アットウィキロゴ
ジョジョの奇妙な東方Project@Wiki
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

ジョジョの奇妙な東方Project@Wiki

幻想郷の奇妙な物語 第七話

最終更新:

shinatuki

- view
だれでも歓迎! 編集
 幻想郷が夕闇に包まれていても紅美鈴の眼が開くことはなかった。もはやシエスタとはいえない、昼寝にしては長すぎる。
 彼女がいつも昼間に寝ているのには理由がある。それはいつだっただろうか。館の住人の遊び相手を務めるためについ夜更かしをしてしまったのだ。それでも日中には勤めを果たさねばならない。門番の辛いところだ。
 別段美鈴はそれを苦痛に思っているわけではない。ただその日は暇だったのだ。ポカポカ陽気を浴びてしまったならば人間でも妖怪でもウトウトしてしまうのは道理と言うものだ。だから昼寝した。そこまではよかった。
 だが思いも知らない事態が彼女を襲ったのだ。日中に思わず熟睡してしまった為に、夜、ベッドで布団を被っても眠ることが出来ないのだ。
 もうお分かりだろう。それ以後美鈴はそれを繰り返した。夜寝られないので昼に寝る。以下その繰り返し。
 美鈴とて馬鹿ではない。生活態度を改めようとすればそれは出来た。しかし彼女はそれをしない。それは何故か。
 理由なく怠惰な生活をしているのではない。紅魔館は決して狭い館ではない。むしろその敷地は広大ともいえる。そこに門番である美鈴が終始その目を光らせていたならばどうだろうか。
 紅魔館に害意を持っているモノ、獣ではなく知性を持ったモノならば彼女が陣取る正門を突破しようとは思わない。美鈴はその実力を軽んじられがちだが、強者の部類に属する。ならばこそ侵入を考えるのならば彼女を避けるのは至極当然である。
 当然そのような事態に陥れば美鈴の手が回らない。僅かな隙を突かれ正門以外から侵入を許すかもしれない。だから彼女はシエスタと巷で囁かれる昼寝をしているのだ。
 偶然の産物だがこれは非常に効率が良いことに彼女は気付いたのだ。
 昼寝をする門番……故意に隙を見せることにより、容易な侵入経路を作り出し、そこから侵入させるように誘導する。千丈の堤蟻の一決ともいう。鉄壁の守りも蟻に崩される恐れがあるのだ。
 だからこそ、あえて紅魔館の守りに隙を見せることにより、敵を一箇所に集中させ一網打尽にするのだ。

 以上が咲夜に昼寝を咎められた時の美鈴の言い訳である。ちなみに咲夜にこの言い訳を聞き入れてもらえず、晩御飯抜きにされたのは蛇足でしかない。



 結局なにが言いたいのかといえば、例え寝すぎていても美鈴は門番であったということだ。
 その眼が閉じていて、夢の中でデス13と戦っていても近づいてくる者の気配を機敏に感じ取っていたのだ。
 最も、その気配でチルノと大妖精、知らない『誰か』だと分かっても彼女は目を覚ますことなく、デス13と夢の中で遊んでいた。

「めーりんにおはよーって言わなきゃ」
「うーん、でも時間帯的にこんばんはの方がいいと思うけどな」
「大ちゃん、でもめーりん寝てるよ。アタイが今から起こすからさ、やっぱりおはよーでいいんだよ」
「それもそうかもって、チルノちゃんッ! その氷でどうする気なの?」

 美鈴を起こす。チルノはそう宣言すると一口大の大きさの氷を手のひらに生み出した。制止しようとする大妖精の声を無視してチルノは美鈴の背後に回った。そしてその氷を首筋にピタッとくっ付ける。

「あひゃぁ! な、何事ですか!? メーデーメーデー、増援を! もはや我、戦力なし!」

 当然そのような事をされればさすがの彼女も目を覚ます。加えて混乱を極め、あたふたと慌ててよく分からない言動をせざるを得ない。
 チルノはその様子を見て隠すことなく大きな口を開けて笑い、大妖精も笑いを必死に堪えようとするが堪えきれず、笑い声を漏らしていた。

「な、何? チルノと大妖精じゃない。もう日も暮れかけているというのに何事? まさか悪戯をしに来ただけじゃないよね?」

 ようやく平静を取り戻した美鈴が気を取り直し、用件を尋ねた。尋ねられたチルノはと言うと未だに腹を抱えて笑い転げているので話にならない。必然的にその質問に答えるのは大妖精となる。

「あの、さっき人が倒れていて……」

 大妖精は気まずそうに視線を地面に向けた。その視線の先には件の少女、マエリベリーと名乗った少女が横たわっていた。砂と泥まみれで。
 勿論これには事情がある。妖精といっても所詮その力は高が知れている。いくら意識を失った少女の体重が軽くとも運ぶのには難儀してしまう。当然引き摺らざるを得ないのだ。
 無論、先に美鈴を呼ぶなどと言う別の方法もあったかもしれない。だが彼女達は妖精だ。そこまでの知性を求めてはいけない。特にチルノには。
 そのような事情に加えてチルノの悪戯に注意が向いてしまい、要救助者である少女のことが頭の中から抜けてしまったのだ。気付いたときにはもう遅し、発見したときよりも傷が増えている。

「あはは、大妖精も差し入れ? 人間なんて今は食べないよ。この前チルノも氷漬けにしたか蛙を差し入れだって持って来てたからあんたも? あんたたち妖精は考えることが一緒だね」
「違います!」

 大妖精は言葉に若干の怒りの意を含ませてそれを否定した。それは的外れな返答に対する怒りか、それともチルノと同類にされたことに対する怒りか。ともかく、大妖精にそれを否定された美鈴は首を傾げる。

「ん? 差し入れじゃないと……まさかこの人間が傷を負っているからここに連れてきた訳? まさかねぇ、妖精が人助けなんて……ねぇ?」
「えっと、その通りなんですけど……」
「ありがたくおもいなさいよね!」
「ええ!? え、何? 人間に悪戯したら大きな怪我をさせてしまったから罪悪感に駆られて……この傷は氷が原因ではない。まさか大妖精まで……いやぁ妖精も物騒になったなぁ」
「チルノちゃんじゃあるまいし、そんな事しません!」
「そうだぞめーりん! あたいさいきょーだから」
「ちょっとチルノちゃん?」
「なに、大ちゃん」
「今、美鈴さんとお話しているの」
「う、うん」
「少し黙っていてくれる?」
「なんで?」
「黙っていてくれる?」
「わ、わかった。あたいさいきょーだからわかった!」

 そもそも美鈴の頭の中には妖精が人助けをするという考えがないようだ。大妖精と話をしてもどこか噛み合わない。話の齟齬を正すため状況を説明するために、彼女はまずチルノを黙らせた。この⑨はすぐに話の腰を折るからだ。
 チルノを黙らせたら美鈴に状況の説明だ。チルノと言う妨害者を黙らせたおかげで美鈴はすぐに状況を理解した。

「ああ、気まぐれで怪我人を拾ったと」
「気まぐれって……もうそれでいいです。ともかくこの人助けてあげてくれませんか」
「たすけてめーりん!」

 どうやらチルノも多少は空気が読めるらしい。差しさわりのない範囲で口を開いた。
 美鈴はチルノの言葉に軽く手を振ると屈み込み、横たわる少女に手を伸ばした。

「頭の傷が一番深いかな? でも血がもう固まっているから大事にはならないと思うねね」
「めーりん治せる?」

 美鈴が屈み込んだのにつられてチルノも屈み、傷を見る美鈴の手元を覗き込んだ。

「あーそうだね、私の気を使う程度の能力でこいつの自然治癒力を高めれば治りは早くなると思うけど……」
「けど……なんですか?」
「しぜんちゆりょくってなに?」

 やはりチルノはチルノと言うことか。口を挟まねばいられないようだ。それでも美鈴は彼女の質問に答えてあげた。

「傷ってほっといても勝手に治るでしょ。それのことだよ。でもその前に消毒しなけりゃね」
「あたいそれしってるよ! おぶつはしょうどくだ~ってやつでしょ!」
「いやそれ違うから。チルノちゃん? いい加減にしないと私怒るかも?」

 何度も話の腰を折られればさすがの大妖精も堪忍袋の緒が切れると言わざるを得ない。美鈴はそんな大妖精を手で制止した。

「まあ抑えて。頭の傷の他にもちっちゃな擦り傷があるでしょう」
「そうですね。ちょっと汚れているのが目に見えて分かりますね」
「ちゃんと消毒して綺麗にしないといくら気で自然治癒力を高めたって治んないからね」
「おもいだした! あのつけたらジュワってなるやつだ。まえにひとざとでけーねにぬられたんだ。あれしみるんだよなー」
「過酸化水素水だね。でも紅魔館にあるのは赤チンだからね、あははは」
「紅魔館だけに赤チンですか……」

 上手いことを言ったといわんばかりに笑う美鈴を呆れ顔で眺める大妖精。チルノは何が面白いのか理解できないでいた。

「それよりはやくこいつをなおしてよ」

 チルノは横たわる少女を指差して美鈴に催促する。美鈴もその催促を受けてようやく笑うのを止めた。

「あーはいはい、そうだったね。あーでも赤チンどこ置いたっけ? 最近使ってないし……」

 大妖精は段々と美鈴に任せて置いて大丈夫なのかと心配になってきた。それが表情に出たのだろうか、美鈴は彼女の顔を見て何度も大丈夫だと繰り返すのだった。

「そう心配しなくっても大丈夫! これからちょっとした魔法を使うからね」
「魔法……ですか」

 彼女の目つきはまるで、『お菓子をあげるからおじさんと遊ぼう』と言ってくる不審者を見るような眼差しであった。きっと彼女ならば知らない人に付いて行くことはないだろう。

「めーりんすげー!」

 対するチルノはと言うと、目をキラキラと輝かせながら美鈴を見つめていた。その様子はまるで『おじさんが魔法を見せてあげるからあっちに行こう』と言っている不審者にホイホイと付いて行くような子供のようであった。

「今日は特別にチルノにその魔法を教えてあげまーす」
「え、マジ!? うそじゃないよね! やばい、どうしよう大ちゃん。あたいさいきょーなうえにまほうまでつかえるようになっちゃった」
「美鈴さん……チルノちゃん……」

 大妖精のその眼差しを第三者がいればこう表現しただろう。『あれは頭が可哀相な人を見る視線だった』と。
 彼女の視線を知ったことかと美鈴は話を続ける。

「この呪文を唱えると瀟洒なメイドさんが文字通り飛んでやって来ます」

 真顔でそう言うと美鈴は地面に指で何やら文字を書き始めた。

「マジで!? すげぇ! あ、めーりんめーりん」
「んん? どうしたのかな?」
「これなんてよむの」
「PAD(パッド)。で、これが長(ちょう)。さぁ続けて大きな声で言ってみよう! これで晴れて君も魔法使いだ!」
「わかった! よーしいくぞぉ……PADちょうー! PAD長!」

 誓約(絶対に口に出さないという約束)の言葉はチルノの口から紡がれた。その言葉は風に乗って紅魔館の中にしっかりと届いた。
 そして、大きな声をだして、どこか誇らしげな表情のチルノは見てしまった。眼前に突如なんの前兆もなく彼女が現れたのを!

「やった! これであたいもさいきょーのまほうつかいよーせ……」
「瀟洒キック(遠A)!」

 次の瞬間、瀟洒なメイドさんの瀟洒なソバットがチルノの言葉を遮り、彼女を穿つ!

「この腐れ妖精が!」

 吹き飛んだチルノにそう言葉を吐き捨てる瀟洒なメイドこそ我らのPAD長! 十六夜咲夜、その人だ!

「で、美鈴? その地面の文字は何かしら? この馬鹿妖精が横文字使うからおかしいと思えば貴方の入れ知恵ね」

 慌てて地面に書いた『PAD長』の文字を足で消す美鈴であったが、遅すぎた。もはや弁解の余地はない。

「あのですね。これはその……」
「PADじゃないって言っているでしょうが! 何なら触って確かめてみる? ほら、さぁ触ってみなさいよ」
「いや、その……」
「何しているのよ。大妖精、あんたでいいから触ってみなさい。それで真実を妖精社会から人間社会、果ては妖怪冥界社会に広めなさい!」
「え? えぇ!? わ、わたしですか?」

 チルノが吹き飛ばされてオロオロする大妖精の手を咲夜は掴むと、その手を自身の胸にやった。
 大妖精は神妙な顔付きになるとその手の感触をじっくりと確認する。

「分かったでしょう?」
「そうですね。この大きさはCカップですか?」
「あら、そこまで分かるのね。お姉さん、この真実を皆に広めてくれたら嬉しいわ」

 大妖精の言葉に咲夜の顔は得意げになる。だがそんな彼女に大妖精は止めを刺す。

「この感触ッ!………1ドル25セントの柔らかさ……」
「な、何を言うだァーッ!」

 1ドル25セント。その値段に何か心当たりがあるのか、美鈴はポンと手を打った。

「思い出しました。咲夜さん、あの広告ってうわっ。ナイフ投げないで!」

 真相を語らせまいと彼女が取ったのは実力行使。ナイフで美鈴の口を黙らせようとした。だが咲夜は焦りの余り周囲が見えていなかった。真相に辿り着いたのは美鈴だけではない。

「あたいしってるよ! ここをばいんばいんにするやつでしょ!」

 チルノは両腕で自身の胸を大きくする仕草をし、その物の使い方を示す。
 まさかチルノにまでそう言われると思ってもいなかった咲夜はショックの余りよろめいてしまう。そして躓いてしまった。そう、チルノたちが引き摺ってきたあの少女に。
 思わずドスンと少女の上にドスンと尻餅をついてしまった咲夜。チルノが横たわる少女に近くに落ちていた小枝で突いてみるも全く反応がない。
 その様子を見て美鈴と大妖精は『ああ、この人ついにやっちゃったな』という哀れみの視線を咲夜に向けていた。

「咲夜さん」
「な、何よ美鈴」
「面会には差し入れを持っていきますから」
「え!? 私が悪いの!?」
「さすがに止めを刺したら弁解の余地はないと思うんですけど……」
「きょーきはあんたのナイフね! めーたんていチルノにかかればかずのこさいころよ!」
「ちょっと大妖精、そこの馬鹿黙らせてくれない?」
「え、ええ!?」
「咲夜さん、冗談はさて置き……」

 何か他に言うべき事があったのかしらと小首をかしげる大妖精であった。無論咲夜も何のことかさっぱり分からず少女の上に乗ったままである。
 そんな彼女達を気にも留めず、無表情にパンと手を叩いた。

「何しているのかしら?」

 咲夜の問いに眉一つ動かさずに人差し指と中指を立てる、じゃんけんで言えばチョキ、ピースサインと呼ばれるハンドシグナルを作った。次いで人差し指と親指で円形を作り、その後、手を額にかざし、何かを眺める仕草をし始めた。

「まさかそれって……」
「大妖精、あんた分かるの? 私は分からないんだけど」
「あたいわかったよ! パンツまるみえでしょう!」
「ッ!?」

 チルノに分かったことに自分が分からなかったことによる羞恥からか、それとも尻餅をついた拍子に捲れたスカートをそのままにし、はしたなくパンツを衆目(見たのは三人しかいないが)にさらした為なのかは定かではない。
 顔を真っ赤にして慌ててスカートを直すと美鈴たちをキッと睨んだ。

「YEAAAH! 絶対領域、まさかの陥落!」
「よくわかんないけどいぇーい!」

 パシッと景気の良い音を鳴らし、ハイタッチをするチルノと美鈴。それを見て腹を立てた咲夜を一体誰が責める事が出来ようか。

「みてみてめーりん!」
「おや? どうしたのかな?」
「あたらしいまほうつかった?」
「使っていないよ」
「じゃあこれあたいだね! やっぱりあたいはさいきょーだ! だってこんなにもいっぱいのナイフをよびだせるまほうだもんね!」
「チルノ何を言って……う、うわあぁぁぁぁッ!」

 自信満々に胸を張るチルノと怯える美鈴の周囲を数えきれないほどのナイフが二人を囲んでいるのだ。もはやその後の惨状は語るまでもない。

「さて、この娘は誰なのやら……」

 咲夜はそういうと自身が先ほどまで文字通り尻に敷いていた少女を抱え上げた。俗に言うお姫様抱っこで。大妖精はガクガクブルブルと震えながら独り言のような咲夜の問いかけに答えた。

「あ、あの、マエリベリーって言っていました。えと、その人の名前……」
「あらそう。聞いたこともない名前ね。まぁいいわ。怪我もしているみたいだし、館で治療してあげないとね」
「そ、それはいいんですけど……あの、美鈴さんやチルノちゃんは……」
「放っておきなさい」
「で、でも」
「放っておきなさい、と私は言っているのよ?」
「ひぃ!」

 優しい大妖精の言葉を無碍なく却下する紅魔館の瀟洒なメイド。だって仕方がないじゃない。もう怪我人抱えているんだもの。そう咲夜は言いたかったのだ。だが前後の行動からどうあがいてもそれを彼女の発言から汲み取ることが出来ない。
 大妖精が『放っておけ。もし手を貸したら……分かっているだろうな?』と咲夜の言葉を捉えたとしても何ら不思議はなかった。それ程咲夜の所業は恐ろしいものであったのだ。
 もしこの時大妖精が恐怖の余り粗相をしでかしでもしたら、咲夜は喜び勇んで少女を放り投げ、レミリアと同じ運命に大妖精を合わせた事だろう。



 紆余曲折あったが、こうして地面に横たわった少女は、ようやく紅魔館に運び込まれたのであった。



チルノ、紅美鈴 仲良く二人でリタイヤ(ナイフ串刺しの刑)



第七話

1ドル25セント
前へ 目次へ 次へ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー