ケイレイの手慰み 学院 ノイナの許嫁

ノイナの許嫁

新キャラと見せかけて、実は意味のないキャラです。
はじめは上級教育課程との関係性の設定上の理由で、アウレリアたんのお名前を借りてたんですが、どうも使い捨てになりそうなんで、別名にしますた。

トリはダリアとルスカシアにおねがいしますた。
ダリア様は、どんなことが悪いことかわかったうえで、意図的にそれらから距離を置き、さらに偽悪的にふるまうこともできる、とっても出来た良い御嬢さんなので、困ったときにはとても使いやすい。


 自習室はいつもどおり、生徒にざわめいていた。
 三期生が入学してきて、自習室は少し手狭になり、騒がしくもなった。
 二期生の友人たちは、ソロルを決めはじめていた。気立てのよいサーリアは最初の同室にソロルを申し込まれ、今この実習室でも、仲良く机を並べている。意外なことにドロテアにもソロルがいた。いた、というより逃がさなかったという気がする。一期生、二期生、三期生で仲良く集まって談笑してる姿もあり、なんとなく、ノイナはウェーラにも申し訳なかった気がしてくる。ノイナは最初のソロルに逃げられていた。
 つまるところ、今のノイナのすることと言ったら勉強か、それとも合唱部の新歓コンサート用意をするくらいしかない。
「・・・・・・」
 寂しくないと言えば嘘になる。ウェーラと同室の一年はとても楽しく、それこそあっという間に過ぎ去ってしまっていた。皆も同じであったらしく、三期生を迎えるためにすべてのソロルが別れる時には、ちょっとした涙の騒ぎになったものだった。それはアリアを送り出したときの大騒ぎに似て、またそれより少しだけ、皆にとっては耐えられるものだった。
 アリアはもう帰ってこないけれど、別れたソロルは翌朝にも同じ洗面所を使い、同じ自習室にやってくる。そして一期生と二期生で力を合わせて、三期生を迎えるための用意をした。
「・・・・・・」
 学院の中では一人身なのに、ケイロニウス・レオニダス公女としてのノイナはすでに伴侶が定まっている。というより己自ら定めた。ノイナの卒業を待って、正式の結婚となる。何というか、己で決めながら、決めたという気が今ではまったくしない。
 祖父は喜んでいるのか喜んでいないのかよくわからない。機嫌が良いのか、それとも悪いのか、むらがあってろくに話もできなかった。母やユーリアに言わせると、おじいちゃん子のノイナが男に取られる気がしてるんじゃない、とかなんとからしい。
 なんにせよ機神は蘇えり、それに関わる諸々で祖父も忙しくしているようだった。機神の乗り手のマルクスそのものは、軍務に戻ってしまっている。今は軍大にいるとか聞いていたが、手紙のやり取りをしているわけでもない。学院は修道会であり、世俗のことは持ちこめない建前になっている。学院側に話を通じない訳には行かないが、友人たちには知らせられなかった。何というか、友人を呼び集めて実は婚約しましたなどとは、言い出せないくらい気恥ずかしい。学生の中には、入学以前から許嫁を持っているものもいたのだが、学院に入学してからというと話には聞かない。
「・・・・・・」
「どうかなさいまして?」
 ドロテアがにやにやと聞く。彼女は思っていたよりも世話好きというのか、姉御肌というのか、ソロルの面倒を良く見ているらしい。今も脇に控えるように座っていて、膝の上に教本を開いている。ドロテアは続ける。
「ここの所お元気ないように見えますわ」
「別に」
 家のことは特に知らせないと決めていた。別に隠しているわけではない。だいたい貴族の子の多い学院では、放って置いてもレオニダス公爵家の機神が復活したことや、その前後の話も知れて広まる。
「・・・・・・お勉強中、ごめんなさい、ノイナさん」
 呼びかける声に振り返る。あまりなじみのない顔だった。
「ええと・・・・・・アウリシア様?」
「はい」
 その一期生が少し背をかがめている。三年になってからあまり見かけなくなったと思っていたが、どうやら上級教育課程を目指しているらしい。今も胸に本をかかえている。
「すこしよろしい?今でなくても良いのだけれど」
「いいえ。構いませんけれど」
 アウリシアは何故かあたりを見回し、自習室の外を促す。
「・・・・・・」
 何事だろうと思いながら、ノイナは帳面と教本をまとめて席を立った。
 アウリシアは、少し急ぎ足で歩いてゆく。柱の並ぶピロティから、緑の庭へと向かってゆく。低い茂みと校舎の狭間で、アウリシアは振り返る。
「ごめんなさい、急ぎの用というほどでもないのだけれど・・・・・・」
 そしてアウリシアはまた何故かあたりを見回して言う。
「レオニダス家の方が、学院にいらしたと思うのだけれど、何かご存じ?」
「家のですか?いいえ」
 初耳だった。
「どういうことでしょうか」
「今日、上級課程の書籍整理のお手伝いに行った時に、ぶつかってしまったの」
 アウリシアは話し始める。少し上ずった声で。
「アムリウス神父とご一緒だったのだけれど、私がぶつかったせいでお叱りを受けてしまって。レオニダス学生って呼ばれていたから、学院の上級課程の方なのかしらと思って」
「それはありません。当家から学院に来ているのは私だけのはずですし」
 レオニダス家というのは、ケイロニウス御一門の末席にあるけれど、代わりに、勝手に分家を増やしてケイロニウス一門に加えることはできない。そのように決められていた。レオニダス家自体が、本家と分家の一つずつしかなく、あとは事実上の分家筋なのだがケイロニウス一門ではない家がいくつかあるような、少し複雑なものとなっていた。レオニダス家の名前を持っている家も、本家と分家、事実上二つしかないはずだ。
 嫌な予感がする。ノイナは問う。
「ひょっとして、名前はマルクスとか」
「マルクス様とおっしゃるの?」
「いや、あの・・・・・・」
「落とした本を拾うのを手伝って下さったのだけれど、アムリウス神父は、学舎にして修道会で、男女の触れ合いは許していない。レオニダス学生は配慮を欠いてもらっては困るって」
「・・・・・・」
「わたしもお叱りを受けそうだったのだけれど、マルクス様は確かに配慮に欠けておりましたとお詫びされて、私に向かって、君も済まなかった。行きたまえって」
 なんとなく、いかにもやりそうな気がする。
「若い方なの。背が高くて。とってもハンサム」
 間違いない気がしてくる。
「普通の男の人とはおもえないくらい、繊細で」
 いやもう間違いない。完全に男のつもりでいるのは当人だけだ。なんとはなしに、非常に腹立たしい。そもそもマルクスは、帝都の軍大にいるはずではないか。そうか、軍大か、とノイナも腑に落ちた。
「あれはたしか、軍大にいるって聞いていましたから」
「軍の大学?じゃあ将来は将軍様?」
「そ、それはどうなんでしょう、そんなに甘くは無いとおもいますけど」
「じゃあ研究のほうなのかしらん」
「ど、どうなのかな」
「今度、聞いていただけますか」
「ええ、まあ」
「研究の方ならきっと、また学院にいらっしゃるでしょうし」
「・・・・・・浮気者」
「え?」
 口が滑り、アウリシアは覗き込むように聞き返してくる。ノイナはあわててかぶりを振った。しかもどうしてノイナが慌てふためかねばならないのだ。なのにまるで言い訳のように口が滑る。
「いえ。いやあ、あれには婚約者がいたはずで」
「ええ、本当に?」
 残念、とアウリシアは本を抱えたまま胸の前で手を握り合わせる。
「お相手の方、どんな方かご存知?」
「え?・・・・・・いや、その」
「きっと素敵なお相手なんでしょうねえ」
「・・・・・・」
「軍人さんだったなんて。ちっともそうは見えないから」
 だんだんえらい方向にねじ曲がってゆく。アウリシアの中で何か別のものが輝きはじめるのがわかる。言い出すなら早いうちでなければならないのに、言い出す言葉が見つからない。
「・・・・・・」
「お?」
 場違いな別の声が聞こえた。間違いであってほしかったけれど、たしかに声がした。ノイナは振り向く。
「ルスカシア・・・・・・」
「だけじゃないぞー、ダリアもアルブロシアもついてきてるぞ」
 庭の緑の狭間で、なぜか胸を張って、ルスカシアはわははと笑う。
「それで、何の相談?あたしも乗るよ?」
「お前なあ、そういう覗き根性の後ろにあたしらがついて歩くみたいに言うな!」
 その背をぺしっと後ろからダリアが叩く。さらに少し後ろで、困ったなあという顔をしながら、アルブロシアが会釈する。
「ほら、人の困りごとに聞き耳立てんじゃねえよ、はしたない」
 ダリアが荒っぽく言うと、ルスカシアは口をとがらせる。
「その口調ではしたないとか言うなよ」
「精神の問題だろうが」
「困りごとならみんなで解決する方が早いじゃん。そうだろー」
 それに、とルスカシアは腰に手を当てて背を逸らして見せる。
「盗み聞きするなら、声なんて掛けないよ」
「ふつうはそっとしとくもんだ。心の整理がつくまで話したくないことってあるだろうが」
 ダリアもまた、呆れたように腰に手を当てる。
 アウリシアは話しても良いものだろうかと、もの問い顔でノイナを見る。ノイナが首を振ると、アウリシアは素直にうなずいた。
「ノイナさんありがとう。おかげでいろいろ助かった」
「こちらこそ、ありがとう」
「じゃあね」
 それからアウリシアは小走りに駆けてゆく。その背中を見送って、ノイナはほっと息をついた。
「ほんとうに、大丈夫?」
 アルブロシアがそっと言う。
「ありがとう。本当に何でもないから」
「それで何の話だったの」
「え?ああ、うちの・・・・・・」
 応じかけてノイナはルスカシアを見る。あ、という顔でルスカシアもノイナを見返した。
「・・・・・・」
「お前はよー」
 ダリアのルスカシアを小突く音が響く。



 時系列をあまり考えずに書いていたから、実はノイナが学院にいる間のネタだったと気付いて、ちょっと慌てた。

 慌てても、ただでは起きない、元気な子(ケイレイ

 伸びそうなので、一旦ホールド
 だってもう、展開無限大だものw
 使い捨てキャラのアウリシアすら「アウリシアの初恋」なんてネタが出来るくらいにw
 マル子が女子寮側に迷い込んでダリア様たちを含めて隠れたり逃げたりの騒ぎとかw
 あと、みんなでマル子を見てやろう、ツアーとかw ツアーっていうかw
 上手くやれば、ノイナのソロルを召喚できそうなんだけどね。

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最終更新:2013年05月15日 22:44