ドクター(The Doctor)
(キャラクター、ライセンス)
イギリスBBCのSFドラマ「ドクター・フー」の主人公
概要
「ドクター・フー」(Doctor Who)は、1963年からイギリスBBCで放映されている、世界最長のSFテレビドラマシリーズ。1989年に一度終了したあと、1996年に単発の特別版を経て、2005年に新シリーズがスタート、現在も放送されている。
当初は単なる子供向けSFドラマだったが、シリーズ長期化に伴ってその人気は不動のものとなり、イギリスのポップカルチャーに多大な影響を与えた番組となった。
作品の長さは作品により異なるが、イギリスでは土曜日の午後(6時15分ごろ)に始まるので、「「ドクター・フー」を見るのは『土曜の午後の宗教儀式』」と言われることがあるくらいである。なお熱狂的ファンのことを「フーヴィアン」と呼ぶ。
昔はイギリスを代表する(そしてイギリスのローカルな)作品だったが、アメリカでも、
ケーブルTVでの放送や、アメリカの制作会社の参加などにより、広く知られるようになった。日本でも過去にビデオでの販売や、NHKなどで一部の放送が行われている。
基本的なストーリーは、主人公の「ドクター」(仮の名前で本名は明かされていない、時には「人間には発音できない」とされる)と呼ばれる異星人が、地球人の仲間(「コンパニオン」と呼ばれる。男女ともにいるが、昔は女性が多かった)とともに時空を自由に行き来して、道中で遭遇する、地球や他の惑星で起こる、理不尽な外敵侵略や、タイムパラドックスなどを防ぐために奔走するという冒険物語である。
ダレク(Dalek)やサイバーマン(Cyberman)など、人気のある敵も登場する。
ドクター
ドクターは、ギャリフレイ(またはガリフレイ:Gallifrey)という惑星に棲む「タイムロード」 (Time Lord) という種族。タイムロードは外見は人間と同じだが、心臓を2個持ち、体が重度の損害を受けた場合は少なくとも12回まで別の体に再生 (Regeneration) できる能力を持つ非常に長命な種である。
ただし、再生では全く同じ外見や人格になることはない(メタには、シリーズを続けていく上で、役者が変わっても矛盾しない)。
タイムロードたち(強力なので個体も少ない)は、時空を旅する「ターディス」(下記参照)を持つほど高い技術を持っているが、自分たちの技術を他種族に知られることを恐れ、基本的には宇宙で起こる事件に関しては不干渉を貫いていた。しかし、ドクターはそれに反発し、ターディスを持ち出して出奔した。
2020年現在のドクターは13代目に当たるが、それまではずっと男性(13代目で初めての女性)だった。
ドクターは、それぞれ非常に個性的(何かあるとリコーダーを吹くとか、セロリをピンバッチにつけているとか)である。
ほとんど武器らしいものは持たず、大抵万能ドライバー一本だけ。あとは知恵と経験で戦うというスタイル。
コミックスでも、まず「何代目のドクターの話」というのが基本で、イベントとして複数の代のドクターが共闘するというのもある。
歴代のドクター
初代ドクター(演:ウィリアム・ハートネル)
【外見】白髪で年老いた外見をし、リボンタイとドレスコートを着用している。
【注】ハートネルの死後に製作されたマルチイベントのエピソードでは、リチャード・ハーンドールなどが演じている。ハートネルが病気だったため、番組を続けながらドクターを交代させるため、再生の設定ができた。
2代目ドクター(演:パトリック・トラウトン)
【外見】黒髪で、小さな蝶ネクタイに初代ドクターの頃に着ていたコートをそのまま着ている。
【特徴】初代ドクターより人懐こい。リコーダーを吹く癖がある。
3代目ドクター(演:ジョン・パートウィー)
【外見】白髪でクラバットを身に着け、黒、マルーン、または緑のジャケットを着ている。
【特徴】タイムロードの手によってターディスの操作を忘れさせられたため(Three Doctors にてタイムロード人の窮地を救った際に操作可能となった)、地球のみで活動。U.N.I.Tの元で地球で活動していた。ヴェヌーシアン(金星流)合気道を心得ており、しばしば戦闘するシーンが見られる。
4代目ドクター(演:トム・ベイカー / 日本語版:玄田哲章)
【外見】カーリーヘアーで帽子を被り、マルーンか薄茶のジャケットにカラフルな長いマフラーを着用している。
【特徴】フレンドリーで、よくジェリーベイビー(イギリスで食べられている、赤ちゃんのような形のグミ)を食べており頻繁に人に勧めている。IDW社のコミックでスタートレックとの
クロスオーバー「Assimilation2」では、ジェリーベイビーを
ミスター・スポックに勧めていたほか、11代目ドクターや12代目ドクターもこのジェリーベイビーのネタを踏襲している。また、ヨーヨーなどもポケットに入っておりしばしば使用している。
【注】10代目ドクターが登場するまでは、4代目ドクターが歴代ドクターの中で最も高い人気を博していた。
5代目ドクター(演:ピーター・デイヴィソン)
【外見】クリーム色のクリケット用ジャケットと(ピンバッチのように)セロリを着用し、スニーカーを履いている。セロリはドクターがアレルギーとしているガスに反応すると紫色になる。
【特徴】何かよくものを見るときに眼鏡をかけ、たまに金切り声を出すことがあり、クリケットやお茶を飲むのを好む。
6代目ドクター(演:コリン・ベイカー)
【外見】カーリーヘアーで、猫のバッジが付いたカラフルなジャケットを身に着けている。ズボンは黄色で、黒の縦じま模様である。シャツの襟元にクエスチョンマークが描かれている。
【特徴】詩を読むことが好きで、他のドクターと比べ態度が大きく短気、暴力的であった。
7代目ドクター(演:シルベスター・マッコイ)
【外見】赤いネクタイにクエスチョンマークの付いたセーター、そしてクリームか茶色のジャケットを着ている。またクエスチョンマークの傘を度々持ち歩いている。
【特徴】思慮深く、ミステリアスな性格である。
(7代目ドクターのときに、シリーズが一旦休止)
『ドクター・フー:ザ・ムービー』
8代目ドクター(演:ポール・マッギャン)
【外見】フロックコートにグレーのクラバット、グレーのズボンを身に着けている。靴はテレビドラマ版では黒の革靴を履いていたが、"Night Of The Doctor" では、白のブーツを履いていた。
【特徴】情熱的でロマンチストだが、一部影もある。
新シリーズ
ウォードクター(演:ジョン・ハート / 日本語版:祐仙勇)
【外見】白髪で、ひげを生やしている。この時のドクターは9代目ドクターのものに似たジャケットに、8代目ドクターの際に着ていたものや、履いていたブーツ等をそのまま着用しており、服装に大きな変化がなかった。
【特徴】8代目ドクターがタイムウォーを阻止する為になった戦士の姿。
9代目ドクター(演:クリストファー・エクルストン / 日本語版:山路和弘、祐仙勇(「ドクターの日」))
【外見】黒髪で髪型は坊主頭に近い。よく耳の形を揶揄されるが、本人も耳の形を気に入っていない。黒か赤か緑のシャツを着ており、黒のズボンとジャケットを身に着けている。
【特徴】口癖は "Fantastic!"(素晴らしい!)。北部訛りがあり、コンパニオンの
ローズにそれを追求された際には「どこの星にも北はある」と答えていた。
10代目ドクター(演:デイヴィッド・テナント / 日本語版:関俊彦)
【外見】茶髪で背が高く、茶色か青のスーツに、ネクタイをしており、時々茶色のロングコートを着ている。本人曰く「赤毛になりたかった」。また、マルーン、ホワイト、黒のコンバースを履いている。
【特徴】口癖は「何だ!?」("What!?")、「うーん」("Well")、「(仏語で)さぁ行こう!」("Allons-y!")、「(イタリア語で)素晴らしい」("Molto Bene!")。何かものをよく見る時はメガネをかけるが、これは周りに賢そうに見せるカッコつけであり、5代目ドクターの癖から来ている事が "Time Crash" で明かされている。ガジェットを作成する事が好きで、第3シリーズ「まばたきするな」ではタイミーワイミーデテクター(時空間の変動を検知する機械)、50周年スペシャル「ドクターの日」ではディング(ザイゴンのDNAを検知する機械)などが登場している。「Ding!」と鳴るのが好きで、上記のいずれもそう鳴っている。
【注】10代目ドクターの人気は非常に高く、これまでにデジタル・スパイ(英語版)の「最も人気なドクター」や「21世紀最高のTVドラマのキャラクター」に選ばれている。
11代目ドクター(演:マット・スミス/ 日本語版:川島得愛)
【外見】ツイード、もしくはフロックコートに蝶ネクタイ、そしてサスペンダーを身に着け、黒のブーツを履いている。
【特徴】口癖は "Geronimo!"(突撃の時に使われるかけ声)、 "~ are cool"(~はかっこいい:主に蝶ネクタイはかっこいいと言う)。
12代目ドクター(演:ピーター・カパルディ / 日本語版:内田直哉)
【外見】白髪で黒かマルーンのコートを着ている。また、中はシャツとカーディガンか、Tシャツとパーカーを着ている。(ピーター・カパルディは、この服装はデヴィッド・ボウイからインスピレーションを受けたと語っている。)ドクター曰く「12代目ドクターの外見は自ら選んだもの」であり、第8シリーズ「深呼吸」や第9シリーズ「死んだ少女」では自分がどうしてこの顔を選んだのか、ということについて言及している。
【特徴】これといった口癖がない。ただし、"Shut up!"(うるさい!)と言う場面がしばしば見られる。
13代目ドクター(演:ジョディ・ウィテカー / 日本語版:朴璐美)
【外見】ドクターとして初めての女性。グレーのコートに黒、もしくは赤のシャツにサスペンダーをしている。
【特徴】"Oh, Brilliant!"(まぁ、素敵!)という口癖がある。ドクターにとって女性の体が不慣れなのか、一人称に迷ったり、「ご婦人」と呼ばれることに困惑することがある。
14代目ドクター(演:デイヴィッド・テナント / 日本語版:関俊彦)
60周年記念スペシャル「スター・
ビースト」「ワイルド・ブルー・ヨンダー」「ザ・ギグル」の主役。10代目ドクターと同一の容姿をしているが、等しい存在ではない。
15代目ドクター(演:チュティ・ガトゥ / 日本語版:駒田航)
第14シリーズの主役。孤独をユーモアで隠すドクターであり、またエネルギッシュな性質と説明されている。「ザ・ギグル」においてバイジェネレーションと呼ばれる方式で14代目ドクターから分裂再生した。14代目ドクターと別れた後は「ルビー・ロードの教会」でルビー・サンデー(演:ミリー・ギブソン)と出会い、彼女との旅を開始する[57]。ガトゥはドクター役を演じるクィアの人物としては最初の例であり、また初代ドクター以降の正史のドクターを非白人俳優が演じる最初の例でもある。
ターディス
タイムロードは「ターディス」(TARDIS : Time And Relative Dimension In Space の略)というタイムマシンにより、宇宙のあらゆる場所、時代に行けるほど高度な文明力を持つ。
ドクターは修理中のターディスを盗み出して、地球に来た。
ターディスは行き先でバレないように偽装することができるはずなのだが、壊れているのか、イギリスにかつて多く見られた「交番」(Police Box:中に電話が置いてあり、警察官が連絡を取るために使う「電話ボックス」)のままで時空間を越えており、ドクターも特に気にする様子はない。現在では、交番が携帯電話などの普及により見られなくなってしまい、逆に一番有名な交番がターディス(「昔の交番って、ターディスみたいだったんだよ」と言われるくらい)になっている。BBCの入り口にもレプリカが置いてあるらしい。
外見からはそう見えないが、内部の次元が異なっており非常に中が広い。タイムマシンのコンソールがあり、最高のパフォーマンスのためには6人が乗るのがいいとされ、椅子や非常用の酸素なども6人分ある。
ターディスは生き物であるため、育てたり、エサを与えたりする必要がある。エサ(エネルギー)は時空間のひずみに発生するエネルギー。
コミックス
人気作品のため、コミックスが多く出された。
また、話を膨らませることが可能なので、「(ドクターの仇敵で、ドクターが登場しない)ダレクの年代記」や「(ドラマに出てこない)未来のドクター」なども描かれたことがある。
- "TV Comic"(1951~1984年刊行、Polystyle Publications社の週刊誌、イギリス):1964~1979年(1971~1973年を除く)に、「ドクター・フー」のマンガを掲載。
- "TV Action/Countdown"(Polystyle Publications社の雑誌、イギリス):1971~1973年に「ドクター・フー」のマンガを掲載。
- "Dr. Who Weekly→Dr. Who Magazine"(1979~、Marvel UK→Panini):1979年から刊行されているアメリカン・コミックススタイルの雑誌。マーベルUK業容拡大のために発行され、人気シリーズとなった。現在はマーベルUKがイタリアの出版社Paniniに吸収され、Paniniから刊行されている。「世界最長のTVタイイン雑誌」としてギネス記録を持っている。基本的にイギリス市場向けだが、"Dr. Who"のコミックスは、編集されてアメリカでも販売された。
- マーベルUK時代に、ドクター・ストレンジとドクター・フーのクロスオーバーが企画されていたが、ドクター・フーが休止になったため廃案に。
BBC出版
- "Radio Times"、"Dr. Who Adventures"などを出版。
- コミックスではないが、解説本やCDなどを出版している。
Titan Comics
イギリスのアメコミ出版社(形容矛盾?)
- 2014年からアメリカでの"Dr. Who"の版権を獲得。コミックス版を出版している。
※2020年現在、アメリカではTitan Comics、Panini、BBC出版から"Dr. Who"関連の書籍が出ている。
最終更新:2024年10月25日 06:44