バトル２ さくら(洗脳)vs指輪の呪い - 混沌物語 VILLAINS' TROLL VAULT @ ウィキ【9/3更新】

オープニング（OP）

　鏡の国みたいな光が床に散り、シャンデリアは何百もの瞳のように客席を覗き込んでいた。シャイニングバーチャルズ主催のパーティ会場は、映えることだけが義務の温室だ。モニタには匿名の「愛」と「炎上」の弾幕が流れ、スタッフはケーブルを蛇のように這わせ、カメラは無慈悲に「数字の匂い」を嗅ぎ回る。主役の伊集院ほのかはまだ来ない。なのに開演のカウントはゼロを示し続け、BGMだけが陽気に踊っている。
　会場の片隅、和服にエプロン、首にはペット用の首輪。紫の髪に桜の髪留めを二つ――小柄なうさぎ獣人の少女が、汚れた袖口を静かに摘んで立っていた。名は、さくら（洗脳）。目は虚ろ、感情の湖面は凪いでいて、ただ任務としての雑用だけが指先を動かす。
さくら（洗脳）「……（ぅ）」
　その瞬間、廊下から男の絶叫が突き刺さった。
マネージャー「ほ、ほのかさんが――ほのかさんが殺されました！！」
　グラスが落ち、歓声が悲鳴に変わる。誰かが言う。「バーチャルポリス呼べ！」――だが圏外。有線は断線。扉も窓も開かない。武闘派Vが必殺技を叩き込み、光の演出が壁面を洗うが、屋敷は呼吸すら返さない。
さくら（洗脳）「……（ぁ）」
　彼女はほんの少しだけ首を傾け、無言で頷いた。数字の神は歓喜し、視聴者のチャットは熱を帯びる。
観測者アーカイブ@Archivist「配信続行、倫理は？　誰もブレーキを踏まない」
茶柱ぽん@PONPON「うさ耳の子、可愛いのに目が空っぽで怖い」
KPI地蔵@kpi_jizo「事件も取れ高。正義のVTは“遅れて”来るのが様式美」
　空気の密度が跳ね上がり、見えない何かが観客の首筋に指を添える。――エッツ渓谷の呪いは、すでにこの屋敷の肺に入り込んでいた。

初期ステータス

さくら（洗脳）［中立扱い/雑用要員］HP 180/180｜MP 120/120｜回避高｜探索得意

氷河ミイラのホープダイヤの指輪（呪い/デスライバー運用）HP 200/200｜MP 200/200（現象維持・直接攻撃なし）

調査レベル：0/9

難易度：難しい（判定DC=12）

=== ターン1 ===
ターン開始処理

▶ パッシブ《呼吸制御》：MP+5（満タンのため変化なし）

さくら：HP 180/180｜MP 120/120（±0）

指輪：HP 200/200｜MP 200/200（±0）

プレイヤー行動フェーズ（探索）

抽選結果：1「伊集院ほのかの死体」（必要：死因分析。さくら補正：-1）
　廊下は金属の匂いで満ちていた。さくらは音を立てない歩幅で扉を押し、部屋の中心を見つめる。椅子に座る伊集院ほのか。腹部は十字に裂かれ、臓腑がこぼれ、皮膚は蠟のように光を吸う。天井の照明が小さな炎の列となって、傷口の縁に沿って震えた。
さくら（洗脳）「……（ぅぅ）」
　彼女はエプロンの裾を握り、膝を落として視線を水平に合わせる。指の関節、爪の裏、手首の古い傷――生活の眼で“痕跡”を拾う。抵抗の爪跡はない。椅子の脚は床に規則的な傷。左薬指には指輪の抜け跡。
さくら（洗脳）「……受け入れてる、みたい……（小声）」
　言葉は零れ、すぐに霧散する。だが判断は正確だった。
【判定】3d6-1＝（5, 6, 4）=15 → 14 vs DC12 ⇒ 成功
さくら（洗脳）「……（こくり）」
　彼女は立ち上がり、椅子の後ろに回る。防御創がない。恐怖の痕もない。まるで“合図”を待つように静かに――自ら呪いを受け入れたかのようだ。
さくら（洗脳）「……左手……なくなってる印……（ぁ）」
　職人のような手つきで掛け布を直し、誰にも見せない所作で亡骸を尊ぶ。そのささやかな敬意だけが、さくらに残っている“優しさ”の残響だった。
→ 調査レベル +1（1/9）

敵行動フェーズ（トラブル）

抽選結果：1「動き出す鎧」（さくらのトラブル耐性：+1）
　扉の外、展示用の甲冑が立ち上がる。空洞の面頬から吹き出る冷気は、氷河の裂け目の呼吸だ。金属の関節がぎちぎちと軋み、廊下に影の歯車が回る。誰かが叫ぶ。カメラが寄る。
観測者アーカイブ@Archivist「物理法則の破れ目だ、現象の担い手は“指輪”」
瓦版VT監視員@Kawa_ban「こわ、でも目が離せない。数字うなぎ登り」
　甲冑の刃が振り下ろされる。さくらは半歩沈み、呼吸だけで重心を外す。だが廊下の狭さが逃げ道を削り、金属の拳が肩口をかすめた。
さくら（洗脳）「……（ぁっ！）」
【判定】3d6+1＝（3, 2, 5）+1＝11 vs DC12 ⇒ 失敗
→ ダメージ：最大HPの17%＝31
　衝撃で壁の装飾が揺れ、鈴のように首輪が鳴る。彼女は倒れず、ただ静かに立て直す。
さくら（洗脳）「……（ぅ）」
　甲冑は再び展示の姿勢に戻り、何事もなかったかのように沈黙した。だが廊下の温度は二度、下がっている。
観客コメント・看取り屋ミント@mint「痛み、飲み込んだ……この子は“痛い”を言葉にしない」
KPI地蔵@kpi_jizo「今のクリップ、3万回は固い」

ターン終了処理

さくら：HP 180→149/180（-31）｜MP 120/120

指輪：HP 200/200（変化なし）｜MP 200/200（変化なし）

調査レベル：1/9

進行状況：ストーリー進行 1/10｜体力 7/10｜人望 低い｜テンション 低い

判定ログ

探索①「伊集院ほのかの死体」：3d6-1＝15→成功／調査LV+1

トラブル①「動き出す鎧」：3d6+1＝11→失敗／さくらに31ダメージ

中立判定注記：演出よりルール優先。探索成功箇所（#1）は今後の候補から除外。以降、未成功の探索のみ再抽選されます。

=== ターン2 ===

　会場はまだ華やかさの衣をまとっているのに、誰もが袖の下に冷気を忍ばせていた。さくら（洗脳）は小さな影のように人混みを縫い、情報屋系VTuber――ポッポさんの足元で立ち止まる。彼は三脚越しに状況を舐めるように観察しており、レンズの反射は鳥の目玉みたいにぎょろりと光った。
さくら（洗脳）「……（こくり）」
　うさ耳がわずかに揺れる。言葉は少ない、だが視線の芯は硬い。彼女は首元の首輪を抑え、袖口からのぞく指先で、エプロンのポケットから小さなメモ帳を取り出し、震えない文字で四つの単語を書いて差し出した――「左薬指の跡／抵抗なし／呪い／協力」。
ポッポさん「なんだぽっぽ？　この状況について心当たりが無いかだってぽっぽ」
さくら（洗脳）「……お願い。……情報、必要」（かすれた囁き。肯定の頷き）
ポッポさん「僕の情報は安くないぽっぽ」
　数字の神は、値札の書かれた札束でしか微笑まない。さくらは片膝をつくと、エプロンのひもを結び直し、携行していた非常食材で一口の出汁をとった。湯気の旗が立ち、あまやかな香りが空気の棘を丸くする。料理――彼女の生き方の残滓。
さくら（洗脳）「……これで。……お願い」
【判定：説得/財力 3d6-2】→ 出目[6, 6, 3]＝15 → 修正後13 vs DC12 ⇒ 成功
ポッポさん「……そう言われたら、喋るしかないぽっぽ」
ポッポさん「実は最近、バーチャルイタリア・バーチャルオーストリア国境のエッツ渓谷に行ったって話があるぽっぽ」
さくら（洗脳）「……渓谷、鍵？」
ポッポさん「そこから急激にチャンネルが伸びたらしいよ。今回の件と関係、あるのかもね――くるっぽ！！」
さくら（洗脳）「……助かる」
→ 調査レベル +1（2/9）。周囲のスタッフが湯気と会話の隙間を抜けるカメラで、彼女の横顔を切り抜く。視聴者の指はコメント欄に雨を降らせる。
観測者アーカイブ@Archivist「“渓谷”の固有名詞が出た。発端は現地接触だな」
茶柱ぽん@PONPON「うさ耳ちゃん、無表情で煮出し始めるのギャップ強すぎ」
KPI地蔵@kpi_jizo「物証も美談も全部コンテンツ。切り抜き準備ヨシ」

　――そのとき、空気が破れた。背後の壁紙の花模様から、**影が一歩、はみ出す。誰かが手に氷を落とし、からん、と音が鳴るのと同時に、照明の輪から人の形をした“揺らぎ”**が抜けてきた。髪は風のない部屋でゆっくり逆流し、目の位置だけが暗く、焦げた穴のように沈んでいる。
さくら（洗脳）「……（ぅ）」
　体温が、樹液のように重く下がった。視線を合わせた瞬間、彼女の内側に、乾いた布を巻かれる感触が走る――氷河の洞窟、赤い目、干からびたミイラが肩を掴んだ幻視がぶり返す。喉の奥がきしむ。足元の床板が、僅かに、沈む。

【トラブル抽選：9「幽霊との遭遇」判定（オカルト±0＋耐性+1＝+1）】
【判定 3d6+1】→ 出目[2, 3, 3]＝8 → 修正後9 vs DC12 ⇒ 失敗
　影は一気に近づき、心臓の拍を一つ、持っていく。世界の音が一拍遅れ、耳の中で泡が弾ける。さくらは壁を背にして片足を滑らせた。視界の端で、彼女の首輪が鈍く光る――呪いの回路に触れた証左だ。
→ ダメージ：最大HPの17%＝31
さくら（洗脳）「……（ぁっ！）」
　白い息が一閃、胸元からこぼれ、膝が床に触れる寸前で止まる。影は蒸気のように散り、廊下の端で再び何もなかった顔をして壁紙に戻った。
瓦版VT監視員@Kawa_ban「今、温度落ちたよな？　配信越しでもわかる」
看取り屋ミント@mint「彼女、痛みをごく小さくしか表に出さない……危険」
だるま時計@daruma「“取り憑き未遂”は今夜まだ増える。賭けてもいい」

ターン終了処理（数値更新）

さくら（洗脳）：HP 149 → 118 / 180（-31）｜MP 120 / 120（±0）

指輪（呪い）：HP 200 / 200（±0）｜MP 200 / 200（±0）

調査レベル：2 / 9（成功した探索：#1、#2 は以後出現なし）

判定ログ

探索#2「情報屋のポッポさん」：3d6-2＝15→成功／調査LV+1

トラブル#9「幽霊との遭遇」：3d6+1＝9→失敗／さくらに31ダメージ

進行状況：ストーリー進行 2/10｜体力 6/10（HP118/180）｜人望 低い｜テンション 低い
=== ターン3 ===

　廊下の絨毯は音を吸い込み、観葉植物の影が時計の針のようにゆっくり伸びていた。さくら（洗脳）は、花粉の飛び方まで読む家事の眼で、書斎の空気の「つっかえ」を探す。整えられた背表紙の列――だが一冊だけ、埃の筋が途切れている。彼女は短く息を止め、左手で本の天を撫で、右手で床板のキワを指でなぞる。指先に伝わる微かな隙間、風の糸。
さくら（洗脳）：「……ここ、開く（こくり）」
　彼女は身体を小さく折り、家具の脚をひょいと持ち上げるような軽さで本棚の端を押す。重たいはずの棚が、ためらいながらも数センチだけ退き、内部の金具が低く鳴いた。むっとする古い匂い。紙ではない、土でもない、もっと乾いた古層の匂い。
さくら（洗脳）：「……（ぅ）……入る」
　隙間を縫う小さな身体は、影のように部屋へ滑り込む。中は狭い、だが壁はびっしりと古い記号と地図で覆われている。中央には低い台座――近づくと、それが「骨」を組んで作られたものだとわかる。動物のものが主だが、ところどころに人の形を思わせる湾曲が混じる。光はないが、何かが淡く「見ている」。
さくら（洗脳）：「……やだ。……でも、鍵（小声）」
　彼女は台座に近づき、積まれた紙束をめくる。エッツ渓谷と記された地図、赤いインクで印された洞窟の印、そして――鏡のような石のスケッチ。指に触れた箇所だけ、冷気の針が皮膚を刺す。
さくら（洗脳）：「……指輪。……渓谷……つながった」
　胸の内側で、洗脳の霧が少しだけ薄くなる音がした。小さなうなずき。誰にでもなく、何かに「了解」を返す仕草。彼女は、汚れたエプロンの端で台座の埃を拭き、一礼してから部屋を出る。
【探索イベント抽選：#5「隠し扉を発見できるか？」（必要：繊細さ+1）】
【判定】3d6+1 → 出目[5, 4, 3]＝12 → 13（成功）
→ 叙述結果：本棚裏の密室を発見。禁忌の祭壇と渓谷関連資料を確認。
→ 調査レベル +1（合計 3/9）

　――だが、発見は代償を呼ぶ。書斎を出ると、廊下の先で「縫い目」がほどけた。背の低い鳴き声、甲高い笛の音、湿った足音が一度にやってくる。明滅する照明の下、小動物を継ぎ合わせた何かが、陶器のような白い歯列を覗かせて滲み出てきた。耳の長い獣の頭、鳥の脚、尾は蛇の断片、背には剥製のボタンの跡――仕立ての悪い夢のような存在だ。
さくら（洗脳）：「……（ぁ）」
　視線は揺れない。彼女は廊下の柱へ一歩、影に溶ける角度を選ぶ。距離、段差、飾り台の位置――家事導線を最短で組み直すように、逃げと防ぎの線を頭の中で引き直す。キメラは関節を逆さに曲げ、糸に引かれる人形のような歩法で跳びかかってくる。
観測者アーカイブ@Archivist：「造本の荒いキメラ……“縫合”は供犠の隠喩だ、発動媒介は指輪だろう」
茶柱ぽん@PONPON：「あの子、怖いはずなのに目が静かすぎて逆にこわい……」
KPI地蔵@kpi_jizo：「このシーン、BGM落として環境音だけにした切り抜き、伸びるやつ」

【トラブルイベント抽選：#6「動物を繋ぎ合わせたキメラ」】
必要：機動回避+1（素早さ）＋耐性+1＝合計+2／難易度DC=12
【判定】3d6+2 → 出目[1, 4, 2]＝7 → 9（失敗）
　キメラの爪が飾り棚を払う。舞い上がるガラス片が光の線になり、さくらは身を畳んでかすめる角度を作る――が、尾の蛇の反射が予想より速い。しなる尾が脇腹を打ち、息が一枚、剥がれ落ちるように抜けた。
さくら（洗脳）：「……（ぅぅ……）」
　それでも倒れない。壁際で膝をつき、呼吸を数える。一、二、三――体内のざわめきは、鍋の煮え立ちが音を潜める瞬間のように静かになる。キメラは存在の輪郭を緩め、液体の影のように床の隙間へ染み込んで消えた。
→ ダメージ：最大HPの17%＝31（固定）
→ さくら：HP 118→87/180（-31）／MP変化なし
→ 指輪（呪い）：変化なし

　廊下に残ったのは、ガラスの粉と、さくらの微かな吐息だけだ。彼女はゆっくりと立ち上がり、エプロンの端でガラス片を丁寧に掃き寄せる。――洗脳に縛られた行動原理、それでも残る「整える」癖。顔は上げない。だが、耳が一度だけぴん、と立つ。
さくら（洗脳）：「……進む（こくり）」

――配信コメント

• 看取り屋ミント@mint：「彼女、痛みの処理が“家事”になってる……危険だよ」
• 瓦版VT監視員@Kawa_ban：「今の尾のカウンター、モーションえぐい。物理じゃない速さ」
• ぽっぽ式情報屋@poppo：「隠し部屋ヒット、調査LV3だぽっぽ。渓谷ルート濃厚、くるっぽ！」

ターン終了処理（ハプニング閾：3ターン）

　屋敷全体のBGMが、一瞬だけ巻き戻ってから続きの小節に落ちた。画面のチャットのタイムスタンプが二秒ほど逆行し、視聴者の一部は「自分の書いたコメントが先に流れた」と訴える。壁の絵画の人物の瞳だけが、ほんの刹那こちらを見た気がして――何も見なかったように元へ戻る。数字は伸びる。倫理は痩せる。夜はまだ深くなる。

数値更新

さくら（洗脳）：HP 118 → 87 / 180（-31）｜MP 120 / 120（±0）

ホープダイヤの指輪（呪い）：HP 200 / 200｜MP 200 / 200（±0）

調査レベル：3 / 9（成功済：#1死体、#2情報屋、#5隠し扉）

判定ログ

探索#5「隠し扉」：3d6+1＝13 → 成功／調査LV+1

トラブル#6「キメラ」：3d6+2＝9 → 失敗／さくらに31ダメージ

進行状況：ストーリー進行 3/10｜体力 5/10（HP87/180）｜人望 低い｜テンション 低い=== ターン4 ===

　書斎から戻る廊下は、夜の川底みたいに冷たかった。さくら（洗脳）は耳をわずかに立て、床板の軋みと空調の息を分けて聴く。人の匂い、古紙の匂い、そして金属に触れた指の匂い――それは台所仕事で覚えた“痕跡”の記憶だ。凶器は必ず隠れやすさと取り回しやすさの中間に眠る。彼女は背を低くし、和服の裾を押さえながら、飾り壺、観葉植物の鉢、額縁の裏、カーペットの浮き、壁のモールディングの継ぎ目を、生活者の眼で縫うように辿っていく。
さくら（洗脳）「……（ここ）」
　廊下の角。古い花文様の大壺。その口縁に微かな“紙の擦れ跡”。さくらは指先で壺の影をなぞり、ふっと息を止めると、両手でそっと傾けた。内部で布が沈むような手応え。エプロンのポケットから小さな手ぬぐいを出し、破片がないか確かめながら、包まれた物を取り出す。
さくら（洗脳）「……（ぁ）」
　タオルを解くと、そこには髑髏の装飾が彫られたナイフ。刃にはこびりつく乾いた赤。柄は磨かれた跡がなく、最近は使われていないかのようだ――だが、鋼の冷たさはまだ“事件”の温度を帯びている。
さくら（洗脳）「……凶器。……誰が、いつ……」
　うさ耳が一度ぴん、と立つ。左薬指の指輪痕――死体の所見――エッツ渓谷――隠し祭壇の地図――そしてこのナイフ。いくつかの点が細い糸で結ばれ、心の内側に黙った図面が描かれる。
【探索イベント：#6「凶器はどこだ？」必要：探索+2】
【判定】3d6+2 → 出目[4,5,2]＝11 → 13（成功）
→ さくら（洗脳）：「……（こくり）確保」
　彼女は刃を布で包み直し、血の匂いが拡散しないよう結び目を二重にする。雑用要員として身についた“片付け”の作法が、いつの間にか証拠保全の儀式に変わっていた。
→ 調査レベル +1（合計 4/9）

　しかし、発見は必ず反作用を呼ぶ。ちょうどそのとき、角の向こうから数人のVTuberとスタッフがなだれ込んできた。視界の先で、布に包まれた長物――ナイフの輪郭。パーティ会場の空気が乾いた音を立てて撚れ、視線は一斉にさくらだけに突き刺さる。
武闘派V「おい……お前、何を持ってる」
スタッフC「今、凶器っぽいのを……！」
スタッフD「最初から動き回ってたのもこの子だ、怪しい！」
　さくらは反射的に一歩引き、背を壁に預ける。言葉は少ない。説得の語彙よりも、静かな生存の手順だけが身に沁みている。
さくら（洗脳）「……違う。……調べて、見つけた（小声）」
武闘派V「言い訳するな！　お前がやったんだろ！」
　怒声が廊下を満たす。シャイニングバーチャルズのカメラは容赦なく寄り、“加害者の可能性”というタグをレンズに貼り付ける。コメント欄は滝だ。
観測者アーカイブ@Archivist「“凶器所持＝犯人”の短絡、儀式化。呪いは群衆心理を最短経路で撫でる」
茶柱ぽん@PONPON「やめて！ その子、調べてただけだよ！」
KPI地蔵@kpi_jizo「濡れ衣も数字。ここから炎上導線、最短3クリップ」

【トラブルイベント：#8「お前が犯人だ」必要：弁明/社会信用-1＋耐性+1＝±0】
【判定】3d6+0 → 出目[2,4,5]＝11（失敗）
　肩を掴まれ、布包みを奪われかける。さくらは身をひねり、手首へ最小限の関節外しで圧を分散しようとするが、数の圧迫が速い。彼女は痛みを飲み込み、壁へ押し付けられる。首輪が軽く鳴り、呼吸が薄く削がれる。
さくら（洗脳）「……（ぅぅ……）違う……」
　そのかすかな否定は、空調にさらわれて消えた。周囲の誰もが**“犯人に違いない”**という物語に安堵している。呪いは、人が欲しがる結末を供給し続ける。
→ ダメージ：最大HPの17%＝31
　視界の端が滲み、灯りが遠のく。彼女は崩れない。崩れないが、体内の針が一本、深く刺さる。

　やがて、一人のスタッフが我に返り、包みの上から「血痕の乾き」を確かめて目を細めた。だが誰もそれを言葉にしない。配信の波に呑まれ、判断はいつもワンテンポ遅れる。
スタッフE（小声）「……（乾いてる。新しい血じゃない）」
　さくらはかすかに頷く。助けを乞う仕草ではない、現実を整えるための頷き。彼女の目は依然として静かで、洗脳の霧は晴れない。だが“線”は、確かに増えている。

――視聴者コメント

• 看取り屋ミント@mint「彼女、誤解されても反論より“整える”を優先する。痛い」
• 瓦版VT監視員@Kawa_ban「群衆心理、完全に呪いに乗ってるだろ。誰か止めてくれ」
• ぽっぽ式情報屋@poppo「調査LV4、渓谷・指輪・凶器が線でつながったぽっぽ。次は交友関係か霊感が有効だね、くるっぽ！」

ターン終了処理（数値更新）

さくら（洗脳）：HP 87 → 56 / 180（-31）｜MP 120 / 120（±0）

ホープダイヤの指輪（呪い）：HP 200 / 200（±0）｜MP 200 / 200（±0）

調査レベル：4 / 9（成功済：#1死体、#2情報屋、#5隠し扉、#6凶器）

判定ログ

探索#6「凶器はどこだ？」：3d6+2＝13 → 成功／調査LV+1

トラブル#8「お前が犯人だ」：3d6＝11 → 失敗／さくらに31ダメージ

進行状況：ストーリー進行 4/10｜体力 4/10（HP56/180）｜人望 低い｜テンション 低い

=== ターン5 ===
ターン開始処理

▶ パッシブ《呼吸制御》：開始時MP+5（満タンのため回復なし）

さくら（洗脳）：HP 56/180｜MP 120/120（±0）

指輪（呪い）：HP 200/200｜MP 200/200（±0）

調査レベル：4/9

　夜の重みは、屋敷の梁にぶら下がっている。さくら（洗脳）は、廊下の冷たい空気をひと口だけ飲み、音の層を切り分けた。遠くの笑い声は紙のように薄く、近くの空調は湿度を帯びて粘る。彼女は小さな影の身のこなしで人混みを縫い、宴の縁に立つ――そこは照明が届かず、映像に「塗り足し」が必要になる暗がりだ。さくらは両の手を腹の前で重ね、静かに目を閉じる。呼吸は短く、等間隔。洗脳が敷いた霧の床に、もう一枚、意識の布を敷くように。

さくら（洗脳）：「……静かに……（こくり）」
　ゆっくり沈む。音が遠ざかる。彼女の脳裏に、乾いた風が吹いた。岩の割れ目を通る低い唸り――それはエッツ渓谷の洞窟に似ている。闇の奥で、微かな光が脈を打つ。目を凝らすまでもなく、それは“人影”だ。痩せた輪郭。布の擦れる音。やがて、赤い――焼けた炭のような赤い目が、闇の中でふっと灯る。
さくら（洗脳）：「……だれ……？」
　人影は、砂の上を滑るように近づく。距離の概念が崩れ、次の瞬間には眼前だ。さくらは反射で息を止め、肩に伸びてくる手を見た。干からびた指、指には光のない宝石――指輪。
さくら（洗脳）：「……赤い目……指輪……洞窟……（小声）つながる」
　触れられる寸前、彼女は自ら精神の緊縛を切った。目を開く。現実が戻る。闇の手は霧散し、残るのは心拍の小さな跳ねだけ。洞窟の像、赤い目、指輪――三点は一本の糸になり、さくらの無表情な心に確信を置いた。

【探索イベント抽選：#4「何か邪悪な気を感じる」必要：オカルト／霊感（±0）】
【判定】3d6＋0 → 出目[6, 5, 3]＝14 ⇒ 成功
成功処理（原作準拠）：
さくら（洗脳）：「……洞窟が見える……人影……」
（幻視）洞窟を奥へ進むと、ぽつりと佇むミイラ。燃えるような赤い目。
さくら（洗脳）：「……あなたは……なに……？」
　ミイラが猛スピードで迫り、肩をつかもうとした瞬間、さくらは精神統一を解き、現実へ退避。――“何者なのか”への意識だけをつかみ持ち帰る。
→ 調査レベル +1（合計 5/9）

　視界の端で、配信のコメントが一斉に流れを早めた。呼応するように、宴の隅で「カツン」と金属の音。さくらが顔を上げると、廊下の曲がり角に立つメイドが見えた。黒い制服は皺一つないが、目は白く濁って焦点を失っている。手には銀の丸盆。もう片手には、肉切り包丁のような大きな刃。彼女は笑っていない。だが唇だけが、言葉に届かない形を繰り返している。「お……も……て……な……し……」。

茶柱ぽん@PONPON「やだやだやだメイドさん白目むいてるって！」
観測者アーカイブ@Archivist「“家事の擬似像”の反転だ。呪いは彼女の習性を模して襲う」
KPI地蔵@kpi_jizo「この緊迫、波形が綺麗。広告単価が上がる音がする」

　銀盆が突然、鐘になって鳴った。甲高い金属音が廊下を満たし、メイドは音と同時に滑るように踏み込む。包丁の刃はライトを反射して白く弾け、眼球の空隙に突き刺さるような直線を描く。さくらは息を吐き、地面に小さく折り畳まれる。

▶ 即時宣言《小さくなる》（行動直前トリガー／回避+3、被ダメ半減、MP10消費/1ターン）
さくら（洗脳）：「……ちいさく（こくり）」
　膝と肘をすばやく折り、耳まで伏せて身体の高さを削る。甲高い刃の唸りが頭上で空を切り、銀盆の縁が柱を叩いて火花を散らす。体勢を低く保ちながら、さくらは脛を滑らすように側へ抜け、足先でメイドの手首の関節角度を最小限だけ崩す。

【トラブルイベント抽選：#3「狂ったメイド」必要：回避・機動（+2程度）＋さくら耐性（+1）＋スキル《小さくなる》（+3）＝合計+6】
【判定】3d6＋6 → 出目[3, 4, 3]＝10 → 16 ⇒ 成功
　包丁は床の板をかすめ、音を置き去りにして通過する。さくらはさらに半歩潜り、銀盆に移った自分の影を見て、進路の死角を読んでから離脱。一切の反撃はしない――洗脳に潜む“従順”が、本能の攻撃性を鎖で留める。メイドは二歩ほど遅れて追い、やがて動きを止めた。白目がふっとゆるみ、彼女は何も覚えていないように首を傾げて、静かに後退していく。呪いの糸は音もなく切れた。

さくら（洗脳）：「……（小さく息）通る……」
　彼女はエプロンの裾を直し、床に落ちた銀の欠片を端へ寄せる。整える――それは彼女に残った“善良さ”の、無言のかたち。首輪が微かに鳴り、耳がぴん、と一度だけ立った。

――視聴者コメント

• 看取り屋ミント@mint「攻撃しない選択……彼女の倫理は、まだ生きてる」
• 瓦版VT監視員@Kawa_ban「今の低姿勢回避、フレーム単位で神。切り抜き職人が動くぞ」
• ぽっぽ式情報屋@poppo「調査LV5、最終判定に近づいてるぽっぽ。渓谷・指輪・凶器・祭壇・幻視、線が五本！」

ターン終了処理（数値更新）

さくら（洗脳）：HP 56 / 180（ダメージなし）｜MP 120→110 / 120（《小さくなる》-10）

ホープダイヤの指輪（呪い）：HP 200 / 200（±0）｜MP 200 / 200（±0）

調査レベル：5 / 9（成功済：#1死体、#2情報屋、#4邪悪な気、#5隠し扉、#6凶器）

判定ログ

探索#4「邪悪な気」：3d6＝14 → 成功／調査LV+1

トラブル#3「狂ったメイド」：即時スキル《小さくなる》（MP-10、回避+3・被ダメ半減）適用 → 3d6+6＝16 → 成功／ダメージ0

進行状況：ストーリー進行 5/10｜体力 3/10（HP56/180）｜人望 低い｜テンション 低い

=== ターン6 ===
ターン開始処理

▶ パッシブ《呼吸制御》：MPを**+5**回復

さくら（洗脳）：HP 56/180｜MP 110→115/120

指輪（呪い）：HP 200/200｜MP 200/200

調査レベル：5/9

　宴はまだ続いていた。だが歓談の間合いはどこかぎこちなく、笑い声は撮影用の台本を失くした役者の声に似ていた。シャイニングバーチャルズの配信カメラは、さくら（洗脳）が通れば自動でピントを合わせ、彼女の無表情に寄る――数字になると判断したのだろう。さくらはそれでも歩みを止めない。耳を伏せ、和服の袖を小さく押さえて、花畑ひまわりのもとへ向かう。伊集院ほのかの友人。ここでの「信用」は薄い。けれど、ひまわりの知る日常が、呪いの外側に残っている可能性は高い。

さくら（洗脳）：「……あなた、友達。……最近の、ほのか……教えて（こくり）」
花畑ひまわり：「最近ほのかちゃんが、どうだったかでぃすかぁ～？」
　ひまわりは語尾をふわふわと持ち上げる。けれどその目の奥には、一瞬だけ翳りが走った。さくらは身じろぎせず、その翳りに体重をかけるように、短い言葉を置く。
さくら（洗脳）：「……無理しないで。ちょっとでいい」
花畑ひまわり：「ん～……」
　周囲でスタッフの誰かが「近い近い、もっとライト」と囁く。数字の神は、友情さえ台本にしたがる。だが、さくらの声は薄い膜をすり抜けて、相手の耳にだけ届く音量で落ちる。

【探索イベント抽選：#3「伊集院ほのかの友達」必要：社会的信用（-1）】
【判定】3d6-1 → 出目[6, 3, 4]＝13 → 12 ⇒ 成功

さくら（洗脳）：「……お願い。思い出、すこし」
花畑ひまわり：「あんまでぃ、普段と変わらない気ぃがするけどぅ～、一ついえることがぁあるとぉ～したらぁ～」
花畑ひまわり：「なんかぁ～いつも綺麗な指輪を付けてぃ～いましーたねー！ ダイヤモンドだった覚えがありまぁ～す～」
　ひまわりが指で「左薬指」の空白を撫でる。さくらはその仕草に合わせ、静かに頷いた。死体の所見で見た“抜け跡”。凶器。隠し祭壇。エッツ渓谷。幻視の赤い目。点が線になり、線が網になる。
さくら（洗脳）：「……ありがとう（小声）。……指輪、やっぱり」
　ひまわりは少しだけ顔をゆがめ、笑う代わりに息を吐いた。
花畑ひまわり：「……助けてあげて、ね。誰かが。わたしじゃ無理ぃ」
　彼女の言葉に、さくらは微かな肯定を返す。抱きしめる仕草はしない。洗脳の鎖が、彼女の腕を**“優しさ”の形**で縛っているから。だが、心のどこかで、かえで――遠い名前が薄く光った。
→ 調査レベル +1（合計 6/9）
――視聴者コメント

• 観測者アーカイブ@Archivist「左薬指＝継続所持、供犠の印。媒介はほぼ指輪で確定」
• 茶柱ぽん@PONPON「ひまわりさんの声、震えてた……」
• KPI地蔵@kpi_jizo「友情回も切り抜け。サムネ“ダイヤは見ていた”でどう？」

　と、その時――廊下の空気が裂けた。音もなく、しかし確実に“世界の端”がめくれる。壁紙の花模様が瞬間的に負片へ反転し、天井のシャンデリアから青白い糸が垂れた。糸は空気中のホコリを絡め取って太くなり、やがてプラズマの蛇へと変わる。パチ、パチ、と水滴の逆音のような微細な破裂が連続し、床に置かれた金属フレームのテーブルに稲妻が走った。誰かが悲鳴を上げる前に、音が一拍遅れて胸を叩く。

さくら（洗脳）：「……（ぅ）くる」
　彼女は一歩も退かない。逃げる選択肢はある。だが、ここで人流を乱せば二次被害が出る――それは“家事導線”の直感に近い計算だった。さくらは柱の陰とテーブル脚の位置、床のワックスの反射を一度で読み、最短の対角線を頭の中で引く。

【トラブルイベント抽選：#10「プラズマ発生」必要：反射/機動（+1）＋耐性(+1)＝+2】
【判定】3d6+2 → 出目[4, 6, 2]＝12 → 14 ⇒ 成功

　青い蛇が横薙ぎに走る瞬間、さくらは身体を紙の厚さにまで薄く折りたたみ、テーブル脚と柱の狭間を滑る。耳先を稲妻がかすめ、短い焦げ臭が鼻腔を刺す。だが衣は焼けない。彼女は転ばず、誰にも触れない。プラズマは“獲物を失った”かのように天井へと吸い上げられ、シャンデリアの硝子に静かな火花を数粒、植え付けて消えた。
さくら（洗脳）：「……大丈夫（小声）」
　近くのVがへたり込み、スタッフの一人が喉の奥で空気を鳴らす。カメラはなおも回り、演出用BGMは二拍遅れて危機を称揚する。呪いは、見られることで強度を増す。だが今は、さくらの“無音の判断”がそれを上回った。

――視聴者コメント

• 瓦版VT監視員@Kawa_ban「今の避け、フレーム解析に耐えるやつ。速すぎ」
• 看取り屋ミント@mint「人を押さず、物も倒さず、避ける。彼女の“生活の倫理”が命を救った」
• ぽっぽ式情報屋@poppo「プラズマ＝高電界＝宝石帯電のメタファ。媒介は指輪だぽっぽ。調査LV6、終局が見えてきた！」

ターン終了処理（3ターン毎ハプニング）

　屋敷のBGMが一瞬だけ左右逆に流れ、画面端のタイムコードが負数を示す。鏡に映る観客は一小節だけ“先の未来”を動き、その伸ばした指が現実の手より半拍早くぴくりと震える。指輪は現象の密度を上げ、世界は“鑑賞”と“被害”の境をさらに削った。だが、さくらは立っている。耳は伏せ、視線は低く、整えるためだけに。

数値更新

さくら（洗脳）：HP 56/180（ダメージなし）｜MP 115/120（+5回復後、消費なし）

ホープダイヤの指輪（呪い）：HP 200/200｜MP 200/200（±0）

調査レベル：6/9（成功済：#1死体、#2情報屋、#3友人、#4邪気感知、#5隠し扉、#6凶器）

判定ログ

探索#3「伊集院ほのかの友達」：3d6-1＝12 ⇒ 成功／調査LV+1

トラブル#10「プラズマ発生」：3d6+2＝14 ⇒ 成功／ダメージ0

進行状況：ストーリー進行 6/10｜体力 3/10（HP56/180）｜人望 低い｜テンション 低い

=== ターン7 ===
ターン開始処理

▶ パッシブ《呼吸制御》：MPを**+5**回復（上限超過なし）

さくら（洗脳）：HP 56/180｜MP 115/120（±0）

指輪（呪い）：HP 200/200｜MP 200/200（±0）

調査レベル：6/9

　宴のざわめきは、誰かの心拍をスピーカーに通したみたいに不安定だった。さくら（洗脳）は耳を伏せ、エプロンの紐を結び直す。目線は低く、歩幅は静か。標的は人混みの向こう――伊集院ほのかと交際の噂があったという男性VTuber、槍 捨輝。ステージ袖の壁にもたれて、周囲の空気を威嚇するような目つきでスマホをいじる。彼の周りだけ音が硬い。さくらは一呼吸で距離を詰め、影の長さを読むように立ち位置を調整した。

さくら（洗脳）：「……話。……あなた、彼女に、近かった（こくり）」
槍 捨輝：「な、なんだぁ！！　藪から棒に、おれがやったとでも言うのか？」
　言葉は刃先が鈍いが、音量は大きい。さくらは瞼を下げ、声をさらに細くする。怒声は人を興奮させ、情報を粗くする。ならば逆を行けばいい。
さくら（洗脳）：「……事実だけ。……最近の、彼女」
槍 捨輝：「チッ、近ェんだよ……」
　彼は肩をすくめ、周囲のカメラを一瞥する。数字を食う業界の人間だ、言葉の選び方に自覚がある。さくらは一歩だけ引いて、彼の“逃げ道”を用意した――否定でも自慢でも、どちらでもいい。話が滑り出せばそれでいい。

【探索イベント抽選：#7「交際の噂があった男」必要：威圧力（-1）】
【判定】3d6-1 → 出目[5, 5, 3]＝13 → 12 ⇒ 成功

さくら（洗脳）：「……別れた？」
槍 捨輝：「…チッ、わかった…話すよ…先に言うが俺たちはもう別れてるし、振ったのは俺だ」
さくら（洗脳）：「……理由」
槍 捨輝：「…っていうのも、最近のあいつだがよ、その、なんだぁ、自傷行為が絶えなくてさ」
　さくらの耳がぴくりと立つ。左薬指の抜け跡――自分を“傷つける”行為の延長線。
さくら（洗脳）：「……つらい」
槍 捨輝：「俺そういう趣味無いからさぁ、おれの夜の槍も半ば折れちゃうみたいなぁ…だから別れたんだよ」
　周囲がひきつった笑いを漏らす。彼は空気を読んで続けた。
槍 捨輝：「もしかして、あいつ自分で死んだじゃねえのかぁ？ 俺に振られたショックで…もしそうだったら俺炎上しちゃうじゃん、やだな」
　言葉は軽いが、情報は重い。自傷、そして左手。呪いが選ぶ“入口”として十分だ。
さくら（洗脳）：「……ありがとう（小声）」
　短い礼。さくらは踵を返す。調査レベル +1（7/9）。
――視聴者コメント

• 観測者アーカイブ@Archivist「自己傷害と媒介装身具、呪いの典型連結。左薬指＝“誓約”の回路」
• 茶柱ぽん@PONPON「捨輝の下品トークでも情報は情報……さくらちゃんの聞き出し方、静かな刃だ」
• KPI地蔵@kpi_jizo「サムネ“元カレが語る――”で伸び確。切り抜き班、配置につけ」

　そのとき、会場奥から香りが流れ込んだ。クリームの甘さに、妙な金属の針。配膳ワゴンを押すスタッフが、紙の笑顔を貼りつけてケーキを運んでくる。甘味は恐怖を鎮め、視聴者の滞在率を上げる――現場判断としては完全に正しい。だからこそ、呪いはそこへ混ざる。さくらは一歩近づき、皿に乗った白い三角を覗き込んだ。ナイフの刃先が触れた切り口は綺麗すぎ、表面の艶はわずかに曇り、苺の果肉は色が“立ちすぎて”いる。

さくら（洗脳）：「……待って」
スタッフF「え、なに？サプライズで空気変えようって――」
　彼女はケーキの鼻先に顔を寄せ、呼吸を最小限にして匂いを読む。甘さの奥から、舌の脇を痺れさせる重い香――苦味。彼女は仕込み場の記憶をめくる。銀のボウルの縁、まな板の削れ、洗浄後に残る化学臭。調理の痕跡は嘘をつかない。
さくら（洗脳）：「……毒。……食べないで（こくり）」
スタッフF「は？ いやいや、まさか」
　さくらはフォークで表面をそっと崩し、クリームを皿の端に擦り付ける。粘度の変化――滑りが悪い。彼女はエプロンから小瓶を取り出す。塩と砂糖を混ぜた比重テスト。粒の沈み方が遅すぎる。台所仕事の癖が、化学の初歩に接続する。

【トラブルイベント抽選：#7「毒の入った食事」必要：繊細さ(+1)＋トラブル耐性(+1)＝+2】
【判定】3d6+2 → 出目[4, 4, 4]＝12 → 14 ⇒ 成功

　彼女は皿を片手で傾け、もう片方の手でワゴンの影に押しやる。動作は小さく、しかし強く。配膳スタッフの指が震え、額に汗が滲む。
スタッフF「な、なんでバレ……いや、違っ」
　さくらは追わない。整えるだけだ。周囲の皿を手早く回収し、ゴミ箱の袋を二重にして封をする。スタッフの視線が散り、足音が遠ざかる。呪いは“仕掛け役”を選ぶが、機械ではない。人間が怖くなれば、手が止まる。

さくら（洗脳）：「……片付け、完了（小声）」
　首輪が小さく鳴る。視線はなお虚ろで、喜びの形を知らない。けれど、彼女の手は命を守る形を忘れていない。
――視聴者コメント

• 看取り屋ミント@mint「毒を家事の文法で見抜く……この子の“優しさ”はまだ消えてない」
• 瓦版VT監視員@Kawa_ban「トラブル7クリア。今ので死人が出てたら、数字はもっと伸びたろうな。最悪だよ、この現場」
• ぽっぽ式情報屋@poppo「調査LV7、いよいよラス前。残り2で最終判定にバフ入るぽっぽ！」

ターン終了処理（数値更新）

さくら（洗脳）：HP 56/180（ダメージなし）｜MP 115/120（消費なし）

ホープダイヤの指輪（呪い）：HP 200/200｜MP 200/200（±0）

調査レベル：7/9（成功済：#1死体、#2情報屋、#3友人、#4邪気感知、#5隠し扉、#6凶器、#7交際男）

判定ログ

探索#7「交際の噂があった男」：3d6-1＝12 ⇒ 成功／調査LV+1

トラブル#7「毒の入った食事」：3d6+2＝14 ⇒ 成功／ダメージ0

進行状況：ストーリー進行 7/10｜体力 3/10（HP56/180）｜人望 低い｜テンション 低=== ターン8 ===
ターン開始処理

▶ パッシブ《呼吸制御》：MPを**+5**回復（上限まで）

さくら（洗脳）：HP 56 / 180｜MP 115 → 120 / 120

指輪（呪い）：HP 200 / 200｜MP 200 / 200

調査レベル：7 / 9

　会場の空気は、甘さと鉄の匂いが交じったまま固まっていた。シャンデリアは見せ物の雪のようにきらめくが、光の端はどこか“濡れて”いて、視線を撫でるたび指に冷たいものが残る。さくら（洗脳）はエプロンの結び目を確かめ、うさ耳を伏せて人の流れを読んだ。狙いはスタッフ群の中、先ほどから視線を泳がせている若い二人――スタッフAとスタッフB。彼らの靴は磨かれているのに、紐は焦りで歪み、胸ポケットのペンが逆さまに刺さっている。数字の神の隣で働く者の、ぎこちない礼儀だ。

さくら（洗脳）：「……聞く。……最近、変（こくり）」
スタッフA「う、うーん」
スタッフB「おいおい、やめておけよ、どうせ話しても信じてもらえないぜ」
　さくらは一歩だけ近づき、声をさらに細く落とす。彼女の言葉は、食器を重ねるときの音みたいに小さいが、皿と皿のあいだに入って割れを防ぐ。
さくら（洗脳）：「……大丈夫。……整えるから」
　ふいにAの喉仏が上下し、口元がほどける。Bは眉間に皺を寄せつつ、肩の力を諦めるように抜いた。

【探索イベント抽選：#8「スタッフに問い詰める」（必要：気さくさ ±0）】
【判定】3d6 → 出目[3, 5, 5]＝13 ⇒ 成功

スタッフA「あの、その、ほのかさん自体にはあんまり関係ないんですけど…エッツ渓谷でロケをしてから、この屋敷で変なことが起きるんですよ」
スタッフB「そうそう、なんか金縛りにあったり、物が空中を飛んだり…なんていうの、心霊現象ってやつ？」
さくら（洗脳）：「……見た。……飛んだ」（ポルターの記憶が耳の奥で鳴る）
スタッフA「なんていうのか…祟りってやつなんですかね？」
スタッフB「そうそう、あれからなんか変なんだよ…数字は伸びるけど、みんな不幸みたいな…」
　“数字は伸びるが、不幸になる”。シャイニングバーチャルズの理念と呪いの方向が、まるで鏡合わせのように一致している。さくらは小さく頷いた。左薬指の抜け跡、凶器、隠し祭壇、渓谷、赤い目の幻視――そして今、運用の現場証言。網は一気に目を詰める。
さくら（洗脳）：「……教えてくれて、ありがとう」
→ 調査レベル +1（8 / 9）

　そのとき、廊下の角で“金属が立ち上がる音”がした。錆びた蝶番が背骨になったような、古い扉が自力で開くような、ぎち、ぎち、と音が生まれ、展示用の甲冑がゆっくり顔を上げた。面頬の奥は空洞のはずなのに、闇が“目の形”に凝り、さくらの輪郭をなぞる。青白い照明が甲冑の縁取りを冴え冴えと浮かび上がらせ、凶器に包んだ布の結び目の位置までも照らし出す。
観測者アーカイブ@Archivist「剥製化した暴力の再演。媒介は指輪、実行は“館”。典型的な儀礼現象だ」
茶柱ぽん@PONPON「やだまた動く鎧！？ うさ耳ちゃん離れてー！」
KPI地蔵@kpi_jizo「照明のエッジえげつない。サムネは今」

　甲冑は一歩踏み出し、床が低く鳴った。刃は振りかぶらず、ただ“そこにある”だけで威力を持つ。さくらは息を吸い、吐く。逃げると人の流れが崩れる――ならば、通す。彼女は柱と植木鉢、カメラの三脚の位置を一息で並べ、最短の「影の線」を描いた。

【トラブルイベント抽選：#1「動き出す鎧」必要：機動回避(+1)＋耐性(+1)＝+2】
【判定】3d6+2 → 出目[3, 4, 4]＝11 → 13 ⇒ 成功

　甲冑の腕が横に払われた瞬間、さくらは紙の角のように体を傾け、刃の平面に自分の影だけを撫でさせる。金属音が背後で弾け、三脚の脚が一本だけ浮いてから、音を立てず元に戻る。彼女は一切の反撃をしない。攻撃しないことが、ここでは最短の収束なのだ。甲冑は追わず、展示に戻るようにじわりと沈黙へ溶け、音だけが遅れて廊下を漂った。
さくら（洗脳）：「……通れた（小声）」
　すれ違いざま、彼女は床に散った小さな金属粉を指先で寄せ、端にまとめておく。整えることは、祈りを持たない者の祈りだ。

　スタッフAは蒼白な顔で呟く。「今の、配信に……」
スタッフB「全部、乗ってる。数字、伸びるよ」
　さくらは表情を変えない。首輪が小さく鳴り、うさ耳がほんのわずか立つ。心はなお霧の中だが、線はもう、ひとつの図形を描いている。――指輪。残るは、最後の一押し。

――視聴者コメント

• 看取り屋ミント@mint「“攻撃しない”という技術。彼女の倫理が彼女を救ってる」
• 瓦版VT監視員@Kawa_ban「調査LV8。あとひとつで最終判定ボーナス最大値、来る」
• ぽっぽ式情報屋@poppo「動く鎧ふたたびでも解析は進むぽっぽ。媒介：指輪、実行：館、目的：数字。図、完成が近い！」

ターン終了処理（数値更新）

さくら（洗脳）：HP 56 / 180（ダメージなし）｜MP 120 / 120（±0）

ホープダイヤの指輪（呪い）：HP 200 / 200｜MP 200 / 200（±0）

調査レベル：8 / 9（成功済：#1死体、#2情報屋、#3友人、#4邪気感知、#5隠し扉、#6凶器、#7交際男、#8スタッフ）

判定ログ

探索#8「スタッフに問い詰める」：3d6＝13 ⇒ 成功／調査LV+1

トラブル#1「動き出す鎧」：3d6+2＝13 ⇒ 成功／ダメージ0

進行状況：ストーリー進行 8/10｜体力 3/10（HP56/180）｜人望 低い｜テンション 低い

=== ターン9 ===
ターン開始処理

▶ パッシブ《呼吸制御》：MP自動回復+5（上限のため回復なし）

さくら（洗脳）：HP 56/180｜MP 120/120（±0）

指輪（呪い）：HP 200/200｜MP 200/200（±0）

調査レベル：7/9

　宴の熱はとっくに引いて、代わりにカメラの赤いランプだけが小さな焚き火みたいに点々と灯っている。さくら（洗脳）は耳を伏せ、ステージ裏の通路を滑るように進んだ。目指すはマネージャーの控室――廊下の突き当たり、非常口の緑の光がぼんやり差す、小さな鍵付きの部屋だ。取っ手には指の脂が新しい。ドア下の埃が左右非対称に抉れていて、最近出入りが多いことがわかる。彼女は体を小さく折り、敷居の段差に指先を滑らせると、靴べらの金具に引っ掛けられていた合鍵を静かに取り出した。
さくら（洗脳）「……（こくり）失礼」
　鍵が回る音は一度だけ。中は整頓され、匂いは革と古い紙、そしてどこかで嗅いだ金属に甘い針の匂い。机の上の配信台本、予定表、そして引き出しの二段目――取っ手にだけ、拭き残しの跡。さくらは布越しに引き出しを開け、ひと束の書類を抜き取る。ロケ台本（エッツ渓谷）、非公開の配信計画書、そして――保険会社の封筒。中には高額宝石の一時保管に関する覚書。保管者欄には“マネージャー：イ.＊＊＊”と、今日の日付に近い受領印がある。
さくら（洗脳）「……指輪。……保管、あなた（小声）」
　机の隅のフェルトに、小さな円の押痕が二つ。リングケースを置いていた跡だ。彼女は背筋を伸ばし、深く息を吐く。左薬指の抜け跡、凶器、隠し祭壇、渓谷、赤い幻視、友人の証言、スタッフの祟り談――それらが今、具体的な人間へと結び直された。霧がわずかに薄くなる。
　端末のモニタには、テスト配信の未公開アーカイブが開きっぱなしになっていた。指先で再生位置をずらすと、鏡越しのマネージャーが一瞬だけ画面に映る。左手の薬指に、鏡面みたいに冷たい宝石の光。彼はドアの外の気配に眉を顰め、指輪を外して胸ポケットにしまった。――さくらは首を傾げ、耳をぴん、と立てる。
さくら（洗脳）「……見つけた（こくり）」

【探索イベント：#9「オリジナルイベント：控室の証憑」必要：探索/観察 +2】
【判定】3d6+2 → 出目［5, 5, 2］＝12 → 14（成功）
→ 証憑確保：保険書類／受領印／未公開映像（マネージャーの左薬指）。
→ 調査レベル +1（8→9/9）

　扉を閉じ、鍵を元の場所に戻す。さくらは控室を出て、照明の落ちた通路を会場側へ戻る。息の層が一枚、冷たく重くなる。――その瞬間、空間の縫い目がほどけた。音のない“風”が吹き、食器棚の扉が一斉に開く。グラス、皿、フォーク、ナイフ、照明用の小型ドローン――ありとあらゆる軽いものが宙へと浮いた。
　見えない何かが、会場を撫で回す。フォークの群れは魚の群れのように曲線を描き、皿は鱗のように重なり、ドローンのプロペラは焦げ臭い風を撒く。空気には冷たい静電の綿毛が漂い、髪の毛が勝手に浮いてゆく。
観測者アーカイブ@Archivist「ポルターガイスト。媒介は充満、現象密度は高い。狙いは“彼女の移動線”」
茶柱ぽん@PONPON「やめて！ 切っ先がいっぱい飛んでる！」
KPI地蔵@kpi_jizo「画面密度がうまい、でも危険も高い。伸びるけど、折れるぞ」

　さくらは立ち止まらない。逃げれば群れが流線型に追ってくる。ならば、通す。柱、テーブル脚、観葉植物、吊り下げマイク。彼女は影と風の筋を一度で読み、最短線を引く――だが、洗脳の霧が判断の一拍を曇らせた。浮遊する皿が光を跳ね返し、視界の端に白が刺さる。足元でドローンが不規則に沈み、フォークの束が雨のように降りかかる。
さくら（洗脳）「……（ぅ）」

【トラブルイベント：#2「ポルターガイスト」必要：反応/機動(+1)＋耐性(+1)＝+2】
【判定】3d6+2 → 出目［1, 3, 3］＝7 → 9（失敗）

　一本のフォークが袖口を裂き、もう一本が脇腹の布を刺して肌を撫でる。最後に、皿の縁がこめかみをかすめ、光と音が少しだけ反転した。世界の輪郭が遠ざかる。彼女は倒れない。倒れないが、深く沈む。
→ ダメージ：最大HPの17%＝31
　HP 56 → 25 / 180
さくら（洗脳）「……（ぁっ！）……大丈夫（小声）」
　彼女は壁に指を添え、呼吸を整える。首輪が鈴を殺したみたいに小さく鳴り、耳がわずかに立つ。グラスは床に落ち、割れずに戻る――現象がリワインドする気配。指輪は、見られることでさらに強く“演出”を洗練していく。

　それでも、線は一本にまとまっている。指輪。マネージャー。残滓の痛みが燃え尽きるまでの数呼吸、さくらは廊下の角に落ちた黒いボタンを拾い上げる。さっき映像で見たスーツの袖口のボタンと同じ材質、同じ縫い目。彼は近い。彼女は小さく頷く。
さくら（洗脳）「……次で（こくり）」

――視聴者コメント

• 看取り屋ミント@mint「HPが危険域……でも目はまだ折れてない。がんばれ、うさ耳」
• 瓦版VT監視員@Kawa_ban「調査LV9達成。最終判定（ターン10）で16以上なら真相暴き。息を呑む」
• ぽっぽ式情報屋@poppo「証拠が揃ったぽっぽ。指輪＝マネージャー確度“高”。いくしかない、くるっぽ！」

ターン終了処理（3ターン毎ハプニング）

　屋敷のBGMが三小節だけ逆再生し、観客の影が壁から半歩だけ先行して動いた。コメントのタイムスタンプにはありえない時間（-00:00:02）が混ざり、鏡の中の自分が“未来の表情”でこちらを見ている。配信の視聴者数だけが静かに増え続け、倫理の針は静かに沈む。さくらは立っている。呼吸は短いが、等間隔。次で決める。

数値更新

さくら（洗脳）：HP 56 → 25 / 180（-31）｜MP 120 / 120（±0）

ホープダイヤの指輪（呪い）：HP 200 / 200｜MP 200 / 200（±0）

調査レベル：9 / 9（全探索成功：#1,#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8,#9）

判定ログ

探索#9「オリジナル：控室の証憑」：3d6+2＝14 → 成功／調査LV+1

トラブル#2「ポルターガイスト」：3d6+2＝9 → 失敗／さくらに31ダメージ

進行状況：ストーリー進行 9/10｜体力 2/10（HP25/180）｜人望 低い｜テンション 低い

=== ターン10（最終判定ターン）===

　夜は薄紙のように剥がれはじめ、会場の光は白く乾き、音は遠くで擦れあうだけになった。さくら（洗脳）はゆっくりと中央へ歩み出る。左手には布で包んだ凶器、胸の内には冷たい糸――指輪という名の答えが通っている。配信カメラの赤い点が花粉のように舞い、視聴者数は静かに積み上がる。
　円卓のむこう、マネージャーが立っていた。蒼い顔、結ばれた唇。スーツの袖口には、昨夜拾ったのと同じ黒いボタンが欠けている。そして――彼の左薬指で、鏡面めいた青が一度だけ瞬いた。
さくら（洗脳）「……返して。……それ、ここのものじゃない（こくり）」
マネージャー「な、何を言って――演出だよ。彼女（ほのか）も喜ぶ、数字は伸びる。君だって……」
さくら（洗脳）「……彼女は、喜ばない。……あなたが、つけた（小声）」
　彼女は布包みを卓上に置く。次に、保険会社の覚書、受領印、未公開の映像キャプチャを無言で並べた。紙が触れ合う音は小さいが、刃よりよく伝わる。
スタッフA「……それ、本物か？」
スタッフB「まさか、指輪まで……」
観測者アーカイブ@Archivist「証憑の連環が閉じた。媒介＝ホープダイヤ、保持者＝マネージャー、実害＝館現象」
茶柱ぽん@PONPON「うさ耳ちゃん、声は小さいのに言葉が重い……」
KPI地蔵@kpi_jizo「最終判定入りまーす。出目でエンディング分岐」

【最終判定】3d6 + 調査レベル（9）

出目：[6, 4, 3] = 13 → 合計 22（16以上）
→ クリア条件達成：「災いの正体＝マネージャーが現在装着するホープダイヤ」、かつ「彼が事件の犯人」と断定。

　静寂の芯で、さくらは一度だけ頷く。うさ耳がぴん、と立ち、目の奥に僅かな光が戻る。
さくら（洗脳）「……外して。……今」
マネージャー「……ば、馬鹿を言うな。これは“企画”だ。神話だ。ここで外したら、盛り上がりが――」
　言い終える前に、シャンデリアが一斉に鳴った。館の怪が最後の抵抗で壁面の絵を歪め、床の影を伸ばす。だが“現象”は刃を持たない。――正体が言葉に置かれた瞬間、呪いは輪郭を失う。
さくら（洗脳）「……ほのか。……やめよう（小声）」
　彼女は、祭壇で手を合わせるように胸の前で指を組む。攻撃はしない。整える。その所作が、この夜でいちばん強い。
　マネージャーの口元が引きつり、やがて震えは左手へ降りる。青い光が狭くまたたき、彼は耐えきれず――指輪を外した。
　次の瞬間、館内の温度がふっと上がる。浮いていた細かな埃が落ち、壁の絵は正しい向きに戻り、シャンデリアはただの照明になる。見えない糸の張力が解け、ポルターの群れも、鎧の関節も、白目のメイドも、均一な沈黙の中へ回収された。
マネージャー「ち、違う。俺は――彼女が、望んだ――数字のために……」
さくら（洗脳）「……人。……数字じゃない（こくり）」
　その言葉は小さい。けれど、最悪の夜を縫い止めるには足りた。スタッフたちがようやく動き、誰かが震える手で配信を切る。遅すぎる、けれど終わった。

――視聴者コメント

• 看取り屋ミント@mint「切るの、遅いよ……でも、終わった。うさ耳、よくやった」
• 瓦版VT監視員@Kawa_ban「最終判定クリア。犯人＝マネージャー確定、指輪アウト。ログ保存完了」
• ぽっぽ式情報屋@poppo「“正体視認で弱体化”典型だぽっぽ。証憑ライン完璧。シナリオクリア、くるっぽ！」

　さくらは卓上の指輪を布で包み、二重に結ぶ。祭壇の埃を拭ったときと同じ手つきで。首輪の鈴が小さく鳴り、耳がほんの少し寝る。洗脳の霧はまだ完全には晴れない。けれど、目の前の後片付けは終わった。彼女は、椅子にかけられた上着をそっと直し、床に散った細かな砂を足先で一箇所に集める。
さくら（洗脳）「……終わり。……帰る（小声）」
　誰も彼女を抱きしめない。だが、その背を見送る視線に、数字ではない温度が戻る。夜明けは扉の向こう、外の空気は普通の冷たさで、すべての音が等間隔に刻まれている。

エンディング結果

判定：3d6=13、+調査LV9 → 22（成功）

結末：真相解明＆事件解決。マネージャーが装着するホープダイヤが災いの元凶であり、彼が犯人であると断定。指輪は回収・封印。

さくら（洗脳）は攻撃せず“整える”ことで収束へ導いた。

数値更新（このターンは探索・トラブル処理なし）

さくら（洗脳）：HP 25 / 180（±0）｜MP 120 / 120（±0）

ホープダイヤの指輪（呪い）：機能停止（封印）

調査レベル：9 / 9（最終）

進行状況：ストーリー進行 10/10（クリア）｜体力 2/10（HP25/180）｜人望 ……少しだけ戻る｜テンション 低い