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  • 真贋バトルロワイヤル
  • linkage ─箱庭の神話─

真贋バトルロワイヤル

linkage ─箱庭の神話─

最終更新:2024年12月07日 14:24

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
◆


チータローションを出してくれ。
血相を変えた卜部の言葉に、どうして聞き返す事もせず言われた通りにしたのか。
後になっても、正確な理由はドラえもんに分からなかった。
大人の男性、それも彼にしては珍しい強い命令口調だからつい体が反応を見せたのか。
それとも彼と同じものを、自分も感じ取ったからか。

神と魔女が睨み合い、意識を保つだけで精一杯の空間で。
このまま突っ立っていてはきっと、マズいことになる。
小難しく考えるまでもなく、分かってしまったから。
瓶の中身をぶち撒ける勢いで、自分と卜部の両足に振り掛けた。
短時間のみ爆発的なスピードを発揮し、卜部は少し離れた位置の少女を回収。
抵抗はされない、彼女もまたこの空気の中で凍り付いたように動けずにいた。
もう一人の剣士はどこへ行ったかなど、探す余裕は最初から無い。

ドラえもん達より一足先に動いたと、少なくとも現段階では確認出来ず。
急げ急げと繰り返される脳内の警鐘に従い駆けた。
どの部屋に行くか、どこまで向かえば良いかなんて考えていない。
ただ少しでも、ほんの一歩分でも構わないから遠ざからねばと。
それだけを考えて走り続ける。

背を向け、一度も振り返らず走り。
結果背後で何が起きたかは、四人共視界の端にすら収めず走り続け。
直後に響いた轟音が、否応なしに知らせて来た。

最早、人が立ち入れる領域に非ずと。


○


5秒保ったか、満たなかったか。
コーカサスカブト城の一室が消し飛ぶまでの時間を、正確に把握した者はいない。
片手で数えられる程度でも、数秒は形を維持できた城の強度を誇る者もいない。
事実としてあるのは、神と魔女の闘争の場には狭すぎる一点のみ。
藁の檻で怪物を閉じ込められる筈は無く、至極当然の結果。
必然的に両者が雌雄を決する戦場は、城の外へと移った。

城壁を駆け、租界へ降り立ってからも脚は止めない。
移動中の妨害を禁ずるルールは無し。
スポーツマンシップに乗っ取った試合ではない、勝つ為にあらゆる手段が許された殺し合いだ。
城を飛び出し現在に至るまで、常に彼らは攻撃に出ていた。

ノワルの取った手は複雑な術式を必要としない、極めてシンプルな魔法。
魔力を固めて光弾に変え、標的へ撃つ。
ノワルに限らず魔法に心得のある者ならば出来て当然な、初歩的な技術。
魔法使いにとって珍しくもない、しかし扱う者によっては大きく化ける。

アルジュナを殺すにあたってノワルが不利な要素の一つに、本気を出せないというものがある。
嘗てはソールとの一戦で、正史においてはルナとの決戦で使った魔力解放形態。
ゲームバランスを崩壊させない為に、殺し合い中は封印されているのを既に把握済みだ。
改めて不愉快でしかないが、文句をぶつけた所で制限解除の兆しは見られない。
並の魔法使いを凌駕する魔力の持ち主ではあるも、やはり本気を出した時よりは出力が落ちる。

だが魔力解放形態に近付ける事は、支給品を使ってクリアした。
胸元に隠した真紅の物体、名を賢者の石という。
人間の魂を高度な錬金術によって抜き出し、凝縮加工を経て生み出される術法増幅器。
内包されたエネルギーを自身の魔力に上乗せ、魔力解放形態とほとんど謙遜ない出力を発揮している。

更にノワルが発射する光弾は、一発一発に籠められた魔力の密度が非常に高い。
力を引き出しそのままぶつけても、アルジュナ相手には何の効果も齎さない。
だから威力と貫通力の両方を最大まで高めた上で、今も放ち続けていた。

と、言うだけなら簡単だが誰しも実行に移せるとは限らない。
魔力が少な過ぎれば敵に届かず、逆に多過ぎれば暴発し自身が傷を負う。
とはいえ、ノワルにはいらぬ心配だが。
光弾の生成から照準を合わせる一連の流れを、コンマ数秒で完了。
ガトリングのように絶えず光弾を放ち、当然の如く生成失敗は起きない。
固有魔法の凶悪な性能のみではない、魔力の扱いも含めた天才的なセンスがノワルにはあった。

銃火器を用いず、最も信頼を置く自身の魔法で弾幕を張る。
敵が並大抵の力しか持たなければ、殺された回数は既に百を超えただろう。
なれど相手はその枠に収まらない例外中の例外、黒き最後の神。
神の齎す死を受け入れぬばかりか、小癪にも牙を剥く不出来へくれてやる情けは無し。
城内での衝突時から常に光球が熱線を放ち、魔女の生を否定せんとする。
光弾が熱線を迎え撃ち、ノワルへ火傷の一つも負わせない。
反対に熱線は光弾を掻き消し、アルジュナにいらぬ血を流させない。
互いが撃ち漏らした数はゼロ、当てた回数も未だカウントされていなかった。

神と魔女が無傷の代わりとでも言うのか、被害は彼らの周囲が一身に受ける羽目となる。
熱線と光弾は衝突とほぼ同時のタイミングで霧散。
籠められた高密度の魔力は空しくも宙に溶け、消えるまでのほんの僅かな間で租界エリアに破壊を齎す。
弾けた魔力は立ち並んだ家々を吹き飛ばし、瓦礫すらも粉へ変える。
その粉も次に起きた魔力の衝突で完全に消え、追い打ちの如く辛うじて無事な建造物が倒壊。
双方移動しながら爆弾を投げ合っているのと同じだ。
もし住民である日本人がいたならば、今頃は死体すら残ってはいまい。

共に自らが破壊した光景を気にも留めない。
視界に入れるのは眼前の邪悪/障害ただ一人、他に意識を割く意味がどこにある。
光弾を撃ちっ放しで、ノワルは次に打つ手を速攻弾き出す。
賢者の石が秘めるエネルギーは莫大であれど、決して無限ではない。
己の魔力とて限界はあり、敵も同じだろうが底が見えない相手に持久戦は悪手中の悪手。
悠長に変わり映えのしない攻防を継続し、果てに待っているのはこっちのガス欠に他ならない。

「シャインレイン」

そろそろ流れを変える頃合いだ。
習得済の光魔法の一つを使い、上空から光線を発射。
マジアベーゼとの戦闘でも使ったが、威力はあの時の比で無い。
賢者の石によるブーストに加え、遊びを完全に排除している。
光線の量は更に増大、標的を絞りアルジュナのみを対象にした集中豪雨を降らせる。
シャインレイン発動中も、両手から光弾を撃つおまけ付きだ。
魔法を複数同時発動は強力であれど、リスクも付き纏う。
術式の組み立てを一工程間違えるだけで、魔力は即座に暴発してしまう。
ノワルが如何に並外れた魔法の使い手かが分かるだろう。

三方向からの集中砲火へ、アルジュナも攻撃方法を変えて対処。
土星の輪のように自身の周囲へ光球を配置。
意思一つで回転と魔力の放出を行い、光刃を生み出す。
色とりどりの煌びやかさが全てでは無い、神の身を守護する盾にして矛だ。
光魔法の豪雨が霞む程の輝きで、頭上よりの脅威は消滅。
連射中の光弾を斬り落とす最中にも刃は範囲を広げ、あっという間に魔女へ届いた。

「テネーブル」

両断され、血の一滴すら流れずに蒸発。
惨たらしくも邪悪な魔女には相応しい末路を、受け入れる気は更々無い。
指先で空間を削り闇を奔らせる。
こちらもシャインレイン同様、魔力増幅と加減抜きの影響下にあった。
範囲を狭めた代わりに魔力の密度を高め、魔刃と化し光刃と激突。
砕け散った刃が飛び散り、遠くの方で倒壊の音がするも無視。
次なる手に出た敵以外に、見るものなど無い。

光球を操作し獣の姿へと変化。
全身が蒼く燃え盛った、いや蒼炎が馬の形を作り突進。
蹄がアスファルトを溶かし、嘶きが大気に亀裂を生む。
直接触れずとも灼熱地獄へ包み込まれる、膨大な熱量。
己が身を頭部で突かれた時の苦痛が如何程か、想像すらも憚れるだろう。
神の遣わした獣も、ノワルにとっては目障りな害獣に過ぎず。
自身に触れる許可をした覚えは無く、近付く事すら許してはいない。
愚かな獣には相応の罰を与えてやらねば。

「ペットの躾がなってないわね」

デイパックより取り出すは三つ目の支給品。
殺し合いにて齎された、ノワルが本来持ち得ない手札。
細くも頑丈な鎖は、攻撃・防御・拘束と用途多様の便利な道具だ。
と言ってもこのまま使うのでは心許ない。
魔力を流し込みコーティング、端に至るまで黒い稲妻が迸る。
鬣を揺らした蒼炎が目前に迫り、ふっと煙のように消滅。
何が起きたと問われれば、鎖を振るって撃退したのが正解。
常人では目視不可能な速さで以て、1秒経過時に25を超える数を叩き付けたと加える必要があるが。

「次は飼い主さんの番よ?」

獣同様の最期を神にも与えてやる。
魔力を纏わせた上に、これは単なる鉄の鞭に非ず。
万里ノ鎖、伏黒甚爾が若き日の五条悟相手に使った特級呪具の一つ。
一端が観測されなければ鎖部分を無限に伸ばす特性は、ノワルも確認済みだ。
端部分のみをデイパックに入れ口を閉じ、術式効果が発動。
蒼炎を蹴散らした時以上の長さで振るう。

得物のリーチが長ければ標的から距離を取れる分、振るう際に必要な力も増す。
であればこそ、ノワルはやはり規格外なのだろう。
力を持たぬ只人は当然、動体視力に優れた達人ですら鎖を振り回す腕を見れない。
腕が掻き消え、周囲一帯に何かがぶつかる音が木霊する。
理解不能な現象を正しく認識するのはノワル本人と、対峙中の神だけ。
安易に立ち入れば己の死すらも理解出来ずに命を落とす、苛烈極まる空間だった。

鎖を振るう中で、ノワルもまたアルジュナの動きをしかと捉える。
黒く輝く宝石の如き肉体は裂け、体中に真紅を塗りたくった。
と、そのような理想とは裏腹に相も変わらず神はノーダメージ。
黒き裸身を汚す赤は一つも刻まれず、呪具は常に拒まれる。
ノワルが武器を手にしたのに合わせてか、アルジュナも無手ではない。
背後へ浮遊させた廻剣を組み替えた弓で以て、魔女の猛攻を拒絶。
矢を放つ本来の使い方とは違うも、破壊不可能と言っても過言ではない強度だ。
人の領域で数える事が間違いの膂力と合わせ、得物の打ち合いもやってのける。

魔力と魔力、神具と呪具の衝突が起こり無事なのは二人だけだ。
ぶつかる度に起こる衝撃は、不可視の刃となって四方八方へ飛び散る。
どこまで飛んだか、何を切り刻んだかには興味を抱かず。
片方が動きの速さを一段引き上げれば、さも当然のようにもう片方があっさり追い付く。
僅かに手を抜けば即死へ繋がる攻防に身を投じ、魔女は神の姿に考え込む。

(防いでるってことは、向こうも命中は避けたい筈よね)

闇檻に閉じ込めた時、アルジュナは避ける素振りも見せなかった。
最初から通用しないと分かっていたからこそ、何もしなかったとは察しが付く。
対して現在は弓で万里ノ鎖を弾き、己に当たらないよう努めている。
ということはつまり、今の自分の攻撃は敵にとってもダメージになり得るのか。
闇檻とて一定以上の魔力相手には突破される。
ソールとの一戦や、先のイドラ達の令呪を使った戦法が良い例だ。
敵の強さは本物、しかし絶対に殺せないとも限らない。
自分と同じく、敵も何らかの制限を施され絶対無敵の座からは引き摺り下ろされている筈。

(…ま、先にこっちがダメになりそうだけど)

チラリと視線を自分の手に移す。
鎖を握り締めた箇所から血が垂れ、意識しないだけで痛みも無い訳じゃない。
魔女ならではの人外染みた身体能力があれど、肉体の強度はやはりアルジュナが勝る。
いつ入るかも不明な一撃に賭けて、このまま鎖を振り回すか。
冗談じゃない、片腕が使い物にならなくなるリスクと微塵も釣り合ってないだろうに。

得物を用いた応酬もここらが潮時。
鎖で地面に真一文字を描き、大量の土砂がアルジュナを襲う。
随分と拙い目晦ましだ、腕の一振りで薙ぎ払う。
即座に戻った視界に、後方へと大きく退がったノワルを閉じ込める。
勝てないと諦め逃げを選んだか?
違う、肌が掻き毟られん程に張り詰めた空気に大技を確信。

「ジェノサイド」

胸元の賢者の石が輝きを増し、上位魔法を数段階上の脅威へと変える。
石の錬成に使われた悲鳴すらも飲み込む闇が顕現。
マジアベーゼ相手の時でさえ、威力を削られて尚建造物群を倒壊させたのだ。
此度は正に絶望的と言う他ない、地獄絵図が現実となる。

神と魔女以外の誰かが見たら、津波と言っただろう。
民家複数の被害では到底済まない大災害が巻き起こる。
未だ破壊を免れた建造物も、瓦礫の山ですら無い欠片も、土が剥き出しの地面も全て飲み込む。
日本人達に唯一許された居場所を奪い、尚も闇の勢いが衰える気配は無い。
神を食わせろとの進撃を見上げ、アルジュナはこれまでと一切変わらぬ顔のまま。
しかし滅びを受け入れる奇異な性質は持ち合わせず、己が力で跳ね除ける。
廻剣を背に戻し、入れ替わりに光球を展開。
伸ばした腕の先で全ての光球に魔力が収束、一斉に熱線を放った。
複数本の光は瞬く間に束ねた帯と化し、真正面から上級魔法と激突。

焼き払われ勢いが多少落ちるも、全てを消すには至らない。
闇は未だ健在、神を喰らうことだけを目指し進み続ける。
アレに飲まれればどうなるかは、被害に遭った哀れな家々が答え。
回避必至の暗黒を見つめ、しかし神に後退という選択は無い。
籠められた魔力は疑いようのない邪悪、不出来の許容等起こり得なかった。

「崩壊……」

打ち砕く手は一言で足りる。
綿毛でも吹くかのように光球を飛ばし、一ヶ所に固まった。
次いで魔力が急激に上昇、漏れ出たエネルギーが戦場を広く照らす。
溜まりに溜まった力の使い道は単純、故に下手な技よりも強力。
光球の輝きが最大に達し、魔力を一斉に開放した。

地上に太陽が落ちた。
或いは罪深き人間を断罪する、天よりの罰が降り注いだ。
天災を打ち砕くには、より脅威となる天災をぶつけるまで。
解き放たれた光は一瞬で闇を追い抜く規模となり、逆に喰らい尽くす。
腹を満たしてもまだ足りない、闇を生み落とした張本人がまだ残っている。
破壊を更なる破壊で塗り替え、租界エリアを光が侵食。
眩しさへ鬱陶し気に目を細めたノワルは、誰に向けてか口を開く。

「来なさい」

魔女の命令に応じ、白き巨体が参戦を果たす。
今は遠くのコーカサスカブト城付近より、流星の如き勢いでやって来た。
ある世界において、伝説の決闘者が最も信頼を置く切り札。
古代エジプトから続く、断ち切れぬ絆の証明。
青眼の白竜(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)。

だが見よ、ドス黒く濁り切った瞳を。
涎を垂れ流し、狂ったように牙を打ち鳴らす醜悪さを。
全身各部を汚す、おぞましき魔力の痕を。

殺し合いではデュエルモンスターズのカードも単なる紙でなく、モンスターを実体化させられる。
ソリットビジョンシステムとは違い、現実への干渉が可能なのである。
モンスターに触れれば本物の生物と大差ない感触があり、攻撃を受ければ傷が付く。
だったら参加者の方から、何らかの干渉を行えるんじゃないか。
物は試しとノワルがやったのは、ブルーアイズの核とも言えるカードを通じての魔力付与。
自分の魔法を使っての強化と言えば聞こえは良いが、実際はドーピングに近い。
魔法カード等デュエルによる正規の強化方法では無く、しかもやったのはノワルという邪悪な魔女。
いつ暴走してもおかしくないが、御せる自信が勿論あってのこと。
第一アルジュナ相手には、ブルーアイズと言えども素の状態では力不足が否めなかった。

「可愛くないけど良い子ね」

辛辣な評価もそこそこに飛び乗り、ブルーアイズが急上昇。
最初に移動に使った時以上の速度だ、強化を受けた恩恵が如実に表れている。
光が届く範囲外へと退避し、無論このまま逃げに徹するつもりはない。
何よりも向こうが逃がしてはくれない。
地上より猛スピードで向かって来る、黒い神を見れば一目瞭然。

「お空のデートなんて素敵だわ♪相手があなたじゃ無かったらだけど」

軽口を叩きつつ攻撃の準備は忘れない。
翳した両手から光弾を連射、敵もまた熱線を放ち迎え撃つ。
同じ位置に留まり続け、固定砲台になるだけでは足りない。
ブルーアイズに指示を出し、縦横無尽に飛び回る。
飛行はドラゴンのみの専売特許に非ず、神もまた地上だけに縛られない。
異聞帯で己を運んだヴィマーナが無くとも問題無い。
インドの神性を全て取り込んだアルジュナにとって、空を飛ぶくらい造作も無かった。

時に距離を放し、時には間近に近付き撃つ。
場所が空中に変わろうと互いの命中精度に低下は起こらず、全てを防ぎ防がれの攻防が継続。
どちらか一方が速度を引き上げ、もう一方が一瞬で並ぶ。
大量の発光体と奇怪な飛行物体が、下から目撃される。
大地を揺さぶるのは地震に非ず、彼らの高速飛行が起こす衝撃波が原因だ。
馬鹿げたジョークの類にしか思えないだろう。
ジェット機でもない生身で起こせるような現象ではない。

常識の二文字が当て嵌まらない二名の内、更に速度を上げたのは魔女。
爆発的な加速により、今のブルーアイズには触れるだけでも即死は免れない。
狙いはそれだ、アルジュナ目掛けて突き進む。
白竜の巨体を直接叩き付け、血肉の雨を降らせてやるのだ。

頭部がアルジュナを粉砕する寸前で、反対方向へと巨体が吹き飛ぶ。
敵が真っ向より来るなら、神もそれに合わせて迎撃しただけのこと。
おおよそ生物に触れたとは思えない破裂音を響かせ、ブルーアイズを蹴り飛ばした。
遥か彼方へ流れる星になるものかと宙で留まり、己を取り囲む殺意をノワルは目にする。

アルジュナとて強制的に戦線離脱させる終わりを望んでいない。
不出来には死を、それ以外の結末が入り込む余地は無い。
ブルーアイズが制止するだろう位置を予測し、光球を転移させての包囲。
頭上前方後方左右、逃げ場を塞いだ上での一斉放射だ。
一つ二つを防いだ所で残りが魔女と白竜を貫く。
地へ落ちることも叶わず、狭苦しい箱庭の空で果てる。

無論、終焉を退ける手段ならノワルにもある。
魔女の意思に従いブルーアイズは翼を大きく展開。
飛んで逃げる為では無く、そもそも逃げ道は塞がれていた。
その場で独楽のように回転、全方向からの熱線を刃に見立てた翼が薙ぎ払う。
先程アルジュナが光の豪雨に襲われた際と似た方法だ。
熱線を凌ぎ光球も叩き落とさんとし、その前にアルジュナが手元に引き寄せた。

距離を取ったなら自分の方から近付けば良い。
数メートルの距離を即座に詰め、ブルーアイズが尾を振り回す。
破壊力とスピード、共に高水準の鞭へ拳を叩き付け相殺。
揃って後退し次の手に出る中、魔女が一手早く神を絡め取る。

「ちょっとだけ待ってなさい、すぐに終わらせてあげるから♪」

黒い霧が覆うのも束の間、アルジュナの全身をワイヤーが巻き取る。
ほんの少しの隙間も見えず、黒い肌は完全に隠れた。
長続きしないとは百も承知だ、しかし僅かな猶予を得られたのは確か。
魔力を急速で充填し、ブルーアイズもまた口内にエネルギーを掻き集める。
本来の輝きは失われ黒々とした力が解放の時を待つ。

神を縛る下賤な道具は存在自体許されない。
ワイヤーが吹き飛ぶも予想した通り故驚きは無く、固有魔法がロクに効かない苛立ちも今更である。
こちらの準備は整っている、神を撃ち落とす瞬間はすぐそこだ。

「これで――」

一瞬、本当に一瞬。
ノワル自身も認識出来ない程に短く、されど確実に気を緩めた。
絶大な力を持つ敵を仕留められるとの期待が、勝利の天秤から重しを取り外す。
神を前に犯してはならない失敗であると、すぐに我が身で思い知る。

「な――」

神が視界から消えた。
この手で殺す筈の標的を見失い、猛烈な悪寒に襲われる暇すら与えられない。
代わりに来たのは腹部への衝撃と、遠ざかる中で見えた黒い腕。
殴り飛ばされた、そう分かったのは背中から城の壁をぶち破った後だった。


◆◆◆


神と魔女、二人だけの戦争が繰り広げられている最中のこと。
城の片隅で小さくも苛烈な屠り合いがあった。
チータローションを使い全速力で逃げた甲斐もあり、巻き添えにならずに済んだのも束の間。
ドラえもんとさとうの無事を確認した卜部を刃が襲った。
誰がやったと問うまでも無い、あの場にいたもう一人の参加者。
人ならざる存在の脅威を他の三人以上に知っているが故に、いち早く動けた男。
勇者アレフの繰り出す一撃を、卜部も愛刀で受け止める。

「ぬ…ぐ…!」

刀身へ掛かる重さに苦し気な声が漏れる。
大魔王を倒した剣を両手で振り下ろす、渾身の斬撃だ。
卜部も優れた剣術の使い手だが、片腕で防ぐには荷が重い。
こちらも両手持ちに構え直し押し返すのがセオリー。
尤ももう片方の腕が存在しない以上、対抗手段には入らなかった。

「ドカン!ドカン!ドカン!」

左腕の代わりは自分が務めると、仲間のロボットが援護に出た。
のび太と違って天性の射撃スキルが無い分は、過去の戦いで培った経験で補う。
間違っても誤射を引き起こさないよう狙い、不可視の空気弾三発がアレフへと発射。
死にはしないが相応の痛みと共に吹き飛び、宙で不格好に踊る羽目になるだろう。

「その呪文はもう効かない…!」

卜部を押し返し体勢を崩してやり、月下の装甲を袈裟斬りし更に怯ませた。
アルジュナの熱線と違い一撃破壊には至らずとも、ダメージにはなる。
呻く月下から視線を外し、もう一体へ標的を変更。
言ってのけた内容は強がりで無く、事実空気弾はアレフの髪を撫でる事すら出来ない。
強張る顔で連射するドラえもんとは反対に、勇者は焦らず距離を詰めた。

見えない攻撃は厄介であるが、対処不可能かと言えば違う。
ひみつ道具を四次元ポケット諸共没収されたドラえもんにとって、必然的にメイン武装として使うのは空気砲。
アレフ相手に撃ったのも今に始まったものではない。
最初こそ未知の呪文かと驚いたとはいえ、時間経過で警戒度は下がって行く。
アレフからすれば、最早恐れるに足りない武器だ。

見えない衝撃を放つ際、敵は必ず右手の筒を向けて来る。
加えて発射する時には「ドカン」と口にする工程を挟む。
22世紀の科学技術の産物とまでは分からなくとも、自分が呪文を唱えるのと大体同じと見た。
であれば対処は難しくない。
筒が狙った先に放たれるのだから、そこへ剣を叩き付ければ霧散するし、射線から外れるように駆ければ良い。
慣れれば対処は難しく無く、竜王の炎に比べればどうということはない。

空気弾を掻い潜り、ドラえもんを剣の間合いに閉じ込めた。
次の弾も呪文を跳ね返す不思議な布も使わせない。
鈴をぶら下げた首目掛け刃が走り、金属同士の衝突で甲高い音が鳴る。
機械の体を破壊したのではない、回転刃の得物に阻まれた。
片足だけでは機動力低下は免れずとも、近い距離なら問題無し。
ランドスピナーを高速稼働させた卜部が間に合った。

「こんなことをしてる場合か…!?あの二人が戻って来れば、俺達全員殺されるかもしれないんだぞ!?協力して城を出るのを優先するのが――」
「…っ!僕には…関係無い!」

尚も説得を試みる卜部の言葉を振り払うように襲う、横薙ぎの一閃。
防御こそ間に合ったが片腕の欠損と、片脚の機能故障では力が足りない。
足元がよろけた瞬間を狙い、ロトの剣による猛攻で追い詰められた。

万全の状態ならともかく、軽くない負傷と月下の故障が足を引っ張る。
目まぐるしく変わる状況のせいで、ドラえもんに復元光線を使ってもらう余裕が無かったのは痛い。
致命傷になり得る斬撃こそ防ぐも全身に刻まれる傷は増え、破壊されるのも時間の問題。
させじとドラえもんが加勢に出るのを許しはしない。
渾身の一撃を卜部に叩き付け、ドラえもんを巻き込み吹き飛ばす。

追い打ちを掛けようとし、視界の端に蠢く者が見えた。
覚束ない足取りでアレフ達から遠ざかる、桃色の髪の少女が。

(体が…まだ痺れ…っ)

闇檻から解放されても、さとうの体には快楽の余韻が残っていた。
感度上昇の魔具は二つとも無く、あの不愉快な刺激とはおさらば出来た筈なのに。
半端な形で終わったとはいえノワルの調教は後を引き、こうして逃走防止に一役買っていた。

動く度に服が擦れ、散々弄ばれた乳房が疼き出す。
意識しないよう努めても、ショーツの奥で溢れる熱がまだ消えない。
どこまでも忌々しい女だと苛立ちを募らせながら、これでは埒が明かないと現状を噛み締める。
だったら少しでも移動速度を上げるべく、カードデッキを取り出す。

「変身…。…っ!?」

タイガに変身した直後、強化感覚器官が接近する気配を察知。
疼きが残る体で咄嗟に斧を振るえたのは、ライダーの身体機能の恩恵だろう。
分厚い刃が剣と衝突、だが二撃目にさとうが備えるよりアレフの方が速い。
防御をあっさりすり抜け胸部を切り裂いた。

血飛沫代わりの火花が大量に散り、床に転がるさとうを見下ろしトドメを刺す。
逆手持ちに変え、切っ先が睨むのは腹部の小箱。
これを使って鎧を纏ったのなら、破壊されれば力は全て消滅するに違いない。
小箱諸共腹部を串刺しにする勢いで振り下ろす。

「本当にしつこい…!」

『AD VENT』

優勝しなければならない理由をアレフが持つなら、さとうにだって死ねない理由がある。
倒れながらもカードを引き抜き、デストバイザーに装填。
さとうの怒りに応え、彼女の従僕が契約主の敵に襲い掛かった。

「ぐあっ!?」

切っ先がカードデッキを突く寸前、背後からの殺意がアレフを貫く。
卜部やドラえもんではない、血を吐きながら振り返り襲撃者を捉える。
白い体に青のラインが入った、どこかタイガに似た生物。
旅の中で見たどの魔物とも一致しない、未知の存在が爪を突き刺していた。

白虎型ミラーモンスター・デストワイルダーは、アレフの疑問へ懇切丁寧に答える真似はしない。
本来の契約者とは違うも、現在デッキを所持しているのはさとうだ。
彼女がアレフの殺害を望むなら逆らう理由は無く、自分にとっては餌に有り付けるチャンス。
ミラーモンスターや仮面ライダー達にやったのと、同じ方法で殺すだけ。

『FINAL VENT』

ミラーワールドからの奇襲は成功、このまま片付けるのは容易い。
確実に敵を仕留めるべく、タイガが最大威力の技を発動。
突き刺したままでアレフを押し倒すと、デストワイルダーが疾走。
鎧が床と擦れ摩擦を起こし、ギャリギャリという音と共に爪がより深く抉る。
仮面ライダー相手でも体力を大きく削り取る技だ。
ロトの鎧を装備してるならまだしも、今のアレフには耐え難い激痛だろう。

「があああああ…っ!!ラリ…ホーマ…!」

痛みを塗り替えるのはローラ蘇生の執念。
生き返らせて彼女への愛を確かめねば、自分は欠落などしてないと証明しなくては。
強迫観念にも似た衝動が決死の抵抗を可能とし、駆け回るモンスターへ呪文を発動。
魔物を眠りに落とす力はミラーモンスターにも有効だった。
見た目からは分からないが足を止め動かなくなった、とっくに夢の世界へ旅立ったらしい。

爪を引き抜くと血が滝のように流れるも、すかさずベホイミを複数回唱える。
MP消費を気にするのは後回しだ、死んでしまっては元も子もない。
回復魔法で止血を終えるや否や、棒立ちのデストワイルダーを叩っ斬ってやった。
暴力的な目覚ましに大きく怯み、これはマズいと来た道を逆戻り。
ガラス窓の中へ消えるのを見送ってる場合ではない、モンスターを操る張本人を片付ける。

「ベギラマ!」

掌に光を収束し放つ、アレフが使える最大呪文。
魔力を龍に変え、さとうを喰らい千切ろうと突進。
変身中であっても直撃は絶対に避けるべきだが、此度はさとうが何かするまでもなかった。

「ひらりマント!」

目の前で誰かが死ぬのはもう真っ平だ。
自らさとうの盾となったドラえもんの手には、ハドロン砲すら跳ね返したひらりマント。
叩き付ける勢いで振るい、光竜を自分達の元から拒絶する。
呪文を唱えたアレフ本人を襲う脅威となるが、この現象も一度見たもの。
とはいえ流石にベギラマすら跳ね返すのは驚きであった。

再度同じ呪文を唱え相殺する時間は無い。
真横へ跳躍、床へ自ら倒れ込み転がって回避。
通り過ぎた光竜が背後で塵になったのは、見るまでも無い。
視線を向けねばならないのは未だに死を逃れ続ける標的だ。
剣を握る手に今一度力を籠め、

壁をぶち破って魔女がダイナミックな入室を果たした。

「っ……これだから男は野蛮で嫌なのよ…!」

頬を擦りながら、心底うんざりしたように言う。
狭っ苦しい城を飛び出し殺し合っていたが、強制的に戻る羽目になった。
青空を突っ切る生きたミサイルにされ、尚もノワルに致命傷を負った形跡は無い。
自分で無ければ全身ジャムになってたろうと呟き、強大な気配の急接近を察知。
今しがた開けた大穴からは外の景色が丸見えだ、ふざけた真似をしてくれた神を睨む。

数秒と経たず顔を引き攣らせたのは、自分でも当然の反応だろうと思考の片隅で呟いた。
城内にいた面々も同じような顔で外の光景を目に焼き付けている。
ノワルを殴り飛ばし即座に追いかけたアルジュナが、片手でブルーアイズの尾を掴み。
幼児がぬいぐるみで遊ぶかのように、豪快に振り回すという正常とはかけ離れた絵面だった。
カードから召喚されたと言っても、ブルーアイズの重量は大人数人でも全く届かない程。
少なくとも人力で持つのは有り得ない。
神に人の常識を当て嵌める方が間違いというなら、全くその通りであるが。

「あなた、幾ら何でもやりたい放題過ぎじゃない?」

自分を棚に上げた発言がノワルから飛び出すも、アルジュナからの返答は無い。
僅かな表情筋も動かさず、腕の回転数を速める。
悲鳴にしか聞こえないブルーアイズの鳴き声も無視し、ノワルを含めた不出来な者達目掛け投擲。
大型トラックなど目では無い物量に勢いを加えればどうなるか。
出来上がったばかりの大穴がちっぽけに見えるレベルの破壊が巻き起こった。

我に返った者から退避するも、知ったことかと瓦礫が飛来。
それ以前にブルーアイズの直撃を受ければ、マトモな死体が残るかも怪しい。
故に卜部とドラえもんはまだ運が良かったのだろう。
白竜をどうにか躱し、余波で吹き飛ばされ壁に叩き付けられるだけで済んだのだから。

「ぐ……」

なれど無事かどうかはまた別の話。
全身のそこかしこが激痛を訴え、却って左腕の欠損箇所の痛みが気にならない。
すぐ傍ではドラえもんがうつ伏せに倒れており、まさかと嫌な予感が焦りを加速。
但し油の切れた機械のように緩慢な動作で立ち上がった為、最悪の事態は訪れなかった。
顔を動かし周囲を確認。
アレフもさとうも見当たらない、逃げられなかったのか。
若しくは姿が見えないだけで逃げるのには成功したか。

安否不明の二人はいないが、破壊の原因の内の一体は見付かった。
瓦礫のベッドの上に横たわり、小さく呻き声らしきものを上げる。
伝説の竜とは思えない、虫の息の三文字が似合うくらいには弱々しい。
味方でないが卜部もつい同情を抱いてしまう。

「誰が休んで良いって言ったのかしら?」

当の召喚者は労るどころか、更にこき使う気満々だった。
瓦礫の山を魔法で吹き飛ばし、当然のように魔女が生還。
目が据わった貼り付けた笑顔を浮かべ、ブルーアイズへ腕を振るう。
万里ノ鎖を太い首に巻き付け、強引に頭上を向かせた。
元々召喚者には従うよう設定されており、抵抗の素振りも見せずに為すがまま。

何故そんな真似をと口を挟むまでもない。
つられて卜部も天井を見上げ、嫌でも理解させられる。

「立つことも……ままならぬ不出来……やはり……私の世界には不要……」

神が、視ていた。
青空を背に、存在を認めぬ邪悪を見下ろす。
天井は吹き飛び空の色がよく見える、アルジュナという災厄もだ。
廻剣を組み立て、万里ノ鎖と打ち合った黄金の弓を再生成。
自らの魔力こそが番える矢、光球全ての発光と共に一点へ収束。
神の下す罰を受け、そこに死体は残らない。
完全なる世界に屍は不必要、髪の毛一本服の切れ端すらあってはならないのだから。
天より降り注ぐ輝きも、卜部には美しさや感動の前に恐怖しか抱けない。
戦場で命の危機に幾度も陥り、一度は死した身なれど、ここまでの悪夢染みた光景は初だ。

「見下ろされるのって不愉快ねぇ、引き摺り落としてあげる♪」

人間が慄く一方で魔女は殺意を煮え滾らせる。
弾む口調とは裏腹に、内心はアルジュナへの不快感で染まり切っていた。
強大な力を持っていようと、己を天高くから見下すのは許せない。
プライドの高さは実力に裏打ちされたが故、なれば選ぶ道は一つだけ。
口にした通りだ、神を地へ叩き落としてやる。

今のブルーアイズに求める役目は多くない、だが使わない選択も無い。
頭部をアルジュナの方へ固定し、魔力を流し込む。
先の空中戦では不発に終わったが、二度も同じミスは犯さない。
機動力がアテにならないのであれば、砲台として役に立ってもらう。
ノワルの魔力とブルーアイズ自身の力が、口内に収束し発射の瞬間へ備える。

「う…卜部さん…ぼくが運ぶから……」

双方の激突が起きてしまえば、自分達は確実に巻き込まれて死ぬ。
ロボットのドラえもんにだって分かった。
ひらりマントを振るったとて、彼らが放つだろう力に通用する気がまるでしない。
廃棄品どころか、ネジ一本も残らない末路が待ち受けている。
だからここは逃げるしかない。
どこでもドアが無い以上、自分達の足が唯一の頼りだ。
自分以上に負傷の大きい卜部を置いて行くのは論外、一緒に生きねば意味が無い。

「……ドラえもん。仲間を集めてゼロの所へ行け。正直、まだ騎士団がゼロを裏切ったなんて信じられないが……だがゼロならきっと殺し合いを終わらせられる」
「な、何言ってるのさ!?卜部さんも一緒に…」
「そしてお前も、きっと殺し合いを止める皆に必要だ。初対面の俺ののことも助けてくれたお前だからこそ、皆信じてくれる筈だ」
「卜部さ――」

何をする気か察したのだろう、必死に手を伸ばすも届かない。
卜部の目の前に、青い猫型ロボットはもうどこにもいなかった。
消えた原因を作ったのは他ならぬ卜部だ。
彼に支給された最後のアイテム、ブルーアイズと同じデュエルモンスターズのカードを使った。
強制脱出装置という、対象に選んだ者をランダムに転移させる罠カード。
本当なら二人揃って逃げるのが一番なのは、卜部とて分かってる。
だが意地の悪いことに転移可能なのは一人だけ、どちらか片方はこの場に残らねばならない。
そして卜部は現実的に物事を考える軍人であれど、仲間へ犠牲を強いる冷血漢では無かった。

(すまないドラえもん…けどな、お前に言ったのは本心だ)

この地で出会った仲間に内心で謝る。
カラレス相手に一歩も引かず立ち向かう勇敢さ、会ったばかりの自分を助けてくれた優しさ。
何より、殺し合いを強いる主催者への正しき怒り。
虐げられた多くの日本人を見た卜部だからこそ、理不尽へ憤る姿には共感を覚えた。
自分の選択が影を落とすかもしれないが、どうか引き摺ら撫で欲しい。
ドラえもんを生かした事を、後悔なんてしてないのだから。

「さて……最後に残った大仕事を片付けないとな……」

カラレスや、下手をすれば総司令官以上に危険な神と魔女。
一時的にでも協力、となるのが無理だとは流石に分かる。
だから被害が広がる前に、せめて片方だけでも自分がここで仕留めるのだ。
刀を握り締める右手、そこへ刻まれた令呪が一画消失。
只の人間である卜部が令呪を使った所で、劇的な変化は起きない。
肉体のリミッターを外し、無茶な動きが多少可能という程度。

(はっ……十分だ……)

「標的確認……」
「時間を食わされたけど、いい加減終わりにしてあげる!」

強大な力を支配下に置く両者には、卜部が何をしようと虫けらの抵抗以下。
舐められたものだと思うも、今はそれで都合が良い。
口の端から垂れた血を拭わず、不敵に笑う卜部を無視し状況は動いた。
神が視下ろす、魔女が見上げる、そして人間が立つ。
見えない弦を引く工程を終え、アルジュナは魔力を解き放つ。
同時にノワルも限界まで充填完了だ、鎖を引きブルーアイズに最後の仕事を果たさせる。

「炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)……」

「滅びの爆裂疾風弾(バースト・ストリーム)!!」

それを見て誰が矢と言えよう。
幾度も放った熱線を超える、特大のレーザーであった。
ノワルが放つはブルーアイズの代名詞と呼ぶべき光弾に、自身の魔力をたっぷりとブレンドしたモノ。
光と闇、相反する力を一つに纏め上げ神を撃ち落とす魔弾としてぶつける。

勝者はどちらか、敗北者は誰か。
結末を見届ける為に残ったのではない、ちっぽけな人間の牙を突き立てる為だ。
駆ける、駆ける、駆ける。
死が避けられないならば恐れる理由は無い、本当に恐いのは何も出来ずに朽ち果てることなのだから。

(そこだ――――!)

腕を真っ直ぐに伸ばす、片脚が完全に壊れても構わないと跳ぶ。
切っ先が狙う先には、白竜へ跨る魔女の姿があった。
ただ単に斬った突き刺したでは届かない。

一点を除いて。

「――――っ!」

ノワルが卜部に気付く。
ガラクタ同然の刀で、無駄な足掻きに出るつもりか?
いいや違う、こいつがどこを狙っているかが分かった。
手首に装着されたレジスターだ。

如何に桁外れの力を持っていようと、参加者であるならバグスターウイルスに感染済み。
レジスターが破壊されれば、鎮静剤の投与も強制的にストップ。
結果どうなるかは全ての参加者が知っている。
須藤とニーナ、身を以て教えてくれた彼らと同じになるだけ。

「こ…いつ……!!!」

卜部如きの突進などで自分を倒せるものか。
闇檻に囚われ、ミンチになるまで凝縮されるのがオチ。
だが、だがしかしこのタイミングは。
魔力も意識もアルジュナ撃破に割いていた、最悪のタイミングでよりにもよって――!

その瞬間、拮抗が崩れる。
光が闇を喰らう、神罰が暗黒を打ち消す。
たった数秒、されど隙が生まれた事実に変わりは無く。

『―――――――――――――――――』

神も、魔女も、人間も。
誰もが等しく光に呑まれ、そして

「あとは、頼む」

命が潰える音がした。

015:linkage ─砂糖少女は屈しない─ 投下順 015:linkage ─そしてラグナロクは続く─
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松坂さとう
勇者アレフ
ドラえもん
卜部巧雪
ノワル
アルジュナ・オルタ

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