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true my heart(食べ物的な意味で)

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true my heart(食べ物的な意味で) ◆nkOrxPVn9c



何処にでもありそうな日本の3LDK一戸建て住宅。
玄関口を突き当たり、そのまま左壁の扉を無視して正面の扉を開いたところに人影がある。
部屋に入ってまず目につくのが、スチール製の蛇口が備えられている洗い場だ。
手洗い所にしては底が深く、幅も広い。 その左側にあるのはガスコンロだ。
それと向かい側に置いてある成人男性の身長ほどある棚には、3段ともマグカップや重ねられた皿で埋められている。

「やれやれ、作るというのは何故こうも面倒なんだろうね」

身長177センチのやや長身の男、相羽シンヤが鍋をかき回しながら溜息をつく。
ガスコンロは左右両方とも火を立てて、それぞれの上に乗っている鍋を熱している。
シンヤが手をつけていない左側の鍋は、薄く平らでひらひらしている麺がぐつぐつと音を立てて煮られている。

『泣き言を言うな。 お前が鯖缶食い飽きたって言うからカナ様がわざわざ料理を教えてやっているんだぞ』

胸元のポケットに入れたカードがシンヤに言う。
しかしシンヤはそれを無視して、薄茶色に濁った汁をかき混ぜる。
背後の木製のテーブルに置かれたボールに入っている、干ししいたけと昆布はダシ用だろう。
シンヤ自身は捨てようと思ったのだが、「味つければまだ食えるって」というカナの提案で水に戻している。

『おいおいなんか言ってくれよ』
「五月蝿い。 こんなもの調理法さえ知れば誰でもできるだろ」
『それはそうだけどさ』
「大体教えるとか言っているが、お前は家内にあったレシピを教えただけだろうが」
『ぅぐ!? 痛いところを・・・・・・』

テーブルのボールの隣には開かれた料理の本があった。
黙り込むカナをそのままにしておいて、シンヤはスチール製のお玉杓子から液体を掬って、自らの口に運ぶ。
お玉から少しずつ液体が消えてゆき、代わりに現れた銀色の杓がシンヤの顔を反射する。


「ほぅ」

シンヤは感嘆の声を漏らす。
干し椎茸と昆布の出汁にかつお出汁に興味を引かれ、
付け加えた醤油とみりんが絡み合って舌を刺激される。
隠し味に加えた酒が、それらの味を定着させて、渋みの効いた後味を残す。
惜しくは干し椎茸のひなた臭さが残っていることだが、
生憎今はそれを取っているほどの余裕がないので仕方が無い。

料理などをしたのは何年ぶりだろうか。
手間と時間をかけるくせに、必要な栄養素の一部しか取れない、おまけに保存さえ利かないものなんて無駄以外の何者でもない。
栄養補給ならレーションやサプリメントを摂取すればよいのだ。

「だが、束の間の一時ぐらいはこういうのもいいかも知れないな」

衣食住、自己の安全を確保した人間には余裕が生まれる。
有り余る時間を使うために、食べるという当たり前の行動にすら、味という価値を見出してそれを高めようとするのだ。
平和ボケした地球人が料理をするというのも頷ける。

『それにしてもうまそーだなぁ』
「ならば飲ませてやろうか?」
『うわ!? 今のなしなし!』

カナのカードを掴んだシンヤはそれを鍋に入れようとするところで、カナ自身から静止された。
軽く鼻息を鳴らし、口元を緩めたシンヤは彼女を再び胸ポケットに戻した。

「冗談だ」

こんなところで紙切れを入れて味を悪くしてしまったら元も子もない。
それに、別に邪魔になるというわけでもないので排除する気もない。
五月蝿さで行動に支障が出るというのなら、デイバッグの中に入れておけばよいだけなのだ。
再び力を解放できるようになったときは、文字通り切り札となる。

『おおそうだ、そろそろ麺も煮えたころじゃないか?』

彼女の声で、左側の鍋を見ると、沸騰して泡だっている熱湯から僅かに麺が映る。
数分前に入れたばかりのはずだが、もう既にのびきる寸前のようだ。
きしめんはうどんよりも生地が薄く、平らである。
そのため、似上がる時間に比例して、のびやすいのだ。

『火の後始末もしろよ』

続けて言われるカナの言葉も無視して、コンロのスイッチを消してガスの元栓を締める。
当たり前すぎることなので少し苛立つが、実際それで事故が起きているので仕方ないことでもあるだろう。
そして食器棚から両手で掴めそうなほどの底が厚めの丼を取り出す。
お玉杓子から湯気立つ汁が注がれて、木製の長い箸に掴まれたきしめんが投下される。

「っ!?」

飛び散った汁が手のひらにかかる。
先ほどまで沸騰していたためか、かかった部分が熱い。
すかさずかかった雫を舐め取って、台所の蛇口から水を出して冷やす。
ラダムのテッカマンとなった今でも、素体のままでは脆いものだ。
高々熱湯程度に怯んでしまう自分が恨めしい。

『おいおい火傷するなよ』
「ふん、それよりも付け合せだ」

まな板に、適当にみりんと砂糖でつけておいた干し椎茸と昆布を乗せる。
そして一口大に千切りで刻んで麺の上に乗せる。

『そうだシンヤ、あの缶詰も入れてみろよ』
「缶詰?」

首を傾げたが、缶詰といえば思い当たるものはアレしかない。
デイバッグから鯖缶を取り出して、蓋を開ける。
すると鯖独特の生臭さと味噌の匂いが部屋の中にあふれ出した。

「これを入れるわけだな」

箸を使って中身を丼の上に更に投下する。
汁の匂いと鯖の匂いが混じり合ってシンヤは思わず喉を鳴らした。
麺と汁しかなかった質素なきしめんが今ではしいたけや昆布、鯖と混じって一つの料理と化したのだ。
茶一色で落ち着いた色合いに顔を覗かせる白いきしめんは、シンヤの味覚神経を刺激した。

『おま、頂きますをだな』

箸を使って麺をすするシンヤ。
醤油ベースの汁が麺を包み込み、さっぱりとした、それでいて後味の残る喉越しが口の中を駆け巡る。

次に頬張るのは干ししいたけだ。
砂糖漬けしたので甘くはあるが、みりんが仲介して、きしめんの後味を崩さないようにしている。
だし昆布は噛めば噛むほど舌の中にその味が行き渡ってくる。

『駄目だこりゃ。 食うのに夢中になっている』

きしめんに鯖を絡めて口の中に頬張る。
鯖の味が若干濃いものの、きしめんの味を損なわない程度なので、特に気になるほどではない。
それどころか、鯖の食感が麺のそれと混じり合って食が進む。
もしも醤油ベースじゃなくて味噌ベースで味噌煮込みきしめんにしたならば、この味はうまい具合には調和しただろう。
調理中、カナが「醤油だけじゃなくて味噌もいれよう」とか言ってからそれに従ったほうが良かっただろうか?
・・・・・・いや、それではお互いがお互いの味を殺してしまいそうな気がする。
味噌ベースで作ってもよかったかも知れない。
ていうか他にもカラシとかもやしとか塩コショウとか目に入った調味料色々入れようと勧めていたな。
絶対料理下手だろこいつ。

『なーなー私にも一口・・・・・・やっぱり嘘です』

再び汁に沈めてやろうとカナを丼に投下しようとしてポケットに戻す。
器の中に残っているのは既に僅かな麺と汁だけだ。
丼を持って、豪快にスープを飲み干す。
醤油のコクが口の中を支配して、舌に名残惜しく残った麺の食感を洗うように喉に流れ込んだ。

「ふぅ」
『もう食ったのか、早いな』
「何をいう。 いくら誰もいないからとはいえ、非常事態だ。
食事中に襲撃者が着てみろ。 咄嗟の事態に対処できないだろ」
『おう確かに』
「流石にこれぐらいはお前の頭でも理解できるようだな」
『当たり前だ。食っている最中に誰かが着たらせっかく作った料理が無駄になってしまうな。
それはもったいない』
「・・・・・・」

論点そこか。

【F-4 民家/一日目 午前】
 【相羽シンヤ@アニ2】
 [状態]:疲労(小)、全身に負傷(特に両腕に痛み有り)-手当済
 [装備]:ブレードのテッククリスタル@アニ2
 [持物]:デイパック、支給品一式(食料無し)、レッドアイズブラックドラゴンのカード(南夏奈)@カオスロワ
     :ヤクルト@ニコロワ、他食料
 [方針/目的]
  基本方針:Dボゥイとの決着をつける。
  0:今日も元気だ 鯖缶がうまい。
  1:しばらくは民家にて体を休める。
  2:魅音とは合流できそうにないので予定は破棄。
  3:人間に正体がばれないように行動。ばれたり邪魔だと感じたら殺す。
  4:村雨とラッドを殺す。
  5:もう少し冷静に行動することにする。
  6:Dボゥイの分のテッククリスタルを探し出し手に入れる。
  7:ゆたかと出合ったら……?

 [備考]
  ※参戦時期はアニ2、211話「The Incarnation of Devil」内でラッドに殺される前。
  ※力の制限、特にボルテッカに関しては大きな制限が掛けられています(威力低下、疲労感と空腹感の増加など)
  ※南夏奈のカードはテラカオスに殺される直前から参戦。制限はニコロワ準拠で問題ないかと。
  ※南夏奈のカードは24時間使用不能(二日目の午前7時から使用可能)
  ※魅音の生存は当てにしていません。
  ※鯖缶や他食品の残量は後の書き手さんに任せます

107:Bad-Ass 投下順に読む 109:爆裂的に鎮火せよ!
107:Bad-Ass 時系列順に読む 109:爆裂的に鎮火せよ!
089:Dawn(暁、夜明け)(後編) 相羽シンヤ 125:そして少女は死んだ -The Elfin Knight-


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