宇宙艦隊総司令官ウィラード大将率いる地球連合軍 第1・第3・第4・第5そして第8艦隊は、
グランゼーラ革命軍が潜んでいるアステロイドベルトの小惑星帯に向けて粛々と進軍している。

 各艦隊の提督らはバイド戦役で優れた功績を挙げた人物ばかりだが、
その中でもウィラードは誰もが認める老練な歴戦の勇士であった。

彼は年齢に見合わぬがっしりとした体躯と白髪頭、豊かな口ひげの奥から発せられる低く大きな声から、
「氷の巨人」などとあだ名されていた。



 連合軍が討伐しようとしている革命軍は、火星の都市 グラン・ゼーラで蜂起した反乱組織である。

すぐに連合軍は鎮圧に動いたが、その一部が火星を脱出し、このアステロイドベルトに逃げ込んだのだ。

革命軍は近年高まってきたバイド兵器廃絶運動の中心組織である。
バイド兵器“フォース”によって人類を守ってきた連合軍としては、
「廃絶」など許容できるものではなかった。
連合軍上層部はこの戦いに必勝を期していた。

 とはいえ、革命軍の戦力はそれほど大きなものではない。
兵器の横流しや革命軍に身を投じた連合軍の部隊がいることから、彼らの主力戦闘機も
連合軍と同じアロー・ヘッドが中心ではあるが、バイド兵器廃絶を訴える彼らはフォースを使わない。
この一点において連合軍はかなり優位に立っていると考えられていた。

 革命軍がアロー・ヘッドを基に独自のミサイル爆撃機を開発しているという情報もあったが、
ウィラード司令官はじめ大半の提督はこれを重要視しなかった。

「ミサイル」という兵器は、連合軍が戦局を大きく左右すると考えていた“波動砲”のように
高威力で攻撃範囲が広い兵器と比べると攻撃範囲が限定的で、またその威力も波動砲に及ばない。
革命軍側が新型ミサイル爆撃機をこの戦いに投入してくる可能性はあるが、
その影響は限定的であるだろう。



 連合軍の艦隊はウィラードの第1宇宙艦隊を中心に左右5つの艦隊を展開している。
一つの艦隊は1隻の宇宙戦艦と数隻の宇宙巡洋艦、そして数十機のアロー・ヘッドで構成されている。
そのはるか後方の宙域に、他の艦隊の約半分の兵力で構成される第9艦隊の旗艦である
ヴァナルガンド級巡洋艦「エルヴンボウ」はあった。


 総旗艦ロックウイングでの作戦会議が終わってからというもの、若き艦隊司令官デューク少将は
革命軍が開発していると言われるミサイル爆撃機について考えていた。

彼は若年ながら優れた戦果を挙げていたが、長身ながら軍人としてはやや華奢で、
その端正な顔立ちのせいもあって戦闘に従事する者としては軽んじて見られることが多かった。
会議に参加していた経験豊富な各艦隊の司令官らにもそのように見られていた上、
噂されるミサイル爆撃機に固執する様は経験不足を認識していない者の発言のように見られていた。
食い下がるデュークを見かねて、ウィラードは憮然と
「その件は私が引き取る 作戦会議は終わりだ。」
と会議を終了させた。

総司令官の命に従い、デュークは引き下がったが、彼には皆が何かを見落としているような
気がしてならなかった。

革命軍はフォースを使わない。
それは革命軍自身が一番知っていることだ。
フォースがないことを補う兵器を開発するのは当然だろう。

もし革命軍のミサイルが波動砲並みの破壊力を持っていたら?
そして、そのミサイルをレーザー兵器中心の連合軍側に不利な戦場で使用してきたら…。



No.3→弱小艦隊

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年09月12日 07:52