今目の前に広がるものは僕が望んでいた光景なんだろうか
そうだとしても、そうじゃなくとも
戻ることは許されないのだ
そうだとしても、そうじゃなくとも
戻ることは許されないのだ
「…………」
「どうしたの?蒼星石」
「どうしたの?蒼星石」
僕の目線の先には四肢を投げ出した雛苺がいた
口端からは唾液を垂らし、ピクリとも動かない
口端からは唾液を垂らし、ピクリとも動かない
そのまま顔を真紅の方に向けたら
「貴女がしたことなのよ」と冷たく言われた
「貴女がしたことなのよ」と冷たく言われた
言い返すことなんてできなかった
‥‥‥‥‥‥
「今なら貴女に協力できるわ」
最初は聞き間違いだと思った
こんな状況で、よくもまあ自分に都合の良い聞き間違いをするもんだと自分に呆れる余裕がどこかにあった
こんな状況で、よくもまあ自分に都合の良い聞き間違いをするもんだと自分に呆れる余裕がどこかにあった
真紅は一歩僕に近づき、また同じことを言う
聞き間違いではないのだと分かって、初めて真紅の眼を見れた
聞き間違いではないのだと分かって、初めて真紅の眼を見れた
口が半開きのままの僕の頬を触り、言う―――
「雛苺が欲しいのでしょう?」
僕はどうやら、その問い掛けに、首を縦に振ったらしい
そこから自分との戦いが始まったことに気付いていたのは、おそらく真紅一人だけだっただろう
そこから自分との戦いが始まったことに気付いていたのは、おそらく真紅一人だけだっただろう
「欲しいのなら奪ってしまえばいい」
いきなり耳元で聞こえた声
いつの間にか真紅の顔は僕の顔の横にあった
いつの間にか真紅の顔は僕の顔の横にあった
愛は奪うでも与えるでもないなんて言う者もいるけれど
奪ってこそ生まれる愛だってあるのよ
奪ってこそ生まれる愛だってあるのよ
まさかそんな解りやすい嘘でこんなことになるなんて
冷静さを欠いていたとは言え、後悔先にたたずなんて言葉で慰められるものではない
冷静さを欠いていたとは言え、後悔先にたたずなんて言葉で慰められるものではない
しかし、そのときの僕にはこの悪魔が天使に見えていたわけで
その天使に導かれるままに、雛苺の服に手をかけたのだった
その天使に導かれるままに、雛苺の服に手をかけたのだった
‥‥‥‥‥‥‥
「僕は、こんな…ことを…」
「強姦を、した」
「強姦を、した」
はっきりと言われて、吐き気に襲われた
真紅も睨んでも意味がない、というか真紅に睨まれる義理はない
真紅も睨んでも意味がない、というか真紅に睨まれる義理はない
確かにこんなことをしたのは
僕なのだから
僕なのだから
償おうにも償えない
雛苺は勿論、自分さえも傷つけ
雛苺は勿論、自分さえも傷つけ
不気味な笑みを浮かべる真紅だけが、空間に浮かんだ
僕は雛苺の頬を伝う涙を拭うことしか出来なかった