真・女神転生ウラのウラ

『真・女神転生』の世界は漫然とプレイしただけでは全貌をつかめない。ディテールのひとつひとつを解き明かすことによって、その姿が改めて浮かび上がる!



Q.悪魔召喚プログラムの作成者、スティーブン博士の正体は一体誰だろうか?

 彼の正体に関しては、さまざまな憶測が乱れ飛んでいる。吉祥寺でのセリフ「私の作った悪魔召喚プログラム……」という言葉から特定の個人名を推察することもできよう。しかし、スティーブンの正確な正体はいまだ明かされてはいない。ただ、過去の因縁よりも未来へかかわる存在である、ということだけは言える。時はめぐり、輪廻転生が繰り返されるとしたら、彼の前世はおそらく……。また、洪水後の行方は知れないが、決して死んでしまったわけではないだろう。このあたりから語られることのない正体が浮かび上がってくるのかもしれない。

Q.太上老君(吉祥寺の老人)の正体は?またロウとカオスとの争いに、どうかかわっている?

 太上老君の正体は道教の祖、老子その人である。本名を李耳(りじ)といい、中国の春秋時代に実在した人物である。彼には多くの伝説が残されており、ブッダに転生した、姿を変えて幾度も皇帝になった、など超常的な逸話が多く残されている。『真・女神転生』中では、大自然の人格化した存在と見なせよう。自然は何よりも調和を望んでいる。彼が主人公たちの前に現れたのは、彼らが調和を求める者かを確かめた上で、その手に調和を取り戻す役割を託すためであった。

Q.本来ならリリスと主人公がペアを組んだはず。どうしてパートナーになれなかったのか?

 最初の夢の中でリリスが「あなたの永遠のパートナー」と自分のことを語っているが、この「パートナー」という言葉の中にはさまざまな意味が含まれる。ヒーローとヒロインのような「生きていく上でのパートナー」であり、「恋愛の対象としてのパートナー」でもある。つまり、大義名分がどうのこうのではなく、リリスの個人的な感情も多く含まれる。そこにルシファーが目をつけ、利用したのである。

Q.核発射を抑えていたのは後藤?

 後藤は自衛隊内部に、自らの意のままに動く部下を多数持ち、さらに召喚した悪魔を使って敵対する軍関係者の言論、意識などの操作をおこなっていた。アメリカ軍の核ミサイルは、その後藤の差し金である悪魔によって発射が抑えられていた。しかし彼が死亡したことで悪魔たちは解放され、ミサイル発射の障害がなくなり、大破壊へと結びついたのであった。

Q.役小角はなぜ主人公を助けるようなことをしたのだろう?また金剛神界とはどんな世界?

 役小角は修験道の開祖で、奈良時代の実在の人物である。神通力を使いこなし、空を飛ぶことができたという。ゲームの中での小角は中間勢力の一部として登場する。金剛神界とは小角が作り出した結界であり、一種の異次元だが、現世の影響を大きく受ける。彼は両勢力の争いを眺めていたが、金剛神界のバランスを保つために、主人公に協力したのだ。

Q.アリスは本当に、ただの人間の少女なのか?ふたりの悪魔と、どんな関係があるのだろう?

 アリスはベリアル、ネビロスのふたりに蘇らせられたゾンビである。六本木の瓦礫の中に見つけたアリスの思念から、肉体を再生したのだ。彼らにはわがままな少女に振り回される自分に酔う、ナルシスティックな面があるのは否定できない。

Q.洪水後のスガモプリズンにいる老人にはどんな過去が?

 かつて大日本帝国陸軍の上層部のひとりに、「邪教」のメンバーがいた。敗戦後、彼は戦犯として処刑されたが、邪教の秘法により復活した。その後彼は秘法を多くの弟子たちに伝え、その秘術を執りおこなう場所は「邪教の館」と呼ばれるようになった。弟子たちに可能な合体は「剣と悪魔の合体」までが限度で、エンゼルリングを作るような高度な合体は、秘法を極めた彼にしかできない。

Q.主人公には父がいない。それは彼の人格に影響を与えた?

 彼が物心つく前に両親は離婚している。だから彼は父というものをほとんど知らず、父親にあこがれる気持ちは人一倍強い。このことが悪魔への関心に結びついたと推測できる。父性に接する機会の少なかった主人公が、父を象徴する強い力、すなわち悪魔の力に興味を示すのは当然の結果と言えるだろう。もし主人公が両親のそろっている家庭で育ったのなら、悪魔召喚プログラムとは一生縁がなかったと考えられる。逆に言うならば、母が離婚したことも、悪魔との戦いに挑むことも、すべて因果律の中に組み込まれていたのかもしれない。そのことは今となっては永遠に分らない。ただ厳然たる事実が残っているのみである。

Q.ロウヒーローのみパートナーがいない。前の彼女にまだ……。

 ロウヒーローは、ボディコニアンとなった少女に未練があるから、パートナーを作らないわけではない。その理由はロウヒーローの復活が神の奇跡によって起きたものではない、というところにある。彼は、人為的な力によって蘇生したらしい。法衣に身を包んだ彼は以前と比べて無表情で、話す言葉も傲慢に聞こえる。メシア教会にとってロウヒーローは戦士であり、スポークスマンでもある。仲間を守るために自分の身を犠牲にしたロウヒーローは、メシア教にとって格好の宣伝材料であった。彼は自らの美徳によって復活したが、そのやさしい心までもがよみがえったわけではなかったのだ。彼にはパートナーという愛情の対象を求める感情はもうないのだろう。

Q.カオスヒーローとオザワの対立理由は、どんなところにある?

 オザワは権力欲が非常に強く、自分の命令に従わぬ者を許すことはしない。また自分が群れで行動しなければ何もできないことを知っており、一匹狼的な性格のカオスヒーローに嫉妬していた。カオスヒーローはプライドが高く、他人の支配を甘んじて受け入れるタイプではない。両者が反発しあったのも当然と言えるだろう。

Q.ヒロインは大破壊後、いつ転生したのだろうか?

 ヒロインは主人公を金剛神界に送り込んだあと、爆風によって肉体を失ってしまった。しかし主人公たちが金剛神界で過ごしている間に転生をはたし、現世によみがえっていた。彼女はメシア教会神父の家に生まれ、物心つくと同時に救世主としての教育を受けた。彼女の存在がロウ、カオスの争いに大きくかかわるというお告げが出たからである。教育中の様子は「精神世界」で垣間見ることができる。期待を裏切れないという意識が働き、かなりのプレッシャーがあったらしい。だからこそ主人公とヒロインの邂逅は、運命なのであった。

Q.吉祥寺での殺人事件の真相は?またナイフを落とすガキと関係があるのか?

 喫茶店の女や母親から聞くことができる殺人事件の噂。戒厳令が引かれ、吉祥寺は物々しい騒ぎに巻き込まれた。当初は夢と関連したイベントであった。しかし夢の内容が削られたため、殺人事件の噂だけが単独で残った。ナイフを持って暴れる餓鬼と殺人事件に直接の関連はない。

Q.大破壊後の貨幣制度はどうなった?

 大破壊後の経済は、魔貨自体の価値によって品物と交換ができる「魔貨本位制」ともいう制度になった。魔貨自体の価値は不変であり、品物の値段は交換する物を需要側がどれだけ必要とするかで決まる。円やドルなどとの厳密な交換レートは存在しない。ただ東京圏は、他地域より、魔貨の価値が多少高いようだ。

Q.カテドラル完成によるメリットは?

 東京という都市そのものは巨大な霊的パワーの集積点だ。東京の中心にパワー増幅のために作られるカテドラルを完成させれば、どんな使い道だろうと絶大な力を 発揮する。カテドラルを手に入れることは、自らの勢力が勝利したに等しいのだ。ロウ、カオスの両勢力がカテドラル占領に躍起になったのもうなずけよう。

Q.パスカルは吉祥寺で消えたあと、どうしてT.D.Lで門番のようなことをしていたのか?

 瞬間転送システムの暴走により、吉祥寺から飛ばされてしまったパスカルは、以後、時空の狭間をさ迷っていたらしい。やがて現世へと戻ってきたところをエキドナに発見された。そしてエキドナは魔法でパスカルの正気を狂わせ、門番に仕立て上げてしまったのである。自分の境遇はきれいに忘れた状態で。

Q.鬼神火之迦具土と武器である”ヒノカグツチ”の関係は?

 炎の化身である火之迦具土が剣として具現化したものが、ヒノカグツチの剣である。この武器は直接斬りつけて使う剣ではなく、気をこめることにより刀身から炎を噴出させて攻撃する剣であるため、使いこなすにはしかるべき精神の鍛錬が必要とされる。中途半端な気を込めただけでは、逆に自分が炎に飲み込まれてしまう危険すらある剣なのだ。

Q.玉藻に剣が弾き返されるのはなぜ?

 玉藻やランダ、ギリメカラといった一部の悪魔が剣攻撃を弾き返すというのは、実は敵の術中にはまっているからで、 自ら自分の身を攻撃してしまっているのだ。これらの悪魔は自分の周囲にあやかしの術をはり、近づいてきた者に一種の幻覚症状を引き起こさせているのである。したがってあやかしの術にかからぬよう倒すには、銃や魔法で遠距離から攻撃することが必要となる。

Q.「ランダ+バロン=シヴァ」はなぜ?

 いずれもバリ島(インドネシア)を起源とする神であるが、互いにライバルであるように、その性格は正反対である。ランダは闇、バロンは光。このふたつを合体して得られるのは、神学的整合性からシヴァ(破壊と創造の神)が妥当である。

Q.あのロキのずる賢さは、カオスサイドにこそふさわしい性格なのでは?

 ロウの魔神にオーディンとロキが並び立つのは確かに違和感がある。永遠のライバルとして、ラグナロクで激しく戦ったことを考えればなおさらだ。しかし、こう考えることもできる。“ロキの性格はロウの目的達成のためなら、どんなに酷いことでもためらわずにおこなえる”。これこそが北欧神話のロキのキャラクターとぴったり一致しまいか。その柔軟さこそロキという悪魔の性格を表しているのだ。

Q.エキドナはどうやってT.D.Lを支えているのか?

 まずは下のイラストを見てほしい。エキドナの身体は島の土台全体にとぐろを巻くようにしてあり、その上に突き出した頭をカモフラージュするかのような形で城の部分が乗っている。城の内部構造が複雑なワープルートでつながれているのは、エキドナの姿を悟らせないためであり、エキドナの身体自体はストレートに伸びているのであろう。

T.D.L

Q.悪魔使いとダークサイドの関係は?

 悪魔召喚には相当な精神力を必要とする。召喚したさいに召喚者の精神力が弱まっていると、召喚した悪魔に肉体を乗っ取られてしまうこともある。主人公や後藤は強靭な精神力で悪魔をコントロールできるが、未熟な悪魔使いは召喚した悪魔たちによってダークサイドへとひきずりこまれてしまったのだ。

Q.西の島のモデルはどこ?

 このあたり一帯は「白金台」と呼ばれる土地である。20世紀末、ここにはあるバーがあった。「ネクロミコン」の作者の名前をとったこのバーには、大破壊後も念が封じられていたのか、銀バエの大群が集まり、とても人間の住めるところではなかった。その銀バエの大群がやがてひとつの形を成し……ベルゼブブの出現である。

Q.ルシファーは表に出ず、どうしてアスラ王を矢面に立たせたのだろうか?

 ルシファーとアスラ王に神話上での盟友関係はない。しかし求めるもの(=世界のカオス化)が同じであったために手を組んだのである。東京の大破壊は、後藤が独自で防いでいただけであり、同じカオスサイドであるルシファーたちにとっては、いずれ引き起こさなくてはならないものであったのだろう。結果として東京はカオス化したが、メシア教徒の勢力拡大によってその流れが分断されかかった。その頃、ルシファーは第二、第三の東京を作るべく、世界中を飛び回り、また魔界の統率のため、東京はアスラ王にまかせっきりだったのだ。


最終更新:2018年12月22日 16:41
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