
吼えながらベアは自慢の爪をむき出しにして襲い掛かってくる。
[舞人]
「うひょおおおお!?」
[ルーシィ]
「くっ!!」
[その他]
左右に飛んでそれをかわす舞人とルーシィ。
[舞人]
「こうなったらもっかい4倍ツンデインを……!!」
[ベア]
「勇者マイト、お前の魔法も吸収するものがなければ恐れるものではないわ!!」
[舞人]
「しまったぁぁぁぁ!!」
[その他]
肝心のエネルギー源であったヒメゴンは、先ほどのツンデインの余波を食らって目を回している。
自分に向けられる魔法がなければまったく使い物にならない舞人の能力。
[舞人]
「魔法、魔法……!!」
[その他]
舞人はベアから逃げ回りながら、必死にナイスアイディアが閃かないかと脳内のハムスターを全速力させる。

[その他]
カラカラカラカラカラカラ

[ルーシィ]
「マイト危ないっ!!」
[舞人]
「うわっち!?」
[その他]
考えをめぐらせるあまり、脚の動きが鈍っていた。
迫るベアの爪の前に、ルーシィが舞人を庇うように躍り出た。
[ルーシィ]
「アスファルトン!!」

[その他]
ガキィ!!

[その他]
一瞬だけ鋼のボディになったルーシィが、その爪を体で受け止めた。
[舞人]
「……これだ!!」
[その他]
舞人の脳内ハムスターに電球が灯る。
[ルーシィ]
「無事、マイトっ!?」
[舞人]
「ああ、大丈夫だ。それよりルーシィ、ツンデインを頼む!!」
[ルーシィ]
「ツンデイン? でもあいつ、4倍もきかなかったんだよ!?」
[舞人]
「違う違う! 俺にツンデインをぶつけろ!!」
[ルーシィ]
「はぁぁぁっ!? 君、本気なの!?」
[舞人]
「本気だ!! 俺に魔法力を吸収する力があるなら、仲間の魔法だって吸収できてもおかしくないだろ!」
[ルーシィ]
「そんな確証もないのに……ボクに君を撃てっていうの!?」
[舞人]
「やってみるっきゃねーだろ……うひいいっ!?」
[その他]
再び振るわれる爪を避けるべく距離をとる舞人。
[ルーシィ]
「あーもーっ、どうなってもしんないかんねっ!!」
[その他]
ルーシィは一飛びでベアから離脱すると、口早に呪文を唱えた。
[ルーシィ]
「ツンデインっ!!」

[その他]
ぴしゃあああんっ!!

[舞人]
「うひょおおおおお!!!」
[その他]
聖なる雷撃に身を焼かれる舞人。
[ルーシィ]
「マイト……っ!!」
[舞人]
「へ、へへ……これはキてるぜ……!!」
[その他]
だが、舞人は無傷で立っていた。
しかも先ほどのように、渦巻く魔力を身にまとってである。
[ルーシィ]
「成功してる……」
[舞人]
「おいルーシィ、もっとだ!! これくらいじゃあいつを倒せない!!」
[ルーシィ]
「う、うん……!! ツンデインっ!!」
[その他]
再び詠唱、ツンデインを舞人にぶちかます。
[舞人]
「もっとだ!!」
[ルーシィ]
「ツンデインっ!!」
[舞人]
「もっと、もっと! オラにお前のツン気を分けてくれ!!」
[その他]
出会ったときのように両手を天に翳す舞人に、ルーシィはありたっけのツンデインをぶち込んだ。
[舞人]
「これは最高にみなぎってきてるぜぇぇぇぇぇ!!」
[その他]
ハイテンションになっていく舞人に、トドメの一撃がぶち込まれる。
[ルーシィ]
「これが最後の……ギガツンデイィィィィィンッ!!!!」

[その他]
びしゃあああああああんっ!!!

[舞人]
「フルチャァァァァジ!!!」
[ベア]
「ぬぅ……!! しまった、つい迫力に負けて必殺技が完成するのを見届けてしまったッ!!」
[その他]
ベアが反撃に移ろうとしたが、すでに舞人のテンション、そして魔力は最高潮に達していた。
[舞人]
「5倍……10倍……20倍だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
[その他]
両手に集まった強力な電撃を放つ白い光球。
[舞人]
「20倍ツンデイィィィィィンッ!! マックスハァァァァァト!!!」

[その他]
ずばあああああああああああああああんっ!!!

[ベア]
「うぐあああああああ!!!」
[その他]
さすがの獣化ベアも、その強大な威力を持つ魔法に焼かれてはひとたまりもなかった。
光の柱の中で髪を逆立て、次第にそれがアフロになり、体が電撃に負け獣化が解けていく。
[ベア]
「ぐふっ……」
[その他]
ずん、と重たい音を立ててベアが地面に倒れ伏す。

[舞人]
「……勝った」
[ルーシィ]
「……うん」
[舞人]
「うっしゃああああ!! 勝ったぁぁぁぁ!!!」
[その他]
勝利の歓声を上げる舞人。
小躍りなんかも始めちゃったりして、ノリに乗った調子は下がる様子を見せない。
ついにはルーシィの手を取って謎のダンスを踊りだす始末だ。
[ルーシィ]
「ちょ、ちょっとマイト……っ」
[舞人]
「うははは、俺って案外強いんじゃね!?」
[その他]
るんらら~と調子に乗りまくりの舞人。
[舞人]
(これはもしかすると自力で魔王倒せるかもしれないだろう)
[その他]
と、口に出しかけた次の瞬間だった。
[ベア]
「う……ぐぉ……」
[舞人]
「ってまだ生きてるんかいっ!!」
[その他]
呻き声をあげたベアに、思わず突っ込む舞人。
[ルーシィ]
「な、なんてしぶといの……!」
[舞人]
「20倍だぞ、ありえないだろ常識的に考えて……」
[その他]
よろよろと体を起こすベアだったが、自力で立ち上がることまでは出来なかった。
[ベア]
「ふ……やはり、お前たちの勝ちのようだ」
[舞人]
「むしろあんたの体力バカには勝てない気がするけどな……さすがの俺でも引くわ」
[その他]
これだけ手痛くやられてなお立ち上がろうとするガッツに、思わずドン引きする舞人。
[ベア]
「ワシは敗者だ……殺せ」
[その他]
膝を突いた体勢で瞑目するベア。
[ルーシィ]
「……」
[その他]
ルーシィは無言のままロストルムを握り締める。
[舞人]
「ま、待った待った!!」
[ルーシィ]
「マイト……」
[その他]
だが、ルーシィを引き止めるように舞人が慌てて声を上げる。
[舞人]
「負けたから殺すとか殺せとかさ、そういうのは止めとこうぜ」
[ベア]
「なに……? むざむざ生き恥を晒せと、そういうことか……?」
[その他]
ギン、と鋭い目でにらまれ、思わず後ずさる舞人。
[舞人]
「そ、そうじゃなくてさ……負けてる奴にわざわざトドメを刺すような趣味はないっていうか、それをやっちゃうとまるで悪人みたいっていうかさ」
[その他]
舞人は迫力に負けつつも必死に言葉を続けた。
[ベア]
「むぅ……」
[その他]
キョドっている舞人だったが、ベアにはその言葉には共感を覚えるところがあった。
敗者に鞭を打つ趣味がないということに関しては、ベアも同意見だった。
敗者が命を失うときは、戦いの最中にならあれど、戦いが終わった後ではそれは無駄な死である、というのがベアの持論だ。
[ベア]
「ふ……なるほど、さすがは勇者。慈悲深いことだな」
[その他]
ベアは声を上げて笑うと、大剣を手繰り寄せそれを杖に立ち上がった。
[ベア]
「甘言痛み入る……この次こそ、決着をつけさせてもらおう……」
[その他]
ベアは深く頭を下げると、体を引きずるように森の奥へと姿を消していった。
[ルーシィ]
「マイト……意外と懐が広いんだ」
[舞人]
「ま、まぁな……」
[ルーシィ]
「そうだよね……寛大な心を持つのも、勇者の証だよね……」
[その他]
最初の頃からは想像もつかないほどキラキラした目で見つめられ、舞人は思わず照れ笑いを浮かべた。
[舞人]
(しかし……ああ言っておけば、後半で仲間になるフラグが立つかもしれないとか思ってたなんて言えねーよな……)
[その他]
だが、勇者の本心は結局のところそんなもんであった。

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