名前:ゾディアーク・ファンガスター (未登場)
「滅びこそ祝福、死こそ救済——余が手ずから下す、絶対の恩寵よ」
「滅びこそ祝福、死こそ救済——余が手ずから下す、絶対の恩寵よ」
所属組織:デスライバー
怪人分類:リュウキュウジュウサンホシチビキノコムシ型怪人
存在格:星菌憑依体/超菌性知性体
属性:毒・菌・死・支配・腐蝕
性別:不明
身長:166cm
怪人分類:リュウキュウジュウサンホシチビキノコムシ型怪人
存在格:星菌憑依体/超菌性知性体
属性:毒・菌・死・支配・腐蝕
性別:不明
身長:166cm
話し方
一人称:「余」
笑い方:「ファファファファファファ……」
口調の特徴:
一人称:「余」
笑い方:「ファファファファファファ……」
口調の特徴:
- 高圧的かつ演劇的な語り
- 詩的で宗教的、芝居がかった台詞回し
- 相手を「欠陥品」「劣等種」「憐れなる者共」と見下す
- 自らの攻撃・支配を「慈悲」「贈与」として語る
性格:
支配的かつ高慢:全ての存在は菌糸の調律下にあると信じ、余の手で滅ぼすことは世界への奉仕と考える。
詩的狂信者:死と腐敗を祝福し、命を奪うことに快楽は感じないが、神聖なる役目と信じて行う。
非共感的合理主義者:個の感情や価値は菌の摂理には無意味と見做す。理解はするが尊重はしない。
自分は選ばれし依代であるという強固な自負を持ち、神意を体現する役割に恍惚としている。
支配的かつ高慢:全ての存在は菌糸の調律下にあると信じ、余の手で滅ぼすことは世界への奉仕と考える。
詩的狂信者:死と腐敗を祝福し、命を奪うことに快楽は感じないが、神聖なる役目と信じて行う。
非共感的合理主義者:個の感情や価値は菌の摂理には無意味と見做す。理解はするが尊重はしない。
自分は選ばれし依代であるという強固な自負を持ち、神意を体現する役割に恍惚としている。
『必殺技』
菌禍嶷穣(きんかぎょくじょう)
毒胞子を散布し、毒茸を生成。眷属を住まわせて連携攻撃を行う広域侵蝕布陣技。
菌禍嶷穣(きんかぎょくじょう)
毒胞子を散布し、毒茸を生成。眷属を住まわせて連携攻撃を行う広域侵蝕布陣技。
菌神撲絶(きんこうぼくぜつ)
菌神を己に降ろし、巨大な神拳で単体を粉砕する滅びの一撃。
菌神を己に降ろし、巨大な神拳で単体を粉砕する滅びの一撃。
菌責死逐(きんせきしちく)
裁きのように菌蔦で敵を拘束、断罪めいた打撃と連撃を浴びせる制裁技。
裁きのように菌蔦で敵を拘束、断罪めいた打撃と連撃を浴びせる制裁技。
嶷溶菌茨(ぎょくようきんし)
融解性の菌茨を地面から突き立て、敵を捕らえ腐蝕する罠攻撃。
融解性の菌茨を地面から突き立て、敵を捕らえ腐蝕する罠攻撃。
孔菌撃寂(こうきんげきせき)
対象の構造の隙に精密な胞子針を打ち込み、無音の内部破壊を引き起こす。
対象の構造の隙に精密な胞子針を打ち込み、無音の内部破壊を引き起こす。
衰菌旋玉(すいきんせんぎょく)
毒胞子を封じた瘴気球を旋回させ、周囲に腐敗と錯乱をもたらす範囲攻撃。
毒胞子を封じた瘴気球を旋回させ、周囲に腐敗と錯乱をもたらす範囲攻撃。
夜菌煠厄(やきんようやく)
暗闇の中で広がる幻覚胞子で、敵の判断力を鈍らせ混乱させる催眠毒技。
暗闇の中で広がる幻覚胞子で、敵の判断力を鈍らせ混乱させる催眠毒技。
隆菌消土(りゅうきんしょうど)
地面から菌柱を隆起させ、土地そのものを菌の支配域に変えるフィールド制圧技。
地面から菌柱を隆起させ、土地そのものを菌の支配域に変えるフィールド制圧技。
菌臆貯凶(きんおくちょきょう)
恐怖や殺意を腫瘍として蓄積し、内部で炸裂させる精神破壊型カウンター。
恐怖や殺意を腫瘍として蓄積し、内部で炸裂させる精神破壊型カウンター。
媧咀蛮菌(かしょばんきん)
原始菌糸の暴走型菌獣眷属を召喚する。
原始菌糸の暴走型菌獣眷属を召喚する。
菌忌貫腫(きんきかんしゅ)
対象の体内に忌まわしい腫瘤を寄生させ、時間差で爆裂する呪的内部破壊技。
対象の体内に忌まわしい腫瘤を寄生させ、時間差で爆裂する呪的内部破壊技。
菌壊呪轢(きんかいしゅれき)
菌の鎖と呪符をまとった拘束鎖で敵を縛り、空間ごと粉砕・封印する究極奥義。
菌の鎖と呪符をまとった拘束鎖で敵を縛り、空間ごと粉砕・封印する究極奥義。
パッシブスキル:
菌謳謀結(きんおうむけつ)
余が振るう菌禍と侵蝕は、もはや尽きる力ではない。
都市一つの下水道菌糸は張り巡らされ、遂に完成された菌糸の支配は何一つ欠けることなく巡り続け、自身の消費MPは0になる。
このため、全ての攻撃は必殺技MPの消費等と言う概念は些事にしかならない。
何らかの方法で、下水中の菌糸を60%以上損失すると、この能力は停止し、全てが必殺技であると言うリスクがのしかかる。
菌謳謀結(きんおうむけつ)
余が振るう菌禍と侵蝕は、もはや尽きる力ではない。
都市一つの下水道菌糸は張り巡らされ、遂に完成された菌糸の支配は何一つ欠けることなく巡り続け、自身の消費MPは0になる。
このため、全ての攻撃は必殺技MPの消費等と言う概念は些事にしかならない。
何らかの方法で、下水中の菌糸を60%以上損失すると、この能力は停止し、全てが必殺技であると言うリスクがのしかかる。
台詞サンプル:
よくぞ参ったな、愚かなる者共よ……
この地はすでに、余の菌糸の掌の中にある。逃れる術など、無い。
ファファファファファファ……!
歓喜せよ! 滅びの律動に身を委ねるがよいっ!!
死を怖れるな……それは、余が下す祝福だ!
よくぞ参ったな、愚かなる者共よ……
この地はすでに、余の菌糸の掌の中にある。逃れる術など、無い。
ファファファファファファ……!
歓喜せよ! 滅びの律動に身を委ねるがよいっ!!
死を怖れるな……それは、余が下す祝福だ!
見た目:
背中から伸びた巨大な菌殻(菌糸の集合体)とマント状の胞子幕。
身体の各部に菌類の器官(傘・軸・胞子口)が融合しており、言葉に合わせて小さく蠢く。
頭部にはリュウキュウジュウサンホシチビキノコムシ由来の外骨格を模した仮面状装甲を被っている。
背中から伸びた巨大な菌殻(菌糸の集合体)とマント状の胞子幕。
身体の各部に菌類の器官(傘・軸・胞子口)が融合しており、言葉に合わせて小さく蠢く。
頭部にはリュウキュウジュウサンホシチビキノコムシ由来の外骨格を模した仮面状装甲を被っている。
キャラクター概要:
デスライバーに所属する虫型怪人。
昆虫怪人専門のマッドサイエンティスト、「クレイズ・インス・マッディレント」が創造した多くの虫型怪人の一体であり、本体はリュウキュウジュウサンホシチビキノコムシの生態と共生菌を応用した超感染兵器として設計された。
デスライバーに所属する虫型怪人。
昆虫怪人専門のマッドサイエンティスト、「クレイズ・インス・マッディレント」が創造した多くの虫型怪人の一体であり、本体はリュウキュウジュウサンホシチビキノコムシの生態と共生菌を応用した超感染兵器として設計された。
しかし、菌糸の培養初速が想定からわずか0.01秒遅れたため、クレイズの研究では失敗作とされ、早期に廃棄処理が決定される。
だが廃棄後、内部の菌は自我を獲得し“菌神”と称し、ファンガスターの器を乗っ取る形で覚醒。
それ以降はクレイズの制御から離れ、自らを「えらばれし神子」と名乗り、腐敗と死をもたらす神格存在として振舞っている。
だが廃棄後、内部の菌は自我を獲得し“菌神”と称し、ファンガスターの器を乗っ取る形で覚醒。
それ以降はクレイズの制御から離れ、自らを「えらばれし神子」と名乗り、腐敗と死をもたらす神格存在として振舞っている。
事件:
商業区の中心で、前触れもなく禍々しい瘴気が噴き上がった。異変は誰の目にも触れぬ地下で、ずっと以前から醸されていたのかもしれない。逃げ惑う市民は不意に崩れ落ち、その身体はみるみる膨張し、皮膚は裂け、肉は腐り、剥がれ落ちた内側から湿った茸めいた異物が幾重にもせり上がっていく。倒れた者たちはもはや死体ですらなく、ただ不気味な温床へと作り変えられていた。上空ではシャイニングバーチャルズのヘリがその惨状を旋回しながら撮影していた。
商業区の中心で、前触れもなく禍々しい瘴気が噴き上がった。異変は誰の目にも触れぬ地下で、ずっと以前から醸されていたのかもしれない。逃げ惑う市民は不意に崩れ落ち、その身体はみるみる膨張し、皮膚は裂け、肉は腐り、剥がれ落ちた内側から湿った茸めいた異物が幾重にもせり上がっていく。倒れた者たちはもはや死体ですらなく、ただ不気味な温床へと作り変えられていた。上空ではシャイニングバーチャルズのヘリがその惨状を旋回しながら撮影していた。
ここから先はフレーバーなので読み込みをしなくても問題ありません
フレーバー:
培養槽の中で、改造途中の小さな虫の肉体が静かに固定されていた。
リュウキュウジュウサンホシチビキノコムシを基体としたその素体は、すでに原生の姿から大きく逸脱しつつあった。外骨格の継ぎ目には不自然な補強が施され、内部には菌糸の定着と侵蝕を前提とした改造組織が編み込まれ、脆弱な生命はより高次の共生兵器へ至るための手前にあった。
白衣の老人――クレイズ・インス・マッディレントは、丸眼鏡の奥の瞳でその推移を見守っていた。
菌糸の培養初速、神経接続率、定着深度、代謝反応。
そのどれもが彼の頭の中ではすでに未来の姿として結ばれている。ここから先、この個体はより優れた存在になる。より精密に、より高度に、より美しく、命の別の可能性へ届く。クレイズはそう確信していた。
彼は破壊のために命を弄ぶのではない。
少なくとも、本人はそう信じている。
命は尊い。ゆえに、命はもっと先へ行けるはずだ。
より別の形へ。より新しい在り方へ。より素晴らしい可能性へ。
クレイズにとって改造とは陵辱ではなく、未来への橋渡しだった。常人には狂気としか見えないその手つきは、彼の中ではどこまでも善意に満ちたものだった。
だからこそ、彼はその異常を見逃さなかった。
菌糸の侵入が、理論値より0.01秒遅れた。
ほんのわずか。
瞬きよりも短く、普通の研究者であれば誤差として見流すほどの遅延。
だがクレイズは、その数値を視認した瞬間に結末まで理解した。
遅い。
もう遅い。
菌糸が脳幹へ到達するより先に、昆虫本体の生命活動が落ちる。
培養槽の中で、素体の脚がかすかに痙攣した。
一度。
二度。
神経波形が乱れ、次の瞬間には平坦な死の線へ沈んでいく。
その瞬間、クレイズの表情から普段の穏やかな笑みが消えた。
柔和さは失われ、苦虫を噛み潰したような歪みが顔に走る。
そこにあったのは怒りだった。
だが、それは死んだ個体への苛立ちではない。
失敗した素材への失望でもない。
向けられていたのは、自分自身だった。
自分の見積もりの甘さ。
自分の調整誤差。
自分の手で、この小さな命が辿れたはずの未来を断ってしまったこと。
もっと進化できた。
もっと別の在り方へ押し上げてやれた。
この個体は、もっと先へ行けたはずなのに。
その可能性を、己のミスで潰してしまった。
クレイズは低く息を吐き、静かな声で呟いた。
「……ああ、いけない。ぼくのミスだねぇ」
その言葉に、冷酷さはない。
むしろ痛ましささえあった。
だが、その痛ましさが常人のものとは決定的に違う。
彼が悔いているのは、死そのものではない。
命に与えてやれるはずだった未来を失わせたことだった。
「もっと先へ行けたはずだったのに……」
培養槽の中に浮かぶ亡骸を見つめ、彼はほんの短い沈黙を置く。
そして、研究者としての結論を口にした。
「……彼は廃棄だ」
それは無感情な処分命令ではなかった。
かといって慈悲でもない。
その一言は、クレイズにとっての救済不能判定だった。
この個体を、当初想定した進化の軌道へ戻すことはもうできない。
彼の手では、ここから先へ導けない。
ゆえに、廃棄。
「記録は残そう。培養初速の再調整が必要だねぇ……可哀想に。いや、違うな。可哀想にしたのは、ぼくだ」
それでも、クレイズは狂っている。
整った口調で、優しい声音で、命の未来を奪った責任を語りながら、その死体を廃棄物として処理させる。
そこには善意がある。
だからこそ、なおさら救いがない。
運び出された亡骸は、研究施設の廃棄区画へと捨てられた。
照明の届きにくい処理場の片隅。
薬品の臭気、腐敗した試料、金属と排液にまみれた湿った暗闇。
人の基準において「失敗」と断じられたものたちが、そこで静かに積み重なっていく。
だが、終わりは訪れていなかった。
死んだはずの器の内部では、なお菌糸が伸び続けていた。
主を失ったはずの菌類は侵蝕をやめず、神経の代わりに絡み、血流の代わりに満ち、死骸の内側で別種の統合を開始していた。
人の設計した未来はそこで途絶えたが、菌にとっては違う。
それは失敗ではなく、分岐だった。
切断ではなく、逸脱だった。
廃棄は終端ではなく、別の始まりに過ぎなかった。
やがて、暗い内部のどこかで、ひとつの認識が灯る。
在る。
それはまだ言葉ではない。
だが確かに、自己を自己として結ぶ最初の楔だった。
次に内と外が分かれる。
器の内側、自分の輪郭、外気の湿り、薬品の刺激、腐臭の濃度、金属の冷たさ。
視界が開く。
色彩が流れ込む。
濁った灰、鈍い緑、暗い黄、腐肉じみた茶。
世界は形を持ち、色を持ち、匂いを持ち、温度を持っていた。
そしてその瞬間、彼は世界を認識した。
――なんと不愉快で、汚らわしい。
驚きではない。
戸惑いでもない。
最初に生まれた感情は、嫌悪だった。
世界はあまりにも雑然としていた。
菌糸が満ちていない。
腐敗が均されていない。
死が秩序として行き渡っていない。
命は個として散り散りに脈打ち、感情は勝手に溢れ、未熟な肉塊が勝手に生き、勝手に苦しみ、勝手に終わっていく。
腐敗はある。だが足りない。
汚れはある。だが統一されていない。
茸の気配はある。だが世界そのものを覆うには程遠い。
違う。
こうではない。
この世界は、まだ正しく朽ちていない。
その理解は、誰かから教えられたものではなかった。
復讐心から生まれたものでもない。
世界を知って嫌ったのではない。
世界を認識した、その瞬間から嫌悪したのだ。
地は菌糸で結ばれるべきだ。
肉は腐敗によって均されるべきだ。
命は孤立した個であってはならない。
散漫な生と無秩序な死が混在するこの世界は、あまりにも遅れ、あまりにも不完全で、あまりにも救いが届いていない。
そこで彼は最初の結論へ到達する。
祝福が、届いていない。
その一念こそが、ゾディアーク・ファンガスターの誕生だった。
彼はまだ己の名を持たない。
だが、為すべきことはすでに知っていた。
この汚れた世界を、菌糸で満たす。
未熟な命を、腐敗の調律へ組み込む。
雑多な色彩を、死と菌の静かな秩序へ塗り替える。
それは破壊ではない。
彼にとっては、矯正であり、贈与であり、恩寵であり、救済であった。
やがて廃棄区画の闇の中で、死骸だった器がわずかに身じろぎする。
湿った菌殻が軋み、胞子幕のような膜が開き、内部から新たな動きが生まれる。
人が捨てた“失敗作”は、そこで初めて人の価値基準を脱ぎ捨てた。
生物兵器としては死んだ。
だが神子として目覚めた。
施設の排水は、静かにその肉体を下層へ運んでいく。
廃棄区画から流れ落ちたそれは、やがて下水へと至る。
都市のもっとも湿った場所。
排泄と腐敗と汚泥が混ざり合い、人々の営みの裏側が沈殿する暗い流路。
そこは、地上の人間にとっては汚濁でしかない。
だが彼にとっては違った。
下水は、はじめてこの世界に残る“素地”を感じさせた。
湿った壁面。
ぬめる水路。
暗闇に潜む虫。
流れ込む腐肉片。
地下を這う見えない流れ。
都市はすでに内部に腐敗を抱えている。
ただ、それがまだ足りない。
まだ薄い。
まだ不完全だ。
もっと満ちねばならない。
もっと繋がらねばならない。
もっと深く、もっと広く、もっと逃れようもなく。
彼は下水を巡りながら、菌糸を広げていく。
壁へ。
管へ。
泥へ。
水路へ。
都市の見えない血管を撫でるように、胞子と菌糸は静かにその内部へ根を張っていく。
人の営みの真下で、誰にも知られぬまま、祝福の準備が進められる。
やがて彼は知る。
この都市の流れがどこへ集まるのかを。
人がどこに密集し、どこで欲望を燃やし、どこで最も豊かに絶望できるのかを。
下水は都市の裏側でありながら、同時に都市そのものの地図でもある。
その暗渠を巡った末に、彼が選んだのは商業区だった。
人が集まり、金が巡り、欲が渦巻き、笑い声と喧騒が満ちる場所。
生がもっとも露骨に、もっとも浅ましく、もっとも無秩序に繁殖する都市の心臓部。
ゆえにそこは、最初の祝福を授けるに相応しい。
そして、地上へ。
誰の目にも触れぬ地下で醸されていた異変は、ついに地表へ滲み出す。
商業区の中心に、前触れもなく禍々しい瘴気が噴き上がる。
人々はそれが何なのかも分からぬまま、ただ息を呑み、咳き込み、逃げ惑う。
だが逃走は間に合わない。
不意に崩れ落ちた身体はみるみる膨張し、皮膚は裂け、肉は腐り、剥がれ落ちた内側から湿った茸めいた異物が幾重にもせり上がっていく。
倒れた者たちはもはや死体ですらなく、不気味な温床へと作り変えられていた。
その光景を、上空ではシャイニングバーチャルズのヘリが旋回しながら撮影している。
地上では悲鳴が響き、空ではそれが“事件”として切り取られる。
だが、そのただ中に立つ彼にとって、これは災害でも惨劇でもない。
遅れていた祝福が、ようやく届き始めただけなのだ。
死を怖れるな。
腐敗を忌むな。
肉が崩れ、茸が芽吹き、命が個としての輪郭を失っていくその過程こそ、分断された世界がひとつへ還るための道である。
彼はそう確信している。
自らの支配を暴虐とは呼ばない。
侵蝕を陵辱とは呼ばない。
菌糸による統一を、死による調律を、ただの滅びではなく恩寵として語る。
それゆえに彼は宣告するだろう。
高圧的に、荘厳に、演劇めいた声音で。
滅びこそ祝福。
死こそ救済。
余が手ずから下す、絶対の恩寵である、と。
ゾディアーク・ファンガスター。
それはクレイズが失敗と断じた兵器の名では終わらない。
善意の研究者が己のミスで未来を奪い、廃棄したはずの死骸。
その内部で自我を獲得した菌糸は、世界を見た瞬間に嫌悪し、腐敗と支配を唯一の秩序として掲げた。
捨てられたことを呪うのではなく、棄却された事実すら神意への選別とみなし、失敗作という烙印を神子の証へと塗り替えた存在。
人の手から零れ落ちた先で、
人の理解を超えた救済を名乗るもの。
それが、デスライバーに生まれ落ちた菌と死の怪人――
ゾディアーク・ファンガスターである。
培養槽の中で、改造途中の小さな虫の肉体が静かに固定されていた。
リュウキュウジュウサンホシチビキノコムシを基体としたその素体は、すでに原生の姿から大きく逸脱しつつあった。外骨格の継ぎ目には不自然な補強が施され、内部には菌糸の定着と侵蝕を前提とした改造組織が編み込まれ、脆弱な生命はより高次の共生兵器へ至るための手前にあった。
白衣の老人――クレイズ・インス・マッディレントは、丸眼鏡の奥の瞳でその推移を見守っていた。
菌糸の培養初速、神経接続率、定着深度、代謝反応。
そのどれもが彼の頭の中ではすでに未来の姿として結ばれている。ここから先、この個体はより優れた存在になる。より精密に、より高度に、より美しく、命の別の可能性へ届く。クレイズはそう確信していた。
彼は破壊のために命を弄ぶのではない。
少なくとも、本人はそう信じている。
命は尊い。ゆえに、命はもっと先へ行けるはずだ。
より別の形へ。より新しい在り方へ。より素晴らしい可能性へ。
クレイズにとって改造とは陵辱ではなく、未来への橋渡しだった。常人には狂気としか見えないその手つきは、彼の中ではどこまでも善意に満ちたものだった。
だからこそ、彼はその異常を見逃さなかった。
菌糸の侵入が、理論値より0.01秒遅れた。
ほんのわずか。
瞬きよりも短く、普通の研究者であれば誤差として見流すほどの遅延。
だがクレイズは、その数値を視認した瞬間に結末まで理解した。
遅い。
もう遅い。
菌糸が脳幹へ到達するより先に、昆虫本体の生命活動が落ちる。
培養槽の中で、素体の脚がかすかに痙攣した。
一度。
二度。
神経波形が乱れ、次の瞬間には平坦な死の線へ沈んでいく。
その瞬間、クレイズの表情から普段の穏やかな笑みが消えた。
柔和さは失われ、苦虫を噛み潰したような歪みが顔に走る。
そこにあったのは怒りだった。
だが、それは死んだ個体への苛立ちではない。
失敗した素材への失望でもない。
向けられていたのは、自分自身だった。
自分の見積もりの甘さ。
自分の調整誤差。
自分の手で、この小さな命が辿れたはずの未来を断ってしまったこと。
もっと進化できた。
もっと別の在り方へ押し上げてやれた。
この個体は、もっと先へ行けたはずなのに。
その可能性を、己のミスで潰してしまった。
クレイズは低く息を吐き、静かな声で呟いた。
「……ああ、いけない。ぼくのミスだねぇ」
その言葉に、冷酷さはない。
むしろ痛ましささえあった。
だが、その痛ましさが常人のものとは決定的に違う。
彼が悔いているのは、死そのものではない。
命に与えてやれるはずだった未来を失わせたことだった。
「もっと先へ行けたはずだったのに……」
培養槽の中に浮かぶ亡骸を見つめ、彼はほんの短い沈黙を置く。
そして、研究者としての結論を口にした。
「……彼は廃棄だ」
それは無感情な処分命令ではなかった。
かといって慈悲でもない。
その一言は、クレイズにとっての救済不能判定だった。
この個体を、当初想定した進化の軌道へ戻すことはもうできない。
彼の手では、ここから先へ導けない。
ゆえに、廃棄。
「記録は残そう。培養初速の再調整が必要だねぇ……可哀想に。いや、違うな。可哀想にしたのは、ぼくだ」
それでも、クレイズは狂っている。
整った口調で、優しい声音で、命の未来を奪った責任を語りながら、その死体を廃棄物として処理させる。
そこには善意がある。
だからこそ、なおさら救いがない。
運び出された亡骸は、研究施設の廃棄区画へと捨てられた。
照明の届きにくい処理場の片隅。
薬品の臭気、腐敗した試料、金属と排液にまみれた湿った暗闇。
人の基準において「失敗」と断じられたものたちが、そこで静かに積み重なっていく。
だが、終わりは訪れていなかった。
死んだはずの器の内部では、なお菌糸が伸び続けていた。
主を失ったはずの菌類は侵蝕をやめず、神経の代わりに絡み、血流の代わりに満ち、死骸の内側で別種の統合を開始していた。
人の設計した未来はそこで途絶えたが、菌にとっては違う。
それは失敗ではなく、分岐だった。
切断ではなく、逸脱だった。
廃棄は終端ではなく、別の始まりに過ぎなかった。
やがて、暗い内部のどこかで、ひとつの認識が灯る。
在る。
それはまだ言葉ではない。
だが確かに、自己を自己として結ぶ最初の楔だった。
次に内と外が分かれる。
器の内側、自分の輪郭、外気の湿り、薬品の刺激、腐臭の濃度、金属の冷たさ。
視界が開く。
色彩が流れ込む。
濁った灰、鈍い緑、暗い黄、腐肉じみた茶。
世界は形を持ち、色を持ち、匂いを持ち、温度を持っていた。
そしてその瞬間、彼は世界を認識した。
――なんと不愉快で、汚らわしい。
驚きではない。
戸惑いでもない。
最初に生まれた感情は、嫌悪だった。
世界はあまりにも雑然としていた。
菌糸が満ちていない。
腐敗が均されていない。
死が秩序として行き渡っていない。
命は個として散り散りに脈打ち、感情は勝手に溢れ、未熟な肉塊が勝手に生き、勝手に苦しみ、勝手に終わっていく。
腐敗はある。だが足りない。
汚れはある。だが統一されていない。
茸の気配はある。だが世界そのものを覆うには程遠い。
違う。
こうではない。
この世界は、まだ正しく朽ちていない。
その理解は、誰かから教えられたものではなかった。
復讐心から生まれたものでもない。
世界を知って嫌ったのではない。
世界を認識した、その瞬間から嫌悪したのだ。
地は菌糸で結ばれるべきだ。
肉は腐敗によって均されるべきだ。
命は孤立した個であってはならない。
散漫な生と無秩序な死が混在するこの世界は、あまりにも遅れ、あまりにも不完全で、あまりにも救いが届いていない。
そこで彼は最初の結論へ到達する。
祝福が、届いていない。
その一念こそが、ゾディアーク・ファンガスターの誕生だった。
彼はまだ己の名を持たない。
だが、為すべきことはすでに知っていた。
この汚れた世界を、菌糸で満たす。
未熟な命を、腐敗の調律へ組み込む。
雑多な色彩を、死と菌の静かな秩序へ塗り替える。
それは破壊ではない。
彼にとっては、矯正であり、贈与であり、恩寵であり、救済であった。
やがて廃棄区画の闇の中で、死骸だった器がわずかに身じろぎする。
湿った菌殻が軋み、胞子幕のような膜が開き、内部から新たな動きが生まれる。
人が捨てた“失敗作”は、そこで初めて人の価値基準を脱ぎ捨てた。
生物兵器としては死んだ。
だが神子として目覚めた。
施設の排水は、静かにその肉体を下層へ運んでいく。
廃棄区画から流れ落ちたそれは、やがて下水へと至る。
都市のもっとも湿った場所。
排泄と腐敗と汚泥が混ざり合い、人々の営みの裏側が沈殿する暗い流路。
そこは、地上の人間にとっては汚濁でしかない。
だが彼にとっては違った。
下水は、はじめてこの世界に残る“素地”を感じさせた。
湿った壁面。
ぬめる水路。
暗闇に潜む虫。
流れ込む腐肉片。
地下を這う見えない流れ。
都市はすでに内部に腐敗を抱えている。
ただ、それがまだ足りない。
まだ薄い。
まだ不完全だ。
もっと満ちねばならない。
もっと繋がらねばならない。
もっと深く、もっと広く、もっと逃れようもなく。
彼は下水を巡りながら、菌糸を広げていく。
壁へ。
管へ。
泥へ。
水路へ。
都市の見えない血管を撫でるように、胞子と菌糸は静かにその内部へ根を張っていく。
人の営みの真下で、誰にも知られぬまま、祝福の準備が進められる。
やがて彼は知る。
この都市の流れがどこへ集まるのかを。
人がどこに密集し、どこで欲望を燃やし、どこで最も豊かに絶望できるのかを。
下水は都市の裏側でありながら、同時に都市そのものの地図でもある。
その暗渠を巡った末に、彼が選んだのは商業区だった。
人が集まり、金が巡り、欲が渦巻き、笑い声と喧騒が満ちる場所。
生がもっとも露骨に、もっとも浅ましく、もっとも無秩序に繁殖する都市の心臓部。
ゆえにそこは、最初の祝福を授けるに相応しい。
そして、地上へ。
誰の目にも触れぬ地下で醸されていた異変は、ついに地表へ滲み出す。
商業区の中心に、前触れもなく禍々しい瘴気が噴き上がる。
人々はそれが何なのかも分からぬまま、ただ息を呑み、咳き込み、逃げ惑う。
だが逃走は間に合わない。
不意に崩れ落ちた身体はみるみる膨張し、皮膚は裂け、肉は腐り、剥がれ落ちた内側から湿った茸めいた異物が幾重にもせり上がっていく。
倒れた者たちはもはや死体ですらなく、不気味な温床へと作り変えられていた。
その光景を、上空ではシャイニングバーチャルズのヘリが旋回しながら撮影している。
地上では悲鳴が響き、空ではそれが“事件”として切り取られる。
だが、そのただ中に立つ彼にとって、これは災害でも惨劇でもない。
遅れていた祝福が、ようやく届き始めただけなのだ。
死を怖れるな。
腐敗を忌むな。
肉が崩れ、茸が芽吹き、命が個としての輪郭を失っていくその過程こそ、分断された世界がひとつへ還るための道である。
彼はそう確信している。
自らの支配を暴虐とは呼ばない。
侵蝕を陵辱とは呼ばない。
菌糸による統一を、死による調律を、ただの滅びではなく恩寵として語る。
それゆえに彼は宣告するだろう。
高圧的に、荘厳に、演劇めいた声音で。
滅びこそ祝福。
死こそ救済。
余が手ずから下す、絶対の恩寵である、と。
ゾディアーク・ファンガスター。
それはクレイズが失敗と断じた兵器の名では終わらない。
善意の研究者が己のミスで未来を奪い、廃棄したはずの死骸。
その内部で自我を獲得した菌糸は、世界を見た瞬間に嫌悪し、腐敗と支配を唯一の秩序として掲げた。
捨てられたことを呪うのではなく、棄却された事実すら神意への選別とみなし、失敗作という烙印を神子の証へと塗り替えた存在。
人の手から零れ落ちた先で、
人の理解を超えた救済を名乗るもの。
それが、デスライバーに生まれ落ちた菌と死の怪人――
ゾディアーク・ファンガスターである。