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Yuri-3-033

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美貴と私:4 初めての出会い


3-031の続き

33:創る名無しに見る名無し:2010/11/11(木) 22:54:16 ID:tyAuLFaJ

「暑い……」

 夏休みの宿題がちっともはかどらない。さっきまで氷が浮いてたコップももう汗でびっしょりだ。再び水を入れてこようと立ち上がった瞬間。
大きな音。窓の外に目をやると遠くに花火が上がっていた。

「そっか、今日お祭りなんだ……」

 私はしばらく眺めていた。眺めているうちに何かが花火の合間の闇にゆらゆらと浮かび上がってきた。それは古い記憶だった。くすぐったい思い出。
だけど、大切な思い出。初めての美貴との出会い。

 あれは確か小学校二年の夏祭り。その時私は母親と一緒に来ていたのだが初めての祭りに浮かれてしまった私はつい母親の側を離れ夜店の一つの、ひ
よこ売りのひよこに心を奪われてしまった。しばらくして気付いた時にはもう遅く辺りに母親の姿は見当たらなくなっていた。

 後で母に聞いた話だとすぐ側で近所の友達と話していたそうだが、当時の私はそんな事知る由もなく散々探し回った挙げ句とうとう賑やかな場所から
離れた石段で途方に暮れて大声をあげて泣いてしまった。
 それまで楽しそうだった夜店や人々の群れが急によそよそしくなり私は世界で一人ぼっちになった気がした。

 そこに綿飴を持った一人の女の子が現れた。それが美貴だった。

「どうしたの?」
「おかあさん……が、おか…さんが」
「まいごになったの?」
「……う、うん」
「いっしょだね」
「……え?」
「あたしもまいごなんだよ」
「……なんでそんなにへーきなの?」
「うーん、ないてもしょうがないしね、なんとかなるよ。これあげるからなかないで。いっしょにおかあさんさがそ?」

 そう言って綿飴を私にあげると、もう片方の手を取って一緒に母親を探してくれた。美貴の手は優しくて。
それまでの心細さはすっかりなくなっていた。同時に別の感情が胸を高鳴らせた。

「なまえなんていうの?」
「……ゆい」
「あたしはみき」

 突然大きな音。そして夜空に大きな光の花が咲いた。

「きれいだね」
「……うん」

 花火のどーんという音。その一つ一つが私の鼓動を拡声器で大きくしたみたいで恥ずかしかった。
 すぐ側で手を握っている美貴にそれが気付かれないかとドキドキした。


「美貴、覚えてるかな……」

 窓から見える花火。その花火のどーんという音の振動が、あの時の鼓動と共鳴して十年立った私の胸を揺らした。

※続きは、3-041
※同シリーズの別エピソードは3-0183-027



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