三竦み

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三竦み  ◆U1w5FvVRgk



 警察署前で遭遇しようとする者たちがいた。

 世界一の泥棒一味に属し、世界有数のガンマンでもある男。

 兄との偽りの絆を全てとする、絶対静止の力を有する少年。

 愛する人との約束を糧に生きる、心に鬼が巣くう少女。

 性別、性格、果ては世界まで違う三人だ。
 しかし、仲間や愛する人を探しているという目的だけは共通していた。
 この三人が同じエリアから殺し合いをスタートさせられたのは、故意か、偶然か、はたまた運命か。
 どれだとしても、邂逅の時は訪れようとしていた。

 ■  ■  ■

 初めて他の参加者と遭遇した、三者の反応はまちまちだった。
 警察署の玄関扉を開けた途端に、人が居たことに詩音は驚きを露にした。
 次元は眼前の両者を見比べて、自分の武装がもっとも貧弱だと判断するが、
 佇まいが変わることはなかった。
 前後を挟まれたロロは、どちらに対処すべきか一瞬躊躇してしまう。
 その迷いが詩音に先手を取らせた。

「動かないで!」

 詩音の持つAK−47が二人に向けられる。撃つためではなく、あくまで牽制を目的としてだが。
 詩音としてはこれで相手を萎縮させて、主導権を得るつもりだったが、当の二人は平然としている。
 強がってるのかと詩音は訝るが、そんな風には見えなかった。
 それなら本当に銃を向けられて平気だということになるが、どうにも考えにくい。
 もしや何か逆転できるものがあるのかと二人を見回すが、それぞれに持っているのはナイフかレイピア。
 レイピアはともかく、ナイフなら投げつけるという方法もあるが、失敗すればそれまでであり、
 仮に成功しても丸腰になってしまい、背後から攻撃される恐れがあるのでしないだろう。
 ならばどうして平気な様子なのか。詩音には分からない、状況だけ見れば詩音が圧倒的に有利な筈だ。
 なのに実際は五分、あるいは詩音の方が呑まれつつあった。

 詩音と次元たちとの差。まず年期の違いが挙げられる。
 いくら銃の扱いを知っているとはいえ、詩音は一介の学生に過ぎない。
 対して、傭兵として過ごしたこともある次元と、暗殺者として生きてきたロロ。
 二人にすれば銃など見慣れたもので、今更目にしただけでビクつくものではない。
 そうだとしても通常なら警戒するか、身構えはするだろう。だが二人はそれすら必要無いと判断した。
 何故ならば、詩音からは殺気を一切感じないから。
 次元もロロも、今までに幾多の人を殺してきた。それが生業と言えるほどに。
 だからこそ次元はもちろん、主に暗殺を手段としているロロでも分かる。
 相手が自分を殺そうとしているかどうかは。
 これだけなら所詮はただの感とでも否定されそうだが、もう一つ判断できる根拠があった。
 向けられているAK−47。その銃口が二人の足元に向けられていたから。
 詩音にすれば、万が一にも殺人は避けたいことだ。
 それが無意識にも頭や胴を避けさせ、足元を狙わせていた。
 これらのことから示し合わせたわけでもないのに、次元とロロはは同じ考えをしていた。
『少なくとも、目の前の女に自分を殺すつもりはないと』
 もっとも、現在の状況が銃を向けられて膠着状態なのは変わらないのだが。
 しばらくは続くかと思われたそんな状態から口火を切ったのは、以外にも最も寡黙な次元だった。

「譲ちゃん、それは初対面の相手に向けるもんじゃねえぞ。そもそもガキが持っていい玩具じゃない」

 諭すかのように話す次元。まるで火遊びをする子供を注意するかのようだ。
 明らかに舐められている。少しだけムッとした詩音は、次元を睨みつけながら反論した。

「ご忠告ありがとうございます。ですけど安心してください、これの扱いは慣れてますから」
「……そのようだな」

 銃の扱いに慣れているのは、堂に入った構えを見れば分かる。
 素人が銃を持ったら、普通は少なからず怯えや緊張が見えるものだ。
 次元には全くありがたい話ではないが、詩音にはそれが無い。
 そんな二人の様子に注意を払いながらも、ロロはどうすべきか思考を巡らせていた。
 本来のロロならば、迷わずギアスで動きを止めてからどうとでも対処しているだろう。
 しかし、今はギアスにどのような細工がされているか分からない。
 下手に使えば逆に危機を招く恐れがあった。
 制限として考えられるものはいくつかあるが、特に負担の増加を科されていれば一番不味い。
 ロロのギアスは発動中に心臓を止めなければならない。
 ある程度までは耐えられるが、負担が増していれば使える時間は必然的に短くなる。
 心臓が止まるので激しい動きもできない。
 最悪、発動中に倒れる恐れがあり、ロロとしてもそれだけは避けたかった。
 だが現時点でギアスを使わずに、前後の二人を殺す方法は無い。

(いや、まだ殺すと決める必要は無いのか)

 兄を守るために他の参加者を抹殺する。先程ロロはそう決めた。
 だが一つの懸念があった。兄であるルルーシュが、脱出を企てている場合だ。
 ルルーシュの性格を考慮すれば、V.V.の思惑通りになることを良しとはしないだろう。
 むしろ反逆する可能性が大いにありうる。その場合は脱出の役に立つ人材。
 要するに手駒となりうる参加者を殺すのは、寧ろ邪魔をしていることになる。
 だとしたら無闇に参加者を殺さず、使えるか使えないか判断してから殺しても遅くはないはずだ。
 そして殺し合いには、ジェレミア・ゴットバルト篠崎咲世子も参加している。
 この二人はルルーシュも信頼している部下だ。いくらなんでも簡単に殺すわけにはいかない。
 もちろん、ルルーシュが優勝を目指しているならば殺すだけだが。

(一先ずは抵抗の意思が無い振りをしよう。いきなり撃ってこないなら、今すぐ殺す気はないはずだ)
「あの、僕に殺し合いをするつもりはありません。
 できれば話し合いたいので銃を降ろしてもらえませんか」

 携えたナイフを置くと、ロロは手を上げた。
 いかにも気弱な様子で話すロロを、詩音は値踏みするかのように見ていく。
 一見した限りただの貧弱な少年だ。顔立ちからして日本人で無いことは詩音にも分かる。
 これなら仮に襲い掛かってきても撃退できるだろうと当たりを付け、再び次元に視線を移す。

「そっちのおじ様はどうなんですか? 殺し合いに乗っていないなら同じようにしてください」
「そいつは構わねえんだがな、一つ頼みがある」
「頼める状況ですか? まあ、聞くだけ聞きますけど」
「別に無理難題を言おうってわけじゃない。
 そこの坊主を俺の後ろに下がらせるか、俺が坊主の前まで歩くのを許可してくれればいい」

 次元の頼みに詩音は目を見張る。ロロも思わず振り向いてしまう。
 どちらも、どうしてそんなことをわざわざ頼むのかと問いたげだ。
 二人の視線に気付いたのか、次元は何でもないことのように答えた。

「気にすんな。ただ、俺より坊主の方が銃に近いのが気に食わないだけだ」

 気に食わない。そんな理由で銃口に近づくのかと、詩音とロロの表情に呆れが混ざる。
 もっとも、彼女たちも思い人や兄と同じ状況になったなら、同じ行動を取るだろうが。
 暫しの間、詩音は思案顔となり、どうすべきか考える。今の膠着状態は誰にとっても好ましくない。
 警察署前は十分に見晴らしが利く。もしも新たに誰かが現れたら、この場面をどう見るだろうか。
『少女が銃を向けて、男二人を脅迫している』ようにしか見えないだろう。
 詩音としても、そんなつまらない誤解は避けたいところだ。

(癪に障りますけど、ここは私が妥協しますか)

 決断した詩音は銃を下げて、二人に妥協案を告げる。

「分かりました、話し合いには応じます。ですけど、それ以上は近づかないでください
 それが条件です」

 詩音の答えに次元は苦笑を返すが、同意を示した。

「俺はいいぜ。坊主もそれでいいだろ?」

 次元の問いかけに、ロロは素直に頷く。
 ロロとしては、自分を話に挿まずに進められたので、良いも悪いもないのだが。
 一先ずは緊張した空気が弛緩したのを感じて、三人は一息付けた。
 そして気を取り直して、まずは自己紹介でも始めようとしたときだった。
 闇を照らす火柱が北東の空に上がったのは。

 ■  ■  ■

 突如上がった火柱に、詩音は空を眺めながら唖然とする。
 さしもの次元やロロも、それは変わらなかったのだが。

「花火にしては少し派手すぎねえか?」

 それでも次元には、まだ軽口を言う余裕があった。
 ロロが次元を睨んだ。そんなことを言ってる場合かと咎めているようだ。
 詩音は周囲には目を向けず、未だに空を眺めている。
 だが火柱が消えて、続けて煙が上がるぐらいになると、突然走り出した。
 次元やロロも気付いたが、呼び止めるでもなく詩音が走り去るのを見ているだけだ。
 そして姿が見えなくなるぐらいになって、漸く口を開いた。

「いいんですか。引き止めなくて」
「坊主。あの手の女は一度決めたら、どうやっても止まらねえもんさ」

 一つ溜め息を吐いて、次元はそう述べた。
 女性に関しては詳しくないロロも、そういうものかと一応は納得した。
 結局、先程までの状態は何だったのかと思うところもあるが、今はそれよりも重要なことがあった。
 二人は再度空を見上げる。北東の空では変わらずに、煙が立ち込めている。
 あそこで何かが起こっているのは確実だ。
 もしかしたら、二人の探し人が巻き込まれているかもしれない。
 しかし、二人が煙を見て最初に思い浮かんだのは、爆発に巻き込まれる相棒や兄ではなく、

(ルパンがやったのか?)
(兄さんがやったのかな?)

 爆発を起こす相棒や兄の姿だった。




【一日目黎明/H−9 警察署前】
次元大介ルパン三世(アニメ)】
[装備]レイピア@現実
[支給品]支給品一式、水鉄砲@ひぐらしのなく頃に、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
[状態]健康
[思考・行動]
0.坊主(ロロ)と話す
1.話した後は爆心地に向かう?
2.ヴイツーを殺して、殺し合いを止める
3.ルパン達を探す
4.ルルーシュとC.C.を探して、ヴイツーの情報を手に入れる
5.銃が欲しいな……

[備考]
※庭師の如雨露をただの如雨露だと思っています



ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]サバイバルナイフ@現実
[支給品]支給品一式、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、不明支給品0〜1
[状態]健康
[思考・行動]
0.男(次元)と話す
1.話した後は爆心地に向かう?
2.ルルーシュを守る。ルルーシュが脱出を目指しているなら協力する
3.他の参加者を殺す。脱出するなら、ルルーシュの役に立ちそうな参加者は生かす
4.竜宮レナ園崎魅音を優先して探し、殺す
5.前原圭一、園崎詩音、北条悟史、北条沙都子を警戒する
6.ギアスの使用はできるだけ控える(緊急時は使う)

[備考]
※19話ルルーシュ粛清前からの参戦です
※自身のギアスに制限がかけられている可能性に気づきました
※竜宮レナ・園崎魅音を危険人物と認識しています
※圭一のメモをある程度信じていますが、嘘の可能性も考えています


 ■  ■  ■


 詩音は一心不乱に街中を駆けていた。息が荒くなっているが気にも留めない。
 あの火柱と煙はどう見ても、何かが爆発して起きたものだ。
 もしかしたら、爆心地には悟史や沙都子が居るかもしれない。もちろん居ないのが一番だが。
 自分が警察署で手間取ってた間に手遅れになっている恐れもある。
 そうだとしたらゾッとしない話だ。だから一刻も早く、彼女は爆心地へと到着したかった。

(悟史君、沙都子……お願い、無事でいて)

 詩音の中では、既に次元たちのことは眼中に無い。
 彼女の最優先事項は悟史、沙都子の捜索。次いで仲間たちとの合流だ。
 その他の参加者を気にする余裕は無かった。


 ここまでの三人は、知り合いへの心配が余り無いようにも見えた。
 詩音は悟史と沙都子の心配は大いにしていたが、他の仲間に対しての心配は薄い。
 一見して薄情だと思うかもしれないが、一概にそうとは言えない。
 ただ三人は『自分の知り合いは合流する前に死ぬような連中ではない』と思っていただけだ。
 それだけ次元と詩音は仲間への、ロロは兄への信頼が厚かった。
 だが数時間後に行われる放送は、その信頼を嘲笑うかのごとく告げるだろう。

 次元たちルパン一味の宿敵の、ロロの何よりも大切な兄の、
 そして詩音の半身ともいえる、姉であり妹でもある少女の死を。



【一日目黎明/H−9 北東】
【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]AK−47(カラシニコフ銃)@現実
[支給品]支給品一式、AK−47のマガジン×9@現実、SEAL(封印)@仮面ライダー龍騎、
     クマのぬいぐるみ@ひぐらしのなく頃に
[状態]健康、若干興奮気味
[思考・行動]
1.爆心地に向かう
2.悟史に会う
3.仲間との合流、沙都子を優先

[備考]
※皆殺し編、沙都子救出後の綿流し祭の最中からの参戦です


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038:三人寄れば……一体どうなる? 園崎詩音 072:Ultimate thing(前編)
次元大介 068:二人の黒い殺し屋
ロロ・ランペルージ



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