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  • 自殺の風景 [Replay

テイルズオブバトルロワイアル@wiki

自殺の風景 [Replay

最終更新:2019年10月13日 19:30

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自殺の風景 [Replay]

「……はは、いー眺め」

親友が氷を作り出して3階以上の高さから降りていったのを確認して、
仰向けのままのティトレイは、顔をこてりと左に傾けて暢気そうに屋根から見える風景を眺める。
確かには綺麗だ。
明るい斜光が暖かく照らすと家々の自然の色相。
村の向こう側に広がる、広がるその先には草原の若々しい青緑、土肌が顕わになった黄土色の山脈、
更にその奥で微かに煌く紺碧の海、三者三様の色合いは明瞭に彼の網膜へと結びついている。
共に浮き出る地面に現れる、一色でその他全てと釣り合う斜影の濃黒。
そして、斜陽の赤で染め上げ始める直前の青空。
霧が消えた村は、此の天と地を万色に染め上げようとしていた。
もしティトレイが立っていたならば、やや西に傾いてきた光は逆光となって彼の背を黒く染めていたのだろう。
幾つもの民家の影がこの鐘楼に黒く伸びているのが、彼には可笑しかった。
皮肉にも、彼は嘗ての親友と同じことを考える。
確かに――こんな血生臭い世界とは不釣合いと思える程、この世界の景色は綺麗だった。
だが、その景観はもうずっとただの記号的なものにしか見えない。
美しさなんて、唯の発音の羅列でしかない。

日光で暖められた屋根の熱がじわりと身体に伝わる。
その安らぎとは裏腹に、双肩に重荷が乗せられたかのように、疲労がどっと襲い掛かってきた。
身体を動かすのさえ気だるい。全ての気力が何かに奪われてしまったように。
もう、何も残っていない。
胸が詰まったような閉塞感に口を手で押さえようとして、既に両腕がないことを思い出す。
2、3回咳き込む。異物が込み上げてくる感覚も一緒に感じた。
飛沫にはもう赤い液体残ってはいない。
奥義1回使うだけでその代償は凄まじい。無理する必要もなかったんじゃないかと彼はしみじみ思う。
喪失した左下膊に視線を遣る。放った時は全部吹き飛ぶかというほど信号を発していた激痛も、離れてしまうと不思議と何も感じない。
もうない右手を動かすイメージを浮かべ、上までしかない左腕を、止血でもするかのように幻枝を握る。
想像の中ですらその硬さは、やはりヒトのものではない。既に皮膚は硬皮だ。

彼の口唇が自嘲で歪んだ。
この硬さこそが自らが望んだものだ。




1度目を閉じて、ティトレイは空を見上げる。
空は静かに、村の、この島の何事も見守るように佇んでいた。
あまりにも大きすぎて、仮に瞳があったとしても自分には目を遣りもしないだろう。
その矮小さに何故だか少しだけ笑みを零すが、その発露が何の感情に根ざすものか、それが彼には分からない。
硝子のように無機質な、しかし澄み切った目で、ティトレイはそれを穏やかに凝らし視ながら、
少年の臓物が零れる音と舌を失った慟哭、その不協和音を思い出して彼はさも知らぬ憧れを覚える。
全てを出すように1つ深い息を吐いた後、彼はゆっくりと目を伏せた。
少しだけ、肩に掛かっていた重荷を落とすイメージ。
「やりやがったな。お前の勝ちだぜ、坊主」
あの一撃は決して誰かの腹を貫いた程度で狙いを逸らすような矢では無かった。
あれを止めるには、自分の体を縦にするなり、盾にするなり、
明確な「止める」という意思をその身体で証明しなければ、届かなかった。
詰まるところ、それが“選択すること”なのだとティトレイは思う。
選択せずただ茫洋とした有様で貫かれれば二人とも死んでいたように、選択するという意思はただそれだけで未来を捻じ曲げる。
それを成し得た。その事実だけで、痛いほどにその死が眩しい。
その対極の位置で、光に眩む自分には終りが近付いてきている。
顔にまで侵食してきた葉脈は一時ごとに、根を這わせるように進んできていた。
手がないので触れることはできないが、浮き上がったそれはさぞ気味が悪いだろうことは想像が付く。
そして外側よりも内側の方の想像を絶する気味の悪さは尋常ではない。
「あーあ、本当に樹になっちまうんだなぁ。髪は……葉か、花か。てっぺんだし、見栄え良いしなー」
いつものように弄くろうとして、既に髪を触る指先はおろか腕もないことを思い出して苦笑する。
これも手があれば、その感触を確かめることができたと残念がることも、
葉が擦れ合う音がしないことを幸いと思う気持ちも既に遠い。
「パッと咲くは秘境の希少種、その名もティートレーイの花で御座います、ってか? 
 だって俺だし。樹齢ン百年とか、それくらい長生きすんのかなぁ。面倒だな」
想像して、ここは笑うところだろうと思い押し殺した笑いを上げる。
減らず口を叩ける余裕と退屈を飼い馴らす手綱さえあれば、それなりに楽しく生きていけそうだが。
ふっと笑うのを止める。笑いながらの最中にも口周りの筋肉がいとも簡単に固まっていくのが分かるのは流石に笑えない。

――本当に、花は咲く?
ヒトの気持ちは皆同じだというなら、
心と体両方が揃ってヒトだというなら、
姿は違っても心が同じならその人はその人だというのなら、
自分は果たして、本当にティトレイ=クロウという1人のヒトなのだろうか。
血肉は疾うに幹や樹液。心はとっくにティトレイという一個人とは掛け離れている。
其処に咲くものがティトレイから咲く花である保障が何処にあるか。
ならばここにいる1人の半人間半植物は、一体誰なのだろうか。
愚問だと一笑に伏す。
姿形に囚われるのは無意味だし、心は既に無価値だ。
自分が一体誰なのかなど関係ない。頭痛を起こすために頭を使う気は毛頭無い。
名前があろうがなかろうが、同一人物だろうが別人だろうが、
自分は自分でしかなく、1人しかいない。
それで充分だ。きっと、充分だ。
それで充たされぬというのなら、この辛すぎる在り方は立ち往かない。




頬に冷たい何かが触れるのを感じて、彼は目を開ける。
鮮やかな青の空から、小さく白い何かが降りてくる。もう1度頬に落ちて、その冷たさが身に染みていく。
「……雪?」
そう呟いて、彼の視界が蔭る。
雪から守るかのように、目の前に銀髪の青年が立っていた。
ああ、お前がやったのか、とまだティトレイを維持する男は思った。
鼻で笑うようにしてティトレイはまるで其処にいる人間に贈るように虚空へ問う。
「俺が殺そうと思った瞬間後ろ向こうとしたよな、ヴェイグ。ほんの少し、でも確実に。
 あの状況で確実に自分よりも、カイルってのを気にしたよな、すごく強く」
それを捉えた瞬間、ティトレイの中で一つのシナリオが浮かんだ。
「俺はお前に言ったぞ。“まずその愛する所を奪わばすなわち聴かん”って、
 “お前が大事にしたがっているものが何なのか分かった”とハッキリ言ったぞ」
それは悪辣の具現たる策士の手法に肖った贋作ではあった。
「腕一本千切って、お前の握手を“絶交”したんだ。俺の覚悟は分かっていたよな?」
しかし、その模倣したモノは、紛れも無く本物だったのだ。
「俺を殺さないことが、あの坊主を殺すことと同じことだってのは分かっていたよな?」
これは殺すか殺さないかの選択肢ではない。
ティトレイを選ぶか、カイルを選ぶかの二択だった。
「時間切れも一つの選択肢だ。今更泣くんじゃねえよ馬鹿野郎」
苛立つような言葉が、ティトレイの口から吐き捨てられる。

深々と雪が降る。青い空の下で、白い雪が降る。
全てを包み込むように、覆い隠すように、
その白さを以てこの地で重ねられた数多の罪を潔白に染めるように、
そんなものでは覆い隠せはしないと黒き欺瞞を暴き立てるように。



少年は息を引き取った。
頭の隅ではそれを理解しても、他の部分が真っ白く侵され身体は全く動こうとしない。
涙を流しながら、少年の安らかな寝顔をただただ眺めている。
少年の血に落ちた雪は、まだ血がどこか温もりを持っているのか、じわりと溶けて滲んでいく。
それなのに、少年の身体に落ちた雪は溶けなかった。
微動だにしない2人に降る白いフォルスの雪は、何の変化もなく、ゆっくりと舞い降り2人を縁取る。
それほどまでにこの鐘楼台の麓は静かに、重く、そして寂しかった。
深い藍色、遠目から見れば黒を基調にした彼の服に、白い雪が降り積もっていく。
寒冷地で育ったと聞く彼の服は厚く作られているが、それでもこの寒さは身を切り刻むように伝わっているだろう。
この雪が少年に残された僅かな体温すら急速に奪っていることは傍らの剣も分かっていた。
青年の腕輪から何か力のようなものが持ち主に注ぎ込まれていく。
このままいけば、いや、既に少年に最後の手を下した権利者は青年になっていた。

だが、ディムロスは彼のフォルスを止めさせない。
少年の願いを無碍に出来るほど冷淡にはなり切れないし、
ましてや既に咎人たる自分に、彼に止めさせる言葉も持ち合わせていなかった。
同病相哀れむか。血の中に沈む意思持つ剣は、そう認識せざるを得なかった。




弱みなど決して見せなさそうな青年の目から、止め処なく涙が溢れている。
だからと言って口から咽びが出ている訳でもない。
ただ、自然に水が湧き流れ出るように、涙が溢れている。
それはただ涙を流し続ける廃人のようだった。
塞き止めていた防波堤が倒れてしまったかのように、制御するスイッチが壊れてしまったかのように。
それは箍が外れてしまったように彼は泣くことを止めようとはしない。
これしかできない。そう、少年に伝えようとしているようだった。

ヴェイグ、と剣は沈黙を破って呼び掛ける。
彼は口を固く結んだまま、何も答えようとしない。
剣はもう1度名を呼び掛けた。
俯いていた彼の顔が、更に俯き、震える喉でか細く声を絞り出した。

「俺は、間違ってしまったのか?」

剣は何の返答もできなかった。
少年の死に顔がどんなに安らかであろうと、少年が死んだという事実に何ら違いはない。
彼が、間違いではない答えを選んでさえいれば、少年は腹部から手から内臓を骨を晒さずに、死なずに済んだのか。
しかし震えるように吐き出される彼の言葉は誤っている。その問いそのものに重大な誤謬がある故に。

仮に、仮に親友を殺したとしたらこの結末はどうなっていただろうか。
ティトレイによるカイル殺害は成らず、文字通りカイルが少なくともこの時点では生きた未来だっただろう。
それは同時に、親友を殺した未来であり、彼は一生十字架を背負うだろうが、
少なくとも選んだ未来の結実が青年を慰めてくれるだろう。癒しになるかは別の話だが。
仮に、仮に殺さないと“選んだ”ならどうなっていただろうか。
カイルの死はこの流れに沿って完結しただろうし、余命幾許も無いティトレイの未来も数秒の差でしかないだろう。
だとしても、選んだことに知覚し責任を持つヴェイグは、後で押し潰されるかは別にしても少なくとも後悔はしなかっただろう。

だから、この選択に正解は存在しない。どちらを選んでも蜜も責め苦もあるのだ。
“最悪の選択肢を除き、その選ばされた未来に貴賎は無い”

だが剣は彼の選択を責めなかった。親友を殺すか殺さないかなど、迷い躊躇しない方がおかしいのだ。
しかし同じような慰めは言えない。
軍人として、1人の心持つ者として、“間違いではない”と肯定することなど出来はしない。
そして、カイルという業を生んでしまった人間を手放しで許容する訳にも行かなかった。
だから、剣は、ディムロスは間違っていると分かっても告げざるを得ない。
『……奴はどうする。あのまま放っておくのか』
コアクリスタルを光らせ、ディムロスは青年に努めて淡々と告げた。
彼は無言のまま大きく頭を振る。下から見上げる涙塗れの顔は苦痛に歪んでいた。
気持ちは充分に理解できる。何も考えたくないのはディムロスだって同様だ。
だが、それはもう許されない。
『あいつは、カイルを殺した。その事実は覆らない』
1人だけ悲劇の主人公を気取り何もせず佇むのは、ただの逃避にしか受け取られない。
どんな形であろうと、決着は勝手に着いてしまう。
ならば、その手で付けなければならない。もう“時間切れ”は許されない。




沈黙していた青年は、ディムロスを血の海の中から掴み、ふらりと立ち上がり、
ヴェイグは無言のまま自分の懐から一つの短剣を取り出した。
焼け焦げて、刃も零れ落ちた無用のチンクエディアを熱を奪われ切った血の海に沈める。
「カイル。これがお前の母親を殺した刃だ」
まるで冬の吐息のように冷たく震える言葉を紡ぎ、赤く染まる嘗ての青い刃を見送る。
脳裏に過ぎるのは自らが殺めた二つの命。
一人は、コレに氷を纏わせ背中から貫き殺した。
そして、もう一人は、直接この刃で“斬った”。
自らの愚かな望みの為に。
武器も持たず、それでも機転と才能の全てを駆使し生き抜こうとした一人の女を。
迷い無く、迷うことすら考えずにその生を踏みにじった。
「ルーティへの切符はここに置いて行く。だからカイル」
その眼はまるで氷のように蒼かった。

「もう、俺を許すな」

雪が降る中で太陽は更に西に傾いていく。
陽に照らされ黄金色の輝きを放つ、天を割く程の高さにも錯覚出来る塔を、彼はきっと見上げた。
「確かなモノがある。いま俺の中にある感情のままにそれを為したら――――――――もうやり直せない」
ヴェイグはカイルの遺体を凍結させながら、その大剣に声をかける。
『同感だ。だが、例えこの仮初の意識だろうと、その感情を傍らに置いたまま笑うことなど私には出来ない。
 故にお前を止められない。“私の心の均衡の為に”。私は、私達は軽蔑されるべき、咎の住人だ』
ディムロスは、声を震わせながらそう答える。
幾度と無く繰り返される希望、後悔、そして絶望。その終りに今度こそはと縋る様に見出した最後の希望。
その少年が、死の淵に這いながら進んでいく様を直視する。
その一秒一秒こそが彼らには耐え切れない罰だった。

剣士は何も語らない。剣も何一つ語らない。
胸中に有るのは剣を握るその手と握られる柄が焦げ付くほどの無力感と、爛れそうな絶望。
そして捌け口を求めて体内を暴れ狂う程の何か。
それだけが彼らを繋ぐ。
ヴェイグが上を見上げる。光に目を眩ませてしまいそうな太陽は、鐘楼の背に隠れている。
その上に、清算しなければならない罪が残っている。
「行くぞ。ディムロス」
その剣先に渦が巻いた。
コアレンズが輝き、ソーディアンから熱が、
ヴェイグが輝き、フォルスより冷気が放出され、
急激な温度差が互いを巻き込み気圧差、即ち風を生み出す。
同質にして対極の感情が螺旋を紡ぐ。
最初は無色透明だったものが埃を巻き込み、砂礫を巻き込み、
終にはディムロスの刀身を覆うようにして旋風が生まれる。
「風神剣!」
開放される風が地面を打ち付ける瞬間、上昇気流に乗ったヴェイグの跳躍は恐るべき高さを生み出した。





屋根の上に着地したヴェイグは息を弾ませることもなく、未だ倒れたままティトレイの様子を眺める。
ティトレイが見せる穏やかな表情はまるで先ほどまで殺す側に立っていた人間のものとは思えない。
だが、直ぐにヴェイグは否応なく納得させられる。
今振り返ってみればティトレイが唐突に逃げ出したこと自体――しかもわざわざこんな場所に――おかしいものだった。
全ては、ティトレイが仕組んだシナリオだったのだろう。
かつての親友を疑うことを心苦しく思うも、今目の前で倒れている男は、
少なくとも以前のティトレイ=クロウという人間とは違っているのだと彼は確かに認識していた。
事実、この男はカイルの腹部を貫いた事実は今もなお物証として存在する。
ティトレイの瞳は昨夜から変わらず光乏しく、生きているのにも関わらず生気が消え失せた顔付きは、
彼が知っている快活なティトレイのものとは程遠い。
今浮かべている笑みも、嘗て湛えられていた笑みとはどこかが決定的に違う。
ヴェイグの目に映る彼の姿は、今まで彼が持っていなかった冷たい空気を帯びていた。
たった数十センチの差の中に、見えずとも確かに其処にある壁が高く高く聳え立つ。

それは、聖と闇を、此岸と彼岸を隔てる壁。
2人の間にある、あらゆる物に対しての絶対的相違であり、隔絶であり、境界を定める何かだ。
その壁を前にして、彼は、もうティトレイの心には届かないと痛感する。
歩み寄り何もかも知り得なければ、ティトレイに起きた変遷を分かち合えなければ、理解というものには到底及ばない。
そして理解できなければ、相手の世界は非日常に押し込められた「日陰」だということになる。
例外や狂人という烙印を押された人間の、日陰の世界だと。
それを認めたくないというただの自分の我侭だと、彼、ヴェイグは今まで思っていた。
だからこそ彼は聖獣の力でティトレイを癒せると思い込み、実行した。
しかし、ティトレイは元には戻らなかった。戻らず、それでも言葉で戻そうと、殺すのを躊躇った果てにカイルは死んだ。
今あるのは、ただそれだけの現実だ。
嫌がる子供を無理矢理組み伏せるように、現実が真実を強引に規定する。

その現実こそが沈黙となって互いの距離を明確にし、深さを増長させている。



「どうよ。絶望したか?」
静寂を破り、ティトレイは笑いながら言った。
まるで他愛もない世間話を始めるかのような、そんな軽さ。
その言葉に明確な主語はなかったが、口にせずともヴェイグには理解でき、だからこそその軽さに絶望する。
「……お前は、一体何に」
「迷っている?」
口にする前に、先手を取らせ主導権を得させまいとティトレイは答えた。
「そう、迷ってる……んだろうな。紛れもなく」
逆光で表情までは分からなかったが、少し自嘲と寂しさが混じったような音だった。
ティトレイの輪郭を持った黒い影が僅かに顎を上げるだけ動く。
身体を包み込む緑色の衣服に別段異常はない。ただ、それよりも奥を見透かすように、まじまじと見つめている。
「だが何に迷ってるかは俺にも分からねぇ。だから、それを知りたかった」
燦々と照る昼間なのに物寂しげな雪の中で、ティトレイの呟きが静かに響く。
ティトレイの視線はいつの間にか欠けてしまった右腕へと移っていた。
千切れた服の向こうには、本来滴る筈である血は全く見受けられない。
代わりに透き通った琥珀色の液体が、粘り気を伴って時折ぽたりぽたりと落ちていた。
何より、人の肌とは思えない裂け方の断片が、短くなってしまった袖から見え隠れしている。
ヴェイグは沈黙を守ったままだ。
はは、と乾いた笑い声がティトレイの口から漏れる。
「あるバカがフォルスを暴走させてな。俺はそいつが何で暴走したかを知りたいんだよ」
ティトレイの顔を更なる侵食が進む。
血管が浮かび上がったように存在を目視できる脈は、顎から頬へと張り巡らされていく。
そこを通うのは決して血ではなく、水や養分なのだろう。
仰向けのままであるティトレイの顔にひとひらの雪が落ち、じわりと溶ける。
「知らないままじゃ、訳分かんねえ見えないものに支配されてるみたいで、本当、案山子みたいでな。
 案山子は案山子なりに昔持ってたはずの心を知りたい訳だ」
その儚い呟きは、すぐに冷気に混じって消えていった。
空は尚も青いが、小さな雲が1つ太陽に掛かろうとしていた。小柄な割には体積の大きい、重い雲だ。
「殺さないのか?」
作り物の目がヴェイグを射抜いた。
「……カイルを」
彼は小さく呟く。
「カイルを殺したのは俺だ。俺が殺したんだ」
ヴェイグの切とした声に、溜息を零すようにふっとティトレイは笑った。
「それには同意するけどよ。大人しく罪を被せたほうが楽だと思うぜ?
 それともあれか、殺したのは俺だからお前は悪くない、っていう俺を生かすための免罪符か?」
「……違う」
「じゃあクレスがこっちに来るのを待って、自分が殺されるのを待って俺を助けようとでも?」
「違う」
もう1度ティトレイは笑った。
「なら殺せばいいじゃんか。仇討とうとか思わないのかよ?」
ヴェイグは手の中にあるディムロスを握り締める。
そして、柄を上に、刃を下にし、ディムロスを振り上げる。
ティトレイは目を細めた。それは恐怖からには見えず、一種の安堵のように思えた。
雲が太陽に掛かろうとする一瞬、刀身が雪の間をくぐって差し込んだ光に煌く。焦点の絞られた切先は一気に拡大した。
何の躊躇いもない一閃が落とされる。
ティトレイは目を開けたままゆっくりと重い息を吐いた。息が吐き終わる頃に、剣は突き刺さった。
顔の横、ちょうど顔とサークレットに付けられた飾り布の間のスペースに落ちたということは、
振り下ろされた剣が作り出した風圧で布がはためいたことで窺い知れなかった。
肩にかかるほどのぼさぼさな髪が何房か離れる。
屋根に刺さったディムロスがかたかたと音を立てるほどに、ヴェイグの手は震えていた。




「何故、傷付け合わねばならない……?」
食い締められた歯は僅かに震え、その間から漏れるように小さな声が彼の口から出てくる。
「お前の願いは、力があれば叶うものなのか……?」
剣が振り下ろされても驚くような素振りも見せずにティトレイは、
その無感動な目でヴェイグを見つめ、彼の問い掛けに強いて言えば不思議そうな表情を返していた。
雲に光を遮られ、瞳から星が消える。
「知ってるか?世界に色がないんだぜ。例えじゃない。文字通りの意味でだ」
ティトレイはそれだけ答えた。
光の消えたその瞳は、琥珀色でありながら深い闇に繋がっていた。
何も見出せぬ、深い闇。
雲が流され、再び光が差し込む。ティトレイは眩しそうに目を細めた。
光は横に立つヴェイグの背丈に遮られて届いていなかった。
彼が口を開くより前にティトレイは背を向けた。重い足を引き摺るように、ゆっくりと進む。
その遅さは、足に付き纏う見えない何かを取り払いながら進んでいるかのようで。
青年の姿に、ヴェイグは昨夜の、素月の照った丘を思い出した。
そして、屋根の上に残っていた氷剣をヴェイグの方へ蹴り飛ばす。
ヴェイグは拾わずに、ティトレイの方へ向き直る。
それを足元に送られても、ヴェイグは沈黙したままだった。
ティトレイの声は穏やかなものだったが、どこか寂しげな音を秘めているように聞こえるが、その淋しさは表情には表れない。
「やっぱり、ヤマアラシはどうしたったって傷付くだけなんだよ」
だからこそ、ぽつりと発された言葉は静けさの中でやけに行き渡り、この寂しさに映えた。
「もうすぐ脳まで変わる。そうなったら唯の樹だ。敵討ちすら叶わないぜ」
その言葉の凄惨さとはかけ離れた笑顔でティトレイはヴェイグに背を向けて歩き始めた。

歩くティトレイはやはり空を見上げる。その向こうには草原が、海が、空が一面に敷き詰められた絨毯のように広がっている。
本当なら脇の横に奥など見出せないはずなのに。
無くなった腕の先の風景が今になってどうしようもない違和感に思え、ヴェイグには不思議でたまらなかった。
「言ってたよな。どうして傷付け合うのかって」
屋根の縁にまで歩いて、足を止めて振り返る。
緑髪が、微かに風に揺れた。
「傷付け合うんじゃない」
ヴェイグの脳裏に、よく分からない、直感とでも言うべき一抹の予感が光速で過ぎった。
彼はディムロスを落とした。乱雑に落ちた残響も耳に届かない。同時に手を伸ばした。
2人の間は数歩分しかない。しかし壁は高く聳え、境界線は互いを遮る。
けれどもヴェイグは、それでも体当たりにも似た必死さで、右手で荒々しく短剣に手を伸ばす。
そして振り返るのだ――――
裏切られた夢想と共に氷剣アイスコフィンを掴む。
氷を纏わせるようなこともせずに、ヴェイグはただティトレイに向かってゆっくりと前進する。
「選択を強いられ合うんだ。誰かが出会えば必ず」
ティトレイも呼応して屋根の淵から歩みだす。
二人が屋根の中心に近づいていく。
二人の肩がすれ違う。互いに背を向けたまま。
「それが、このゲームの答えだからだ」
ティトレイが振り返ると同時に、ヴェイグの左手がティトレイの手を掴もうとして、空を掴んだ。
何も掴めないし、もう何も届かない。
彼の左手は酷い火傷を負っているのにも関わらず、ヴェイグは左手を爪が肉に食い込むほどに握った。
ティトレイは初めて驚愕らしい驚愕を前面に出し、ヴェイグを見つめる。
ただでさえ焦げた服の向こうに見える火傷は激痛を発しているのだろう。
とてもではないが、力を込めて握ることが出来る痛みではない。




違う、などとヴェイグは言わなかった。薄々分かっていたことだ。
だがそれは、言ってしまえば色んなものが削げ落ちていってしまいそうな真実だった。
「なあ、ヴェイグ。今のお前の素直な気持ちを、その刃で俺に教えてくれ。
 このパチモンの茶番の果てにあるものが、きっと俺が見たかったものだ」
驚愕を引っ込めフェイクの笑みをティトレイは浮かべる。
力を込めて強く食い縛られていた口が、小さくぽかりと開く。
「憎い」
静かに、しかしはっきりと3文字の呪詛は雪の中で冷たく響く。
「憎い。カイルを殺したお前が憎い。俺の中にある憎しみは、一体何だというんだ……?」
ヴェイグの内側から、かつての夜に生み出されたティトレイの過去が溢れ出す。
「破壊は悪だ。殺人は悪だ。なのに、俺は……俺の中に、どこかで肯定する自分がいる……」
氷刃を掴む指が深く食い込みぎりぎりと音を立てるほどに、強く握り締められていた。
二度と見失わぬように、強く。
それで彼は理解した。
「そうか」
ティトレイは少し安堵したような、そんな笑みを見せた。
失くしていた探し物を見つけたときのような、そんな歓喜と安心の笑み。
それでいて、例えなら有り得ないはずの、どこか諦観にも似た笑み。
ヴェイグの顔に広がる苦悶の表情とは正反対だった。
「羨ましいぜ。俺、そういうのもう分かんねえから」
ティトレイは、自然と重力に従ったように、顔を俯かせ影で表情を隠した。







何も分かっていなかった
全部間違いだった。正しさなど何処にも無かった。
何もかも、手遅れだったのだ。






「これは最後の忠告だ。“この後の展開”は俺の仕組んだことじゃない。
 だが、どうやら“シナリオは大凡同じ”みたいだ。俺のチンケな思惑を超えて、事態が回ってる」

ヴェイグは短剣を両手で握り、振り上げる。

「見せてくれないか。俺があの時勝っていたら、俺は一体どうなっていたのか」




髪が、花が伸びる。
サークレットが、額が、まだ人間だった頭蓋が貫かれる。
ティトレイは笑顔を浮かべた。今度は、心底嘲笑うかのように。

「付き合わせて悪かったな、ヴェイグ」
剣を伝い、鍔から流れ落ちるものはもうとっくに赤を失い、白濁としていた。

両腕を失ったティトレイにその刃を引き抜く手段は無く、よろめきながらティトレイは後ろに下がっていく。
彼の姿が、どんどん小さくなっていく。
足が端を越えて、空を踏む。ティトレイの体が傾いていく。
完全に上下が逆になったその体で、ティトレイは自らの樹液に汚れた瞳で世界を見つめる。
其処にあるのは、先ほどまでとなんら変わらない景色。
しかし、それは色を失った極彩色のモノクローム。


――――――ああ、これが、これが見たかった景色か。はは、いー眺め。でも――――――


それこそは、彼にとって最大の罪であり、
最大の裁きであり、
最大の、罰。


――――――本当にこれが見たかったのか?


ただ、額に突き刺さった短剣が、十字架の墓標のように墜ちていく。


――――――――――――――――――まあ、いっか。これで、やっと――――――――――――



そうして、地面で一本の樹が粉々に砕け散った。




ヴェイグが見下ろすと、確かにそこにティトレイがいた。否、両方の意味で、彼だった者がいた。
雪の中に白は映えない。頭部から流れ出る樹液がゆっくりと、しかし決して止まらずに広がっていく。
これでまた彼は汚れた。
守れなかった黒い血よりも、信じてくれた者の喀血よりも、誰かを殺した返り血よりも、何よりも一番汚れていた。
あらぬ方向に砕け散った木片がこの地で歩んできた道を体現しているようで嘔吐感を覚える。
目が離せなかった。美しいものや光景に心を奪われたなどという悪趣味ではない。
別の意味で心を奪われた。信じることが出来なかった。
目の前の、友が死んでいるというただ1つの現実に。

「……馬鹿……」

ぶらりと手を垂れ下げたまま、ヴェイグは何も浮かべず、ぽつりと呟いた。
その言葉がふっと口から出た瞬間、心に別の感情が流れ込んでくるのが分かった。唐突な、驚愕のようなものだった。

「馬鹿、だ……」

もう1度、吐き捨てるように呟く。
激流のように現れた感情を理解するのは簡単だった。
手が、体が、わなわなと震える。屋根の一面に霜が張る。

「馬鹿だ……お前は……ッ!!」



鮮やかな橙色の光が、目の前で輝いている。
差し込む光でくっきりと影が作られ、茜と墨を溶いたような黒は、美しい黄昏を形成していた。
何もかもがなくなり、静寂の中でその光だけが粒子さえ見えるように照り輝いた。
それも、もう少しすれば落ちる。
膝からがくりと落ちる。立ち上がるような力は入らなかった。口から、震えて言葉にならない文字の羅列が零れる。
手離した恐怖で、自律を失ったかのようにがくがくと大きく震えている。
握り締めようとしても上手く動かない。手を開いたのだということを自分に見せ付けているようだった。
少しだけ、手に温もりが残っている。それが確かに分かるだけに、手の戦慄きは収まらなかった。
離した。離してしまった。1度、やっと掴んだ手。
論理とか根拠とか何もかもを無視して、選んだ道。



その果てに、彼は何も掴めなかった。



「うあぁぁッ、あああ……ぅああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ……!!!」

叫びは怒りでも憎しみでもなかった。
あまりにも虚し過ぎて、陽の落ち始めた村に釣り合っていた。

手の温もりは、既に夕方の冷気で消え失せてしまっていく。
それでも、握っていたという手の感触だけが、掌で蟠り続けていた。



「ディムロス」
彼は跪いたまま、ただその光景を眺め呟く。死体の横にまた死体、考えうる最悪の全てがそこにあった。
剣は何も答えない。
「罪を背負った人間は、死で贖うしかないのか? 生きることさえ罪として、許されないのか?」
ヴェイグの中で去来するのは、その背中に羽根を背負い、絶望の中を駆けていく少年の姿。
「あいつも――――見ていたんだろうか、こんな……色褪せた世界を」

全てをやり直すことは罪の否定に他ならない。
全てを蘇らせることは罪の蘇生による罰の再来に他ならない。
ならばそれは、本当は、余りに傲慢ではないか。

だが、彼はその絶望の中で戦っている。微かな希望を掴もうと、この景色の中で――――

その景色の中から、飛び出してきたものをヴェイグは直ぐには理解できなかった。
「クレス、だと」
ヴェイグの瞳が遠くに焦点を合わせる。
その像を朧気に結んだ場所にいたのは、翻る紅い外套と紫に鈍く輝く魔剣。
『…………奴がここにいるとは、真逆、ロイドが』
ディムロスが言葉にするよりも早く、ヴェイグが剣を後ろに向ける。
全てを焼き滅ぼす焔の怒りと、全てを凍て付かせる氷の殺意。
噛み合い、相殺し合い、属性を偏らせること無く高密度のエネルギーだけを生み出していく。
二つにして一つの感情が、再び旋律を廻す。
「絶・瞬影迅…………風神剣!!」
剣より放たれる暴風に乗って、彼らはその高みより降り立った。
その景色より別れを告げて、全てをこの景色に変えてしまう為に。




「う…おええええっ!」
ヴェイグがその場所に辿り着き、まず目に付いたのは
消化不良の内容物が口を吐き出しながら、自らの咽喉を焼くクレス=アルベインの姿だった。
腰を落とし、両膝を突いたその様子は、ほんの少し前に見た姿とは大きく変わり果てていた。
「い……嫌だ……もう嫌だ……」
震える喉から聞こえる覇気を失った言葉がヴェイグの神経を苛立たせる。
何があったのかは類推できなかったが、一つだけハッキリとしていたのは、
その剣が大きく血に汚れているということだけ。
それだけで、自分達にロイドという、一縷の望みが絶たれたことを理解できた。
クレスが剣を掴み、ヴェイグの方を睨むが、その瞳はもう正気の色を残していない。
――弱い。
何もしなくともそれが分かったからだ。
氷を軽く飛ばし、それをディムロスで一気に蒸発させる。
ボン。
何が起きたかも分からない様子で動かないクレスに、ヴェイグの怒りはチリチリと上がっていく。
それは燃え上がるような激怒とは違い、
まるで触れた植物をガラスのように砕いてしまう液体窒素のような静かな怒りだった。

「ロイドを殺したのか」

ヴェイグの言葉にクレスはゆっくりと目と首を此方に移動させる。
「……で」
元よりクレスに返答を期待していた訳ではない。
ロイドは死んでしまったと認識するだけで、全身から汗が止み、熱が引くのが分かった。
最後の希望は潰え、カイルが望むような結末は絶対に訪れないという事実が、
最後に迷った一線を踏み越える意思をヴェイグに与える。
「……んで」
どちらを選んでも正解にならない。あるのは次善と最悪のみ。
罪の無いカイルの命を奪いながら、尚罪を重ねる俺達を生かすそんな世界は間違っている。
恐らく、カイルならばその理不尽を拒絶することなく許容するだろう。
だが、世界はそんな希望を拒絶した。ならば誰かがその間違いを“拒絶しなければならない”
「なんで、なんで居るんだよ。“僕”」
元殺人鬼から呆れるような言葉が送られ、ヴェイグは笑った。
溢れ出す暗い感情が、体に湧き上がってくる。



「久しぶりだな。この感覚は…」
憎むべきは、誤ったのはこの世界、そしてその王、そして俺自身。
その全てを破壊しなければ、間違いは正されない。
「何を言って」
会話の噛み合わないクレスの言葉などヴェイグには眼中に無く、
服に付けていた一つのバッジを地面に捨て去る。
それが、二度と迷わぬようにと願いを封じた決別の意思だった。
ミクトランをこの手で滅ぼすのならばこの島を、この世界を生かすわけにはいかないのだ。
それが意味するのは、仲間の死。しかし、ヴェイグは躊躇しない。
ルーティを殺しジェイを殺し、そして自らの過ちでカイルを殺し、
罪は自分にあると判りながらも親友を手にかけなければならなかったその身は、とっくに汚れ切っている。
この汚れ役は、自分にしか務まらない。
「言い残すことはあるか?」
目の前の障害など、滅ぼすべき一つのファクターでしかない。
「無いならば、せめて焼死か凍死か、好きな方を選べ」
なんとしっくり来るのだろうか。巡り巡って、辿り着いたのは結局最初の自分。
ああ、そうか。分かった。理解出来た。
これが、このゲームの答えだ。
「……クレスって、誰なんだ?」
教授を乞うような声でクレスが呟くが、ヴェイグには届かない。
カイルを、ロイドを、生き残るべきを殺しておきながら嘲笑うこのゲームを許す訳にはいかない。
罪には裁きが必要なのだ。
眼には水銀にも蒼炎にも似た青い光が宿る。
張りつめた大気の中、ヴェイグの感情が暴走と呼ぶに相応しい高まりを見せる。
手に持ったソーディアンの炎がヴェイグの氷と相殺し、
雪原は現出しないものの、その変質した場の空気は誰の目にも明らかだった。
もう悩むまい。何を選んでもこの世界は“間違いしかない”のだから迷いようが無い。
「ディムロス、悪いが付き合ってもらうぞ」
『……止めはすまい。ロイドが失われた今、ミクトランを討つにはそれしか手段が、無い。そして』
クレスは立ち上がり、紫の剣に手を掛けながらヴェイグに言の葉を向け、
「俺は、クレス=アルベインなんかじゃない」
剣を抜いて自信たっぷりに言い放った。
「答えは“剣”だ」
『私自身、この憤怒を抑えきれそうもない』
呪いの影響か、クレスはティトレイとは別の形で自己完結した一人芝居を続ける。
しかし敵を嗅ぐ力だけはあるのか、剣先は紛れも無くヴェイグに向かっていた。
「……行くぞ、ディムロス」
ヴェイグは蒼い炎でディムロスを光らせる。
クレスも自らの刃を同じように蒼い炎で光らせる。
「俺が俺である為に、偽者のお前は死ね。クレス=アルベイン」
最早破綻しきった会話ですら、ヴェイグは納得したように頷く。
「クレス=アルベインか……そうだな。今から俺が歩む道は、お前と同じ殺人鬼だ」
歯を軋ませるクレスを見て、ヴェイグの中を虫酸が走る。
嫌悪などと生易しいものでは無い。自らを含めて、この世界が許せない。
「お前は、俺が殺す」
例えカイルが、スタンが、ルーティがこの二人を許そうと、二人は自分を許せない。
願いも祈りも希望も踏みにじるこの世界は、許しては置けない。



「ならば殺人鬼らしく、惨たらしく殺させてもらう」

二人は同時にバックステップで御互いの距離を取る。
存在しない幻覚の森で、それを合図に二人は雄叫びを上げて走る。
一人は殺す為に。一人は屠る為に。

茂る森の中、あの夜にすでに決まった結末を覆すべく、
幻覚の森で、既に結末の決まった剣が交差した。


演者が疲れ死ねば、裏方が演者となる。
    裏方も死ねば、観客が演者となる。
         惨劇は滅ばず。悪夢は滅びず。ただ次の公演を待つ。
              違う舞台で、違う役者で、違う演出で、同じ演目を。いつか終わることを欲し。


               最後の一人が、踊り切るまで。



【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】
状態:HP30% TP50%(メンタルバンクルで回復) リオンのサック所持 左腕重度火傷 絶望 深い怒り
 両腕内出血 背中に3箇所裂傷 中度疲労 左眼失明 胸甲無し 半暴走
所持品:ミトスの手紙 メンタルバングル S・D
    45ACP弾7発マガジン×3 ナイトメアブーツ ホーリィリング
基本行動方針:全部を終わらせる
第一行動方針:クレスを殺す
第二行動方針:優勝してミクトランを殺す
現在位置:C3村東地区・鐘楼台付近

【SD】
状態:自分への激しい失望及び憤慨 後悔 深い怒り ヴェイグの感情に同調
基本行動方針:全部を終わらせる

C3村東地区・鐘楼台入口付近のドロップアイテム一覧:
鍋の蓋 フォースリング ウィス 忍刀血桜 クラトスの輝石 料理大全 ペルシャブーツ
蝙蝠の首輪 セレスティマント ロリポップ 魔玩ビシャスコア ミスティブルーム 漆黒の翼のバッジ
フィートシンボル バトルブック(半分燃焼) エメラルドリング クローナシンボル

【ティトレイ=クロウ 死亡確認】
【残り8人】

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