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  • Ace Combat -蒼紅連刃-

テイルズオブバトルロワイアル@wiki

Ace Combat -蒼紅連刃-

最終更新:2019年10月13日 21:46

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だれでも歓迎! 編集

Ace Combat -蒼紅連刃-


箒の後方先端より吹き出るものは今までの熱量の比ではない。
もはや火だと呼ぶしかない箒の中で焚かれた爆炎が周囲の大気を貪って旋風大嵐を巻き起こし、ディムロスたちを押し飛ばす。
その航行速度は先ほどまでとは桁が違う。彼女の放った地対空フリーズランサーの速さを僅かに上回っている。
空気抵抗も、機体重量も、そもそもの有人無人の有意差を含めて、その上で僅かに最高速度を上回った。
その意味に気づかぬアトワイトではなかったが、気付くよりも一歩ディムロスの加速が速い。
より巨大に、より先鋭となったファイアウォールは衝撃波とともに、
交差した八本のうちディムロスの眼前に立った運の悪い二本を消滅させた。
理想的密度以上に過凝縮された氷が気体と化してが爆発的な風を引き起こす。
彼らの背後を赤々と染める炎熱を目の当たりにしたアトワイトは唖然とすることを初手とするより無かった。
ディムロスが行った加速そのものには驚くべき要素はない。
他の変換装置を経由しての晶力の行使。今までと桁の違う出力は、より高位の術を燃料代りにしているからか。
ファイアストーム……だけとは考えられない。エクスプロードまではいかないくても、フレアトーネードはまず出している。
“速度が出ないなら、もっと燃料を炊けばいい”という至極シンプルな発想だ。
確かに高温になればより大きなエネルギーが生まれるのだから速度だって速まろう。
が、現実には物理の壁が立ちはだかる。風防の無い露天、魔的にあろうとも所詮は樹として朽ちる龍骨。
そして、アトワイトになくてディムロスにはある、例え音速の壁を越えられたとしても本当に危うい更なる壁――――人体への危険が。
『ッ、命令変更! 9番カラ12番集束射撃ッ!!』
驚愕を懸命に理性から押し放して、追撃に使うはずだった後詰のうちの半分を自分の前面に集めて発射する。
戦力は固めて使うのが当然であり、彼女の対応は決して正しいものとは言えなかったが、
ディムロス達の背後が夕空よりも紅くなっているのを見てしまってからの判断と加味すれば上出来というよりない。
“なんとしてでもあの殺人速度を殺さなければならないのだから”。
散発的な一撃ならばともかく4発分纏めて食らえば唯では済まぬと判断したか、ディムロスがアトワイトまでの直進コースを外す。
それを一目確認したアトワイトは速やかに乱れた前半8本を再編、ディムロスの後方より追撃させる。
あれだけの加速を行えば、当然回頭には負荷がかかる。カーブが頂点に達する一瞬今までよりも減速せざるを得ないはずだ。
だが、ディムロスはその思惑を否定した。
ディムロスの指示か、カイルが機首を大きく曲げ、ディムロス自身も炎嵐の噴射方向を変えて一気に90度近く右に曲がる。
強引に力を加えられたその軌道変更は、今までの旋回よりも半径を小さく鋭く、彼らに飛槍は一歩届かない。
1本が余熱にやられ砕けて溶けるほどの熱を纏って、ディムロス達が辛うじて飛び上った彼女たちの右斜めを横切っていく。
まだ決して距離がないわけではないのに、彼らの通った道をなぞる様にして渡る風がミトスの髪を煽いでいた。





吹き荒ぶ爆風の中、ミトスがトンと足を大地から蹴りあげてな飛翔し始める横で、
第一波を辛うじて凌いだアトワイトは残存する13本を並べながら、今の彼女からは想像もつかぬ叫びを上げた。
『止まりなさイっ! カイルを殺す気!?』
ディムロスは軌道を直して再突撃コースを選別しており、彼女の声にどう反応したかは分からなかった。
が、ミトスの眉根がぴくりと動き、苦虫を噛み潰したような面を見せる。
『貴方モ私もニン間じゃない。ダけど、その子は、カイるは違うデしょう!?』
アトワイトの視点はカイルに合わせられていた。
箒にしがみ付く様な格好になっている彼のその唯でさえボサボサの金髪も輪をかけたものになっており、
直撃してもいないのに、襤褸切れのような体を見せている。
『ソレだけの加速、空気テヰ抗や機体損耗モウを度外視でキてもその子ガ耐えラレない。重圧で圧シスるわ!!』
ディムロスが箒を加速させれば当然、それに乗っているカイルも加速することになる。
人体に重力を、加速度Gをかければどうなるか。当然目が回る、頭痛がする。平衡器官の不調と血流量の異常が身体を乱す。
その程度で済めばいいが、この速さはもうその段階を二段ほど吹き飛ばしている。
下手を打てば骨を折りかねない、人体に致命的な影響を与えかねないこの速度はカイルが搭乗したことのあるイクシフォスラーの比ではない。
少なくとも、この速度で撃ち落とされるか墜落すれば、確実にカイル=デュナミスというミートソースが出来上がるレヴェル。
アトワイトがそれに近い速度を維持できるのは、エクスフィア云々というよりも動かしているものが命なき氷だからだ。
ディムロスが出せば、剣である当人は耐えられても生身のカイルはそうはいかない。
ブラックホール。グラビティ。重力変動系の魔術による短時間の高Gならば慣れがあっても、長時間のそれは未知の領域だ。
なんの訓練も施されていない、なんの肉体的強化もされていない、ましてや怪我を負っている人間を乗せた箒の取る速度では絶対に有り得ない。
『百も千も承知……こうでもせねば、届くまい……お前にはァ!! 』
突撃コースに乗った彼らの第二波が再び彼女らに襲い掛かる。
ギシと悲鳴を上げる箒、煌々と燃える熱機関。その慟哭こそが必要だとでもいうように、ディムロスは猛った。





『ッ……馬鹿!!』
アトワイトが怒りに似た荒れた輝きを放ち、欠損した3本を拡充して再び16連槍を展開する。
『私のことを考えている暇があるなら、生きている人のことを考えなさい!!
 私と違って、貴方は、未だ守れるでしょう!! その子と生きて帰るのが、貴方の役目でしょう!!』
怒れる彼女は第一波の最高速度、旋回半径、推力データ算出し、次弾の軌道を計算する。
『ミトスの計画は墜ちた。ひょっとしたら、それは私が貴方に大いなる実りの存在を伝えたからなのかもしれない。
 貴方や、あのグリッドという男が洞窟に来て抗ったとしても助からなかったかもしれない。
 そんなことは、貴方に言われなくても解ってるのよ! でも彼女は、リアラはもう死んでしまったの!!』
幾ら速度は増そうが、数値化してしまえば唯のスペックだ。それに合わせてホーミング精度を弄ればいい。
あれ以上はカイルが即死する。幾ら危険にさらすといっても、それ以上は物理的に出せない。
『可能性なんて意味がない。未来なんて仕方ない。有るのは現実と事実だけ。
 善悪でも是非でも無く“私の行動が、彼女たちを追い詰めしまったってこと”だけなのよ』
足を殺す。12本を犠牲にして、先ず徹底的に速度を殺す。その後、残る4本で四肢を落とす。
出来れば左手が好い。大剣の重量を支えるべき左手が落ちれば、もう武器としてはふるえまい。
『耳がイカれてるかもしれないけど、カイル、貴方は言ったわね。
 “自分だってまだ生きてる。だから、終わりなんて何処にもない”って。
 コレットとあの子を見て、あの時少しだけ揺らぎそうになった理由が分かったわ。
 生きてるだけで機会はあるかもって、その実践例を見せて貰ったから』
メモリに記録された命。少女の心と少年の末路。ただの情報であるが故に、褪せることなく彼女に残っている。
『だけど、もし貴方があの時私を見逃したのがこの為だったというなら―――――貴方の方が終ってるわ!!』
射出される魔弾。一本一本が魔槍神槍の類と錯覚しそうなほどに磨き抜かれたそれが、惜しげもなく発動する。
『こんな場所にきて、その理由がミトスと決着? 馬鹿も休み休みいいなさい!
 そんなもの着けなくたって、生きていれば幾らでもなんとでもなるわよ。ウダウダと未練を引っ張ってるのは貴方だって同じ。
 ……私はもう終わってる。けど、貴方は続いてるわ。なのに、貴方はここに終わりに来た。
 そうして、ディムロスに振り回されて、命を危険に曝してる。甘さを通り越して滑稽よ!』
今までの射撃に比べ頭一つ抜きんでた弾速で飛来する敵意に、灼熱の防壁は精々日傘程度の役割しか機能していない。
『どうして自分を大切にしないの? 未来を危険に曝してまで何をしたいの?
 他人に口を出すことだけが一人前で、自ら死地に足を踏み入れて。そんな貴方に私達は指弾できない。
 ディムロスに振り回されてる今の貴方に、見つめ直す資格も、見つめ直す“自分”さえも無いッ!!』
紙“八”重ほどの距離で辛うじてディムロス達が凶器を避ける。
それなりの間隙を開けても、カイルの体が寒さにか大きく震えた。一重では、凍傷になってしまうからだ。
それほどの威力を彼女はそれに込めており、それは命を業火に晒し続けている彼らへの叱責だった。
『ディムロスもディムロスよ! 私達はそもそも人でもない唯の剣。
 解ってるんでしょ、この子は生き残るべきよ。貴方のエゴと私の未練で弄んでいい命じゃない!!』
だが、それでもディムロスは止まらない。迂回し、回避し、それでもその矛先だけは彼女の元を向いていた。
何かを締め付けられるような疼きを抱えながら、彼女は心を軋らせる。
『…………それでも、退かないなら。私が力ずくで帰してアゲる。四シの一つがもゲテも、“続き”はあるんでショう!?』
いまや彼女の願いは、唯平穏なる終息。終わってしまったその身にはそれでさえも過ぎた願いだ。
ミトスの望むそれは殺し合いの果てに終わるものであろうが、彼女にはそれは好しとできない。
願うものを失ったミトス。ミトスの願いを叶えられなかったアトワイト。
結果が同じであるのならば、カイルを巻き込むことはどうしても彼女には耐えがたかった。
リアラに続き、カイルまでその手に掛けてしまいそうな気がしたから。





四方八方併せて十二方の槍衾を彼らは避けるが、
それは避けるというより速度を差し出すことで見逃してもらっているというほうが正しい有様だった。
紙一重スレスレで処理できない彼らは僅かに大回りのカーブを描かざるを得ず、
必然、その度に速度が落ちていく。傍から見る限りでは大差ないようにみえても、
それは空にて戦うものにとって見逃せないものだった。
速度を出したくても、断続的に襲い来る氷槍は直線距離を彼らに与えない。

じわじわと彼らの戦略の生命線である速度を殺されていく中、カイルはそれどころではなかった。
(生きるんだ、何処までも)
骨や内蔵こそ軋むだけで済んでいるが、既に身体を把握するほどの認識力さえ無い。
(クラトスさんが、父さんが、ヴェイグさんが)
視界が歪む。耳鳴りが酷い。頭が眩む。天と地が逆巻いて空間が蕩ける。
(皆が守ってくれた、この命を生きるんだ)
体内血液がめまぐるしく方向を失った重力に引き寄せられる。
(守るんだ、今度こそ)
見るもの全てが灰と血赤と黒を混ぜ込んでいる。
(ディムロスを、ミントさんを、ヴェイグさんを)
息も満足に出来ない流体の中、眼に集まる血は鮮やかさの欠片も無い。
(俺を守ってくれた人たちのように、皆の未来を守るんだ)
脳から引いていったり集まったりと忙しなさに翻弄されて意識は白濁と化している。
(もう過ちたくない。間違えたくないんだ)
何もかもが濁り行く加速度の世界で、カイルは漫然と考えていた。
(俺が間違えたせいで、誰かの未来が閉ざされるなんて、もう耐えられない)
それは思考と呼べるような上等なものではない。
(守るために、生きるんだ。誰かにとって掛け替えのないものを、今度こそ守れるように)
平衡器官の失調にて細切れになった、鉋屑のような電気信号の残滓。
(もし、それで俺が傷ついても構わないよ。だって)
平生ならば決して表面に出ることは無かったであろう諦観と矛盾が、酸欠と貧血の狭間から浮かぶ。
(ディムロスも、アトワイトも、ヴェイグさんだって、皆にはまだ続きがあるから――――――俺と違って)
アトワイトの問い掛けにカイルは何の反応も見せられなかった。
(終わってる……そうかもしれない。俺はここで終わってしまいたかったのかもしれない)
生返事することさえも辛い空域であったこともあるが、今のカイルにはその言葉が素直に受け止められた。
(ヴェイグさんが傷つかない選択肢が、選べない。ただ一言、許すというだけでいいのに、それが言えない)
血も酸素も欠けて血が砕けた足を圧迫して、黒く濁って弱り切った脳髄故にその欺瞞を吸い込んだ。
(あの人たちを見て俺の中の欠損が嫉妬している。欠落が欲情している。俺には、もう何も残ってないのにと)
玉のように瑕疵のない魂の奥底の絶対たる矛盾を、ブラックアウト寸前の世界で彼は朧に掴む。
(この黒い焔に、もう耐えられそうにないんだ。
 どれだけ守ったって、オレの守りたかったモノは、もう――――――――――――
 どれだけ生きたって、オレが生きたかったワケは、もう――――――――――――『喧しいッ!!!!!!』ッ……!)
だが、カイルはそこに至る思考を纏めなかった。纏められなかった。
酩酊する脳だからこそ開きかけたその扉は、蝶番まで壊れて覗けこそすれ内側のもの引き出せなった。
精神の6割近くが天に吹っ飛んだ彼を守っているのはその懐に入れた紋章と、そして彼の持つ剣の言った言葉だ。
(考えるな……握ってるだけ……息を、合わせて……)
ただ、本当に箒と剣を力一杯に握り締めて、息の仕方を教えてもらうかのようにただ念ずる。
鉄砲のような風圧を頭の旋毛で受けて、眼さえも瞑って。カイルはただその瞼の裏に移る、あつい背中を見つめいていた。






『余所見する余裕があると思ったか! カイルに気を取る間をやるほど、今の俺は心広くは無いぞ!!』
直進を封じられて尚、尾を引くような炎熱が更に猛る。真横から襲い来る槍を横方向に発動したイラプションで凌ぎ、
同時に横方向の推力を強引に与えることで無理矢理曲がる。
旋回と同時に急激に曲がる熱軌跡は不死鳥の尾のよう棚引き、に後方より急襲を目論む数本の槍を少しずつ溶かし崩す。
進路上に置かれた正面からの攻撃が、伏せるカイルの頭髪を掠め十四、五本ほど切り裂く。
前方を守るはずのファイアウォールは既に最低限よりも薄皮一枚削がれ、速度に回されている。
本来旋回とは減速し慣性にて曲がるものであり、速度を上げて旋回行動に入れば空転等の危険が増す。
急激な方向転換はそれだけで加速度の変化を生み、人体を脅かしかねない。
『ヤメっ、やめなサい! 私は絶対に貴女の下には戻ラナい。貴なタガ何をしようと無駄よ!!』
『無駄かどうかは俺が決める。お前の位置まで届いた後で!!』
『その為にカイルを犠牲にスるとでもいうの? 唯の剣であルアなタが!? 唯の剣であルワたしを? 莫迦モイい加減にしなさいッ!!』
融解した表面の水分だけ軽くなった弾頭は更にその速力を増して、水を飛沫と散らせる。
より鋭利さを増す刃を、ディムロスは悉く被弾と回避の狭間で処理していく。
カイルの背中や箒の毛に少しずつ刻まれる痕は、彼らが水際を彷徨っていることを明確に物語っていた。
愚劣極まりない、戦術とも呼べぬただの突撃一択。一度推力がカイルと箒の重心を外せば地面に衝突するまでも無く飛散できる機動。
後先など考えているかも曖昧な気狂いの攻撃に箒もカイルも何の不平も言わない。
数え上げればキリの無い無茶と無謀の雨霰。その矢面に立っているのが、他でもないディムロスであることを理解しているが故に。
カイルは唯この戦場にて息をするだけで精一杯であり、箒に人格も自律回路も搭載されていない以上、移動攻撃防御全てを行なっているのはディムロスだ。
しかも、カイルが自らに精神的な疲労をさほど感じていない―――肉体的に感じすぎてそれ所ではないとも―――のだから、
その消費の殆どをディムロスが請け負っている。純粋な晶術はともかく、運動に関してはほぼ間違いない。
アトワイトのような“処置”も無く、これだけのことを一手に引き受けてその回路が無事であると考える方が無理な話なのだ。
ディムロスは、カイルに死に至る無茶をさせている。だが、生かすための最大限の処置を講じた上でだ。
噎せ返る程に茹だった死が充満する場所で戦い続けた男は細やかな気遣いを失ってはいない。
『其処までカイルの心配をするとはな。何処まで自分を蔑ろにするか!!』
『――――――ドノ口ガッ!!』
ディムロスの猛りに、アトワイトは初物を花と散らされた生娘のような声を上げた。
猛火の如き進撃への恐れではない。彼女が鉄面皮、と唾棄したディムロスの中の何かが炙られた蝋のように解けて、何かが出てこようとしている。
遠い記録の中にしかない、しかし先日の記憶ような“それ”を、彼女は畏れていた。





ディムロスは箒とカイルに幾らかの、そしてなによりもまず自らにかなりの無理をさせることによって、
限りなく最高速度を維持したままでの運動を可能としていた。
それは人には想像の出来ない労力なのではないか、とカイルは思った。
ディムロスはそれを一切口にしなかったが、カイルは確信めいたものをその剣に抱く。
あの時代で、ディムロスが戦場で戦う様を見たことは無かったが、きっとこういう風にして戦ってきたのだろうと思える。
先ず自分が最前線に立つ。道を造る。そこを兵が通る。自らに危険を集めることで、相対的に結果的に彼の後ろの者たちを守る。
安全を与えられた兵は否応無しに士気を盛り立てる。誰もがこのどうしようもない戦狂いを死なせぬように機能し始める。
自分の限界を、他者の為に引き出すことを厭わなくなる。
後方で口だけを動かす三両一分の指揮官では勝ち取ることの出来ない信頼が、唯の人間の集まりを軍隊へと昇華させる。
殺すことと守ることと攻めることが、一体となり、その狂熱にて軍が一つの大炎と化す。
だが、ディムロスはそんな洗練された人物でもないのかもしれない。
真下から箒の“腹”を狙ってきた一槍をハエか油虫のように邪険に見て吐き捨てる。
情人との逢瀬を間男に邪魔された雄の嫉妬に近かった。
『うろちょろと鬱陶しい……燃え尽きろ!!』
言うや否や、機首を真上に上げて、ブラシから豪炎を撒き散らす。まるで己の剣のように鮮やかに炎が薙ぎ払われた。
余りにも広範囲に撒き散らされた炎は槍の回避範囲を強引にすっぽりと収めてしまい、為すすべなく溶けてしまう。
『ッ……今更遅いのよ。私はマスターと、ミトすト終わる。ここが封鎖されルヨりも、それはきっと早い』
軋みさえ聞こえてきそうな程に、エクスフィアを輝かせてアトワイトが自らを振るう。
発生したブリザードが、残るフリーズランサーにまとわり付いて更に凝固して巨大化する。
『バカだと思うでしょう? こんな力を得ルタめに、私は私を捨テテモ良いとさえ思ったのよ。
 そんなバカな剣なンて、忘れなさい――――――――――忘れてッ!!』

『……先にカトンボを落とさんことにはどうにもならんか』
アトワイトの悲痛な声を聴こえなかったとばかりに無視しきって、ディムロスは吐き捨てた。
余りにも無体な態度に一見すれば冷酷とさえ見て取れるだろう。だが、カイルはそれを見ていない。
瞼を閉じて映るのは、一人の男だ。肩を優に越える青い長髪と真白い戦装束に相応しい冷静さ。
だが、嘗て超えた過去の世界で出会ったディムロス中将の色とは思えないほどに、その背中から迸るものがある。
その奥底で、もしあるのであればその腸を割いてしまいたいほどの怒りの熱を孕んでいる。
カイルは共感できる。自分が許せないと、万言を尽くしても解体できないほどに絡みきった情念を。
心身とも千路に乱れたカイルは知りたいと願った。傷を舐め合いたいなどという高尚なものではない。
唯、自分があまりにも物を知らないが故に、乾いた砂が水を吸うような受動さで、その背中に自らを預けた。
瞼の裏の男が剣を構えて、何かの技を撃とうとしている。
魔神剣だ、ロイドが使っていた、彼の父親も使える技。自分には無い技。
思考を文節にまで変換できないカイルは、ただその背中を真似た。
自分に出来るイメージで形だけ模倣する。それが今のカイルの限界だった。
既に身体に蓄えられていた十分な加速力を伝達させて、カイルは腕だけを振りぬく。
蒼破刃。剣先より飛び出る風の刃。吹けば掻き消えてしまうような小さな風。
だが、それで十分だった。呼吸を、意識を、剣に合わせる――――――――人刃一対、ソーディアンはそれで発露する。

『「魔神炎!!」』





ディムロスのレンズが輝くと同時に火が点されたかのように蒼い刃が紅く燃えた。
ソーディアン・ディムロスの最大特性。それは自らの晶力を用い、担い手の剣技を強化すること。
集った風に煽られた焔がその刃を鋭く大きくさせて飛び抜く。
(忘れてって、言ってるのに……それを、使うの? 貴方は……ッ)
それを見たアトワイトが回顧に大きく戦慄くが苛立ちでそれを食い縛り、事象を現実的な戦術問題へと落とし込んだ。
『……そンナ大昔の術剣で、私のヘン隊を止められルとでも!?』
アトワイトの一括にて残る氷槍が散らばり、紅刃を通り抜ける。
本来ならば地を這うべき衝撃波がどういう理屈か空を渡っているのかは驚くべき点だが、今はさほど重要ではない。
焔に幻惑されてはならない。所詮は唯の魔神剣だ。直撃は避けるべきだが、気を入れすぎるべきではない。
(再度、誘導切り替え――――――――ッ!?)
回避を終えて、再び攻撃に移ろうかとアトワイトが思った時に彼女はその異変に気づいた。
槍の穂先が鈍く震えている。当然彼女はそんな機微のある命令を出していない。
(センサーに異常…………違う! これって!!)
アトワイトがその主原因、及びそこから類推できるディムロスの仕掛けに気づいた時には既に遅かった。
過去へと眼を向けて現実へと振り返る一瞬の間隙が、彼女の応対を半歩遅らせる。
彼女が静止を命ずる前に氷槍達は“目標”へと向かった。
その弾頭を180度真逆に戻す。急激な回頭に耐え切れずに圧し折れた数本以外が全て、抜いたはずの魔神炎に向かう。
彼らは全く命令を違えていなかった。最速を以って目標に向かい、撃墜することだけが仕事であった。
だから、ごく当然に目標に殺到し、ごく自然に衝突し、ごく普通に粉砕した。
魔神の炎を消し潰して任務を達成し必然と滅んだ。

『フレあ、ディすぺンサ……』
自分の兵隊が砕け溶けていく様をある種呆然と眺めながらアトワイトはそう漏らした。
『あれだけの数、その全てに速度を維持して且つホーミングするとなれば誘導装置はシンプルに赤外線で行くしかない。俺とてそうする』
赤外線誘導。熱源を持つ目標への誘導方式の一種。
物体は須らく熱を持ち、赤外線を発し、高熱を持つ物体ほど赤外線を強く放つ。
エンジン等の高熱部の赤外線を検知して追尾するのがこの方式であり、弾頭自体が熱源を追尾するため母機が常時誘導する必要はない。
本来生成と同時に対象を目掛けて単純に襲い来るはずの魔術が長時間顕在し、尚且つホーミングを行う為には必要な自律追尾。
自らもよく知る波長の熱源であるからこその芸当。ディムロスの力を利用して飛行する箒は正にうってつけの追尾対象であった。
『晶術では反応しなかった所を見るに追尾方式の切り替えは出来るとみたが、剣にて俺の焔を振るえばそれも間に合うまい』
魔神炎。カイルの技でもスタンの技でもない、ディムロス=ティンバーの術剣技。
魔神剣と違い、地面を飛ばぬ蒼破刃を用いてその剣をディムロスが再築したのは攻撃が目的ではなかった。
即時発火によってディムロスとは別の、ディムロスと同種の炎を飛ばすことにる撹乱の一手はアトワイトの思惑を越える。
術ならば、アトワイトにもその事前動作を感知することよって看破できた。
素早くパッシブからアクティブへと切り替えるなり、プログラムを追加するなりの方法で対処が可能だ。
だが、ディムロスはカイルの剣を自らの焔へと変えた。連発は出来ずとも術と違い発動までのタイムラグは無い。
技を確認してから誘導方式を切り換えるのでは間に合わないのでは常時手動で操作するよりなく、
そして今のディムロスの速力に自らの処理能力では届かないと、砕けた氷槍を眺める彼女は分かっていた。
本来の目的を達成せずに無様に朽ちていくそれらを悪し様に非難することなど彼女にはできなかった。
彼らは命令を達したのだ。自分たちに与えられた機能を果たそうと尽くし、殉じた。
ただ、彼らよりも引いた視点ではそれは無様にしか映らない。彼らは真実に騙されていたが故に。
否、彼らにとってはそれは最後まで真実だったのだ。道具は真贋を見定める為に存在しているのではない。



『結局の処、我らもあの蠅も何も変わらん。何が真実であったかは結果論でしかない。
 俺も、お前も、あの時に取り得る最善と信じた手を打って、その結果がこの様だ。
 それによって真実が変わり、自分が行ったことを過ちと知り、悔やみ、先を見ることを厭うのも当然だろう』
追撃するべき絶好の機会をディムロスは逃がさない。再び突撃形態を採りアトワイトに向けて進撃する。
アトワイトは舌を打つ暇もなく後方に下がりながらニードルを散発的に射撃するが、炎壁牙楯の前には牽制にさえならない。
あれを突き破るにはフリーズランサー以上の威力が必要だ。だが、魔神炎という対抗策を切られたことで狙って落とす手段は消えて失せた。
『今頃になって開き直り!? 私ノコれはなんかじゃない。私にはもう何も残ってないといウタだの事実。
 もう、どうしようもなイノよ……あのコノように、夢を信じられルホど若くなヰ…………』
ディムロスの言葉に石のように固まった彼女の心が固まり過ぎて中で罅割れ、亀裂から染み出すような感情が水滴のように流れ落ちた。
過去を誤った自分の現在などとっくに穢れ切っている。穢れた手で掴めるのは、穢れた未来と黒い運命だけ。
だからこそ彼女はミトスに委ねた。せめて自分が選んだという後悔だけでも避けられないかと。
それさえも失った彼女が望むのは静寂な終焉。可もなく不可もない、痛みのない甘い死。
『“だが、それは現在を諦観する理由にはならん”のだ!! 現在と直結しない未来など、目を背ける口実にしかならん!
 可能性に甘えられるほど、お前も俺ももう子供ではないのだから!!』
雑多な弾列を一文字に切り裂きながら、ディムロスは叫んだ。
あったかも知れない最善手を考えたところで、それはもう打てない。
過去はどこまで振り返ろうと過去でしかなく、未来はどこまで行こうと未来でしかない。
戦うべきは現在。過去の過ちを繰り返さぬように尽くすのは現在。未来を善くするために尽くすのも現在だ。
「無理だね。過去は断ち切れない」
ディムロスが針の筵を抜け切って衝突しそうになった瞬間、嘲るような調子でミトスが今まで開けていなかった口を開いた。
氷壁を一枚貼り出した風に流れる様な流麗さで彼らを往なして転移し、距離を開ける。
「過去と現在と未来は元々連続性を持ってる、上流から下流に流れる川のようなものだ。切り取って語る時点で足りてない証拠だよ。
 例え間違いだと分かっていても、変えられないものがある。過去についた大きな傷は、どれだけ時が経とうが未来に至る痕となる」
アトワイトが僅かに怪訝な態度を顕す。このタイミングでミトスが割って入るという可能性を考慮していなかったからだ。
訝しむ彼女を尻目に半目に細めて彼女に何かを言ったあと、ミトスはディムロスの意思を嘲笑った。
それが出来れば苦労はしないのだろうと。自らを省みて笑うかのように。
ディムロスはそれを無視して、再び彼らに狙いを定めようとコースを決めようとする。
それに嘆息を付いたミトスは、カイルの方を一瞥して少しだけ考えてから再び口を開いた。

「始まった時点で付いた傷は、あるがままの流れは、変えられない。
 それを運命というんだろ? ―――――――――お前らの歪んだ過去のように」



さしものディムロスも、動きが止まる。減速と小旋回の後に浮遊した彼らとミトス達には十数メートルの距離が隔てられていた。
ディムロスが沈黙する中、やっと息が出来るとばかりに過呼吸ぎみに口を開きながら、カイルが口を開いた。
ディムロスの代わりに聞かなければならないと、思った気がした。
「どう…………いう…………意味だ…………」
「……その調子じゃ、気づいてないね。お前が一番先に気づける位置にいたろうに。いや……部外者じゃなかったら気付かないか」
口元を歪めたミトスがカイルの無能を論った。儀礼的な露悪が匂う振る舞いで彼は二本の指を立てて絡み合うようにくねらせた。
「あの女の話、アトワイトの話。そしてお前とスタンの関係を見るに、大方お前らは他の参加者と違って一つの世界から分岐をしているんだろ?
 昔取った杵で、僕もその手合いの話にはそこそこ造詣がある。僕が聞いた限りで言わせるなら――――――ソーディアンは“黒”だ」
絡みあった二指をカイルらに突き刺して、ミトスは吐き捨てた。
『みとス……そレは……』
アトワイトは何かを言わんとしたが、ミトスの吟味するような目付きを見て考え込んだように俯いた。
ディムロスはただ黙し、カイルは混濁する眼球でぼうとミトスとアトワイトを交互に見つめる。
「こいつはお前と出会った歴史、そしてミクトランと戦った歴史を持っている。この時点で、単純におかしい。
 両方が並び立つはずの無い二つの歴史を抱えるなんてこと、そうそう無い」
絡めた二本指を彼らに突き立てて、ミトスは稚児へ小水の仕方を教えるような丁寧さで当たり前のことを語る。
歴史は一人につき一つ。時間旅行者とて、観測する歴史の数は複数あれど保持する自分の歴史の数は変わらない。
「だけど、こいつは二つの歴史を持ってる。カイルの歴史とスタンの歴史とでも便宜的に別けるべき歴史を両方持っている。
 そしてその二つがなんの優劣も持たずに並び立っている。……物理的に有り得ないんだよ、お前らの記憶は、歴史は、過去は」
カイルはディムロスの方を反射的に向いた。沈黙が、アトワイトだけではなくディムロスにもミトスの推論が有効であることを物語っていた。
天地戦争時代、第二次天地戦争……カイルにとって18年前の時代……少なくとも、この歴史は2種類あり、そして絶対に混ざり合うことが無い。
だが、ディムロスもアトワイトもそれを知っていた。何一つ不思議なく、思い出すかのように覚えていた。
まるで“誰かの都合に合わせるように”。セリフを機械的に覚えこまされた新米役者のように。
「どっちかの記憶が偽者で、後から書き込まれたか―――――或いは、両方が等価であることを考えたら、どっちも偽者か」
あまりにも当たり前すぎて、逆に気づけなかった現象にカイルは息を呑んだ。
そう、“カイルは知っている”。二つの歴史は同時に並び立たない。全てが終わった後に、歴史は可塑的に在るべき形へと戻る。
だが、ソーディアンはそのイレギュラーの最先端にあったのだ。
ソーディアンは所詮は剣に過ぎない。その記憶は、記憶ではなく記録。
カイルたちの知るソーディアンがスタンたちの歴史を上書きされたか、
スタンたちの持っていたソーディアンが、カイルたちの歴史を上書きされたか、
それとも、全く別のソーディアンが、二つの歴史を後付されたか。
いずれにしてもシャルティエがリオン=マグナスの手にあった以上、全ては一つの悪意に収束する。
ソーディアンという存在自体が、天上王ミクトランの掌の上にあることを疑わない理由にはなりはしない。



「だから……なんですか……終わってるっていうのは」
カイルは自然にアトワイトに言葉を投げかけていた。目隠しで小物を探すように選んでから、アトワイトはカイルに返した。
『…………理由ノ一つでは、あるワ。私たチハあまリにも存在が歪過ぎる。
 外側のミトスニ言われなかったら気ヅカなかったくらい微小で、気づいてしまエバ大きすギる齟齬……
 私たちの運命は最初から歪ンデる。ソンな事にさえ気づかナカった私は、もう壊れテるのよ』
それに、もうそんなことはどうだっていいんだしねと付け加えて彼女は言葉を切った。
彼女はこの村でミトスのそれを初めて聞いた時に、ある種平然と受け止めた。そんなことを論じる前からとっくに彼女は諦めていたから。
それを今になってミトスが切り出したのは、つまるところ戦術的な必然性でしかない。
ソーディアンにとって恐るべき推論。準備を進めながら彼女は、万が一にでもディムロスがこれで諦めてくれることを願った。
彼女の推論に従っているのかは判別つかないが、ミトスは鑑定するように眼を皿とし悪意を結ぼうとして、
「ま、そういう訳だ。お前らを取り巻く世界は最初から間違ってる。
 この三文芝居の小道具に過ぎないお前らにしてみれば夢も現実も大差ない。アトワイトのように誰かの道具に徹するのが幸せって――――」

『黙れ』

ぼぅ――――――――と、耳の奥で松明の弾ける音がした。
ミトスは口を一気に堅く結んで、流されるかのように後方へ一気に数メートル下がる。
ディムロス達と彼らは、最初から互いに一足飛びでは剣が届かないかなりの距離を空けていた。
術で遠距離戦を仕掛けるのであればその兆候は一発で判別できる。だが発汗しない天使の身体が、焦げる様な熱さを幻覚した。
殺意を飛ばしたなどという生易しいものではない。“あの距離から一撃一瞬で殺す気だった”と、ミトスの経験則が全身の総毛を立たせる。
「…………何をした?」
『二度は言わんぞ。今すぐその乳臭い口を閉じろ。俺は今、アトワイトと喋っているのだ。
 次にその口を開いたらカイルを待つまでもなくその顔を焼いて、笑うことも泣くこともできん面にしてやろう』
明瞭極まりない返答にミトスはおろか、アトワイトとカイルまで三者三様に驚き口を噤んだ。
その一言だけで幾万幾千の兵士を支配できるような恐怖と怒りが込められている。
『夢だろうが嘘だろうが正しかろうが間違っていようが、今俺にできることは一つしかない。
 戦うだけだ。少しでも過去が正しかったと思えるように、少しでも未来が開けたと信じられるように』
再び彼女に向けたディムロスの言葉は、後悔に満ち溢れていた。間近で聞いていたカイルにはそう聞こえてならなかった。
『ソレでも、戦うってイうの……? 何の為ニ…………』
まさか、ミクトランだとは言わないだろうか。そう幽かに思った彼女の期待に応えるように、ディムロスはそれを裏切った。
『私なら、それを最善としようがな。生憎ともう俺はその役から落ちている。
 お前もアレを聞いたのだろう? “既に玉は奴の掌”だ。指揮官としての私の出番はもうあるまい。ならば』
西より聞こえた慟哭。ディムロスが唱えたものも含む数多の辛酸を嘗め尽くしたその上で、己が理想を希求することを選んだ男の言の葉。
殺す者も殺される者も、一切を自らの配下とする裸の王様が今やこの舞台の中心なのだ。
自分にはもう二度とないと思っていたものを感じる。戦い抜く中で、磨かれてきたが故に失われて雑な石片のような粒子。
それを若さというのかもしれないと、この二日半に渡って駆け抜けてきたディムロスは自身の老けぶりとあの黒羽を振り返って思う。
柄にもなく、若い奴に負けられないなどと少しだけ思ってしまったがゆえに。
ならば今だけは昔に立ち返ろう。主役が科白筋を誤れば演目も止まるだろうが、端役のアドリブならばそうそう崩れはしない。
『だから、俺は心置きなくこの現在に全てを賭けよう。私が諦めたものを、今一度この手に取り戻すために。
その結果がどうなるかは神でもない自分には分からない。だが、その結果に対して全てを負う覚悟だけは据わっている。
戦略図を眺めて大局を見据えるよりは、その間近で暴れるほうが彼の性にあっていた。
降りることも出来ぬのこの舞台を徹底的に“楽しむ”よりないのだ。
それが人であろうが道具であろうが、駒で終わることを厭うなら。

『例えその結果がどうなろうとも、俺は、絶対に後悔はせん! 二度と、二度とだ!!』


現在に相対する覚悟を決めたディムロスの、裂帛と呼ぶよりない気迫を間近に受けながらカイルは心身を震わせた。
これが自らの知ることの無かった、ディムロス=ティンバーの側面なのだろうか。
だが、それは恐らく最初は意識的なものではなかったのだろうとカイルは曖昧に思った。
カイルに心配をかけさえまいという気遣いというよりは、苦痛を上回る高揚がレンズ越しに伝わる気がする。
信頼も結束もあの理知的な立ち振る舞いも、それは本物であっても原点でなかったのだろうとこのムラのある炎の熱に感じる。
向こう見ずな熱血、死と隣り合わせの最前線に愉悦を見出せる狂気、仲間の為に命を賭けられる勇気。
“突撃兵”やら”核弾頭”などという二つ名を授かってしまうような人物だったのだ。
カイルは分解しそうな精神の中で思う。きっと、自分の知る誰かと同じくらい本当はどうしようもない人だったんじゃないかと。
だからこそ、ディムロスは突撃兵にして核弾頭という二つ名を持って尚、人の上に立つ存在に成り得たのだろうか。
カイルは火傷してしまいそうなほどの熱を覚えるその柄を、力いっぱいに握った。火傷するならしてしまえとさえ思った。
ディムロスと繋がれたという錯覚に過ぎないが、カイルには今こそディムロスの苦悩が出来た気がする。
澄み渡る紅炎は何処までも自由に空を焼きにかかる。
一切の柵から解き放たれなんの束縛も無く猛る焔が、逆にディムロスが今まで背負っていたものの重さをカイルに明瞭化させた。
万を超える兵士、そしてその家族、それが住まう場所、それがある世界。
地上軍というものを背負い、世界の命運を賭して戦うということが如何に重いものか。そしてディムロスはそれを背負っていた。
自分の選択の一つで、何もかもが消し飛んでしまうかもしれない綱渡りを幾度となく繰り返してきたのだろう。
それをかつての自分は腰抜けと言ってきたのだ。臆病だと、人一人救えずに英雄であれるものかと。
今なら、カイルはその重さを“実体験”をもって理解できた。
ディムロスが自分の背負ったものを降ろすのに、どれだけの煩悶があったのだろうかなどカイルには到底及びもつかない。
だが、一つだけはっきりとしていることがある。これが選択するということの重さなのだ。
自分で、自分の意志で、自分の欲望を本気で通すにはそれだけの覚悟が要るということを。

『ディム、ロス……』
男の名を嘯く。エクスフィアの侵食か、酷く滲んでいる視界は万物の輪郭を曖昧にしていたが、彼女は明瞭にその位置を掴むことができた。
例えその記憶が意味の無い脚本だったとしても、その刃が覚える焔の熱さは千年前より変わらず彼女の中にあった真実だ。
少なくともそう信じてしまえるに値する熱さだった。

―――――――――けどさ、あんたの中にも何か引っかかるものがあるなら、その気持ちを信じてみるのも手だと思う。



あの少年の言葉を思い出すのは何故だろうか。
血を撒き散らして、心臓を失って、それでもあの娘の下にたどり着いた彼のことを。
考えるまでもないそれを疑問形でしか表せないのは、彼女なりの最後の抵抗だった。
何を信じろというのか。冷え切った私は、あの娘ほど未来がある訳でもないのに。
「―――――――いうじゃあないか。天文をもう少し待ちたかったけど、已む無しだ」
諧謔に溢れたミトスの言葉が空に響き、彼は右の二指で刀身の両側を滑らせる。
刃を走る指のきめ細かさと冷たさは惑いかけた彼女の心を現実に戻すのに十分に機能した。
自分が彼の下に走れば、ミトスはひとりぼっちだという当たり前のことを今更ながらに思い出したのだ。
それを容喙できるほど、彼女は子供ではいられなかった。
『……ミトス、レイヲ待機。鏡を使ウわ』
未練を絞りきるかのような言葉をアトワイトは吐いて、ミトスは濁したような顔をしてそれに応ずる。
炎と音の障壁、超高速機動。どの道、彼女単独で今のディムロスに当てられる手段は限られている。
カイルと“ミトスの”死を待たずして決着とするならば、もう次で最後にするしかなかった。
『アトワイト!!』
ディムロスの叫びを意識的に遠ざけ、アトワイトは四連術式を起動させる。
もう全ては遅いととっくに理解している彼女は冷たく言い放つ。
『ディムロス……私は、貴方ほど真っ直ぐにハナれない。貴方と同ジミちは、もう、歩めナいのよ……』
声が上擦るのは石の軋みか、それとも未練がましさか。
でも、それでも、最後のチャンスがあるのなら。一体私は何を願っただろうか。

(……向こうが呼吸を整えた。来るぞ、休めたか?)
ディムロスの気遣いにカイルは頷きさえできず、心で応じた。それが幻聴幻覚の類であるなどという可能性は既に彼の中に無い。
信じるべきもの。信ずるべき自分。真贋など信頼の前には無意味。
だけど俺には、本当にそんなものがあるのだろうか。ディムロスは、一体彼女をどうするつもりなのか。
その懐疑さえ、今は呼吸の中に溶かし込む。今は唯、その呼吸を通じてディムロスの背中を見つめるよりない。



『セット。アイスウォール×4、四重水キョう』
アトワイトの張り詰めた号令によって、4枚の氷壁が凝結する。傾きを強めた夕陽の赤が、今までよりも強く反射していた。
『これで……終わらせる。私ノ一切を、貴方の合切ヲ―――――――――イケ!!』
ディムロスが疑問を形にする前に、丸みを帯びた4つ板が手裏剣のように回転をかけて曲線軌道を取った。
半ば反射的にディムロスは加速機動を取るよりも早く魔神炎を明後日の方角へと放つが、壁はなんの意にも介さずに自らの軌道を進むことに専心する。
セミホーミングでさえない完全手動によるマニュアル操作では、フレアは何の意味も為さない。
ディムロスは初撃による不意打ちではないことを確認したあたりでようやく疑念を言語レベルまで固めた。
無意味すぎると。
飛行力学の観点から見れば、ディムロスたちや先ほどの槍のように空気抵抗を受けにくい形の方が速く進めるのは道理だ。
いくら回転をかけた所で、その重量も加味した速度は先ほどの槍ほども無い。
重ねて自陣を守ることに使うならば兎も角、攻撃に使うのは一利も無かった。ならば――――
(ディムロス――――――あいつが……動く……)
『直接火力支援!? 否、全方位多角射撃ッ!!』
カイルの声とアイスウォールらがディムロスを素通りするのはほぼ同時だった。
その瞬間、ディムロスの中に蓄積された経験の幻想が全ての論理仮定を省いて結論を勘と導き出す。
答えを確かめるより先に、炉に火を灯すほうが先立った。相手の射撃速度は秒速にして約3×10の8乗メートル――――光速だ。
「アレは7割だったからな……特別だ。完全版を見せてやるよ。レイ!!」
ミトスの掌に光が集い、形成した光球から4本の分厚い光線が放たれる。
3本は見当違いの方向に向かうが、最後の一本が彼らにかっきりと狙いを定めて放たれる。
それを光の波と粒を肌で感じられるほどの距離で捌けたのは、カイルの反応がディムロスに通じたからといっても差し支えなかった。
だが、ディムロスにはカイルに労いの一言もかけられなかった。残りの3波が、彼らに狙いを定めているはずだから。
カイルを狙わなかった光線が予定通りにアイスウォールへと直撃し、理屈通りに内部へと侵入し、論理通りに媒質内で屈折し、当然の如く反射する。
軌道を120度ほど変えられた光線は現在ディムロス達がいる場所を図ったかのように襲い掛かった。
『鏡面―――――だけではないな。全反射もか!? リフレクターとは、やってくれる!!」
尋常ならざる軌跡を描きながら、ディムロスは何とも形容しがたい笑みを造った。賞賛といっても差し支えなかった。
歴史に伝わる最古の鏡は、水だったという。霜一つ見当たらぬほど魔的に磨き抜かれたその壁は完全なる鏡のそれに等しかった。
ディムロスが避けたころには既に壁は移動しており、次の反射を実行に移す。
光はただ己が己である為に輝き続けるのみ。追尾などという、魚の糞を追うような醜い真似は行なわない。
思惟の全く介在しない単純な物理現象による全方位攻撃がディムロスらを包囲する。
ミトスの属性とアトワイトの属性、光と水の骨頂が今、この戦場を文字通り輝かせていた。
(これ――――さっきの)
『対人用だ! 運では避けられん。喰らえば消し飛ぶぞ!!』
カイルの気づきに、ディムロスが訂正した。
ジャッジメントと村の鏡にて作られたものと、原理は同じ。だが、その精度は比べ物にならない。
光が拡散することで全体を漫然と破壊することを目的としたそれとは異なり、これは収束することで単体を確実に焼殺することを目的としている。
その基点となる魔術は確かにジャッジメントに比べれば格落ちしているが、ディムロスには余裕は一切無い。
間隙とも呼べぬほどの隙間を掻い潜ってディムロスが中空に停滞する彼女らを目掛けて魔神炎を打つが、
うち二枚が即座に重なって本来の職務たる防壁と化す。仕損じたことに舌を打つ暇さえなく、ディムロスは回避に戻る。
攻防一体のこの戦術に於いて真に瞠目するべきは、レイそのものではく絶えず反射角を合わせるように位置を変える氷壁の方だ。
光の拡散をゼロにまで限りなく近づけながら、それでいて全てが機能的な射撃を取れるにはどれほどの計算が必要になるか。
反射角、屈折率、表面の曲率……最悪、氷中の結晶構造・結晶を通る光路差まで弄っている可能性さえも考えなければならない。
何とも見事な役回りだ、とディムロスは今避けた一波から五波目を考慮しながら口の中で罵った。
完全なる支援。自らを立てることなく、他者を立てる。そこに自己は無く、唯尽くすことを誉れとする―――――天晴れな程の道具振りだ。



剣戟一合は万の言葉を尽くすより上回る。事情を把握していないディムロスにさえ理解できた。
彼女がどれほどにミトスと共に在ろうとしているのかを。
そして、どれほど乞われようと、如何ほど壊れようと、この場を離れられないのかを。
ディムロスの撓みを見透かすように炎熱を透過して、波光がブラシの毛先を掠める。
回数を重ねるごとに精度を増していくそれは最早三次元の迷宮。一歩正しい道を誤れば、袋小路にて光とともに掻き消えかねない。
計算速度と体力の差が徐々に自分達を圧迫している現実に即して戦を組み立てながら、ディムロスは内心で唸った。
もうあと10手も進めば、読み切れなくなる。読めても絶えず軌道を変えたことによる減速から動きが追いつかなくなる。
その前に手を打たなければならないが、攻と防をゼロタイムで切り替えられる向こうに攻め入るには手数が足りない。
足りぬのは火力か、速力か。否と、ディムロスの直感がそれを否定した。
そういう小手先の部分ではない。自分と彼女を隔てる決定的な何かこそを埋めなければ届かぬ。
『これで、最後よ。諦メて』
ディムロスと同じ結論を見透かしたかのようにアトワイトが最後の勧告を放った。
心中を知り尽くしたようなタイミングに、曲芸に近い回避行動を以てレーザーを捌いて応ずる。
『こコガ分水嶺よ。何を狙っテルかは分からないけど、“それ以上は”確実ニソの子を殺すワよ』
舌を巻くような思いをディムロスは覚えた。そう、ディムロスは既に策を用意している。
アトワイトは、ディムロスの何たるかを知り尽くしている。
ディムロスは、決して無意味な万歳突撃を好まない。
座して死を迎えるくらいならばせめて暴れて散ろうなどと考えるような男に、万の兵を束ねることなど出来ない。
そのディムロスがこの攻囲の中に未だに留まっているということは、そこに勝ち目を見出しているからに他ならないのだ。
そして、一秒ごとに目で分かるほどに追い詰められていくこの状況でその札を切らないということは、
“それが自分一人の被害では済まないから”以外に、考えられる余地は無い。
『夢からサめなさい。幾らくチデは何と言えても、私の知ッテいる人は守ルベきもノヲ見誤らナかったわ』
眉根をきつく細める彼女の姿を幻視できるくらいに、その一言は雑音に掠れて尚ディムロスに男としての何かを思い起こさせるものがあった。
もし肉体があったならば股下に疼きを覚えかねないほどの艶やかな声は、同時に彼に立ち返るべきものを考えさせる。
彼女の決意は本物だ。今のアトワイトに譲るべからざるものがある以上、彼女は絶対にこの場を離れないだろう。
つまり、ディムロスには如何な手段を講じようが彼女を救うことは出来ない。この戦に於ける戦果の最大値が決定した。
だから彼女はディムロスの熱を冷ますように諭しているのだ。
気持ちは届いた、十分だ、“だから退け”と。これ以上の攻勢は自体をただ泥沼に落とし込み戦果を減衰させる。カイルを意味無く死なせることになると。
ここは速やかに戦端を畳み、守勢に切り替えるべき時なのだ。守るべきもののために、引き際を見定めなければならないのであれば――――

(違う……!)



『っ!!』
「ディムロスが、どれくらいの覚悟決めて、ここまで来たのか……本当に、分かってんのかよ…………」
うつ伏せる様な態勢のまま、息を漏らすようにして大気の中にカイルの言葉が流れた。
肌は風速による冷却で青白くなっているが、その瞳には充血の赤以外の紅が混じっている。
「考えて、考えて、張り裂けそうになるくらい考えて、そんで、ここまで来たんだ……それを、帰れって、あるかよ……!!」
真上を見るかのように、カイルは眼球を吊り上げてアトワイトの方を見上げた。
「俺なんかとは比べ物にならないくらい、考えて此処に居るんだ。貴女だって……分かってんだろ……
 それを、今更、俺を理由にして、逃げるなよ……終わらせるなよ……
 こんだけ考えてくれる人がいるんだぞ、ちゃんと、返事してやれよ!! あんた未だ生きてんだろ!?」
“俺とは違って”。最後に続くべき言葉を、カイルは言わなかった。
だが、その抹消された文末は言葉にせずともアトワイトを押し黙らせるだけの力を持っていた。
『カイル……』
ディムロスは目の前の子供に思わず声を漏らした。鬱屈したものが発奮した、などというには複雑すぎる何かを表す言葉を持ち合わせていなかった。
「ディムロスも、ここで止めるなんていうなよ。貴方には、貴方のやりたいことがある。俺には、未だ分からないけど、貴方にはある」
恐らく、それは憧れと呼ぶべきものだったのかもしれない。自分の無くしてしまったものを、他者に見出したときにもつもの。
「それでも俺を大切に想ってくれるっていうなら、頼む。それを見せてくれ。俺が、きっと、叶えて見せるから……!!」
それを、守ってみたいと思った。自分に欠けてしまった何かが、その先にあるという確信だけがある。
『どうしテ、ナンでそこまでするの!? ディムろスと私の問ダイなのよ、貴方がイノチヲ賭ける場シょじゃない!!』
アトワイトがかぶりを振るようにして叫んだ。これは、余りにも下らない私戦だ。係わり合いになるべきではないのだ。

「一々何かするのにそんなに理由が要るのかよ……だったら、決まってんだろ…………」
カイルが、頭を上げながら唸った。ぼさぼさの金髪が後ろに流れていく。
アトワイトに聞かれるまで、自分でも何故ここまでするのかということを考えていなかったことに気づく。
だが、なんとなくそれに対する答えは直ぐに浮かび、尚且つしっくり来た。
最早痛いという段階を越している風圧を前にして、彼は目を背けなかった。
その背中を見る。そして、その背中を推す。そこに、理由などは要らなかった。
欠損だらけの中でも、彼をあの城で手にしたことだけは一度たりとも後悔していないことに気づいたから。

「今は、俺が……ディムロスの――――――――――マスターだからだッ!!!!」

少なくとも、カイルにとってそれはこの戦いに関わるに後悔しないだけの理由足りえた。



『ば、今顔を上げたら!』
カイル、とディムロスが言いかけた言葉はアトワイトの叫びにかき消された。
面を上げたことによって紙一重で避けられるはずの攻撃は、死へと距離を狭めた。
間接的にしか光を操作できないアトワイトにはその攻撃を止める手段が無い。反射的に飛び出た彼女の警告はその真実を現していた。
だが、過失致死に至るこの光の束を前にしてもカイルは毅然と前を向いている。
頬が風圧で凹み様になっていないの横顔の滑稽さとは裏腹に、眼球さえ一瞬で乾ききってしまいそうな大気の中でもその瞳は真っ直ぐにあった。
ざっと全体を空間的に認識し、4枚の位置を確認し終わったディムロスはそれに素直に可笑しみを覚え、“箒の火を切った”。
『ディムロス!?』
目の前で繰り広げられる状況に高性能化したはずのアトワイトの論理回路が追いつかない。
カイルを死なせぬ為に少しでも加速しなければならないはずの今、ディムロスはエンジンの駆動を落とした。
壮絶な光が雨霰と飛び交う中、傘から顔をだし、帰路へ急ぐ足さえも止まってしまえば自らの血にずぶ濡れになるしかない。
兵理では絶対に在りえない、そしてディムロスという男の人間性からみても考えられない現実が進行する。
その後ろでクスと笑ったミトスに気づかぬまま、アトワイトの思考が非現実な現実に一瞬止まった。
『―――――9時34度、4時218度、7時129度、2時3度!!』
「デルタ、レイッ!!」
ディムロスが数の羅列を叫んだが早いか、カイルの空いた左手に光が収束し三つに分かれて飛散する。
剣が認識した敵の攻撃方向へと一筋の光が走り、レイとぶつかる。
初級晶術と上級魔術だ。当然出力は比べ物になるはずも無く、相殺など出来る道理が無い。
だが、それで十分だった。十分な効果観測を経たアトワイトの射撃は正確に正確を期し狙いを精密なものにしている。
生と死の狭間を縫うような狙撃。だからこそ、“僅かにでも軌跡を狂わせられれば、それで命は凌げる”。
三つの火線が1度か2度ほど外側に弾け、カイルの頬と膝と背を掠めた。
自らの肉が焦げる匂いすら嗅げるほどの至近距離を通る光線を前にしてカイルの視線は微動だにしない。
絶えず揺蕩う心を眼前右側より迫る第四波へと絞り込んで、カイルは握り締めたディムロスを一気に切り上げる。
「閃光衝!」
光輝く太刀筋と光満たす鎚がぶつかり、赤い空が一瞬真白く包まれた。

昼夜の狭間、刹那の白夜に画像処理が追いつかないアトワイトの目が一瞬眩む。
全ては一瞬のことだった。
カイルが弾いたレーザーは一瞬だけ反れ、一瞬だけ彼らを生き延ばし、アトワイトの思考は一瞬後に戻り、一瞬後には彼らを捉えきるだろう。
だが、アトワイトはその一瞬に最大の警戒を持った。一瞬、そう、人間にして一瞬きの時間。
“それだけの時間があれば、爆発できる”と彼女は知っている。
『良くやった。後は、俺に任せろ』
光が思い思いの場所に散乱して空に赤い夜が戻ってきたとき、ディムロスはそう言った。
落下気味に停滞するその箒の、ブラシの先に太陽のような紅玉を携えながら。
今、ディムロスとカイルの間にそれ以上の言葉は要らなかった。
ソーディアンマスターであればそれは無用のものであり、何より、この一瞬は無駄に出来ない。
『ディムロス、貴方、何を言ってるのか分かってるの!?』
アトワイトがディムロスに言葉を尽くす。だが、極限まで高められたその火は既に臨界点に達している。
『どうやら俺もお前も読み違えていたようだ。
 ここに居るのは一廉の戦士だ。後ろに置いて守るべき弱者ではなく、肩を並べ共に血を流すべき戦友。
 守るべきものがあれば、振り返ったかも知れんが―――――――――どうにも、俺が憂うべきはお前だけで良いらしい』

最早ディムロスには彼女しか見えていなかった。その背中は、信じらるものに守られているが故に。

『アフターバーナー、点火――――――――エクスプロード!!』



空中戦において貴重たる数秒、蓄えに蓄えたそれをディムロスは解き放った。
尾翼より放たれる白色にまで高められた大炎は取り込んだ酸素の量が極限にまで高められた証だ。
燃焼させる気体の中の不燃だった酸素を更に取り込んで発生した、爆発と呼ぶに相応しい推進力がディムロスらを超音速の世界に誘う。
『こっちに向かってこない……墜ちる!?』
その極限まで高められた戦速にて真正面に向かってくると考えていたアトワイトの思考を、現実が斜め上に飛翔する。
それは少し考えれば誰にでも分かる当然の結果だった。あのレイの雨の中、緊急脱出的に発生した間隙の中で方向など定められるわけが無い。
ディムロス達は最大速度を以て、地面に激突するコースを描いていた。
(制御失敗―――――――違う! もっと狂った何か!!)
焔は時として感情を表す。術者の悦さえ熟れて漂ってきそうな爛火が、アトワイトに理解を促した。
正気と狂気を渡るこの神火は、解き放たれたディムロスそのものだ。狂と同等の“理”が存在する以上、暴発は在りえない。
彼女の読みに応えるようにして、ディムロスは箒の前後を軸としてカイル100度ほど回し、一気に機首を持ち上げて降下と同時に右旋回する。
衝撃波から減速した音が轟き地上の草を上空からも分かるほどに揺らす程の速度。
減速行程を一切省いたその旋回はどれほどの技巧を尽くしても旋回半径は大きく、また、人間の限界を超えていた。
カイルはその中でも姿勢を変えなかった。箒の突端が削れるほどの鋭角的な衝撃波が、カイルの正面に限って別の圧力と相殺されることで歪んでいる。
『風系ショウ術を合わせてる!? ム茶よ、今すぐ止メナさい……って、あの紋しょウ……』
音よりも早く動く彼らに音で伝える言葉など掻き消されるだけという当たり前の事実を忘却するほどにアトワイトは乱れた。
風で衝撃を相殺したとしても、加速度の毒が残っている。倍加された速度が人体に齎すのは、死以外に在りえない。
だが、カイルの眼は旋回の中心方向、下半身へ集められこそすれ、その意志を未だ滾らせていた。
いぶかしむべき現象、その答えをアトワイトは急激な速度によってついに彼の首から飛び出して揺れていたそれより見出す。
『くローナシんぼルッ!! 耐Gセイ御に使ッテるの!?』
アトワイトは全てに整合性を見出した。いかなディムロスとて、蛮勇と無謀と果敢の区別は付いている。
本来成層圏の彼方まで吹き飛ぶべきカイルの精神を紙一重でこの空に留めている鎖なのだと彼女は悟った。
狂っているとしか思えない有人での超加速機動は、これを支柱としているのだと。
ディムロスは確かにカイルを捨石とするのではなく、共に往くべきモノと捉えている。
彼は何処まで行こうとも、自分の知るディムロスでしかないのだということに彼女は気づかざるを得なかった。

頭半分。もとからさして満ち足りているとは言いがたいカイルの脳は、血と酸素を減らして磨耗している。
いかな紋章があらゆる悪性状態へ有効だとしても、病としての相と“航空現象としての”相が混じったそれを完全に抑えることは出来ない。
自分の視界の右から地面が縦に迫ってくるという得がたい体験にすら驚けないほどに衰弱しかけた彼は、
重ね合わせたディムロスの自我を核として追うことで自己を繋ぎ合わせることで、その意志を纏め上げていた。
剣先より伝わる、アトワイトへの感情。リオンのこと、ソロンと共にいたときのこと、ヴェイグに出会ったこと、父と再び出会ったこと。
ありとあらゆる情報が絡み合い、複雑怪奇に成り果てた理の糸。蜘蛛の網の如きそれを焼き払った彼の焔に、カイルは自らの欠損が埋まるのを感じた。
もうそろそろ地面が迫ってくるという頃合で旋回の頂点に達したカイルの身体が更に傾き、彼の天地が完全に入れ替わる。
それが合図だと確信するカイルの両の手が、瀬戸際に立って最後の覚悟を決めるディムロスを握り締めた。
逆さの視界を見下ろせば、そこには逆さに写る彼女らの姿。カイルは、それに自分までも名状できない気分を覚えた。
それは幻覚だとはカイルにも分かっている。これはディムロスをディムロスたらしめる核であり、カイルのそれではない。
だが、カイルはディムロスのそれにある一つの真実を見出した。

「岩斬、滅砕陣!!」
“俺には、俺が欠けている”





その真実がディムロスの我と、カイルの欠けた我を結びつけた。
常と全く逆と化し、カイルの剣が逆しまの頭上にある大地に斬り込まれる。
それでも箒は止まらない。剣を大地に突き刺したまま、驀進するその様は星を両断しかねない勢いだ。

『構えろアトワイト―――――――――他でもないこの“俺”が今、お前に会いに突撃<ゆ>く!!』

ディムロスの刀身が紅く燃ゆる。大地に突き立てて蓄えられたその熱に、ぼろぼろと毀れる岩石がとろりと溶けて地表に在りながらマグマと化す。
アトワイトが全てを察し、光線を反射させるべき鏡壁を残らず自らの下へ引き戻し、さらなる重ね掛けで強化する。
だが、それは無駄に等しい。絶対零度の壁を超えられぬ氷の女神の兵に、臨界を越えた火神の覇道を止められる道理が無い。
暖気完了。汝、其の心臓にプロメテウスの神火を灯せ。
一木一草悉くを焼き滅ぼして封じ込め、汝が覇道を此処に打ち建てよ。

『「覇道、滅封!!」』

振りぬかれる剣。傷口から血が吹き出るように、轟炎が大地を割った。
逆風より放たれて大地を走破すべき斬撃が、カイルの剣技特性、そして異様極まりないスプリットSからの唐竹真一文字によって反転する。
焔が礫と化した大地を溶かした道を通って空を渡り、彼女の下へと一直線に突き進む。
愚直に、故に最速に斬火は彼女の守備へと打ち当たる。しかし、それは衝突にさえなっていなかった。
(どうして、どうしてなんだろう)一枚目が水となる前に蒸発し、
(要らないと捨てたのに、欲しいとも思っていなかったのに)それと同時に二枚目が融け、
(心も、自分さえも切り捨てたはずなのに)三枚目が溶岩に解かされ、
(それでも来てくれた貴方を嬉しいと思ってしまうのは―――――――)
四枚目が岩石に砕かれたその狭間を貫通させて、箒の突端が彼女の前に広がる。
それでも彼の炎は止まらない。水さえも蒸気さえも燃やし、固体液体気体の三態の理さえも滅ぼし尽くす。
一瞬にて距離を詰め切ったその速度にさしものミトスも対応し切れなかったか、咄嗟に胸の前に出したアトワイトが弾かれて彼の手から飛ぶ。
自らの支配者の手より零れ落ちた自らの身体を中空に晒し、彼女は思った。
甘い夢を見るのは子供の特権だ。それは生きる希望になり、前へと突き進む原動力になる。輝かしき未来に手を曳かれて道を歩む。
大人だって夢を見る。ああであったとか、こうすればよかったという可能性という名の夢を。輝かない今を諦めるために。
夢など信じるほど若くは無い。可能性に縋れるほど子供でもいられない。

『アトワイトォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!』
だけど―――――――――現実に現れた彼女の王子様を否定できるほど、年老いてもいなかった。

カイルの右手がディムロスを握ったまま空を舞うアトワイトの柄を握り取る。
全てをプラズマにまで昇華するその彼の道の前には何人も立てはしない。
その作り上げた道を突き進むディムロスらの前には、全ての不浄を消し飛ばした爽快なる大気しか無かった。





『……私はお前に謝る術を持たん』
僅かばかりの静寂が今までの苛烈さが嘘のようにさえ思えるほどの長さを持った。
『一度口でそれを吐いてしまえば、あの時の私がお前を本当に裏切ったことになってしまう』
選ぶようにしてディムロスはゆっくりと言葉を紡いだ。アトワイトは、黙ってそれを待つ。
『償おうにもこの有様だ。下げる頭も、慰めてやる身体も如何ともし難い』
歯痒そうにディムロスは言った。慎重というよりはしどろもどろな言い回しが自分のこととはいえなんともじれったい。
意図的な遠回りが心底苦手なのだと自覚をしたディムロスは、意を決したように口を開いた。
『だから、その、なんだ。先のことはどうなるか約束もできんし、前のこともどうにも出来ん。
 だから……現在に誓う。俺は――――――お前と共に在ろう。もう、二度と離さん』
『でも……私は、もう……』
差しのべられたその手を、彼女は掴めなかった。
既に彼岸の淵の存在である自分はディムロスの進む道にはもう戻れない。
『なら、俺がお前の傍に在ろう。お前が滅ぶその時まで……いや、お前が滅んだ後もだ。
 お前が俺の道を進めないなら、それでもいい。俺に、お前の道を歩ませてくれ』
だが、ディムロスはそれを撥ね退けた。アトワイトの純粋な驚きが、触れる刃を通じて伝わる気がした。
『もう我等に出番は無い。後はあいつらが上手くやるだろう。少なくとも、そう信じられるだけの物はあった。だから……』
そこでディムロスは言葉を濁した。口中に留めたそれを舌先で弄んで、喉に戻す。
この言い方は卑怯に過ぎる。グリッドも言っていたではないか。理由は、自分の中にこそ持てと。

『俺が、お前と居たいんだ……駄目か?』

あまりに無骨、情けなく不細工、どうしようもなく単純。
千年生きたはずの洗練の欠片もない言葉。だけど、

『そんなの――――――――断れる訳、ないじゃない…………』

その言葉をこそ、彼女は欲しかった。
来るはずのない未来でもなく、失われてしまった過去でもなく、誰かとともに在れる現在こそが。

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