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Chain-情は一匹のかえるを前に狼狽する

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Chain-情は一匹のかえるを前に狼狽する ◆OQfaQnysJI



湖から海に向かい、穏やかに流れていく川のほとり。そこを流れに合わせて進んでいく、一頭の巨大な馬がいた。
その背には、黒いライダースーツに身を包んだ一人の青年が乗っている。

「うーん、全然手がかりがないなあ」

馬上の青年、静かなる~Chain-情~は、そう呟いて眉間にしわを寄せる。
彼は数時間前に川に落ちた二人の参加者の行方を探るため、川の流れをたどっていた。
Chain-情はそれこそ超一流の馬力を誇る黒王号の速度を極力抑えて、注意深く周囲を観察している。
だがそれでも、流された二人の手がかりになりそうなものは未だ見つかっていない。

「手がかりが残ってないってことは、問題なく川から上がってどこかに行ったとも考えられるんだけど……。
 まあ、もう少し調べてみてもいいか。ここで調べるのをやめて、重大な手がかりを見逃したなんてことになったら困るしね」

独り言を漏らしつつ、Chain-情はゆっくりと前進を続ける。むろん、周囲に最大限の注意を払いながら。
そんな折、彼の視界にとある施設が入ってきた。

「あ、温泉……。そうか、スタート地点に戻ってきたんだ」

温泉を横目に見ながら、Chain-情はしみじみと呟く。

「そういえば、前のロワでは第一放送直後に温泉にいたんだっけ」

彼の脳裏に、以前の殺し合いでの記憶が再生されていく。
前の殺し合いでは、彼は第一回放送の直後に温泉を訪れていた。
そこにいた参加者たちを味方につけることに成功したChain-情は、自らは拠点防衛のために温泉旅館で待機することになった。
今にして思えば、その時がChain-情にとって一番心休まる時だったのかもしれない。
もっともその安息の時は、マーダー襲来による拠点壊滅、チーム離散という最悪の形で終了してしまったのだが。

「あの時も、フラグビルドさんにはずいぶん世話になったっけ……。
 フラグビルドさん、無事かなあ。頼りになる人と一緒にいればいいんだけど」

過去を思い出すうちに、Chain-情の脳内は愛する人への想いが比重を増していく。
彼女が恋しい。彼女に会いたい。がむしゃらに彼女を捜し回りたいという気持ちが芽生えてくる。
しかしそれは、今行っている二人の参加者の捜索を放棄するということだ。
過剰なぐらいに真面目なChain-情は、とてもそんなことをする気にはなれない。

「どうしたもんかなあ……」

再び眉間にしわを刻み込み、Chain-情は考え込む。

「おーい、そこの青年」

そんな風に悩んでいたために、Chain-情は自分を呼ぶ声があることにしばらくしてから気づいた。

「おーい、おーいと言うに」
「あれ? 呼ばれてる? どこだろう」

慌てて、きょろきょろと周囲を見渡すChain-情。しかし、声の主は見あたらない。

「こっちだ、こっち」
「こっちって……川の中?」

Chain-情は、川に視線を向ける。そこには、水面に顔だけを出した緑色の生物がいた。

(そう言えば、前のロワではカエルにもずいぶん世話になったっけ)

その時Chain-情の脳裏に浮かんだのは、そんなどうでもいい事柄だったという。


◇ ◇ ◇


そんなこんなで、黒王号から降りたChain-情と陸に上がったカエルは、しっかりと顔をつきあわせて自己紹介を行った。
ちなみに、喋るかえるが参加者として存在していることに関してChain-情は特に動揺していない。
ピッピという前例に遭遇していたというのもあるが、前のロワではもっとすごい化け物に出くわしていたという点も大きい。
グロテスクとしか形容しようのないあのクリーチャーに比べれば、喋るかえるなど可愛いものだ。
ただ、このかえるが鳥獣戯画の出身だと聞かされた時はさすがに驚いたが。

「さて、Chain-情どん。二、三聞きたいことがあるのだが、よろしいか?」
「なんでしょう?」
「お主、積極的に他の者を殺して生き残ろうという考えはあるか?」
「ありません」

かえるからの問いに、Chain-情は即座に答えた。一切の迷いが感じられない返答に、かえるは彼が嘘を言っていないと判断する。
そもそも彼が殺し合いに乗っているのなら、わざわざ自分との会話に付き合ったりしないだろう。

(この男なら、情報を交わしても害にはならぬか……)

そう考えたかえるは、Chain-情に対し自身が最も気にかける話題を切り出した。

「では続けて聞こう。お主は紫の髪のかがみんというおなごを見かけておらぬか?」
「かがみん……柊かがみですか? いえ、すいませんが見ていませんね」
「そうか……」

かえるの口から、溜め息が漏れる。とはいえ、さほど強く落胆したわけではない。
自分もここに来てからであった参加者は、Chain-情で3人目なのだ。他の参加者とてその程度の数なのだろう。
そうそう都合よく、かがみんと出会っている参加者に巡り会えるとは思えない。
何はともあれ、かがみんの情報が得られないのであればこれ以上会話を続ける理由もない。

「時間を取らせて済まなかったな。では、私はこれにて失礼する」
「あっ、ちょっと待ってください!」

Chain-情に背を向け、かえるは川の中に戻ろうとする。だが、Chain-情は遠ざかっていこうとするかえるを呼び止めた。

「む? どうした?」
「情報交換っていうのは、ギブ&テイクが基本でしょう? そちらだけ一方的に質問しておいて、それが終わればはいさようならっていうのはひどいんじゃないですか?」
「ふむ、ぎぶあんどていくとやらの意味はわからぬが、こちらから一方的に質問しただけで別れるのは確かに失礼か。
 わかった、そちらの質問にも答えよう」

Chain-情の言い分に納得したかえるは、進行方向を180°変え彼の前に戻る。

「では、遠慮なく聞かせてもらいます。白い鎧を身につけた小柄な人と、栗色の髪の小さな女の子を見ませんでしたか?
 彼女たちは僕の目の前で、事故で川に落ちてしまって……。今、手がかりを探しているんです」
「悪いが、心当たりはないな」
「そうですか……。じゃあ、もう一つ聞かせてください。素晴らしきフラグビルドという名前の、緑の髪の女の子は見てませんか?」
「そちらも知らんな。私がここで出会ったのは、衝撃のアルベルトとか名乗った好戦的な男だけだ」

かえるは、少しだけ嘘を付いた。やはり、ゴマモンを殺したことに対する負い目があったのかもしれない。

「わかりました……。ありがとうございます」

かえるに対し、Chain-情は丁寧に礼を言う。だがそのたたずまいは、傍からでも落胆の色が見て取れた。

「すまんの、まったく役に立てなくて」
「いえ、こちらも有益な情報は提供できませんでしたから……。おあいこですよ」

なんとなくその場に流れる、重たい雰囲気。そのまま立ち去るのも後味が悪い気がして、かえるは気になったことをChain-情に聞いてみる。

「ところでその、素晴らしきなんたらというおなご……お主とどういう関係なのだ?
 先の二人について聞いた時より、なんというか感情がこもっているような気がしたが」
「え? どういうと言われても……まあ、えーと、あれです。以前からの知人ですよ」
「なるほど、惚れたおなごか」
「っ!」

とたんに挙動不審になったChain-情に、かえるはカマをかける。
結果としてそのカマは大当たりであり、Chain-情はさらに取り乱した。

「いや……まあそれは……そうなんですが……」
「なに、照れることはない! 惚れたおなごのために何かするというのは、男として当然のこと!
 かくいう私も、かがみんに惚れてしまって彼女を捜しているのだからな!
 Chain-情どん、お主の気持ちよくわかるぞ!」
「はあ……」

朗らかな表情を浮かべ、かえるは親愛の情を込めてChain-情の体を叩く。
Chain-情の方は、なんでかえるに親近感を持たれてるんだろう、と複雑な思いに囚われていた。

「そうだ、Chain-情どん。お主を同志と見込んで、あと一つだけ訊きたいことがあるのだが」
「いや、いきなり同志に認定されても困るんですが……。まあ、話は聞きましょう。なんですか?」

若干あきれ気味な態度を見せつつも、Chain-情は律儀にかえるの言葉を待つ。

「愛するおなごを生きて帰らせるために、他の者どもを皆殺しにして殺し合いを終わらせようと思ったことはあるか?」
「ありません」

最初に質問をぶつけられた時のように、Chain-情は即座に答えを口にした。

「ほう……。愛する者のために他のものを犠牲にする、これも一つの愛の形だと思うのだがな。
 お主は一瞬たりとも、そんなことを考えたことはないと?」
「確かに僕は、なんとしても彼女に生き残ってほしい。けど、そのために殺人を肯定するのは違うと思うんです。
 愛ゆえに凶行に走った人を頭ごなしに否定するわけにもいかないのでしょうが、やはりそれは間違っていると思います。
 まあ突き詰めていけば、結局のところは『殺人なんてよくない』という単純な思考に行き着いてしまうんですが。
 すいません、長々と話しておいて、子供のような結論になってしまって」
「いや、かまわん」
「それに……」
「それに?」

「死ぬのも殺すのも、辛いですよ?」

口調自体は、先程までとさほど変わらない。だがかえるには、その一言が妙に重く感じられた。

「お主は、人を殺したことがあるのだな?」
「ええ、一人。殺したその時は、怒りに身を任せていたから何とも思いませんでした。
 けど、冷静になってから自分の行動を振り返って……。ひどく罪悪感を覚えました。
 相手は、明らかに自分に敵意を持っていた。でも、だからといって殺すことが許されるのか。
 襲ってくる人間に立ち向かうことが悪だとは、もちろん思いませんが……。そう簡単には割り切れません」

この男、ずいぶんと繊細な心の持ち主なのだな。
Chain-情の話を聞き届けたかえるは、そんな感想を抱いていた。
かえる自身も、ゴマモンを殺したことに関しては少なからずマイナスの感情を持っている。
だがそれは、自分に非があったかもしれないからだ。
Chain-情のケースは、それとは違う。
襲いかかる火の粉を払いのけることなど、生物として当然の行動である。
このような殺し合いの場なら、なおさらのことだ。
だがこのChain-情は、そのような行動にすら後悔の念を抱いている。
あまりに脆弱、あまりに純粋すぎる。とても殺し合いの場で、長生きできる人間とは思えない。
だがそれでも、かえるはChain-情の人となりに少しだけ羨望の念を抱いていた。
別に、彼のようになりたいと思ったわけではない。あんな繊細な心では、自分の目的を達せられるかどうかも怪しい。
汚れていないことは、必ずしもよいことではないのだ。
だがそれでも、人は自分にないものを持つ他者に憧れる。
人ではないが、かえるもその例外ではなかった。

「Chain-情どん、少ししか話してはおらぬが、お主の性格はだいたいわかった。
 どうやら、お主と私は少々考え方が違うようだ」
「はあ」
「すまないが、先程言った同志という言葉は取り消させてもらおう。
 ああ、だが勘違いしないでほしい。お主の愛を認めぬと言うわけではない。
 ただ私と、愛に関する考えに相違があるということよ」
「はい? いや、まあいいですけど……」

いきなり同志に認定されたと思ったら、数分でそれを撤回される。
かえるの心の内など知らぬChain-情にとっては、意味不明の展開である。
それでも彼は、厳しいツッコミを入れるでもなくただ当たり障りのない言葉を並べていた。
Chain-情という男、戦闘時はともかく平時は相手に流されがちな受け身体質なのである。


◇ ◇ ◇


数十分後、Chain-情とかえるは川に架けられた橋を渡っていた。
Chain-情が探す仮面ライダーと少女の痕跡は、残念ながらここまでまったく見つからなかった。
そうなれば向こう岸に渡った可能性が高いと考え、橋を渡ることにしたのだ。
一方、かえるが橋を渡ったのはもっと単純な理由である。自分は南から来たのだから、また南に戻ることもないだろう。
ただ、そう考えただけだ。

「さて、Chain-情どん」
「なんです?」
「このままお主に同行してもよいのだが、やはり人を捜すには手分けをするのが常道というもの。
 ここは別行動で、お互いの探し人を捜索せぬか?」
「え?」

てっきりかえるがこのまま同行してくれるものと思っていたChain-情は、彼からの提案に動揺をのぞかせる。

「確かに人を捜すにはそっちのほうが効率的ですが……。他の参加者に襲われたらどうするんです?
 僕は武器があるから何とかなりますけど、そちらは見たところ丸腰じゃ……」
「なに、川辺を進んで、危ないと感じたら川の中に逃げ込めばいい。水の中で私に追いつけるものなど、そうはいないはずだからのう。
 というわけで、私は川に沿ってとりあえず自然公園とやらを目指してみる。
 お主は街道沿いに進んでみてはどうかな? 話を聞くに、例の二人が川に落ちてからすでにだいぶ時間が経っているのであろう?
 それならば、すでに川から離れたところに移動していてもおかしくはない」
「なるほど、一理ありますね。では、そうしましょうか」

かえるの提案を、あっさり受け入れるChain-情。何度も言うが、彼は流されやすい体質なのだ。
決して意志が弱いわけでも、自己主張できないわけでもないのだが。
その辺りは相手の意思を尊重する優しさと、星の巡りのかねあいだろうか。

「あ、でも僕がかがみを見つけたり、そちらがフラグビルドさんを見つけたりした時はどうします?
 別行動となると、連絡を取る手段が……」
「ふむ、それならいい方法がある」

そう言うとかえるは足を止め、自分のデイパックをあさりだした。少しの間を置いて、彼はそこから4本の打ち上げ花火を取り出す。
そしてその内2本を、Chain-情に手渡した。

「お互いの探し人を見つけたのなら、それを打ち上げればいい。よほど遠くにいなければ、昼間でも見えるだろう」
「はあ……」

花火を受け取りつつ、Chain-情は「思いっきり水に浸かってたのに全然しけってないなんて、やっぱりパロロワのデイパックはすごいなー」などと割とどうでもいいことを考えていた。
ついでに、「これって使ったら拡声器フラグになるんじゃないかなー」とも。

「では、そろそろ別行動といこうかの。Chain-情、お主とお主の嫁の無事を祈っておるぞ」
「よ、嫁って……。まあいいです、そちらもお気を付けて」

ピョンピョンとコミカルに飛び跳ね、かえるは森の中に消えていく。
その姿を見送ったChain-情は、一つ深呼吸をして黒王号の手綱を握った。

「さあ行こうか、黒王号」

主の思いに応え、黒王号は嘶きをあげて走り出す。これまで速度を抑えていた鬱憤を晴らすように、全速力で。

(しかし、嫁かあ……。いつか、本当にそうなるといいなあ。
 でもそのためには自分の想いをしっかりと伝えて、それからある程度の交際期間を挟んで……。
 って、何を考えてるんだ僕はぁぁぁぁぁ!! 将来設計なんて考えてる場合じゃないだろ!
 今はまず、このロワをぶっ壊すことを考えないと! それをしないで、将来も何もあるか!)

ヘルメットの下で顔を真っ赤に染めたChain-情は、大げさに頭を振って邪念を振り払った。


◇ ◇ ◇


森の中、歩を進めながらかえるは考える。自分はこれから、どうするべきか。
むろん、かがみんを見つけ出すという第一の目的は変わっていない。
だが、見つけられた後の行動に関しては棚上げしたままだ。
Chain-情への最後の質問は、自分の歩むべき道のヒントが得られるのではないかと期待してものだった。
だが彼の言葉はかえるに少なからず影響は与えたものの、明確な答えを導き出すまでには至らなかった。

(まあよい、かがみんが最優先であることは変わりがないのだからな。
 第一の目標を達成せぬうちに、その先を考えるなど愚かなことよ。全ては、かがみんの安否を確認してからでよい)

結局結論は棚上げしたまま、かえるは前へ前へと突き進んでいった。


果たしてChain-情は、そしてかえるは、このバトルロワイアルの中で愛しい女性に出会うことができるのだろうか。


【B-2/道路上/1日目-午前】
 【静かなる~Chain-情~@書き手ロワ2nd】
 [状態]:健康、螺旋力覚醒
 [装備]:滝のライダースーツ@漫画ロワ、騎英の手綱(ベルレフォーン)@カオスロワ+黒王号@漫画ロワ
 [持物]:デイパックx3、支給品一式x3、ゼクトバックル(ホッパー)@なのはロワ、サバイブ(烈火)@書き手ロワ2nd
     :カセットアーム(マシンガンアーム)@書き手ロワ2nd、打ち上げ花火@漫画ロワ×2、不明支給品×1
 [方針/行動]
  基本方針:バトルロワイアルに反逆する。
  1:河に流されたイクサ(長門)と少女(千秋)を探す。
  2:柊かがみも探す。
  3:フラグビルドを見つけ、今度こそ守り抜く。

 [備考]
 ※死亡後からの参戦です。


【B-2/森/1日目-午前】
【かえる@オールジャンルバトルロワイアル】
[状態]:全身各所に裂傷。失意。疲労(小)
[装備]:和服
[持物]:デイパック、基本支給品一式、打ち上げ花火@漫画ロワ×2
[方針/行動]
 基本方針:かがみんと生還する
 1:かがみんを探す
 2:かがみんは本当に死んだのだろうか
 3:殺し合いについては保留(かがみんと結婚してから)だが襲い掛かる相手には容赦しない。
 4:Chain-情の探し人も、いちおう探す。

[備考]
 ※オールロワ140話「B-5周辺顛末記」より参加。
 ※柊かがみが死んだかどうか疑ってます。
 ※禁止エリアを聞き逃しました。


【打ち上げ花火@漫画ロワ】
市販の大型花火。漫画ロワでは範馬勇次郎が使用した。
元のロワでは周囲8マスに光と音が届くことになっていたが、地図の縮尺の都合で今回は届く範囲が変わるかもしれない。


101:魅音の不幸とラッキースターワンダーランド(後編) 投下順 103:Ego-Eyes Glazing Over
098:飢え「無我夢中」の無礼講 時系列順 104:スーパー変態シリーズ アナルフィーバーG
086:想い紡ぐ者 静かなる~Chain-情~ 118:Reckless fire
084:たった一人守れないで 生きてゆく甲斐がない かえる 116:知ってるか?緑はかえるの象徴なんだぜ



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