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真贋バトルロワイヤル

ハザードシンボル

最終更新:2025年01月18日 22:16

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 時計は七時を指していた。
 今の亀井美嘉に、それを確認するすべはない。
 戦いが始まって何分経ったのか、時間の感覚がまるでない。

「グルォォォォォ!!!」
 背後から迫ってきた巨大な狼――ガットゥーゾの、首元から紫色の飾りがついた姿が嫌に目についた。
 走るというより飛び回るという言葉がよく似合う素早い動きながらも、体高は美嘉より高い。メカ丸を起動してようやく並ぶだろう。
 鋭い牙、耳障りな遠吠え、鼻につく獣臭。
 全てが不快だ。五感が恐怖で粟立つのを感じる。
 それでも、震えて立ち止まっていては死ぬだけだと亀井美嘉は知っている。

 「逃げないと……」
 震える足を動かしながら、一戸建ての屋根の上でもう一匹の狼と戦う藤乃代葉とは反対方向に足を動かす。
 レジィ・スターに早々に襲われ。自分と変わらぬ年で戦場に身を置く藤乃代葉の存在を知った。
 2つの出会いが亀井美嘉の意識を変えた。自分は戦場にいる。夢でも幻でもない以上、生きるためには足掻かなければならない。

 「……あの場所には、近づけないようにしないと。」
 少し離れた先、赤い屋根の上で戦う代葉をちらりと見る。
 爪を振り下ろす狼の攻撃を烏の式神で誘導し、その隙に背後から右足に槍を突き刺していた。
 代葉が相手する狼は前足や背中が赤く染まっている。素人目から見ても代葉が優勢に見えたし、遠からず代葉が勝つだろう。
 事実レベル2幻妖のような巨大な相手との戦いに慣れ、狼の速度も烏の群れや位置替えで対応できる代葉にとって、ガットゥーゾを倒すことは危険であっても難しいことではない。
 一対一なら代葉が勝つ。

 だからこそ美嘉は逃げた。
 二匹で襲い掛かった狼の一匹が、自分を狙うと気づいていたから。
 無傷の狼に代葉の邪魔をさせないことが、美嘉が考えた最善の手だった。

 「グルアゥ!!」
 追いついた狼が美嘉にとびかかり、紫に染まった爪を振り下ろす。
 頭を守ろうととっさに両腕を交差させると、鈍色の装甲がガリガリと音を立てて削れていった。
 音を立てる装甲を前に、六つに光る赤い眼の下で美嘉は苦虫を嚙み潰したような顔をした。

「しまった……あの爪は避けなきゃダメだったんだ。」
 ガットゥーゾの爪、ポイズンクロウには文字通り毒がある。爪撃の巻き添えで変色した外壁やコンクリートを何度も見てきた。
 紫色に変色した爪痕を前に、反射的にガードを取ったことを歯痒く思う。
 恐らく美嘉は生身でも同じことをしただろうし、メカ丸の装甲がなければ両腕がへし折れていただろう。

 美嘉は戦闘のド素人だ。
 代葉のように戦術や経験からなる動きなど知らないし、知っていても考えた通りに体など動かない。
 だから自分のミスを自覚した瞬間。美嘉は反射的に足を止めた。
 その数秒は学生の喧嘩ならともかく、命の取り合いでは致命的な隙に他ならない。

「グルァァァ!!」
 動きが止まった瞬間を見逃さず、ガットゥーゾは美嘉の肩に噛みついた。
 バキバキと砕ける音が装甲の内側に響き、耳にこびりつく。
 装甲のおかげで無傷のはずなのに、噛まれた場所に痛みが走った気がしたて美嘉は苦悶の声を上げた。 
 その反応に、ガットゥーゾは嬉しそうに目を細める。
 より強い力で肩の装甲を噛み砕き、牙から垂れた生温かな唾液が、べとりと中にいる美嘉に滴り落ちた。

「いい加減に……して!!!」
 美嘉は左肩に噛みつくガットゥーゾの顎をぶん殴る。
 何かを殴った経験さえない拳はあまりに弱弱しい。メカ丸を装着したとはいえ大したダメージにはならないだろう。
 それでも突然の反撃に驚いたのか、「キャオン!!」と情けない声で吠えたガットゥーゾが肩から顎を放した。
 肩には深々と穴があき、ヒビが広がっている。ちょっと叩くだけで簡単に砕けてしまいそうな装甲が、美嘉の顔を青ざめさせた。

「今のうちに逃げないと……。」
 ガットゥーゾに背を向けて、美嘉は走る。
 初志を貫徹していると言えば聞こえはいい。
 だがガットゥーゾに走力で負けている以上、いずれ破綻する作戦に違いない。
 美嘉を動かしているのは使命感もあるが、ガットゥーゾに対する恐怖が明らかに上回っていた。

 逃げないと。逃げないと。逃げないと。
 足を動かし、おぼつかない姿勢で逃げる美嘉の耳に。烏が羽ばたいた。

「ギャオン!!!」
 美嘉が振り向いた先で、ガットゥーゾの周囲に無数の烏が羽ばたいている。
 代葉の式神だ。
 目を塞ぎ、耳を塞ぎ、鼻を塞ぎ。ガットゥーゾが滅茶苦茶に振り回す爪を烏が軽やかに避けていた。

 代葉が戦っていた場所を見ると、ガットゥーゾが一匹血まみれになって横たわっている。

「代葉さん!勝ったんだ!!」
 鈍色の装甲の中、美嘉は目を輝かせた。抱いていた不安がどんどんと消えていく。
 代葉の姿は見えないが、烏をこちらに差し向ける余裕がある。そう分かれば十分だ。
 さっきまでは怪物にしか見えなかったガットゥーゾも、烏の群れに翻弄されている姿を見ていると派手な大型犬のようだ。
 初めて余裕が生まれた美嘉は、両手を広げてガットゥーゾに向けた。

 「今なら……倒せる!」
 胸に赤色のエネルギーが集まり、両腕から紫色の光線が射出される。

 「二重大祓砲(ミラクルキャノン)!」
 赤熱を秘めた光線がガットゥーゾに直撃し、煙と共に肉の焼けた生臭い匂いが辺り一帯に広がった。
 顔の半分が焼け焦たガットゥーゾはぐったりと倒れこむ。全身の毛皮に火が付き右前足に至っては完全に炭化していた。
 ガットゥーゾの弱点は火属性。美嘉の攻撃はこれ以上ない有効打となって獣を焼いた。

「……勝った。」
 胸の中から熱い何かがこみ上げる。
 代葉の足手まといだと思っていた自分でも、獣を相手とはいえ勝てた。
 脱力感と安堵と共に、高揚感が全身を駆け巡り亀井美嘉の本能を刺激した。

 思わず叫びたくなる思いを堪えつつ、元来た道を引き返す。
 式神を派遣する余裕があった代葉が来なかったことに、何か理由があると思ったのだ。

 美嘉の考えは的中した。
 烏を連れて走る美嘉の視線の先で、4階立てのマンションの一角で何かが落ちた。
 烏の群れと飛び散るガラス片の中、槍を構えた代葉がベランダから投げ出されていた。

「代葉さん!!」
 叫ぶ美嘉の前で、遠目に移る代葉は黒い影と戦っていた。
 先ほどまで戦った狼と同種のようだ、まさか三匹目がいたのか。
 だがそれにしては様子がおかしいと美嘉は目を凝らす。
 代葉と共に空中に飛び出したガットゥーゾの背には、醜悪な笑みを浮かべた黒い剣士が乗っていたのだ。

◇◆◇◆◇

 「美嘉は無事かな。」
 ガットゥーゾの首に槍を突き刺し、呼吸をしなくなったことを確認して代葉は周囲を見渡した。
 背後からいきなり化け物狼に襲われ亀井美嘉と分断されてしまったが、遠くでメカ丸の装甲を起動した美嘉がガットゥーゾから逃げている姿が確認できた。
 その姿に代葉が失望したりはしない。
 代葉のように戦闘経験があるわけではない、ボランティアとアイドル経験があるだけの少女が無事であるだけでも素晴らしいことだろう。

「すぐにでも合流したいけど……」
 代葉の式神が持つ、自身との場所替え能力。その力を使えば美嘉の合流は数秒で済む。
 だが代葉は動かず、周囲を見渡し逡巡する。

「そもそも、都市部なのに狼型のNPCモンスターっていうのがおかしい。幻妖か、そうでなくとも機械や人型の方がずっと自然。
 誰かが持ち込んできたのは間違いない。理由は……考えても仕方ないか。」
 残った式神のうち半分を美嘉の援護に飛ばした代葉は、近くにあるマンションを睨む。
 ガットゥーゾとの戦いの中、ベランダにわずかな影が見えたことを、代葉は見逃していなかった。






 「マジかよ。2m近い狼を単独撃破か。
 あのクールビューティちゃん。場慣れしてやがるな。」
 マンションの四階。ベランダから戦場を眺めていたPoHは藤乃代葉の戦いに認識を改める。
 口笛をならし飄々とした態度を取りながら、侮っていた少女の芯の入った強さに警戒を強めた。
 ガットゥーゾは2m近いサイズの狼だ。魔法もスキルもなしに1人で倒すには危険な相手だが。代葉の動きは手慣れたものだった。
 烏を呼び出して攻撃力を上げて、攪乱した上で急所を貫く。バーチャルでもないというのに殺すことに一切のためらいを感じなかった。

「あのお嬢ちゃん。殺すことに慣れてやがるな。人間以外相手の戦いに関しちゃベテランだろう。
 ALOあたりをやりこんでる……という感じでもねえな。ポリゴンでしか殺しのできない人間特有の甘さがねえ。」
 銃社会育ちで、プロの暗殺者であるPoHの視点は実戦的だ。
 だからこそ代葉の動きは戦いが電脳(ゲーム)ではなく実戦(げんじつ)に組み込まれた人間のものだとわかる。ライフゲージなどを意識しない、確実に無力化するための動きだ。

 『この殺し合いの参加者は、異なる次元・異なる世界から集められている可能性が高い。』
 覇王がそのような考察をしていたことを、ふと彼は思い出す。
 羂索の発言を元に、異世界の存在を知る覇王だからこそ辿り着いた憶測。
 事実、覇王の放つデュエルモンスターズの知識はPoHにはなかったし、あれほど騒ぎになったSAO事件も日本人の覇王十代は知らなかった。
 フルダイブ型のゲームさえ覇王十代は知らなかったのだ。至極真面目な顔で「ふるだいぶとは何だ?」と質問された時はさしものPoHも答えに困った。

 「ジョークセンスのねえ覇王サマだと思ったが……ありゃマジかもな。」
 藤乃代葉を前に、覇王の憶測が現実味を帯びてきた。
 覇王の冷酷で恐ろしく暗い眼。自分の知らない世界で想像もしない経験を積んできただろうことは明白だ。
 あのクールビューティちゃんも覇王のように、別の世界で想像もしない経験を積んできたかもしれない。

「まあどうでもいいな。覇王サマに差し出すには十分か。」
 覇王の命はNPCの軍勢を連れて来いということだったが、要は戦力になればいい。
 もう一人の小娘を脅して、クールビューティちゃんも言うことを聞かせ。適当なところで殺せばいい。

 そんな下卑た考えを浮かべたPoHの喉元に、漆黒の槍が突き立てられる。
 PoHが見上げた先、ベランダの手すりの上に藤乃代葉が鋭い視線を向けていた。

「成程、烏との位置替えで飛んできたのか。
 仮にも地上四階だ、羽でもなきゃこんなとこにはこれやしねえ。」
「貴方があの狼を放った犯人?」
「なんのことだ?
 俺はキリト。殺し合いに乗ってないからこんなとこで引きこもってる、善良な市民だとも。」
「嘘。」

 間を置かず返された言葉に、空気が一気に張り詰める。首元に当たった槍から血が滴り落ちた。

「おいおい、初対面の相手を嘘つき呼ばわりかよ。
 親の顔が見てみたいぜ。」
「家の方針に楯突いてとっくの昔に殺されてる。
 それにあなたは本当に噓をついている。私、人の感情が読めるから。」
「……本気で言ってやがんな。
 何だその眼は?覇王サマといい別世界の日本はスラムにでもなったのか?だとしたら傑作だが。」
 藤乃代葉の目は、覇王十代ほどではないが冷たく重苦しいものをたたえていた。
 藤乃代葉の言葉に嘘はない。
 PoHの嘘を見抜いていることも。両親が殺されていることも。ロクでもない家でロクでもない人生を歩んできたことも。
 髪色こそ透明感あるシルバーだが、顔立ちは日本人のもの。
 それなのに、浮きあがる憎悪や侮蔑はいつもより薄かった。

「普通の人にとっては、至って平和。」
「そりゃ残念だ。普通じゃねえお嬢ちゃん。」
 至って平和な日本なら、覇王といいこのお嬢ちゃんといいなんでそんな眼が出来るんだ。
 出かかった言葉をPoHは静かに飲み込んだ。
 あるいは、自分は彼女に相手に幾ばくかのシンパシーを抱いていたのだろうか。
 覇王ほど引き付けるものはないが、その希望が欠けたような目はかつてのPoH――ヴァサゴ・カザルスに少し似ていた。

「……残念だな。
 お前が日本人じゃなく、ここが殺し合いじゃなかったら。ちょっとは仲良くできたかもしれねえのによぉ。」
 代葉の耳に、初めて嘘以外の言葉が届く。
 それでも粘りつくような敵意や悪意は全く隠れていない。否、隠していない。
 互いに武器を握る手に力が籠る。
 張りつめた空気の中代葉は笑顔を向けた。

「悪いけど、こっちから願い下げ。
 今の私には、仲間も友達もいる。」
 朝日に照らされ、藤乃代葉の瞳が光る。
 欠けた心を希望で埋めたような光が、ヴァサゴの心をざわつかせた。

「そうかい。じゃあ死ね。」
 PoHの体は、言葉が終わるより早く動いた。
 代葉が気づいたときにはキリトとしての薄ら笑いは見る影もなく、荒々しい蹴りが代葉をベランダから叩き落とした。

「そっちが本性か。もう手加減はしない。」
 抵抗もせず背中から落ちる代葉が指を動かすと、周囲の烏が集まり支えていく。
 烏をクッションすることも、位置替えで逃げることも可能。
 万全の布陣を整える代葉に向かい、キリトと名乗った男は黒曜の剣を抜きベランダから身を投げた。

「来いクソ犬!」
 PoHも無策で飛び降りたりはしない。
 落ちる風と飛び立つ烏の中、甲高い音を立て指笛を鳴らした。

「グルァァァ!!!」
 屋上から遠吠えが響き、待機していたガットゥーゾが駆け下りていく。
 ガットゥーゾはエフミドの丘でユーリ・ローウェルらの前に姿を見せた際、見上げるほどの高い崖の上に姿を見せた。
 ベランダを伝えばマンションの四階程度、駆け下りるのは難しくない。
 ガットゥーゾがPoHを捕らえ、PoHもまたガットゥーゾの首に手を回しその背に乗り込む。

「よーしいい子だ。」
「やっぱり貴方がその狼を使っていた。
 どうやって操ってるの。何かの支給品?」 
「教えるかバーカ!」
 実際は覇王への恐怖で傅いているにすぎないが、PoHの指示に従う以上代葉にもPoHにも関係のない話だ。
 下卑た笑みを浮かべ、マクアフィテルを水平に構える。
 同時に二階のベランダに足を置いたガットゥーゾが、空中で身動きが取れない代葉に突進を仕掛けた。

「もうその動きは何度も見てる!」
 狼の速度は時速70kmに及ぶ。魔獣であるガットゥーゾならそれさえ超えるだろう。
 目の前でアクセル全開の車が走るようなものだが、ガットゥーゾを一体倒している代葉には、その経験から足を蹴り上げる予備動作を予測できる。
 無論速度ではかなわない、だが代葉なら周囲の烏――眇の鴉合(すがめのあごう)との位置替えで対処が可能だ。
 蹴り上げる直前、背後の位置を取るように烏と入れ替え、大鎌のように変化させた槍を叩きこんだ――

 「背後……だよなぁ!」

 ――はずだった。
 三日月状に曲がった刃は、黒曜の剣とぶつかり火花が散った。

「俺がただのお荷物として乗ってると思ってんのか?
 お前がこの駄犬の動きに慣れてんなら、その戦いを見てた俺もお前の動きくらい読めるんだぜ。」
 口角を無理やり引っ張りあげるような、酷く不快な笑みを浮かべて剣士が叫んだ。
 剣と槍のぶつかり合いは剣に分があり、ジリジリと代葉は押されていく。
 体格差や性別さが原因ではない。空中に浮く代葉に対し、ガットゥーゾを踏みつけるPoHの方が力が強いだけのことだ。

「キリト!あなたは何を考えているの!」
「考え!?ハッ。せっかくの殺し合いを楽しみてえ以外の考えがあるか!
 名簿見たかテメエ!半分以上が日本人だ。こいつらをぶっ殺し放題!殺し合いさせ放題!
 バーゲンセールじゃねえか!テンション上がるなぁ!!」
 ああ、この男はとっくに壊れているんだな。
 噓偽りのない男の言葉に、代葉はキリトと名乗った男への共感を閉ざした。
 押し切られる前に距離を取り、 傾斜の屋根の上で槍を突き刺し姿勢を保つ。
 ガットゥーゾをとの戦いもあり消耗がある、荒くなりそうな息を静かに整えた。

 対するPoHも、ガットゥーゾを器用に乗りこなし代葉と同じ屋根に立つ。
 指輪を嵌めた左腕でガットゥーゾの鬣を乱暴に引っ張る様は、馬を乗りこなす騎兵にもペットを虐待してる飼い主にも見えた。

「おっなんだなんだ。熱烈なアプローチは止めちゃったのかつまんねえなぁ!
 それじゃ、ゲストでも招待しちまうか!」
 懐から一枚の札を取り出し、ひらひらと見せびらかす。
 この場所に来るまでの間、配下に加えるまでもない雑魚NPCをPoHは倒してきたが、そのうちの一匹がドロップしたものだ。

「禍ツキの霊符……」
「知ってんなら話が早え!」
 PoHが投げた霊符は、シュルシュルとおどろおどろしい空気に変わり渦を巻く。
 その効果は、近隣にいる幻妖を呼び寄せること。
 夜島学郎や藤乃代葉がいる以上。NPCモンスターに幻妖がいるのは当然といえた。

「覇王サマに命じられたのは、NPCモンスターどもの軍勢を集めろってもんだ。
 俺もこのワンちゃんたちにそう言ったんだが……どうやらそいつは不可能らしい。」
 代葉とPoHが立つ屋根の東西から、突き刺すような冷たい気配が立ち上る。
 PoHの背後に現れた存在に、藤乃代葉の額から冷汗が垂れた。
 見た目だけならボロ切れを被った四足獣のよう。
 だがその顔はひきつった笑みを浮かべた人間そのもの、四肢も形は人のそれだ。
 ガットゥーゾに乗ったPoHよりも高く、見えているだけで3つある左目で代葉を見下ろしていた。

 「レベル3……!!」
 驚愕を隠せない。代葉のよく知る怪物の姿がそこにあった。
 代葉ら陰陽師の大敵である幻妖。その中でも7人以上の一旗隊員のチームか特旗隊員でなければ戦えない怪物中の怪物。
 まさかこんな場所で見ることになるとは、警戒はしていても想像はしていなかった。

「見つけた時は驚いたぜ。ワンチャンどもがキャンキャン吼えるから何かと思ったらこれだよ。笑っちまう!
 ああそうだ、”軍勢”なんざここじゃ集まらねえ!
                    ・・・・
 他のNPCモンスターは逃げたか、ほとんどこいつらが食っちまってんだからなぁ!」
「……貴方今なんて言った?」

 ――こいつら。
 PoHは確かにそう言った。
 PoHにもレベル3にも隙を見せないように屋根を駆けあがり、飛び移りつつもう1つの気配に視線を向ける。

「なに……あれ。」
 黒いフードを全身に被った巨人。
 そうとしか形容できない悪霊は、レベル3幻妖よりさらに巨大だ。
 2階建ての屋根にいる代葉が見上げた先、巨人の胸にぽっかりと穴が開いている。
 鼻の尖った白い仮面をつけたその存在からは、生気も思考もまるで感じない。
 レベル3の幻妖に勝るとも劣らない威圧感だけが、見てくれだけの存在でないことを告げていた。

 禍ツキの霊符は周囲の幻妖を呼び寄せる。
 だが、本バトルロワイヤルにおいては呼び寄せるのは幻妖のみではない。
 このNPCモンスターの名は最下級大虚(ギリアン)。
 虚(ホロウ)と呼ばれる悪霊の中でも、ひと際巨大で危険な大虚(メノスグランデ)と呼ばれる個体。
 レベル3の幻妖と共に、ここら一帯の霊的NPCを喰いつくした怪物だった。

「イッツ・ショー・タァーイム」
 号令と共に腹を蹴られたガットゥーゾが、代葉と反対側に屋根を飛び越えた。
 禍ツキの霊符で呼び出した二匹の怪物がいる以上、PoHが前に出る必要はない。
 レベル3とギリアンを代葉にぶつけ、自身はガットゥーゾの走力を生かしヒットアンドアウェイで追い詰める。それだけで勝てるとふんだのだ。

 遠くに逃げた剣士には興味を無くし、代葉に狙いを定めた二匹の悪意。
 大敵を前に、瞳の奥が熱く燃える。
 仮面の巨人もまた、美嘉の持つ悪霊同様幻妖に近い負の感情をもった魂だ。
 陰陽師の敵であり、人間の敵。
 美嘉のように善良な人間の影響下にあるならまだしも、キリトのような危険な相手に手綱を握らせるわけにはいかない。

(夜島くんなら、絶対に逃げない。) 
 右手を握りしめ、刻まれた刻印を赤く光らせた。
 令呪を一画。腕の光を失うことにためらいはない。
 3匹の怪物と危険人物。すべて倒すには安い対価だ。
 代葉に縛られた枷が外れ、足元の影から烏が大群となって溢れ出す。

「マジかよ!まだあの烏出せるのか!!」
 ガス爆発のように噴き出る羽音に、幻妖と虚のみならずPoHもまた気圧される。
 隙を見てもう一人のガキを殺そうなどと考えていたが、それだけでは甘いようだ。

(これでいい。)
 剣士の視線が自分に向いたことに、代葉は内心安堵していた。
 美嘉にあの狼を一匹任せたままなことさえ心残りなのだ。これ以上危険にさらしては、夜島くんに合わせる顔がない。

「よし、いける。」
 代葉はこの会場に呼ばれるに伴い、契約している幻妖『狂骨』を呼び出す術を失っている。
 それは成長という意味では令呪による制約より遥かに重い。
 美執村での戦いの後修行を重ねたが、普通に戦っていては狂骨なき今はレベル3か大虚を片方倒すのがやっとだろう。
 決めるべきは速攻。初めから無茶をする覚悟が、今の代葉には必要だ。
 覚悟は既にできていた。

 狂骨がいないことそのものが制約になるためか、代葉自身の身体能力はさしたる低下を受けていない。
 令呪にて解き放った枷は、式神の数。
 淵廟より呼び出す烏を限界まで呼び出し、上限を上回る烏を使役する槍――染離にて取り込む。
 消耗が激しい奥の手をさらに突き詰めた、今の代葉の全力に応えんと黒い螺旋状の槍が形を変える。

 ――染離改 重炸炎烈撃墜槍。
 長い帯を有した巨大なランスの穂先が朝日を浴びて黒く艶やかに光る。
 嗤いを浮かべた黒の剣士に、覚悟を決めて少女は槍を向け吼えた。 

「貴方は、ここで必ず倒す!!」

 【エリアE-12/市外/9月2日午前7時】

【Poh@SAOシリーズ】
状態:楽しい ガットゥーゾに騎乗
服装:SAOのアバター(ただし今はSAOのキリトの恰好)
装備:マクアフィテル@SAOシリーズ、変身の指輪@Fate/Grand Order、純粋な魔力の塊@黒い砂漠
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:殺し合いを楽しむ
00:キリトもいるんだろ?
01:変身の指輪を使って対立煽りをする
02:味方を増やして戦わせるのも面白いな
03:覇王に従いながらも楽しむ。だが覇王であろうとキリトに手を出すなら容赦はしない
04:嬢ちゃんは思いのほか強かった。だがこうなっちまったらもう敵だよな?
参戦時期:少なくともラフィン・コフィン討伐戦以降。
備考
※変身の指輪は純粋な魔力の塊で賄ってます
※従えたガットゥーゾは残り1匹です
※レベル3幻妖・最下級大虚を従えましたが、完全に指示できているわけではありません

 【藤乃代葉@鵺の陰陽師】
状態:ダメージ(小) 軽いやけど(両腕)
服装:普段の制服/霊衣
装備:自身の霊衣 盡器:染離改 重炸炎烈撃墜槍
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0~3、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止める 彼ならきっとそうする
01:美嘉を助けられてよかった。
02:あのドローンとロボットの主、多分同業者かな。危険かも。
03:夜島くん、また無茶してないか少し心配
04:キリト(PoH)はここで倒す。こいつは危険すぎる
参戦時期:美執村帰還~白澤戦までのどこか
備考 ※霊衣状態でも誰でも姿が見えるようになっています。

◇◆◇◆◇

「なにあれ……」
 目の前に現れた二体の怪物を見て、亀井美嘉はへたり込んだ。
 屋根に這いずる人面の怪物に、家をそのまま引きぬけそうな白い仮面の巨人。
 認識さえされていないのに、墓場にいるような冷たい威圧感から鳥肌が立つ。失禁していないことが奇跡のようにさえ思えた。

「あんなの……どうやって……」
 勝つ。とは言えない。
 戦う。とも言えない。
 さっき倒したガットゥーゾだって、美嘉にとっては弱くなかった。
 集団で街を襲うような猛獣だ。一般の女学生にとっては一生ものの戦果に違いない。
 だがあの生き物は獣だ。狼の変種のようなもの。怖くはあるが理解はできた。
 だから遠慮なく戦えた。だから倒せた。そういう精神的な理由が大きい。

「怖い……怖いよ。ゆうちゃん。」
 理解できない。あんなものは知らない。これまで見たどんな存在とも違う。
 美嘉の体を震わせる恐れは、ひとえにその無知。あるいは異質さによるものだ。
 レベル3幻妖も大虚も、亀井美嘉の人生では一生あっても出会うはずのないものだ。
 あんな恐ろしい怪物がいるなんて。知りたくなかったと嘆きそうになる。

「おっ……おっお……」
 美嘉の体を震わせる恐怖はそれだけにとどまらない。
 美嘉に向かってのたりのたりと近づいてくる怪物が、もう一匹出現していたのだ。

 6本の足の生えた魚のような、ノミを3mほどにまで膨らませたような。
 ひたひたと近づく青銅色の怪物は、美嘉の言葉で言い表せばそんな姿をしていた。
 PoHの使った禍ツキの霊符により呼び寄せられた、捕食者たちの難を逃れていた生き残り。
 羂索の言うところの、2級呪霊といわれるNPC(あくりょう)がもう一匹。迫っている。

 亀井美嘉の装備、究極メカ丸絶対形態は元々対呪霊のための傀儡だ。それも最上位の特級と戦えるほどの機能を備えている。
 適切な使用者――例えば本来の使用者である与幸吉が扱えば2級呪霊程度瞬殺できるし、レベル3幻妖や大虚とも十分やり逢える。
 だがガットゥーゾとの戦いで損傷した上、今の搭乗者は呪力を持たず恐怖に震えた亀井美嘉。
 2級呪霊を倒すための強さは散弾銃があってようやくだ。
 今の美嘉が発揮できるメカ丸の機能(パフォーマンス)は、そのレベルには遠く及ばなかった。

「おぁぁぁぁぁ!!!」
 美嘉が戦えないと気づいたのだろう、呪霊の速度が目に見えて跳ね上がる。
 アスファルトを砕きながら接近した怪物が、美嘉を握りつぶさんと迫りくる。
 瓦礫が体にかかった。吐瀉物を拭いた雑巾のような匂いがした。
 それでも体は動かない。美嘉は逃げようと、立ち上がろうとしているが。足が言うことを聞かない。
 美嘉よりも巨大な掌が美嘉を握り潰そうと迫り、思わず少女は目を閉じて。

「柱刀骸街(ゼノブレード)」

 呪霊の悲鳴と焼け消えるような音の中響く、無機質で虚ろな声に目を開いた。
 縦に両断された呪霊の前に、一人の少年が立っていた。

「その恰好は……」
 黄緑色の髪をした、美嘉と都市の変わらない青年。
 槍と剣という違いはあれど、黒を基調とした独特の衣装は藤乃代葉のものと似ていた。
 事前に聞いていた特徴から、彼が夜島学郎だと気づくのに時間はかからなかった。

 ありがとう。というべきなのだろう。
 貴方が夜島くん?そう尋ねるべきなのだろう。
 代葉から聞いた特徴は、不器用なところはあってもお人好しで頼りになる人だという。

 「……この人が?本当に夜島くん?」
 特徴こそ一致しているが、目の前の相手が代葉の言う人物だとは美嘉には思えない。
 白目をむいて歯を食いしばり、何に怒っているのかしかめっ面をしているのに何の感情も伝わってこない。
 その全身は色を忘れたように白んでみえた。
 助けられたはずなのに、呪霊はもういないはずなのに。美嘉の震えが止まる気配はなかった。

 今の夜島学郎は、精神仮縫いによって脳が縛られている状態だ。
 思考はしない。感情もない。ただただ主の名に従う操り人形。

「イカナキャ――」
「待って!!」
 美嘉を無視して駆けだそうとした学郎を慌てて止める。
 今の夜島学郎を藤乃代葉に会わせてはいけない。
 藤乃代葉が今の夜島学郎を見て、平静のままいられるだろうか。
 漠然とした思いが、わななく少女から震えた声を絞り出させた。

 夜島学郎は振り返らない。
 進もうとした足を止めたことから声が聞こえているのだと淡い期待を抱くが。続く言葉が出てこない。
 なんといえばいい?何があったか聞けばいい?彼を正気に戻すには?今の彼は味方なのか?
 言葉を選ぼうと脳の全部が熱を放ち動き続ける。

「どうしたのだ学郎。何か目的があってここまで走ってきたのではないのかぁ?」
 一瞬にも、数分にも思える逡巡は、亀井美嘉が何か言う前に終わりを迎えた。
 わずかな言葉が異常な存在感を放っていたのは、その主が怪物ゆえだろうか。
 かつかつと足音を立てて歩く、二振りの剣を握った女性。
 パーティーにでも出るのかという薄く派手な白いドレスが霞むほどの存在感。
 背後には虹がかかっているかのようなド派手な光が女の後ろから溢れているようだ。

 女は美嘉や死んだ呪霊には目もくれず、遠くで戦う代葉と黒い剣士。その周囲に現れた2匹の悪霊を前に「ほぉう。」と興味深そうに笑みを浮かべた。

「羅暁サマ。」
「慌てて走るから何事かと思ったが。なかなか面白いことになっているみたいじゃないか。
 いいだろう。1つお前も遊んでおいで。」
「アリガトウゴザイマス」

 羅暁の言葉を受け飛び出す学郎は、檻から出た猟犬のように見えた。
 学郎の後ろ姿と遠くの戦場を忌々しそうに羅暁は見つめる。

「あの娘。学郎と同じ世界の人間かな。おそらくあれが藤乃代葉。
 学郎は平然と知覚しているな。本来なら生命繊維の統制で、余計な情報は入らないはずなのだがなぁ。
 これもゲームの制約とやらか。精神仮縫いの効きも想定未満だ。忌々しい。
 生命繊維に介入する傲岸不遜。運営どもも残らず仕付けなおしてやる必要があるが。」

 羅暁が言い終わると同時に、美嘉の腹に爆発したような衝撃が襲い掛かった。
 メカ丸の装甲は音を立てて砕け、美嘉の体が宙を舞う。
 塀を砕き、家の壁を砕き、リビングにあるテレビをへし折ってようやく止まり。ここで初めて自分が蹴り飛ばされたのだと美嘉は気づいた。
 ガットゥーゾとの戦闘で損傷している鎧が音を立てて砕け。顔を左半分と左腕以外が残骸となって散らばった。

「あっ……あああああああ!!!」
「なんだ女だったのか。それもその顔。流子や皐月と変わらん年か。
 だめじゃないか、嫁入り前の娘がそんな武骨な格好をしては。」
 かつかつと足音を立て女が近づいてくる。
 一見するとただの人間だ。牙もない。巨大でもない。目も2つだし手足も2つ。
 それなのに美嘉には、目の前の女が、狼よりも怪物よりも。
 ずっとずっと恐ろしく見えた。

「あ……あ……」
 この数分の間に、人生最大の恐怖はいったい何度塗り替えられただろう。
 声が出ない。
 衝撃と恐怖で止めどなく気持ち悪いものが沸き上がり、砕け剥がれた装甲の上に胃の中身が溢れ出た。

 「惜しいなぁ。顔立ちは悪くない。
 ここが殺し合いでなければ、カバーズの餌とし生命戦維にその身を捧げさせてやれたのに。」
 鬼龍院羅暁に亀井美嘉を殺す理由はない。
 蹴り飛ばしたのも、目の前にへたり込んでいた武骨な鎧が邪魔だっただけ。埃を払うのと同じことだ。
 だがそれ以上に。殺さない理由がない。
 使い捨ての露払いなら夜島学郎だけで十分。一般人の域を出ない小娘など百人いても羅暁にとっては襤褸切れ同然だ。

 羅暁が青薔薇の剣を掲げる。
 砕けた壁から差し込む光が、朝日なのか後光なのか分からない。
 光に照らされた水色の剣は残酷なほど綺麗だった。
 辞世の句を残させてくれる慈悲もない。防衛反応が美嘉の意思とは裏腹に両目を閉ざす。
 壁にいた虫を潰すように、亀井美嘉は終わる――ことはなかった。


 「ここからが楽しいところなんだ。邪魔をするな。」

 何かがぶつかり合う音が、美嘉の目の前で響いた。
 目を開いた先では、パーカーを着た黒白の少女が水色のデバイスを手に青薔薇の剣を押しとどめている。
 美嘉をかばうように立つ少女の頭上には灰色の五角形のような環が浮かぶ。
 羅暁にも想定外の相手だったのだろう。蠢いた害虫を見るような苛立たし気な視線を少女に向けていた。

「……なんだ貴様?」
「邪魔をしに来ただけだ。気にしないでいい。」
 『Onikata Access Granted.』
 淡々とした動きでカードとメダルがデバイスに装填されていく。
 羅暁と美嘉が静まり返る中、鬼方カヨコの持つウルトラゼットライザーの電子音だけが冷たく響いた。
 美嘉と同年代ほどの少女の姿が、メダルの力を受け黄金の装甲を纏った黒い怪物へと変わっていく。

 『Pedanium Zetton.』
 「場所を変えよう。」
 羅暁が反応するよりも早く怪物は両腕で羅暁を抑え、テレポートで美嘉の視界から消え去った。

 突然の事態に何が起きたのか分からない。
 茫然と座り込む美嘉の肩に、トントンと手が置かれる。
 振り替える先にはベージュ色の髪をした美嘉と同年代の少女がいた。
 鬼方カヨコ――セレブロと共に現れたノノミ。
 その頭上にカヨコのようなヘイローは無いが。それで真贋を区別できるほど美嘉はキヴォトス人を知らない。
 むしろヘイローがないことで梔子ユメ――羂索とは無関係であるように見え、美嘉にとっては安心できる。
 その正体が冥黒に魅入られた錬金術師が生み出した、見てくれだけの化け物であることも。美嘉は知らない。

「立てますか?」
「あ、ありがとう……。」
 差し出された手を、美嘉は縋るように握りしめる。
 どこから現れた――そのことを考えるほど今の亀井美嘉に余裕はない。
 貴方達は何者なのか――それを聞けるほど今の亀井美嘉は平静ではない。
 ガットゥーゾに襲われ。巨大な虚や幻妖を目撃し。
 信じられると聞いていた夜島学郎は正気を失い。鬼龍院羅暁に殺されかけた。
 カヨコとノノミの出現が数秒遅ければ死んでいた。立ち上がる足の感覚に現実感がまるでない。
 既に美嘉の精神は限界だ。

 「どうしました?」
 そんな中現れたノノミの柔和な笑みは、吹雪の中に仄かに光る陽だまりのように彼女を安心させ。

「――私は、助かったんですか?」
 ノノミの手をぎゅっと握りしめながら、震えた声がポロリと零れた。
 ボロボロと溢れる涙が、止まることなく流れ続ける。

「どうしてこんなことになったんですか。」
 怖かった。助かった。代葉を助けて。家に帰して。
 華鳥蘭子に会いたい。大河くるみに会いたい。東ゆうに会いたい。
 言葉にならない思いが堰を切ったように溢れ出る。

「落ち着いてください美嘉さん。
 貴方に1つ、大事な話があるんです。」
 とんとんと肩を叩き、美嘉の呼吸がゆっくり落ち着いたものになってくる。
 少しずつ、ノノミの声がはっきり聞こえ。「はい。」と震えが残る声で応えた。
 恐怖からの安堵で緩んだ美嘉の脳が、『大事な話』がなんであるのか考えることさえしなかった。

 もし、亀井美嘉がもう少し冷静なら。ノノミという名前が名簿になかったことに気づけただろう。
 もし、亀井美嘉がもう少し疑り深ければ。彼女が尋ねもせず自分の名前を呼んだことを疑えただろう。
 もし、亀井美嘉がもう少しだけ周囲に敏感だったら。自分をなだめたノノミの声が煩わしさと嘲笑で震えていることに気づいただろう。
 もし、亀井美嘉がもう少しだけノノミのことを見ていたら――――

「単刀直入に言います。この場をどうにか切り抜けたい。
 貴方を助けるために、私を助けるための。
 何より、貴女の友達を助けるために。力を貸してくれませんか?」

 自分に向けられた冥黒の人形の笑顔が
 贋(いつわり)であることに、気づけたはずだったのに。


 【エリアE-12/市外/9月2日午前7時】

【亀井美嘉@トラペジウム】
状態:ダメージ(中)動揺(極大)、レジィに対する恐怖(大)幻妖・虚・羅暁に対する恐怖(極大)黒の剣士・学郎に対する恐怖(大)
服装:学生服
装備:ライオンのぬいぐるみとスケッチブック/月蝕尽絶黒阿修羅@ダークギャザリング
令呪:残り三画
道具:香水@ダークギャザリング ランダムアイテム×0~1、ホットライン
思考
基本:生きて帰る 東ゆうと再会する
01:本当に殺し合いなんだ……
02:東ちゃんも、巻き込まれて……? それに大河さんに華鳥さんも……?
03:(黒阿修羅に対して)ごめんね。そんなボロボロなのに戦わせて。
04:代葉さん。同い年くらいなのにすごいなぁ。
05:あれが……代葉さんのいってた夜島くん?
06:たすけて。
参戦時期:東西南北解散後東ゆうと再会する前
備考
※究極メカ丸 絶対形態@呪術廻戦は破壊されました。

【夜島学郎@鵺の陰陽師】
状態:『精神仮縫い』
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~3、ホットライン
思考
基本:羅暁様……
01:羅暁様に従う
参戦時期:43話より後
備考

 【鬼龍院羅暁@キルラキル】
状態:健康
服装:いつものドレス姿
装備:天穿剣@ソードアート・オンライン、青薔薇の剣@ソードアート・オンライン
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~1、ホットライン
思考
基本:勝ち抜き、異世界全てを全てを生命戦維で包み込む
01:このガキ(学郎)は使い捨てられる手駒として利用させてもらう
02:娘や皐月がいるならもっと面白くなるかもなぁ?
03:精神仮縫いの効きが思ったより弱いな。運営どもめ
04:なんだこいつは?
参戦時期:流子が娘だと知った後
備考
※生命戦維による耐久力等に多少は制限が掛けられています
※『精神仮縫い』を含む洗脳・情報統制能力に制限が掛かっています。

 【セレブロ@ウルトラマンZ】
状態:興奮(大) ノノミへの警戒(大)羅暁への警戒(大)
服装:鬼方カヨコと同一
装備:鬼方カヨコ@ブルーアーカイブ 
   ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ ベリアルメダル・ゼットンメダル・キングジョーメダル@ウルトラマンZ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~3、ホットライン
思考
基本:このゲームを楽しむ
01:キヴォトスの神秘、頑強で面白い
02:羂索たちのゲームは実にいい 俺がもっと盛り上げてやる
参戦時期:ウルトラマントリガー・エピソードZ終了後 
備考
 ※冥黒ノノミと協力関係のようです。

 【鬼方カヨコ@ブルーアーカイブ】
状態:セレブロにより意識不明・洗脳状態 ダメージ(中) 
服装:普段の服装
装備:ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ ベリアルメダル・ゼットンメダル・キングジョーメダル@ウルトラマンZ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~1 ホットライン
思考
基本:キヴォトスの生徒が参加していないか探す。現在はセレブロにより自意識が封じられている
01:キエテ カレカレータ…
参戦時期:対策委員会編2章終了後
備考  各イベント・便利屋日誌における出来事をどこまで経験しているかは、後述の書き手様にお任せします



【ドロップ品一覧】

 禍ツキの霊符@鵺の陰陽師
 ・PoHが入手していたドロップ品
 幻妖を呼び寄せる効果のある札
 本ロワにおいては虚・呪霊などの霊的な存在には効果がある。

【NPCモンスター一覧】

 レベル3幻妖@鵺の陰陽師
 ・怒りや悲しみといった人の負の感情に反応して集まる性質を持つ怪異
 その内突然変異種が一定以上同族や人間を喰うことで進化する姿
 陰陽師のうち最上位の特旗か専用の訓練を受けた上位の1旗7名以上のチームでないと討伐許可が下りない危険な個体

 最下級大虚(ギリアン)@BLEACH
 ・人間が死後霊体になったもののうち、悪霊と呼ばれる存在『虚(ホロウ)』
 虚が同族同士の共食いを数百度繰り返した果てに、巨大な個体となった姿
 戦闘能力は通常の虚よりも遥かに高い。並の死神では戦う事すら不可能

 2級呪霊@呪術廻戦
 ・呪いとも呼ばれる人間の負の感情が具現化し意思を持った存在
 2級は一定以上の危険度を持つ存在だが、術式は使えない。
 通常兵器が呪霊に有効と仮定した場合、「散弾銃でギリ」らしい


030:余花 投下順 032:使いこなすCard&Energy!!
時系列順 048:HIGH VOLTAGE
019:Reweave 藤乃代葉 035:■を為す女ー外道賛歌
亀井美嘉
PoH
候補話149:“La vie est drôle” 夜島学郎
鬼龍院羅暁
候補話075:滅亡遊戯と不滅の雷 鬼方カヨコ
セレブロ
005:冥黒ホシノ:エンディング 冥黒ノノミ

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