クラフト・ワークは動かせない
第四話「クラフト・ワーク・ザ・ワールド」
広間で醜態をさらした挙句、勢いで(油断していたとはいえ)レミリアを再起不能もとい満身創痍にさせたサーレー。
逃げだした彼は先程からいくつかの違和感を感じていた。
1つ、パチュリーとフランが追ってこないこと。
5分程走ったため相当距離が空き、さすがに『クラフト・ワーク』の固定も解けたはずなのに何のアクションも無いのだ。
あそこまで好戦的になっていた2人が追ってこない…暇を持て余す者のすることとは到底思えない。
2つ、咲夜が時間を止めた時の、「一瞬の違和感」を何度も感じ取っていた。
しかも何度も感じ取るたびに、違和感は長くなっていた。
「ギャングの『勘』が告げてやがる…これから何かが起こる。そんな気がムンムンしてきやがるぜ」
サーレーは少し頭が悪い(知識がないだけかもしれない)が、ギャングで培われた勘がある。
だからこそこれから何かが起こるということは雰囲気で分かってしまったのだ。
「…考えても仕方ねーな。スタンドは出しとこう」
出現したのは彼の相棒。実際には相棒はズッケェロだろうが、今はいないのでどうしようもない。
麻薬チームにどうされたのかは彼に分かるはずもないが、もう死んでいるだろうとしか思えなかった。
「そうなると…ズッケェロのやつもこっちに居るかもしれねーな」
少しうれしくもなるだろうが、今の状況でその可能性は何の役にも立たない。
今頼れるのは彼のスタンドだけ、『クラフト・ワーク』。
トゲのついた、しかめっ面。幾度となく、共に困難を乗り越えてきた相棒だ。
防御において無敵、攻撃において多彩。そんな相棒を出現させた…数秒後。
一瞬の違和感を感じ取ったサーレーは、反射的に固定を使った。
次の瞬間…彼の眼に映ったのは、自分のスタンドの表面にびっしり固定されている大量のナイフだった。
固定を解除されたナイフが金属音を響かせ大量に落下していく。
「(一瞬。何が起こったのかよく分からねーが…『止まった』って事は分かったぜ)」
時を止めて、ナイフを投げた当の本人は見当たらない。
サーレーは使えるかもしれないという理由でナイフをいくつか拾い、ズボンのポケットにしまい走りだした。
「メイドも鬼で3対1か…おもしれーぜッ!」
人間吹っ切れると強い。
『リアル鬼ごっこ』:残り1時間5分
―――――――――――紅魔館:広間(5分前)――――――――――――
パチュリーとフランの床との固定は、十数秒後には解けていた。
『クラフト・ワーク』本体もそうだが、固定能力も大した射程距離は無い。ある程度離れると消えてしまう。
「やっと動けるようになったけれど…どうします?妹様」
どうします?などと言っているが、魔力を溜めて臨戦態勢だ。彼女の魔法を喰らったら、場合によっては死ぬ。
「おいかけるー!」
楽しそうにするのは良いが、レーヴァテインを持っている。喰らったら場合によらなくても死ぬ。
少し困った顔でパチュリーが聞く。
「追いかけた後のことですよ。このゲームの趣旨は『動けなくする』事なんですから」
「じゃあ四肢を叩き潰す」
「……………」
豹変したかのように残酷な顔をして答えた。さすが悪魔の妹である。
「…それでは捕まえたあと働けませんよ。そうだ!気絶させちゃいましょう」
これは妙案とドヤ顔で言葉を放った。
「気絶のさせ方わかんなーい」
この返答は方法が分からないというより、力加減が分からないという意味であると思われる。
パチュリーが困った顔で「じゃあどうしましょう」と言った瞬間。背後からいきなり声が聞こえた。
「では、私にお任せ下さい」
「「!?」」
聞こえた声と気配に思わず身構えつつ後ろを向くと、レミリアの看病をしていた筈の咲夜が立っていた。
すこし雰囲気が違うような気がしてならないが、パチュリーが口を開く。
「あら、レミィの看病はもういいのかしら?」
「ええ、ぐっすり眠っておられます。ふふ、残念ですね」
不敵な笑みを浮かべる咲夜にフランが問いかける。
「さくや、なんか変。へんなものでも食べたの?どうしちゃったの?」
限りなく正解だ。ただし質問には返答が来る。たとえどのようなものであろうと。
「ふふ、そうですね。強いて言うのであれば…」
「とても戦いたくなりました」
…バタッ
ただ一瞬。たった一瞬。秒針が時を刻む間も無いくらいの、一瞬。
時が止まったその直後、悲鳴も出さず、2人が倒れた。
4ボスとEXTRAボスが同時に敗れた。それだけでもマズいのに、さらに驚くべきことが2つ。
咲夜が(美鈴除く)紅魔館の住人に手を出したということと、止まった時の中で攻撃したということ。
まあ体罰程度に叩くことぐらいはあっても、ナイフを使うことなど(美鈴除いて)普段ない。
そして、止まった時の中での攻撃。これはポリシーなのか(美鈴以外には)使用しない。
つまり今、咲夜は普段しないことを厭わないくらい「ハイ!」になっているのだ。
なぜか…それはもちろん『サバイバー』入り水を飲んで、「好戦的になった」ということが原因だ。
ただしそんな事は今関係ない。
「何ですか…お2人とも弱いですね。やはりここは、サーレーに相手になってもらわなくては」
いま大事なのは、ここに怪物が誕生してしまったということだけだ…時間を止める殺人姫が。
「サーレー…楽しませてくれるわよね!」
時を止めながら、咲夜はサーレーの元へ向かった。
『リアル鬼ごっこ』:残り1時間10分
―――――――――――紅魔館:廊下――――――――――――
サーレーがナイフを拾う…つまり咲夜の暴挙から5分後、何度も何度も背後からナイフ弾幕が彼を襲う。
流石に逃げながらの戦闘は不利と感じたのか声を荒げる。
「投げてるだけじゃオレにはキズ1つ付かねーぜッ!姿を見せて正々堂々かかってこいよ!」
サーレーの挑発が効いたのか弾幕が止まり、違和感が彼を襲う。
そして姿を現すメイド。
「流石ね…私の弾幕が効かないなんて。やっぱりお嬢様を倒しただけはあるわね」
「…鬼ごっこの割にはハードじゃあねーか?」
その言葉はまさに勝負の合図となった。
「バカね…ルナティックよ!『幻世「ザ・ワールド」』!」
一瞬の違和感とともに辺りに大量のナイフが出現する。
「初心者はイージーで挑戦するけどなッ」
スピードAの『クラフト・ワーク』にとって、ハジキの弾はもちろんのこと、ナイフを叩き落とすのはムズかしいことではない…が。
流石に周り狭く量が多い。弾ききれなかったナイフの一本が服を切り裂いた。
自分に向かってくるナイフ…廊下で戦闘中のため避ける事ができない。
2、3本ならまだしも、何十本ものナイフを全て叩き落とすのは難しかった。
「ちっ、多すぎだろーが…固定しろッ、『クラフト・ワーク』ッ!」
殴っていく度にナイフが停止する。
廊下を塞ぐナイフの壁を見て咲夜が言った。
「全く、速いわねあなたのスタンド。あら、これじゃ通りづらいじゃない…回収しなきゃ」
その時、サーレーはまたしても時間が止まった際の違和感を感じた。
しかし、今回違うのはそれがまだ続いているということだ。
「(なんだ!?体が動かねー…目も動かせねーし喋れねー…!)」
「でも見える…アホメイドがオレが固定したナイフを回収しようとしてるのが見える…」
体の動かないサーレーの視界には、空間に固定されたナイフを一生懸命動かそうと引っ張っている咲夜の姿が映っていた。
そして、固定していないはずの弾いたナイフも空間に浮いている。
「(この違和感…まさか…これが時が止まった世界ってヤツかッ!本当に止めてたのか…)」
まだ咲夜は頑張って動かそうとしている。
「(なんでこの「世界」に入ってこれたんだ…停止って共通点があるからか…って、おい…ちょっと待て。さっきアイツなんて言った?
『全く、速いわねあなたのスタンド』って言ったよな。何で分かるんだ?まさか見えてんのか?)」
咲夜は未だにナイフを引っ張っている。
「(それに、アイツさっきと雰囲気が違う…しかももっと策を弄しそうな性格だとオレは思ったが…
もしかすると、スタンドが使えるようになったもしくは…誰かのスタンド攻撃を受けておかしくなった…が妥当だろ)」
咲夜はナイフの壁を蹴りだした!
「(それに…オレの固定は止まった時の中でも変わんねーみてーだ。…何かアイツかわいそうになってきたな…解除だ)」
その瞬間ナイフの固定は解除され、ナイフは咲夜の蹴りを受け飛び散った。
「(!待てよ…止まった時間の中でもオレの固定は消えなかった…つまりッ!固定に時間停止は効かねーってことだよな~ッ!)」
咲夜はいそいそとナイフを回収している。
「(思いついたぜ~ッ!心臓直触れなんてチャチなもんじゃあねー新技を!…ぜってー出来るハズだ!)」
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――
しばらくして時間の停止は解除され、違和感も消え去った。
「はぁ、はぁ…さぁ、続きと、いきましょう」
「おいおい、どうした?息が切れてんじゃあねーか。ナイフなんか引っ張ってるからだぜ~ッ!」
その言葉を聞いたとたん、空気が硬直した。
「なんで…分かるの?まさか…入門してきたって言うのかしら?止まった時の世界へ…」
咲夜は珍しくうろたえている。
「ああ、全部見えてたぜ。白鳥も水の下ではバタ足してるっつーが、瀟洒なメイドもとんだ白鳥だったな(笑)」
その一言が咲夜の闘争心MAXな心とプライドを刺激した。
「いいわ…分かった。戦うのはもうやめね…ここからは…殺戮ショーよ!!『幻世「ザ・ワールド」』ッ!」
またも時が止まった。動けなくなり絶対絶命…と思われるが、これこそがサーレーの作戦。
カニミソでも詰まってそーな頭で考えた、新技開発の…時間停止の攻略ためのとっておきのプランA。
「知覚は出来ても動けはしないのね…ショーにピッタリだわ!」
咲夜はナイフを四つ取り出した。
「まずは四肢からよ!」
そして投げた。
『サバイバー』によって、「冷静」という言葉を失った咲夜が残酷に笑う。
数秒程度で動けないサーレーの四肢にナイフが突き刺さる…
…はずだった。
「え…?なぜ?」
咲夜の投げたナイフはサーレーの3m程前で停止…いや、「固定」されていたのだ。
「私の…ナイフが止まった…?」
本来勝手に止まるべきではないナイフが、彼女の「世界」で止まったのだ。
「…成功だ。喋れるし動ける。遠隔で出来る以上、出来ねーことはねーと思ったがな」
咲夜は完全にうろたえている。
「お前の「これ」…『ザ・ワールド』っていうんだよな?昔そんなスタンドがいたってのを聞いた事がある」
サーレーの眼には「勝利」を確信したものに宿る輝きがあった。
「お前のはスタンドじゃあないんだろうが…使わせてもらうぜ、その名前…
これがオレの新技だ、『クラフト・ワーク・ザ・ワールド』」
『リアル鬼ごっこ』:残り1時間3分
第四話「クラフト・ワーク・ザ・ワールド」
広間で醜態をさらした挙句、勢いで(油断していたとはいえ)レミリアを再起不能もとい満身創痍にさせたサーレー。
逃げだした彼は先程からいくつかの違和感を感じていた。
1つ、パチュリーとフランが追ってこないこと。
5分程走ったため相当距離が空き、さすがに『クラフト・ワーク』の固定も解けたはずなのに何のアクションも無いのだ。
あそこまで好戦的になっていた2人が追ってこない…暇を持て余す者のすることとは到底思えない。
2つ、咲夜が時間を止めた時の、「一瞬の違和感」を何度も感じ取っていた。
しかも何度も感じ取るたびに、違和感は長くなっていた。
「ギャングの『勘』が告げてやがる…これから何かが起こる。そんな気がムンムンしてきやがるぜ」
サーレーは少し頭が悪い(知識がないだけかもしれない)が、ギャングで培われた勘がある。
だからこそこれから何かが起こるということは雰囲気で分かってしまったのだ。
「…考えても仕方ねーな。スタンドは出しとこう」
出現したのは彼の相棒。実際には相棒はズッケェロだろうが、今はいないのでどうしようもない。
麻薬チームにどうされたのかは彼に分かるはずもないが、もう死んでいるだろうとしか思えなかった。
「そうなると…ズッケェロのやつもこっちに居るかもしれねーな」
少しうれしくもなるだろうが、今の状況でその可能性は何の役にも立たない。
今頼れるのは彼のスタンドだけ、『クラフト・ワーク』。
トゲのついた、しかめっ面。幾度となく、共に困難を乗り越えてきた相棒だ。
防御において無敵、攻撃において多彩。そんな相棒を出現させた…数秒後。
一瞬の違和感を感じ取ったサーレーは、反射的に固定を使った。
次の瞬間…彼の眼に映ったのは、自分のスタンドの表面にびっしり固定されている大量のナイフだった。
固定を解除されたナイフが金属音を響かせ大量に落下していく。
「(一瞬。何が起こったのかよく分からねーが…『止まった』って事は分かったぜ)」
時を止めて、ナイフを投げた当の本人は見当たらない。
サーレーは使えるかもしれないという理由でナイフをいくつか拾い、ズボンのポケットにしまい走りだした。
「メイドも鬼で3対1か…おもしれーぜッ!」
人間吹っ切れると強い。
『リアル鬼ごっこ』:残り1時間5分
―――――――――――紅魔館:広間(5分前)――――――――――――
パチュリーとフランの床との固定は、十数秒後には解けていた。
『クラフト・ワーク』本体もそうだが、固定能力も大した射程距離は無い。ある程度離れると消えてしまう。
「やっと動けるようになったけれど…どうします?妹様」
どうします?などと言っているが、魔力を溜めて臨戦態勢だ。彼女の魔法を喰らったら、場合によっては死ぬ。
「おいかけるー!」
楽しそうにするのは良いが、レーヴァテインを持っている。喰らったら場合によらなくても死ぬ。
少し困った顔でパチュリーが聞く。
「追いかけた後のことですよ。このゲームの趣旨は『動けなくする』事なんですから」
「じゃあ四肢を叩き潰す」
「……………」
豹変したかのように残酷な顔をして答えた。さすが悪魔の妹である。
「…それでは捕まえたあと働けませんよ。そうだ!気絶させちゃいましょう」
これは妙案とドヤ顔で言葉を放った。
「気絶のさせ方わかんなーい」
この返答は方法が分からないというより、力加減が分からないという意味であると思われる。
パチュリーが困った顔で「じゃあどうしましょう」と言った瞬間。背後からいきなり声が聞こえた。
「では、私にお任せ下さい」
「「!?」」
聞こえた声と気配に思わず身構えつつ後ろを向くと、レミリアの看病をしていた筈の咲夜が立っていた。
すこし雰囲気が違うような気がしてならないが、パチュリーが口を開く。
「あら、レミィの看病はもういいのかしら?」
「ええ、ぐっすり眠っておられます。ふふ、残念ですね」
不敵な笑みを浮かべる咲夜にフランが問いかける。
「さくや、なんか変。へんなものでも食べたの?どうしちゃったの?」
限りなく正解だ。ただし質問には返答が来る。たとえどのようなものであろうと。
「ふふ、そうですね。強いて言うのであれば…」
「とても戦いたくなりました」
…バタッ
ただ一瞬。たった一瞬。秒針が時を刻む間も無いくらいの、一瞬。
時が止まったその直後、悲鳴も出さず、2人が倒れた。
4ボスとEXTRAボスが同時に敗れた。それだけでもマズいのに、さらに驚くべきことが2つ。
咲夜が(美鈴除く)紅魔館の住人に手を出したということと、止まった時の中で攻撃したということ。
まあ体罰程度に叩くことぐらいはあっても、ナイフを使うことなど(美鈴除いて)普段ない。
そして、止まった時の中での攻撃。これはポリシーなのか(美鈴以外には)使用しない。
つまり今、咲夜は普段しないことを厭わないくらい「ハイ!」になっているのだ。
なぜか…それはもちろん『サバイバー』入り水を飲んで、「好戦的になった」ということが原因だ。
ただしそんな事は今関係ない。
「何ですか…お2人とも弱いですね。やはりここは、サーレーに相手になってもらわなくては」
いま大事なのは、ここに怪物が誕生してしまったということだけだ…時間を止める殺人姫が。
「サーレー…楽しませてくれるわよね!」
時を止めながら、咲夜はサーレーの元へ向かった。
『リアル鬼ごっこ』:残り1時間10分
―――――――――――紅魔館:廊下――――――――――――
サーレーがナイフを拾う…つまり咲夜の暴挙から5分後、何度も何度も背後からナイフ弾幕が彼を襲う。
流石に逃げながらの戦闘は不利と感じたのか声を荒げる。
「投げてるだけじゃオレにはキズ1つ付かねーぜッ!姿を見せて正々堂々かかってこいよ!」
サーレーの挑発が効いたのか弾幕が止まり、違和感が彼を襲う。
そして姿を現すメイド。
「流石ね…私の弾幕が効かないなんて。やっぱりお嬢様を倒しただけはあるわね」
「…鬼ごっこの割にはハードじゃあねーか?」
その言葉はまさに勝負の合図となった。
「バカね…ルナティックよ!『幻世「ザ・ワールド」』!」
一瞬の違和感とともに辺りに大量のナイフが出現する。
「初心者はイージーで挑戦するけどなッ」
スピードAの『クラフト・ワーク』にとって、ハジキの弾はもちろんのこと、ナイフを叩き落とすのはムズかしいことではない…が。
流石に周り狭く量が多い。弾ききれなかったナイフの一本が服を切り裂いた。
自分に向かってくるナイフ…廊下で戦闘中のため避ける事ができない。
2、3本ならまだしも、何十本ものナイフを全て叩き落とすのは難しかった。
「ちっ、多すぎだろーが…固定しろッ、『クラフト・ワーク』ッ!」
殴っていく度にナイフが停止する。
廊下を塞ぐナイフの壁を見て咲夜が言った。
「全く、速いわねあなたのスタンド。あら、これじゃ通りづらいじゃない…回収しなきゃ」
その時、サーレーはまたしても時間が止まった際の違和感を感じた。
しかし、今回違うのはそれがまだ続いているということだ。
「(なんだ!?体が動かねー…目も動かせねーし喋れねー…!)」
「でも見える…アホメイドがオレが固定したナイフを回収しようとしてるのが見える…」
体の動かないサーレーの視界には、空間に固定されたナイフを一生懸命動かそうと引っ張っている咲夜の姿が映っていた。
そして、固定していないはずの弾いたナイフも空間に浮いている。
「(この違和感…まさか…これが時が止まった世界ってヤツかッ!本当に止めてたのか…)」
まだ咲夜は頑張って動かそうとしている。
「(なんでこの「世界」に入ってこれたんだ…停止って共通点があるからか…って、おい…ちょっと待て。さっきアイツなんて言った?
『全く、速いわねあなたのスタンド』って言ったよな。何で分かるんだ?まさか見えてんのか?)」
咲夜は未だにナイフを引っ張っている。
「(それに、アイツさっきと雰囲気が違う…しかももっと策を弄しそうな性格だとオレは思ったが…
もしかすると、スタンドが使えるようになったもしくは…誰かのスタンド攻撃を受けておかしくなった…が妥当だろ)」
咲夜はナイフの壁を蹴りだした!
「(それに…オレの固定は止まった時の中でも変わんねーみてーだ。…何かアイツかわいそうになってきたな…解除だ)」
その瞬間ナイフの固定は解除され、ナイフは咲夜の蹴りを受け飛び散った。
「(!待てよ…止まった時間の中でもオレの固定は消えなかった…つまりッ!固定に時間停止は効かねーってことだよな~ッ!)」
咲夜はいそいそとナイフを回収している。
「(思いついたぜ~ッ!心臓直触れなんてチャチなもんじゃあねー新技を!…ぜってー出来るハズだ!)」
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――
しばらくして時間の停止は解除され、違和感も消え去った。
「はぁ、はぁ…さぁ、続きと、いきましょう」
「おいおい、どうした?息が切れてんじゃあねーか。ナイフなんか引っ張ってるからだぜ~ッ!」
その言葉を聞いたとたん、空気が硬直した。
「なんで…分かるの?まさか…入門してきたって言うのかしら?止まった時の世界へ…」
咲夜は珍しくうろたえている。
「ああ、全部見えてたぜ。白鳥も水の下ではバタ足してるっつーが、瀟洒なメイドもとんだ白鳥だったな(笑)」
その一言が咲夜の闘争心MAXな心とプライドを刺激した。
「いいわ…分かった。戦うのはもうやめね…ここからは…殺戮ショーよ!!『幻世「ザ・ワールド」』ッ!」
またも時が止まった。動けなくなり絶対絶命…と思われるが、これこそがサーレーの作戦。
カニミソでも詰まってそーな頭で考えた、新技開発の…時間停止の攻略ためのとっておきのプランA。
「知覚は出来ても動けはしないのね…ショーにピッタリだわ!」
咲夜はナイフを四つ取り出した。
「まずは四肢からよ!」
そして投げた。
『サバイバー』によって、「冷静」という言葉を失った咲夜が残酷に笑う。
数秒程度で動けないサーレーの四肢にナイフが突き刺さる…
…はずだった。
「え…?なぜ?」
咲夜の投げたナイフはサーレーの3m程前で停止…いや、「固定」されていたのだ。
「私の…ナイフが止まった…?」
本来勝手に止まるべきではないナイフが、彼女の「世界」で止まったのだ。
「…成功だ。喋れるし動ける。遠隔で出来る以上、出来ねーことはねーと思ったがな」
咲夜は完全にうろたえている。
「お前の「これ」…『ザ・ワールド』っていうんだよな?昔そんなスタンドがいたってのを聞いた事がある」
サーレーの眼には「勝利」を確信したものに宿る輝きがあった。
「お前のはスタンドじゃあないんだろうが…使わせてもらうぜ、その名前…
これがオレの新技だ、『クラフト・ワーク・ザ・ワールド』」
『リアル鬼ごっこ』:残り1時間3分