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  • 真贋バトルロワイヤル
  • ■を為す女ー外道賛歌

真贋バトルロワイヤル

■を為す女ー外道賛歌

最終更新:2025年01月18日 22:20

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 ノノミとセレブロが美嘉と羅暁の前に現れる数分前。
 戦場から少し離れたビルの屋上から、ノノミは階下の戦場を前に「いいですねぇ」とニヒルな笑みを浮かべていた。

「夜島学郎。思った通り出てきましたね。
 鬼龍院羅暁の支配力は行動すべてを縛れるほどではなさそうです。」
「ルルーシュ・ランペルージのギアスがそうだが。このゲームの運営は他者を操る能力を殊更警戒しているようだからな。
 遠目でもわかる。あのババアは化け物だ。あの小僧の洗脳も本来は自由意志を許すようなものではないはず。」
「ではあなたもそうなのですか?寄生生物のセレブロさん。
 鬼方カヨコを縛る力は本来よりも衰えていると?」
「黙れ。」
 黒白の少女が苛立ち返した声に、ノノミはニヤついた笑顔を向けた。
 寄生生物の肉体は参加者の1人、キヴォトスに籍を置く便利屋の参謀鬼方カヨコのものである。
 無表情なカヨコの顔をしたセレブロは、ノノミが持つドッグタグを指さし睨んだ。

「そんなものがなければ、俺の存在が貴様程度に気づかれることもないんだがな。」
「便利でしょ~。行きがけにブチ殺したミノタウロスどものドロップ品です。」
 ノノミの持つアイテムの名は、ステータスタグ。
 手に取り魔力を込めることで記された人物のステータスを知ることが出来る。
 ドロップ品として設定されたバトルロワイヤルでは、最初に触れた参加者のステータスを確認できる設定になっているのだが。ノノミの手元には鬼方カヨコとセレブロ、双方のステータスが記載されたタグが握られており、ノノミの文字は何処にもない。

「私は偉大なるグリオン様の生み出した人造人間(ホムンクルス)。
 ・・・・・・・・・・・・
 参加者ではないですからね。」
「ふざけた仕様だ。欠陥という他ない。
 グリオンとやらのしでかした無法。運営も想定しておくべきだ。」
「お褒めの言葉と受け取らせていただきますよ。悪い気はしませんね。
 何より貴方の存在に気づけたのは大きな収穫です。
 それで……私との協力については。どうされますか?」
「しゃらくさい。少し黙れよ木偶人形。」
 ノノミとセレブロは仲間になったわけではない。
 目的があって鬼方カヨコに接触したノノミが、意図せずセレブロと出会ってしまったという方が正しかった。
 ノノミからしては思わぬ出会いではあったが、ステータスタグの中身を見て考えを改める。

 ステータスタグにてノノミが知った情報は多い。
 名前・職業(鬼方カヨコのみ)・身体的特徴・有する異能。
 それらを知ったノノミはセレブロにある提案を持ちかけたが、ノノミの目的をすでに聞いていたセレブロは訝し気に目を広げた。

「お前の目的は聞いた。
 ホシノといったか。グリオンとやらの失った手駒の後釜を埋めるのではなかったか?
 そんな下らねえ作業で俺を喜ばせられるとでも?」
「そうですね。私の目的は人員採掘です。
 初めは貴方か夜島学郎を囲うつもりだったのですが。どちらも先約がいましたからね。
 まったく、ホシノの愚図が早々に脱落しなければこんな面倒を背負うこともないのですが。」
 面倒だと言いながらも、ノノミの顔は緩んでいる。
 グリオンの指令は緑谷出久により倒された冥黒ホシノの後釜を探すことだ。
 最もどこまで本気で言っているのかはノノミ自身にも分からない。
 早々にホシノが壊れたこともあり、参加者の強さを再確認するための偵察が主目的かもしれないが。命令は命令、グリオンに心酔するノノミに逆らう理由はない。

「初めはまあ、複雑な思いはありましたよ。
 貴女はまだ話が分かりますが鬼龍院羅暁なんて大変だったんですよ。
 めちゃくちゃ目立つのに隙が無いんです。なんなんでしょうねアレは。
 分かったことは彼女の名前と、夜島学郎を洗脳していることだけです。
 おかげで夜島学郎は諦めざるを得ませんでした。時点で貴方を当たったら寄生済みです。
 貧乏くじですねぇ。この場にはロクな参加者がいなくて困ります。」
「お前が言えたことじゃねえな。」
「貴方が言えたことでもないですね。」

 ノノミはコホンとわざとらしく咳をついて、話を続けた。

「それで私思ったんです。    ・・・・・・・・・
 ちょうどいい人員がいないなら。創ればいいんですよ。」
「ほう。」 
 ぴくりと黒白の少女の――寄生生物の食指が動く。
 セレブロは己の享楽のために、数々の惑星に怪獣を呼び寄せ兵器を生み出させ。
 力に溺れた原住民どもを自滅させる。文明自滅ゲームの担い手だ。
 滅亡遊戯の主催から殺し合いの参加者に変わろうと、行動原理は面白いかどうか。

「セレブロさんもお好きでしょう?愚か者が扱いきれない力で自滅する姿。
 まあ私は、もう少し精神的な苦しみで悶えるほうが好みですが。」
「悪趣味だな。だが悪くない。分かるぞその気持ち。」
 人でなしどもがくつくつと笑う。
 見た目だけなら女子高生の朗らなガールズトークだが、実態は武器から生まれた悪意人形と寄生生物の暗躍だ。
 まともな善性も人心もここにはなかった。

「俺と組めば、その姿が見られると?」
「まあ、ぶっちゃけ貴方がいなくてもいいんですがね。
 ただ、貴方の協力があったほうが、面白くなりそうなので。
 ステータスタグに書いてあったスキルを使えば…………」
 こしょこしょと耳もとでノノミが囁く。
 無表情だったセレブロの顔は、話が終わる頃には歪んだ笑顔に変わっていた。

「……お前は不愉快だ。だが、お前の提案は面白い。
 グリオンと組む気はまるでないが、その提案には乗ってやる。」
 ああは言ったがセレブロに断る理由はない。
 バトルロワイヤルの名簿に宇宙警備隊の関係者がいないのはいいが、セレブロの知った名前もなく方向性を定め損ねていたところだ。
 ノノミの、ひいてはその背後にいるグリオンの益になるのは気に入らないが。そこは最終的に壊すにしろ奪うにしろ好きにすればいいのだ。

「感謝します。ええ、感謝してますのでグリオン様に対する不遜な態度は今だけ見逃してあげましょう。」
「それで、お前の言う人員とは?あの場にいるんだろう?」
 手すりにもたれ掛かる2体の悪は、女子高生のようにはしゃいで都市部で起こる戦場を眺める。
 ノノミが指さした先は、巨大な怪異の合間を飛び交う戦士たちではなく。
 背後から現れた光放つ女に気おされへたりこむ。1人の少女だった。

「亀井美嘉。
 極大の悪意を秘めた道具を与えられただけの。ただの小娘です。」

◇◆◇◆◇

 ラウ・ル・クルーゼと茅場晶彦が選んだ参加者たちの中には、群を抜いて強力かつ凶悪な者が紛れている。

 インド神性を統合した異聞の神。
 十三の災害が1つにして最悪の魔女。
 守護神の魂を喰いつくした邪悪の王。
 戦闘民族王家の血筋にして最後のZ戦士。
 怒りを宿し対話を望んだ荒魂の姫。
 己が覇道を突き進む裂界武帝。
 鬼龍院羅暁もまたその存在と名を連ねる、図抜けた強者の1人である。

 「小賢しいぞデカブツがぁ!」
 ペダニウムゼットンの両腕で抑え込まれた羅暁は、全身に力を入れ強引に振りほどくと、既に抜いていた青薔薇の剣のみならず天穿剣を鞘から引き抜いた。
 両腕と胴体目掛け放たれる高速の剣劇は、一撃一撃が重いが何より速い。二回の衝突音が重なって聞こえるほどの速度は、2本の腕で成し得るとはとても思えない。
 ただ者ではないだろうと思っていたが、一地球人が繰り出せる斬撃の範疇を超えている。
 ペダニウムゼットンの体と言えど抑え込むことは出来ず、セレブロは大きく弾き飛ばされた。

「お前。本当に地球人か?」
 元居た家屋から200mほど離れた公園のような小さな空き地。
 その中心に立つ怪獣が、向かいで剣を構える女に問うた。
 鬼方カヨコの体ならいざ知らずペダニウムゼットンとなり膂力が跳ね上がっている。
 体格こそ通常のものより格段に小さい3mほどにまで縮小されているが、カブラギ・シンヤを素体にした時と異なり鬼方カヨコの神秘も上乗せされているのだ。
 ただの膂力と剣戟で弾き飛ばせるほど、脆いものではないはずだ。

「妙な言い方をするな。貴様、さてはただの小娘ではないな?」
「質問に応えろ。その膂力……いや、神経か?何と混ざりこんでいる。」
「混ざっているとは恐れ多い。捧げているのだよ。
 服に身を委ね生命戦維と一体になる。この素晴らしきあり方こそ理想の姿だ。」
 蕩けた顔で羅暁が語るたびに、彼女の背後で虹色の光がギラギラと輝きを増していく。今の己の姿を本心から崇高だと思っているのだろう。
 鬼龍院羅暁の肉体は宇宙生命体生命戦維と同化している。
 神経に作用する生命戦維の生態を筆頭に、身体能力も再生能力も常人とは次元が違う。

 星を渡り知性体を育て、服となり表面を覆うことでエネルギーを得る生命体。それが生命繊維だ。
 鬼龍院羅暁の正体は、いわばその代弁者(メッセンジャー)。
 星そのものを生命戦維に捧げ、世界を一枚の布で覆うことさえ厭わぬ怪物だ。

 熱烈に語る羅暁と反比例してセレブロの言葉からは熱が失われていく。
 興味のないアーティストの良さを長々と説明されているかのように、目に見えて空気が冷めていた。

「理解できん。体(ふく)など己のために使い捨て使い潰すものだ。
 捧げるものでも身を委ねるものでもない。布切れ一枚に何を見ている。」
「……………………………………はぁ?」
 ブチブチと音を立て顔を歪ませる羅暁に対し、セレブロは白けた声色を隠さない。
 怪獣になっていなければ欠伸の1つでもしていただろう。
 纏流子や鬼龍院皐月がしたような怒りに満ちた反応ではない。心底無価値なものを前にしたような気の抜けた反応が羅暁の神経を苛立たせる。

 セレブロの発言に挑発の意図はなかった。本当に全く理解できなかったのだ。
 寄生生物のセレブロには『服を着る』という概念そのものが存在しない。
 地球人含め衣服の文化を持つ存在に寄生することはあれど、それも寄生対象の地位や人間関係を利用するための記号でしかない。
 乗っ取る体さえ必要なら乗り換えるのだ。体が着る装飾品など気にしたことさえないだろう。『服』という単語を知っていたかさえ怪しいくらいだ。

「生命戦維とやらを使っているのはお前だろう?
 地球人の中でもただの糸屑をありがたがっている奴は初めて見る。貴様の世界の人類はみなそんな阿呆なのか?」
「それ以上の愚弄は許さんぞ!小娘ェ!!!!!!」

 この瞬間、初めてセレブロは羅暁にとって”敵”となった。

 勢いよく飛び掛かり羅暁が二刀を振るう。
 鬼龍院羅暁は剣士ではない。
 アンダーワールドの整合騎士のような流麗な剣術など持ちえない。
 だが彼女の身体能力から繰り出される殴りつけるような豪快な斬撃は、生半可な技術よりよほど破壊力がある。
 仮想世界における神器が1つ。 青薔薇の剣と天穿剣の最上の天命(つよさ)がその衝撃を余すところなく世界に伝え。
 セレブロがどうにか回避した先では、斬撃の余波が公園どころか周囲の街をも滅多切りにしていた

(これは、面倒だな。)
 ちらりと背後の惨状を見て、セレブロは考える。
 直撃してはペダニウムゼットンだろうとダメージは避けられない。余波でレジスターが砕けたりしてはたまったものではない。
 羅暁を亀井美嘉から引きはがした後は適当に時間を潰そうかと思っていたが、そのような余裕は無さそうにみえた。

「何をよそ見している。」
 羅暁の反応は早かった。
 一気に距離を詰め出鱈目に二刀を振るう。
 ペダニウムゼットンの装甲がガリガリと切られ傷ついていく。無視できないダメージを追うのも時間の問題だ。

「しつけえぞこの糸クズババア!」
 後退しつつ剣戟を捌くセレブロは、埒が明かないと両腕に赤いエネルギーを溜める。
 赤色の稲妻。ペダニウムスパークを前に、羅暁は青薔薇の剣を地面に突き立て言葉を刻む。

「エンハンス・アーマメントォ!」
 氷塊の剣の記憶を解き放つ、武装完全支配術。
 剣を中心に周囲が氷河に呑まれたように氷で覆われ、氷の波がペダニウムゼットンに向けて襲い掛かった。
 赤い稲妻と青い氷が正面からぶつかり合う。
 雷熱で焼かれた氷から煙が上がり、その煙を花開いた青薔薇が凍てつかせる。

「……互角か。」
 羅暁が苦々しく呟く。
 正面から互角の威力の技のぶつけ合い、羅暁にとって一番面倒な展開だった。
 なにせ先に解除したほうが確実にダメージを追う我慢比べだ。
 牽制技なら良かったが。青薔薇の剣の武装完全支配術は整合騎士序列二位ファナティオを抑えこめるほどの威力がある。
 対するぺダニウムスパークもウルトラマンジードのストライクブーストと真正面から打ち合える熱量だ。
 掠る程度ならまだしも正面から喰らえばただでは済まないのは両者同じである。

「ハハハハハハハ!!!!」
 苛立たし気に呻る羅暁に対し、セレブロはけたたましく笑う。
 セレブロが羅暁のことを理解できなかったように、羅暁もまたセレブロのことが理解できない。
 なぜこのような消耗するだけの競り合いにこの存在が興じているのかが。分からない。

「貴様。時間稼ぎのつもりか?」
 苛立たしげな声で、今度は羅暁が問いかけた。
 小娘の能力か変身体の力か、あるいは”その奥にいる何者か”の力か知らないが、目の前の小娘はテレポートができる。
 このような我慢比べになる前に逃げればいい。
 だが目の前で高笑いを上げる怪獣の姿は『逃げられなかったから自棄になっている』ようなものではない。
 心の底から愉しんでいる。まるで物事が自分の思い通りに進んでいるような。そんな笑いだ。

「あの家屋に現れたのはもう一人の翼竜のような怪物の力だろう?あの怪物女と手を組んでいるのはまだいい。
 だがなぜあの弱弱しい小娘を助ける。
 戦力を探しているのか?だとしたら市街で戦う藤乃代葉や黒い剣士の方がよほど優秀だろうに。」
 鬼龍院羅暁は見ていた。
 自身が蹴り飛ばした亀井美嘉のすぐ背後。赤黒いワープゲートをくぐって表れた翼竜のような怪人――プテラノドンマルガムとその隣に立つ鬼方カヨコの姿を。
 屋内にワープして現れたこと――方法はどうでもいい。異世界の能力や支給品の力を使えばいくらでも手がある。
 考えるだけ無駄だろう。
 だが”なぜ現れたのか”については気にする必要があるだろう。
 亀井美嘉――羅暁はその名前さえ知らないままだ――にこの怪物が目をかけるほどの何かがあるとは思えない。

「そっちの方が面白そうだからだ。それ以上の理由が必要か?」
 セレブロの返答に、羅暁の目の色が失望に染まる。
 仮にも企業の総帥を務めた羅暁の考えは実利に即している。
 だが帰ってきた答えは『面白そう』という極めて自己中心的で利にならぬものだ。

 彼女は人は服の奴隷だと考えている。ただの人に価値を見出さない。
 だが目の前の怪獣は、その人ほどの価値もない。
 『崇高な使命』のために動く羅暁とは、どこまでも相いれない相手だった。

「もういい。そしてはっきりした。貴様はその小娘ではない。
 羂索は頭に輪っかを浮かべた小娘を『キヴォトス人』と言っていたが、貴様には人ほどの価値もない。
 不愉快だ。ここで消えろ。」
「テメエの趣味が悪いだけだろうが!このゲーミング糸クズババアが!」
 氷塊と熱線。ぶつかり合う先のエネルギーが臨界に達し。稲妻は爆ぜ氷が砕ける。
 公園を中心に周囲の家屋は氷に包まれ、公園の外の道路は熱線の衝撃で電柱や外壁がボロボロに砕けた。
 それでも戦いが止まる気配はない。
 まるで二匹の怪獣が暴れているような戦闘痕が、彼らが動くたびに広がっていった。

◇◆◇◆◇

 「はあああああああああああああああ!!!!!」
 槍から伸びた二本の帯がレベル3の体を捕らえ、代葉の槍が照準を合わせる。
 染離改 重炸炎烈撃墜槍。
 その本質は、霊力で収縮させた槍を打ち込むパイルバンカーだ。
 槍が爆ぜ、帯で縛り付けた左腕から骨を伝って衝撃が伝わる。
 歯を食いしばって打ち込んだ槍の威力は絶大。貫通した槍を受けてレベル3の右半身に大穴が開いた。そして――

「おいおい嬢ちゃん。やってくれるじゃねえか。」
 レベル3に空いた穴のむこう。横に構えた黒い剣で槍の直撃を防いだ黒の剣士――PoHがいた。
 先ほどまでPoHを乗せていたガットゥーゾが、2つ隣の屋根の上寂し気に吠えた。
 代葉への攻撃をNPCモンスターに任せ、逃げていたはずのPoHが槍の斜線上にいることにはもちろん理由があった。

「お前の烏、他人とも位置を入れ替えられたのか?なんで今まで使わなかった?」
「使う必要がなかった。」
「嘘だな。大方令呪で制限されていたんだろ。
 元から強いチーターどもは大変だなぁ。俺みてえな凡人は気楽でいい。」

 PoHの言葉は当たっていた。
 忌々し気に顔を歪めた代葉の反応を見て、PoHもその事実に気づき神経を逆撫でするような笑みを浮かべた。
 狂骨との修行で強くなり式神の転移能力を他者にまで及ぼすことが出来たが。その力は令呪使用時にしか適用できない。
 PoHがへらへらと笑う間に令呪の効果時間は切れる。
 上限を超えた数の烏が消え、入れ替え範囲の適用も自分だけだ。
 そもそもが不意打ちの奇策だった。二度は通じないだろう。

「それによぉ。お嬢ちゃんじゃ俺には勝てねえ。
 お前、人を殺したことないだろ。」
 相変わらずへらへら笑いで向けられた言葉に、代葉の背筋がぞくりと冷えた。
 貴方はあるの。そう問いかける気にさえならない。

「背後の俺事刺そうとしたんだろう。ならなんで貫通した瞬間手を抜いたんだ?
 そもそもお前、レジスターがない側の腕を狙ったろ。
 心臓も頭もレジスターも狙わねえんじゃ、防ぐのなんざサルでもできるぜ!」
「私の敵はあくまで幻妖。
 貴方はここで無力化してもらうけど。殺すつもりは……」
 いかにもなヒーロー気取りが紡ぎそうな甘ったれた言葉だ。
 閃光――アスナあたりと出会えば実に気が合うことだろうなとPoHは思う。
 藤乃代葉に参加者を殺させれば、PoHの望む愉悦を楽しめるだろうが。今この場で実行しては失われるのは己の命。
 それでは意味がない。マクアフィテルに手をかけながら、勿体ねえなぁとため息をついた。

 「だーかーらぁ。
 そんな調子でデスゲームやってんじゃねえっつてんだよ!このサル!!」
 幻妖に隠れたPoHの腕が、汚泥のような泡を吐いていた幻妖の顔を貫いた。
 手に握られたマクアフィテルは、有言実行と言わんばかりに代葉の腕――レジスターのある部位に狙いを定める。
 染離で弾く隙に剣は幻妖の影に隠れ、レベル3への止めを兼ねたもう一撃を見舞っても大穴の先にPoHはいない。
 隣に視線を移すと、屋根を飛び移る黒の剣士が。おちょくるように飛び交う烏を切り落としていた。

「逃がさない!」
 幻妖の残骸を槍に取り込む――藤乃代葉の持つ希少な能力がなせる業だ。
 陰陽師の中でも希少な『幻妖と契約してその力を使う』能力。
 藤乃家固有の特異体質。『幻妖を吸収する力』。
 出し惜しむ余裕は無い、万が一レベル3が蘇生などされては大惨事だ。

 互いに屋根を飛び交うことに恐怖はない。
 追跡では転移が使える代葉が有利だが、PoHはご丁寧に代葉が奇襲できる範囲の烏をその刃で切り落としている。下手に転移しては隙をさらすだけだった。
 それでも代葉には負けるつもりは毛頭ない。
 早さに自信のある先輩陰陽師周防七咲には劣るとはいえ。陰陽師である代葉の速度はPoHより上だ。
 だが追いつくよりも早く、変化は起きた。

「日本人は真面目なのが美徳だって言うがな。俺にいわせりゃ頭でっかちの知能遅れだ。
 前だけじゃなくて上を見ろよ上を。」
「何を……。」
 PoHの挑発と同時に、空が陰に埋め尽くされる。
 代葉が気づいた頃には、ギリアンが巨大な掌を叩きつけてんと迫っていた。
 視界から外した瞬間に剣士の姿は消えていた。どうやら狼――ガットゥーゾと合流されてしまったらしい。

「しまった。」
 幻妖と剣士に気を取られすぎていた。
 大虚は脅威ではあるが、死神でも滅却師でもなく陰陽師である代葉にとっては未知の相手だ。
 警戒心は知識ある幻妖よりどうしても劣ってしまう。明確な失態を歯痒く思うが、悔やんでいる余裕は代葉にはない。
 動きこそ遅いが建物1つが丸ごと射程内。
 射程外の烏と位置を変える余裕もなかった。

「もう一撃くらいなら、いけるはず。」
 上から降ってくる巨大な掌に代葉は回避ではなく迎撃を選択する。
 槍に令力が込められぎちぎちと圧縮され、爆発寸前のエネルギーが槍のから溢れそうになる様を左腕に縛り付けて抑え込こむ。
 重炸炎烈撃墜槍があと何発使えるか、令呪の制約を受けているかさえ代葉自身はっきりと理解していない。
 この一撃で大虚を倒せるとも思っていない。
 だが、ここで出し惜しんでは死ぬだけだ。

「私に力を貸して……夜島くん。」
 彼だったら絶対に退かない。
 彼だったら絶対に諦めない。
 その思いで槍を突き立てる代葉。


「柱刀骸街(ゼノブレード)」


 その耳に、聞き間違いようのない男の声が確かに届いた。
 陰陽師の影を纏う刃が、市街地の空に黒く線を刻む。
 大虚の右肩が両断され、代葉の穂先が落ちゆく腕を貫き、大虚の腕は無数の白い骨片に変わる。
 霊子となって溶けゆく残骸の合間に、藤乃代葉はその姿を確かに目にした。

「夜島くん!」

 藤乃代葉の最も信頼する仲間の1人。夜島学郎。
 いることは知っていたが、こんなに早く会えるなんて。
 大きく目を見開き、代葉の高揚が声となり空に響く。
 心の中にあった不安や緊張がどんどんと薄まる。駆け寄ろうと虚の処理もそこそこに代葉は駆けそうとして……異変に気づいた。

「ガアアアアアアアア!!!!」
「夜島……くん?」

 夜島学郎は、何も答えない。
 覚悟を決めた叫び……というより、獣が吠えるような叫びをあげ。代葉には一瞥もくれず大虚に刃を向けた。
 色を塗り忘れたように白んで見える学郎の姿は、どう見ても正気のそれではない。
 そもそもがらしくないのだ。
 夜島学郎は常に他人を気遣うお人よしの権化だ。
 代葉を見つけた時に気遣う言葉の1つもないというのはあり得ない話だ。

 獣のように呻り刃を振るう友人の姿は、代葉の思考を止めるには十分だった。

 ここで出会うまでの数時間で、夜島学郎が鬼龍院羅暁の手で思考を奪われていることなど知る由もない。
 亀井美嘉の、代葉と学郎を会わせてはいけないという感覚は正しかった。
 困惑が脳を駆ける。混乱が判断力を後れさせる。

「どうしたぁ。あのハンサムくんが来てから隙だらけだぜぇ。」
 だからキリトの――PoHの言葉に反応することができず、彼が投げた何かが代葉の背に深々と突き刺さった。
 痺れるような痛みと熱さに、思い悩む余裕も与えられずに代葉の意識は引き戻された。

 夜島学郎の姿は既に遠く、別人のように荒々しい刃を振るい大虚を滅多切りにしていた。
 追いかけることも心配することも、助けることも今の代葉には許されなかった。

「こ……のっ。」
 生温かいものが垂れる背中から、刺さったものを強引に引き抜いた。
 爪の先が赤く濡れた獣の前足だった。投げやすいサイズに切断された爪の先は緑色に変色している。
 代葉が既に殺してPoHによって切り取られた、ガットゥーゾの爪だった。

「しまった……この爪には……」
「毒がある。だろぉ。
 基本的なバステだ。ポーションを買い忘れたテメエのミスだなぁ。」

 背後から向けられるじっとりした声に槍を振るう。
 どうにかギリギリで振るわれた剣を弾いたが、ガットゥーゾの毒は3秒毎にHPが最大値の5%分ずつ減少するという超即効性。
 血管に針が刺さったような痛みが走り、藤乃代葉は片膝をつく。

「あばよお嬢ちゃん!」
「……まだっ!!」
 愉快なショーを見る子供のように興奮し、マクアフィテルを振り下ろすPoH。
 ポイズンクロウによる毒ダメージのせいか、代葉の反応は笑えるほどに遅かった。
 彼女の槍は黒曜の剣を弾くには間に合わない。
 できて――彼が騎乗する狼の首を捻じ切る程度。

「うわぉ。」
 鳴き声さえ言い残せず、ランスの刺さるガットゥーゾの首が180度ぐるりと回り泡を吹いた。
 狼の両足は力を失い、PoHのレジスターを狙った刃は大きくそれる。
 だが、動けない今の代葉がその刃を避けるには、1手遅かった。

「それで反撃したつもりかよ!
 いいか!剣ってのは、人を切り裂き殺す道具なんだよぉ!!」
 この会場にいる誰かに投げかけるような、狂信的な言葉を吐いて黒曜の刃が肉を裂く。
 PoHの刃は代葉の右足を捉え、黒曜の剣がべきべきと骨をへし折る音が代葉の中を伝わった。

「………………!!」
 歯を必死に食いしばり、体を流れる令力を回すことに専念する。
 PoHの言葉を証明するかのような、取り返しのつかない傷だ。
 この瞬間をもって、藤乃代葉の右足は機能を失った。
 令力を回して止血を図るが、足の大半を失う傷は処置しきれない。

 代葉の足は見るも無残な状態だった。
 マクアフィテルの鋭利な刃で裂かれた傷口こそまっすぐだが、合間合間に白く浮き上がる骨が粉々に砕けた。
 皮とわずかな筋線維だけでぶら下がった足から血液があふれ、スレート屋根を赤く染める。

 その光景は日々幻妖と戦う代葉にとって、ありえないものではない。だから声をあげなかった。
 その光景は電子戦闘に慣れたPoHには幾分か生々しいが、下手人ということもありショッキングなものではない。だから声を上げなかった。
 だがその光景は、命の危機も暴力による争いも縁遠い人間にとっては――


「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 ・・・・
 亀井美嘉にとっては、あまりにも残酷で刺激の強い光景だった。

 突如戦場に響いた悲鳴に、代葉もPoHも声のする側……道向かいに立つ3階建てのビルを見あげた。
 いつの間に移動したのだろうか。ゆらりと異様な雰囲気を纏う亀井美嘉がライオンのぬいぐるみを構えて立っていた。

「盈たして」

 どす黒い声が静かに、しかし道向かいにいる二人にも聞こえるくらいはっきりと奏でられた。
 声の主が持つライオンのぬいぐるみから青黒い靄のようなものが吹き上がる。
 現れたのは傷だらけの日本人。年端もいかない子供ながら、その姿を視界にとらえただけでPoHの感覚が撤退を促した。
 思えば、初めて亀井美嘉を見た時何か嫌な予感がしていたのだ。
 キリトを前にした高揚とも、覇王を前にした畏敬とも違う。
 死の予感とも言うべき感覚に、PoHの体が無意識に後退していた。

 ――――美嘉、何があったの。
 対する代葉は、亀井美嘉の顔を見ていた。
 別れてから30分と経っていない。五体満足で無事であることは幸いだったがそれ以上に美嘉の様子は異常だった。
 目は血走り隈が酷い。恐怖か憎悪か分からないが目は大きく見開かれ、歪んだ顔は元々が整った美貌だからか違和感と不快感を強烈に与えている。
 夜島学郎ほど派手な変化はないが、間違いなく正気を失いかけていた。

 変質した美嘉の後ろでは、翼竜のような頭部の怪人がその様子をニヤニヤと楽しそうに眺めている。
 あれは誰だ?
 間違いなく美嘉の変質の原因だろうが、それ以上のことを代葉が知るチャンスはない。

 PoHが逃げるよりも早く。
 代葉が声を届けるよりも早く。

 言霊は、解けた。

◇◆◇◆◇

 ノノミが美嘉に頼んだことは、代葉の戦う戦場で美嘉の持つ悪霊――月蝕尽絶黒阿修羅を起動することだった。
 何故ノノミがその支給品のことを知っているのか、尋ねられるほど美嘉は頭が働いていないし尋ねたところでノノミは答えないだろう。
 だが少しでも危機から逃げたい今の美嘉は、何故そんなことをするのかが気になった。
 危機にさらされ荒んだ中差し伸べられた手だ、美嘉にノノミを疑う思考も余裕もない。反射的に漏れたどうしてという質問は純粋な興味からのものだ。

「聞いてて愉快な話ではありませんよ。
 私の仲間が一人、あの黒い剣士とその仲間に殺されています。」
「そんな……。」
 既に折れかけている美嘉の心を、ノノミの言葉は深々と抉る。
 ノノミとセレブロの乱入が数秒遅ければ羅暁に殺されていた美嘉だ。人の死は既に遠いものではなくなっていた。
 バトルロワイヤルが始まって2時間強。たったそれだけの時間で人を殺すような危険な相手と戦う代葉のことが心配でどうにかなってしまいそうだった。

「彼の名はキリト。貴方やあの少女にNPCモンスターをけしかけたのも彼でしょう。
 どうにかして彼を倒したい。それが私の願いです。」
「それって……。」
「……殺す気はありません。ただ、これ以上彼のような危険な参加者に蹂躙される仲間たちは見たくない。
 そのために彼を止めたいんです。たとえ彼を傷つけることになったとしても……。
 ……そう思ってしまう私は善人ではないんでしょう。
 はっきり言って私情です。……最低ですよね。」
「そんなこと……ないと思います。
 私も、ゆうちゃんたちが酷い目にあっていたら。きっと……。」

 それ以上は口に出せなかった。
 平和だったとは口が裂けても言いたくないが、少なくとも命の危機とは無縁の世界でいた美嘉の価値観は。このゲームに巻き込まれ3時間もたたずに打ち砕かれている。
 東ゆう達が殺されるなど、今までならば想像することさえできなかっただろう。
 今では、出来てしまう。
 美嘉は知ってしまった。
 獣に乗った黒い剣士。正気を失った陰陽師。存在そのものが理解を拒む人の姿をした怪物。
 それ以上を言ってしまたら、美嘉の頭はそいつらの手で東ゆうが襤褸切れのように縊り殺される姿を思い浮かべてしまいそうで。

「美嘉さんは優しいんですね。」
 今にも泣きだしそうな顔をしたノノミが、ぎゅっと美嘉の手を握る。
 かじかんでいるのだろうか。彼女の手は冬空の下にいたかのように冷たかった。

「ノノミさん……。」
「美嘉さんがこんな殺し合いには相応しくない。誰かを傷つけることさえ貴女はきっと嫌うでしょう。」
「私は……そんな立派な人じゃ。」
「立派ですよ。誰とも知らない私の話を真摯に聞いてくださってる。
 気づいていましたか?貴方今泣いているんですよ。」
 顔に半分だけ残っていたメカ丸の装甲をノノミがそっと外す。
 空気に触れた左目の目元は赤く腫れ、恐怖でない涙が止めどなく流れていることに美嘉は初めて気が付いた。

 「キリトを殺してほしいわけではないんです。ただ彼を止めるためにも力を貸してほしい。
 これ以上私の仲間や、貴女の友人が酷い目に合う姿は見たくない。
 キリトのような危険な人物が参加していては、いつ貴女の友人が被害にあうかわかりません。
 願わくば貴女のような優しい人に生き延びてほしい。私はそう思っています。」
 まっすぐに見つめるノノミの目。
 エメラルド色の優しいまなざしが、美嘉の中の善意に訴えかけ。
 彼女の力になりたいと、美嘉はただ純粋に願った。

 リュックから香水を取り出し、ノノミにかける。
 黒阿修羅が味方だと認識する香りは、美嘉にとっても味方だと証明できる心穏やかなものになっていた。

「私に……何ができるかなんてわかんないけど。
 私にできることがあれば、なんでもする。それがゆうちゃんたちを守ることにつながるのなら。
 私達でキリトを止めよう!ノノミさん。」
「美嘉さん。」
 ありがとうございます。そう大きくお辞儀をしたノノミの顔は――笑っていた。

(ま、嘘なんですけどね。
 嘘をつくときは半分くらい真実を混ぜるのがコツですよ★)
 すっかり信じ込んだ亀井美嘉を前に、ノノミは迫真の演技だったなと自賛する。
 殺された仲間というのはもちろんホシノ(参加者の小鳥遊ホシノではなく、グリオンの生み出した冥黒ホシノ)のことだが、厳密にはホシノを倒したのは緑谷出久だ。
 だが嘘は言っていない。緑谷出久とキリトは行動を共にしているし仲間というのも事実だ。
 問題があるとすればホシノが死んだのはホシノ側がキリトらを襲ったことが原因だし。
 目の前にいる黒の剣士はキリトとはまるで無関係の畜生であるということだ。

(キリトがグリオン様の敵であることは確定してますし。あの偽者さんには悪いですが美嘉はキリトを恨んでくれた方が都合いいんですよねぇ。)
 ノノミはキリトのことを顔と名前しか知らない。
 あの偽キリトの正体が誰なのかも分からない。
 ただ、”今後の計画”のために亀井美嘉をおだてるにあたり、キリトの存在を使うことは都合がよかった。
 美嘉の中ではすっかりキリトは凶悪なマーダーだろう。

「そろそろ行きましょう。少し刺激が強い姿になりますので、覚悟してくださいね。」
 前置きしたノノミがプテラノドンマルガムにその姿を変える。
 作り出した赤黒いゲートがワープホールだと聞き、こうやって自分の元に現れたんだなと美嘉の中で謎が解けた。
 黄金の包帯で翼竜を縛り上げたようなその姿は、ノノミだと知っているからか不気味さはない。

「ええ。自分が何ができるか分からないけど。
 殺し合いを止めるために。出来ることを精一杯!」
 ノノミの腹の中などは知るよしもなく、決意を秘めた眼を美嘉は煌めかせる。
 東ゆうなら。いつだって泣かなかったあの強く眩しい少女なら。そう言って進むはずだ。
 ワープホールを潜ることに恐怖は無かった。
 先を行くプテラノドンマルガムが嗤っている事にも、気づかなかった。

 ワープを潜った先、戦場にほど近い小ビルの上。
 戦場の光景が亀井美嘉の目に飛び込んだ。

「それで反撃したつもりかよ!
 いいか!剣ってのは、人を切り裂き殺す道具なんだよぉ!!」

 藤乃代葉の右足が、黒の剣士の手で叩き折られた。その光景が。


 「――――――――――――――え?」


 阿呆面としかいいようがないほどに、目と口を大きく広げたまま美嘉は固まった。
 都市部で行われた混戦は、いくつもの屋根を飛び越えて破壊痕と血の跡を残している。
 幻妖は吸収され、代葉の手で穴が開いたガットゥーゾの肉片が飛び散っている。全ての残骸がバラバラの場所にあった。
 夜島学郎が虚を滅多切りにしている場所も、美嘉の足では遠いと言える地点だ。
               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 そんな広大な場所のど真ん中。狙いすましたかのように美嘉の目の前で。
 藤乃代葉が殺されかけている。

 どくんと、腹の底から何か黒いものがあふれた。
 焼け焦げた煙のような靄が、美嘉の全身からわずかに溢れ出すさまを、ノノミだけが捕らえていた。
 腹の中で捕らえるケミー、エンジェリードがカードの中でぶるぶると震え。対照的にノノミは嬉しそうに腕をかざす。
 黒い靄をもっと黒く染める言葉を。亀井美嘉を作り替える悪意(のろい)を。言の葉に乗せる。





「暗黒に、そ~まれ★」


「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 後ろでノノミが何かを言っている。


 何を言っているかはよく分からない。


 喉が裂けそうになるほどの悲鳴を、美嘉は止めることが出来なかった。


 ただ彼女が言葉を紡いだ瞬間、胸の奥から漏れ出た何かが完全に溢れ出し。


 黒く冷たいその激情に抵抗することも反発することも、今の美嘉にはできなかった。


 気が付くとライオンのぬいぐるみを美嘉は構えていた。
 その顔は憎悪に歪み、血走った眼を大きく見開き黒の剣士を睨みつけていた。
 道向かい不安そうに見つめる代葉の言葉も、今の美嘉には届かない。

 「盈たして」

 自分の声だとは思えないほど、血の通わない冷たい振動が美嘉の口から響いた。

 亀井美嘉という人間は、善人ではあるが無垢ではない。
 小学生のころ壮絶な虐めにあい、唯一信じられたヒーローが海外に行って暫くで小学校に行けなくなった。
 13にも満たない年で顔を整形(か)え、クラスメイトとの関係性が続くことを恐れて受験を選んだ。
 変わりたかった。拒みたかった。嫌われたくなかった。
 ――――それでも、自分をイジメた人たちを殺そうとまでは思わなかった。

 頭をよぎらなかったかどうかまでは、亀井美嘉本人のみが知る話だ。
 それでも亀井美嘉は、自分を否定した世界への反逆を破壊ではなく自己成長と安寧を選んだ。
 そんな人間の胸の内。抜け落ちていた、あるいは抑え込まれていた思いを、ノノミの錬金術がこじ開けた。

 「月蝕尽絶黒阿修羅ァ!!!!!!」

 言葉にするのなら――殺意。
 その思いはまさしく、彼女が呼び指す少年霊の根幹にあるものと同じだった。

 少年霊と亀井美嘉の足元の影から、透明の腕が無数に湧き上がる。
 藤乃代葉が式神を呼び出した光景に酷似していたが、半ば暴走しているからかその危険性は比にならない。
 どこまでも腕は伸び、どこまでも敵を捕らえる。
 左右の建物に向けて伸び広がり。周囲を飛び回る烏を伸び掴み。
 PoHと代葉がいる目の前の建物に向かって勢いよく飛び掛かった。

034:武器や防具を持っていても、装備していないと知ることが出来ない 投下順 035:■を為す女ー病ンデル彼女が■■ました
029:波瀾Ⅰ:その戦いはなぜ始まったのか 時系列順
019:ハザードシンボル 藤乃代葉
亀井美嘉
PoH
夜島学郎
鬼龍院羅暁
鬼方カヨコ
セレブロ
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