人間が造りうる物に、完璧なものなど存在しない。
どれだけ硬い合金も、特殊構造の建築物も、いつかは朽ちる。
こまめな手入れや補強無しでは、確実に。
どれだけ硬い合金も、特殊構造の建築物も、いつかは朽ちる。
こまめな手入れや補強無しでは、確実に。
「なんなの……これ……?」
だが、それでも……鏡音リンは目の前の光景を理解できない。
予兆はあった。
最新型のバイクだという物体に乗ったお姉さんを、とりあえず追い始めてすぐだったか。
最新型のバイクだという物体に乗ったお姉さんを、とりあえず追い始めてすぐだったか。
地面が、揺れた。
地震かと思ったが、揺れは断続的に続き、また揺れの種類も違う。
そして揺れにあわせて聞こえてくる、重々しい轟音、何かが砕け散る音。
それらに埋もれて、何かが這いずる音も聞こえた気がする。
地震かと思ったが、揺れは断続的に続き、また揺れの種類も違う。
そして揺れにあわせて聞こえてくる、重々しい轟音、何かが砕け散る音。
それらに埋もれて、何かが這いずる音も聞こえた気がする。
自分の視界に映る景色に特に異常はなかった。
それだというのに、近くでなりやまない正体不明の音。
バイクを追いかけるよりも、そちらの状況の方が気になった。
それだというのに、近くでなりやまない正体不明の音。
バイクを追いかけるよりも、そちらの状況の方が気になった。
そして、今。
目の前の光景は、予想を遥かに上回る惨状。
地面のアスファルトは剥がされ、街路樹も全て薙ぎ倒されて転がっている。
電線はちぎれ、端から放電。水道管が破壊されたのか、水もそこかしこから吹き出している。
奔った電流によるものか、火災により民家は炎上。かと思えば、別の場所は吹雪でもあったかのような有様。
崩れ落ちた新宿のビルは無惨な灰色の瓦礫と化し、土煙をあげている。
電線はちぎれ、端から放電。水道管が破壊されたのか、水もそこかしこから吹き出している。
奔った電流によるものか、火災により民家は炎上。かと思えば、別の場所は吹雪でもあったかのような有様。
崩れ落ちた新宿のビルは無惨な灰色の瓦礫と化し、土煙をあげている。
これだけでも十分な損害だが、なによりも目をひくのは、その傷跡のでき方だ。
全てが極太の一直線、南から北にかけて、延々とこの悪夢の様な光景が続いているのだ。
局所的な大竜巻にしては、あまりに被害が大きすぎる。
いくら完璧ではないとはいえ、人間の造る建築物は1日程度でここまで派手に壊れることはない。
時の流れでも、天変地異でもない。ならば残されるのは、人為的な破壊。
明確な意思を持った破壊活動……東京都なら狙われても不思議ではないだろう。
局所的な大竜巻にしては、あまりに被害が大きすぎる。
いくら完璧ではないとはいえ、人間の造る建築物は1日程度でここまで派手に壊れることはない。
時の流れでも、天変地異でもない。ならば残されるのは、人為的な破壊。
明確な意思を持った破壊活動……東京都なら狙われても不思議ではないだろう。
だが、誰が、どうやって、ここまで見事に新宿を蹂躙したというのか?
「うーん……さっきのバイクが暴走して事故を起こしたってわけでもなさそうだな……」
どんな時も前向きな、おじさんこと織田信長でさえもこの光景には絶句していた。
得意の軽口の切れ味も大分鈍ってしまっている。
得意の軽口の切れ味も大分鈍ってしまっている。
「それは……多分ないです」
「だよねー」
「だよねー」
余談だが、信長のこの冗談が、別の区では現実のものとなっていることを、彼らは知らない。
「でも実際、何があったんだろうなー」
「こっち側は、ほとんど無傷……やっぱり竜巻なのかな?」
「こっち側は、ほとんど無傷……やっぱり竜巻なのかな?」
破壊された道から横に逸れれば、そこはいたって普通の、普段の新宿の道路。
この謎が、二人の首をさらに捻らせる。
この謎が、二人の首をさらに捻らせる。
「あ」
そんな時、リンの視界にある建物が映った。
二つの塔が目立つ――東京都庁だ。
破壊のルートからも外れており、都知事亡き今も誇らしげに建っている。
二つの塔が目立つ――東京都庁だ。
破壊のルートからも外れており、都知事亡き今も誇らしげに建っている。
「ねえおじさん、確か……都庁って一般の人も展望台が使えたよね?」
「うん、前に観光した時は普通に使えたな」
「上から見下ろしたら、少しは何かわかるかな……」
「なるほど!ならさっそく行くぞー!」
「えぇ!?ちょ、ちょっと待ってよおじさん!」
「うん、前に観光した時は普通に使えたな」
「上から見下ろしたら、少しは何かわかるかな……」
「なるほど!ならさっそく行くぞー!」
「えぇ!?ちょ、ちょっと待ってよおじさん!」
少し提案しただけなのだが、信長は早くも都庁目指して歩き始めている。
この思い切りのよさは見習いたい反面、少しは落ち着いてほしいというのがリンの率直な意見だ。
この思い切りのよさは見習いたい反面、少しは落ち着いてほしいというのがリンの率直な意見だ。
信長と出会い、酢豚をご馳走になってからそれなりの時間が経ったが……
「おじさーん!だからそっちは違う道だってばさー!」
織田信長を名乗るおじさんが、致命的に方向音痴だということはよくわかった。
怪しくて、でも悪い人ではなく。
見かけに反して親しみやすく、実の兄と同じように放っておけない、そんなおじさん。
ここに来るまでも度々道を間違え、自分がいなかったらどうなっていたことかと本当に不安になる。
怪しくて、でも悪い人ではなく。
見かけに反して親しみやすく、実の兄と同じように放っておけない、そんなおじさん。
ここに来るまでも度々道を間違え、自分がいなかったらどうなっていたことかと本当に不安になる。
逆に、この奇妙なおじさんに出会えていなかったら自分はどうなったのだろうか?
あるいは、おじさんが殺し合いに乗っていたとしたら?
あるいは、おじさんが殺し合いに乗っていたとしたら?
「……っ!」
そこまで考えて、リンの背筋は凍り付く。
別に信長が問題なのではないし、彼が殺し合いに乗っている姿も想像できない。
だが、他の参加者はどうだろうか?自分がまだ遭遇していないだけで、恐ろしい殺人鬼がいて……
信じられないが、この光景を作り上げたのだとしたら?
自分に支給された機皇帝もそうだが、用意されたデイパックも普通ではない。
当たりの支給品で、それこそアニメや映画に出てくるような長距離破壊兵器が支給されたのだとしたら?
新宿崩壊の音を聞いてから、それほど時間は経っていない。
もしまだ……その人物が付近にいたら?
さっき出会ったバイクお姉さんの時は、偶々運がよかっただけで……
別に信長が問題なのではないし、彼が殺し合いに乗っている姿も想像できない。
だが、他の参加者はどうだろうか?自分がまだ遭遇していないだけで、恐ろしい殺人鬼がいて……
信じられないが、この光景を作り上げたのだとしたら?
自分に支給された機皇帝もそうだが、用意されたデイパックも普通ではない。
当たりの支給品で、それこそアニメや映画に出てくるような長距離破壊兵器が支給されたのだとしたら?
新宿崩壊の音を聞いてから、それほど時間は経っていない。
もしまだ……その人物が付近にいたら?
さっき出会ったバイクお姉さんの時は、偶々運がよかっただけで……
「おじさ――」
嫌なものを感じ、ひき止めようとした矢先。
信長が『何か』に吹き飛ばされた。
信長が『何か』に吹き飛ばされた。
「!!」
見えなかった。
吹き飛ばされと判断したのは、瓦礫に突っ込む音が聞こえたためだ。
音がなければ、『消えた』としか認識できなかった。
信長のジョーク、というわけではない。
『何が』起きたかはわからないが、『誰が』やったのかは、リンでも理解できる。
吹き飛ばされと判断したのは、瓦礫に突っ込む音が聞こえたためだ。
音がなければ、『消えた』としか認識できなかった。
信長のジョーク、というわけではない。
『何が』起きたかはわからないが、『誰が』やったのかは、リンでも理解できる。
「女の子……!?」
つい先ほどまで信長がいた場所に、見知らぬ少女が立っている。
周りに他の人間がいない以上、彼女が信長を吹き飛ばしたと判断するしかない。
周りに他の人間がいない以上、彼女が信長を吹き飛ばしたと判断するしかない。
(なに……この感じ……すごく、怖い……!?)
リンは無意識のうちに半歩後ろに下がっていた。
見た目は確かに普通の少女、年齢もおそらく自分と近いはずだ。
それだというのに、あの少女から感じる得体の知れない恐ろしさはなんだというのか?
見た目は確かに普通の少女、年齢もおそらく自分と近いはずだ。
それだというのに、あの少女から感じる得体の知れない恐ろしさはなんだというのか?
「ほう……まだ人間がいたか……(cvイカ娘)」
「ひっ!?」
「ひっ!?」
少女がこちらをみやり、口を開く。
可愛らしい声とは余りにも不釣り合いな、凄みのきいた口調だ。
可愛らしい声とは余りにも不釣り合いな、凄みのきいた口調だ。
「あの忌々しい、我が言葉に耳を傾けなかった桃色の髪の女でないのが残念だが……」
「人の話を聞かない桃色の髪の女って……まさかルカお姉ちゃん!?」
「人の話を聞かない桃色の髪の女って……まさかルカお姉ちゃん!?」
得体の知れない少女に恐怖しつつも、その少女の口から出てきた人物像に、リンは思わず反応してしまう。
条件が、自分の姉にぴたりと当てはまってしまったのだ。
条件が、自分の姉にぴたりと当てはまってしまったのだ。
巡音ルカの芸名で活躍しているその姉は……
おおらかな性格と抜群のスタイル、天然混じりのおっとりとした言動に、男性ファンからの支持は圧倒的。
歌も非常に上手く、嫌な顔ひとつせずに際どい電波ソングも歌ってみせる。
そこは憧れるし、優しい彼女は家族に欠かせない存在だ。
だが人間、どこかしらに欠点があるもので。
『じゃあ、お尻を叩いてくれないかな~?えげつない程に』
ほぼ自慢の姉は、定期的にこの悪魔の呪文を口にするのだ。
彼女は生粋のドMであり、この状態では何を言っても『そんなことよりお尻叩いて!』で返してくる。
当然収録中にも発動し、結果彼女は人気はあるが、ゴールデンタイム出演不可となった。
彼女なら、このバトルロワイアルでも平気で尻叩きを要求するだろう。
相手の話も、下手すると最初のルールも聞かずに。
おおらかな性格と抜群のスタイル、天然混じりのおっとりとした言動に、男性ファンからの支持は圧倒的。
歌も非常に上手く、嫌な顔ひとつせずに際どい電波ソングも歌ってみせる。
そこは憧れるし、優しい彼女は家族に欠かせない存在だ。
だが人間、どこかしらに欠点があるもので。
『じゃあ、お尻を叩いてくれないかな~?えげつない程に』
ほぼ自慢の姉は、定期的にこの悪魔の呪文を口にするのだ。
彼女は生粋のドMであり、この状態では何を言っても『そんなことよりお尻叩いて!』で返してくる。
当然収録中にも発動し、結果彼女は人気はあるが、ゴールデンタイム出演不可となった。
彼女なら、このバトルロワイアルでも平気で尻叩きを要求するだろう。
相手の話も、下手すると最初のルールも聞かずに。
「お前の姉だと……?」
若干驚いたような表情を浮かべる少女。
やはりあの姉がまた何かやらかしたのだろう。
少女に対する恐怖心はぬぐえないが、いつもの癖で、リンは姉の代わりにまず謝罪をしようと考え――
やはりあの姉がまた何かやらかしたのだろう。
少女に対する恐怖心はぬぐえないが、いつもの癖で、リンは姉の代わりにまず謝罪をしようと考え――
「おのれえぇぇぇ!!!」
「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
言葉を口にするよりも早く、全身を『何か』に拘束された。
機皇帝に命令を下す暇も、動きを見切ることさえ許されない。
圧倒的な速度で迫ったそれは、少女の髪の毛……
否、伸縮自在かつ蠢く目玉がついた不気味なそれは髪というよりも、触手。
機皇帝に命令を下す暇も、動きを見切ることさえ許されない。
圧倒的な速度で迫ったそれは、少女の髪の毛……
否、伸縮自在かつ蠢く目玉がついた不気味なそれは髪というよりも、触手。
「今度は逃がさんぞ……生憎と、今の我は非常に気分がよろしくない。
ただでは殺さん……恨むのであれば、あの愚かな姉を恨むのだな……!」
「うっ……んぐ……!」
ただでは殺さん……恨むのであれば、あの愚かな姉を恨むのだな……!」
「うっ……んぐ……!」
少女から放たれているのは、明らかな殺意。
一体何をしたら、ここまで相手を怒らせることができるんだろう?
全身を締めつける触手に苦悶の表情を浮かべながらも、リンは頭の片隅でそんなことを考えていた。
一体何をしたら、ここまで相手を怒らせることができるんだろう?
全身を締めつける触手に苦悶の表情を浮かべながらも、リンは頭の片隅でそんなことを考えていた。
(あ、私……死んじゃうのかな……)
そして遅れて、自分に迫る死を実感する。
ある程度覚悟はしていたが、やはり自分が死ぬということは、恐ろしい。
長く生き、望むだけのことをして己の人生に満足した者ならまだしも、
鏡音リンはまだ14歳であり、やりたい事も、夢も、まだまだ沢山あるのだ。
ある程度覚悟はしていたが、やはり自分が死ぬということは、恐ろしい。
長く生き、望むだけのことをして己の人生に満足した者ならまだしも、
鏡音リンはまだ14歳であり、やりたい事も、夢も、まだまだ沢山あるのだ。
(やだ……なぁ……)
死にたくないと、思わず涙が零れ落ちる。
しかしそれを望んでも、自分がこの場を切り抜けることはできないということもわかっていた。
少女の頭から伸びる無数の触手に宙吊りにされ、振りほどけたとして落下すれば無事ではすまない。
機皇帝に助けて貰おうにも、口の奥まで粘つく触手をねじ込まれて、命令どころか呼吸もままならない。
しかしそれを望んでも、自分がこの場を切り抜けることはできないということもわかっていた。
少女の頭から伸びる無数の触手に宙吊りにされ、振りほどけたとして落下すれば無事ではすまない。
機皇帝に助けて貰おうにも、口の奥まで粘つく触手をねじ込まれて、命令どころか呼吸もままならない。
以前、長兄の部屋を掃除した際に見つけた薄い本の内容と、そんな自分の状況は酷似している。
本の中ではこの後、確か――
自分と似た年頃の少女数人が、色々なものに絡めとられてその身を蹂躙されて意識を手放す――
よくわからないが、とにかく酷い目にあう内容のものだったと記憶している。
脚色された本の内容でそれなのだ。より厳しい『現実』では、やはり真っ先に命を奪われるに決まっている。
認めたくないが、これは全て現実なのだ。
東京都での殺し合いも、この触手を操る少女の存在も、今まさに自分が死ぬことも。
もしかしたら、おじさんが織田信長という話も、本当だったのかもしれない。
本の中ではこの後、確か――
自分と似た年頃の少女数人が、色々なものに絡めとられてその身を蹂躙されて意識を手放す――
よくわからないが、とにかく酷い目にあう内容のものだったと記憶している。
脚色された本の内容でそれなのだ。より厳しい『現実』では、やはり真っ先に命を奪われるに決まっている。
認めたくないが、これは全て現実なのだ。
東京都での殺し合いも、この触手を操る少女の存在も、今まさに自分が死ぬことも。
もしかしたら、おじさんが織田信長という話も、本当だったのかもしれない。
(おじさんは……大丈夫……かな?お姉ちゃんも、お兄ちゃんも……)
おそらく、彼はこの恐ろしい触手で吹き飛ばされたのだろう。
一本一本が力強く、こんなもので叩かれたらただでは済まないというのはわかるが……
無事であれば、すぐにどこかに逃げて欲しい。
先程の少女の言い方からして、まだ次女は無事のはず。他の家族も、どうか無事であってほしい。
一本一本が力強く、こんなもので叩かれたらただでは済まないというのはわかるが……
無事であれば、すぐにどこかに逃げて欲しい。
先程の少女の言い方からして、まだ次女は無事のはず。他の家族も、どうか無事であってほしい。
「畏れよ、我を!そして……死ぬがいい!」
「―――っ!!」
「―――っ!!」
少女が叫ぶと同時に、両手足を拘束していた触手にさらに力がこもった。
それぞれが違う方向に動き、腕や足が嫌な悲鳴をあげる。
五体全てを、捻り切ろうとしているようだ。
それぞれが違う方向に動き、腕や足が嫌な悲鳴をあげる。
五体全てを、捻り切ろうとしているようだ。
(みんな……)
首に巻き付いた触手は、首輪以上に恐ろしい。
首輪で死ぬのと、全身を引きちぎられて死ぬのはどちらの方が楽なのか?
首輪で死ぬのと、全身を引きちぎられて死ぬのはどちらの方が楽なのか?
(ごめんなさい――)
やがて、空中から大量の液体が地面へと降り注ぐ。
「ぐっ……があぁあぁ!?」
「――え?」
「――え?」
少女の……いや、少女の型をとる昏き海淵の禍神の触手から溢れた体液が。
「いやー、すまんすまん。ちょっと飛ばされ過ぎてなぁ。大丈夫だったか、リン?」
「お、おじさん!?」
「お、おじさん!?」
禍神の触手の数本は切断され、捕らわれていたリンは落下するが、それを受けとめるのは織田信長。
怪我をしているが、このぐらいなんでもないといわんばかりに、最初に出会った時の笑顔を浮かべている。
二本の光り輝く剣を携えて。
怪我をしているが、このぐらいなんでもないといわんばかりに、最初に出会った時の笑顔を浮かべている。
二本の光り輝く剣を携えて。
「貴様……!よくもやってくれたな!今度は確実な死をくれてやる!」
「っ!機皇帝ワイゼル、おじさんを守って!」
「っ!機皇帝ワイゼル、おじさんを守って!」
まだ意識が少し朦朧とするが、リンは本能で支給された機皇帝に命令を下す。
動かないのではないかという不安はあったが……
思いが通じたのか、触手の少女に向かって機皇帝は立ち向かっていった。
動かないのではないかという不安はあったが……
思いが通じたのか、触手の少女に向かって機皇帝は立ち向かっていった。
「ち……世界樹の狗が造り上げた新たなゲートキーパーかっ!」
信長に向かって伸ばされた触手は向きを変え、束ねられ、機皇帝が振り下ろす剣を受け止めた。
直後、新たな触手が機皇帝を破壊せんと伸ばされたが、機皇帝もこれをかわしてみせる。
直後、新たな触手が機皇帝を破壊せんと伸ばされたが、機皇帝もこれをかわしてみせる。
巨大な機皇帝と渡り合ってみせる、この触手はやはりただ者ではないのだと改めて実感し、
リンはたまらずに震え上がる。
まだ全身に、さっきの感触も残っているのだ。死の感触が。
リンはたまらずに震え上がる。
まだ全身に、さっきの感触も残っているのだ。死の感触が。
「……ほらリン、これを使うんだ」
「え?」
「え?」
そんな震えるリンに、変わらずどこか抜けた表情で、信長が何かを差し出す。
「これって……?」
渡されたのは、リンの小さな掌の中にもおさまる、ボタンのついた小型の機械だった。
「おじさん……これは……?」
「『加速装置』っていって、押すだけで素早くなれるらしい。
サルとかが好きそうなこっちの剣も、なんか映画のアレみたいで格好いいだろう?」
「『加速装置』っていって、押すだけで素早くなれるらしい。
サルとかが好きそうなこっちの剣も、なんか映画のアレみたいで格好いいだろう?」
妙な音をたてて輝く剣を自慢気に見せる信長。
二人で最初に支給品確認をした時には、柄の部分しかない、がらくただったはずなのだが……
二人で最初に支給品確認をした時には、柄の部分しかない、がらくただったはずなのだが……
「そ、それは置いておくとして!おじさん、どうして私にこれを?」
「……押した回数だけ早くなれるらしいし、リン……お前は早くここから逃げるんだ」
「そんなっ!?あの女の子、どうみても普通じゃないよ!おじさんも一緒に……!」
「ワシ?ワシは大丈夫さ、格好いい剣もあるし、ほらワイゼル君も戦ってくれるみたいだしさ。
それじゃリン、またあとでな!」
「……押した回数だけ早くなれるらしいし、リン……お前は早くここから逃げるんだ」
「そんなっ!?あの女の子、どうみても普通じゃないよ!おじさんも一緒に……!」
「ワシ?ワシは大丈夫さ、格好いい剣もあるし、ほらワイゼル君も戦ってくれるみたいだしさ。
それじゃリン、またあとでな!」
言うや否や、信長は双剣を構えて禍神に斬り込んでいく。
「――!!」
その姿を見て、リンはぐっと下唇を噛み締めた。
振るわれる剣は一般的なものではないが、光の尾がその太刀筋の鋭さを物語る。
歴史上の織田信長と同一人物かどうかは別として、戦国の世を生き抜いてきた将の素質は確かだ。
振るわれる剣は一般的なものではないが、光の尾がその太刀筋の鋭さを物語る。
歴史上の織田信長と同一人物かどうかは別として、戦国の世を生き抜いてきた将の素質は確かだ。
その彼は、今まさに自分を逃がすために戦っている。
信じられない……いやもう信じるしかない。今この場において常識など役にたたないのだから。
加速装置を使用し、逃げ足が速くなったとしても、あの伸びる触手に絡めとられる可能性はある。
だからこそ、安全に触手の射程範囲外まで逃げられる時間を稼ぐ必要があった。
押すだけで速くなれるとは言っても、慣れない速さでは体のバランスを保つのも難しいだろう。
加速装置を使用し、逃げ足が速くなったとしても、あの伸びる触手に絡めとられる可能性はある。
だからこそ、安全に触手の射程範囲外まで逃げられる時間を稼ぐ必要があった。
押すだけで速くなれるとは言っても、慣れない速さでは体のバランスを保つのも難しいだろう。
(おじさん……!)
震える手で一度スイッチを押した瞬間、明らかに体が軽くなるのがわかった。
一回でこれだ。押し過ぎれば自滅してしまう。
リレーの選手でもなんでもない自分では、この不思議な機械の恩恵を受けたとしても……
すぐさま触手範囲外まで走ることなど、到底不可能。
下手にここに留まっても、自分は戦うことができない。足手まといになるだけだ。
最悪、先程みたいに捕らわれて、人質にされるかもしれない。
一回でこれだ。押し過ぎれば自滅してしまう。
リレーの選手でもなんでもない自分では、この不思議な機械の恩恵を受けたとしても……
すぐさま触手範囲外まで走ることなど、到底不可能。
下手にここに留まっても、自分は戦うことができない。足手まといになるだけだ。
最悪、先程みたいに捕らわれて、人質にされるかもしれない。
結局、逃げることしかできない。
(ごめんなさい!)
自分のためにも、そして信長のためにも。
「よっ!」
「ふん!……あの人間を逃がすために、自ら我が供物になりにくるとはな。
だが無駄なこと、この姿は不愉快極まりないが、おかげでこの支給品が使用できるようになったのだ……
速さを手に入れた我に、死角はないぞ!この世界にいる人間全て、根絶やしてくれる!」
「ふん!……あの人間を逃がすために、自ら我が供物になりにくるとはな。
だが無駄なこと、この姿は不愉快極まりないが、おかげでこの支給品が使用できるようになったのだ……
速さを手に入れた我に、死角はないぞ!この世界にいる人間全て、根絶やしてくれる!」
無数に蠢く触手は、それぞれが武器であり盾である。
斬撃を受け止め、別の触手で相手を叩きのめす。
斬撃を受け止め、別の触手で相手を叩きのめす。
「……」
「こざかしい!」
「こざかしい!」
そしてそれをさせんと、無言で機皇帝が剣を振るう。
この会場における主が逃走し、傍にいなくても先程下された命令を遂行する。
信長の剣とは異なる、冷たい刄。
この会場における主が逃走し、傍にいなくても先程下された命令を遂行する。
信長の剣とは異なる、冷たい刄。
「……人間と機械風情が、我の前に立ち塞がるか」
「んー、悪いけどリンは追わせないし、殺させないぞ?
KAITOの奴がVOCALOIDのことを家族と呼ぶように、ワシにとってもみんな大切な家族だからな。
あいつらを殺すとお主が言うなら……ワシはどんな手段を使ってでも、お主を止めてみせる!」
「んー、悪いけどリンは追わせないし、殺させないぞ?
KAITOの奴がVOCALOIDのことを家族と呼ぶように、ワシにとってもみんな大切な家族だからな。
あいつらを殺すとお主が言うなら……ワシはどんな手段を使ってでも、お主を止めてみせる!」
リンと会話をする時の表情とは全く違う、多くの兵を率いる将の険しい表情で、
信長がそれぞれの光剣を構えなおす。
その姿に、未知の触手の怪物を相手にするという恐怖心は全く感じられない。
その姿に呼応するかのように、機械の皇帝も並び立ち、構えなおす。
信長がそれぞれの光剣を構えなおす。
その姿に、未知の触手の怪物を相手にするという恐怖心は全く感じられない。
その姿に呼応するかのように、機械の皇帝も並び立ち、構えなおす。
(奇妙な髪型をした二刀流の将軍に、左腕に大剣を装備したやたら腰の細い機械兵……
なるほど、こやつらが部下の報告にあった、海都と深都が誇る最強の戦士か……
よもや手を組むとは……だが面白い)
なるほど、こやつらが部下の報告にあった、海都と深都が誇る最強の戦士か……
よもや手を組むとは……だが面白い)
禍神は、立ち塞がる双璧を前に、それでも余裕を崩さない。
「無様な姿となってしまっタコの苛立ち、お前たちで発散させるのも悪くないか……
海都も深都も実に愚かだな。我を討つことなど不可能……!」
海都も深都も実に愚かだな。我を討つことなど不可能……!」
禍神の帽子がくぱぁと開かれ、辺り一帯に邪悪な霧が吹き出される。
そして……
そして……
「「行くぞ!」」
戦いが、始まった――
【新宿区・都庁周辺/1日目・夕方】
【昏き海淵の禍神@世界樹の迷宮Ⅲ 星海の来訪者】
【状態】:美少女化、激怒、cv金元寿子、ダメージ(小)
疲労(中) 、カオステンタクル9時間使用不可
【装備】:触手髪(僅かに減少、再生中)禍神帽子(攻撃態勢)、ジェットブーツ
【道具】:基本支給品一式、(ランダム品0~2)
【思考】基本:参加者も、主催者(世界樹)も皆殺し。
0:目の前の将軍と機械兵を始末し、逃げた人間を追う
1:参加者、特に人間を殺す。
2:首輪を外す方法を探す。
3:元の姿に戻る方法も探す
※真の主催者が世界樹だと思い込んでいます
※制限については過去話参照
※過去の禍神とは別人です
※人間の姿の時に限り、帽子の開閉により防御形態の技も使用可能
※桃色の髪の女(高良みゆき)の名前をルカだと勘違いしました
【状態】:美少女化、激怒、cv金元寿子、ダメージ(小)
疲労(中) 、カオステンタクル9時間使用不可
【装備】:触手髪(僅かに減少、再生中)禍神帽子(攻撃態勢)、ジェットブーツ
【道具】:基本支給品一式、(ランダム品0~2)
【思考】基本:参加者も、主催者(世界樹)も皆殺し。
0:目の前の将軍と機械兵を始末し、逃げた人間を追う
1:参加者、特に人間を殺す。
2:首輪を外す方法を探す。
3:元の姿に戻る方法も探す
※真の主催者が世界樹だと思い込んでいます
※制限については過去話参照
※過去の禍神とは別人です
※人間の姿の時に限り、帽子の開閉により防御形態の技も使用可能
※桃色の髪の女(高良みゆき)の名前をルカだと勘違いしました
【織田信長@実在の人物】
[状態]ダメージ(小)、加速装置効果(×1)
[装備]羽柴秀吉の剣、カレイドセイバー
[道具]基本支給品、機皇帝ワイゼル∞
[思考]
基本:KAITO達を救い、主催を討つ。
0:目の前の触手を討つ
1:あとでリンと合流
2:KAITOとその家族とそいつらのマスターを探す。
【備考】
※KAITOと同じ世界(=VOCALOIDはロボット)から参戦です。
※KAITOのマスターで、他のVOCALOIDとそのマスターのことも知っています。
※鏡音リンのことを、自分のいた世界と同一人物だと思っています。
[状態]ダメージ(小)、加速装置効果(×1)
[装備]羽柴秀吉の剣、カレイドセイバー
[道具]基本支給品、機皇帝ワイゼル∞
[思考]
基本:KAITO達を救い、主催を討つ。
0:目の前の触手を討つ
1:あとでリンと合流
2:KAITOとその家族とそいつらのマスターを探す。
【備考】
※KAITOと同じ世界(=VOCALOIDはロボット)から参戦です。
※KAITOのマスターで、他のVOCALOIDとそのマスターのことも知っています。
※鏡音リンのことを、自分のいた世界と同一人物だと思っています。
【支給品解説『ジェットブーツ』】
テイルズオブファンタジアより。
装備者を、おそろしくスピードアップさせる青い靴。
攻撃する際にも逃げる際にも有効。
【支給品解説『羽柴秀吉の剣』】
カオスロワより。
戦国武将、羽柴秀吉愛用。一本目はストライダー飛竜に永遠に借りパクされた過去を持つ。
どこぞの暗黒卿が使っているような、赤色のレーザー剣。
フォースとかは関係ないので、やる気さえあれば誰でも剣を生み出せる。
【支給品解説『カレイドセイバー』】
サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINYより。
超密度の荷電粒子で形成される緑色のレーザー剣。
安定した威力を誇り、装備者が素早いほどその切れ味は増していく。
見た目はそっくりだが、やはりフォースとかは全く関係ない。
テイルズオブファンタジアより。
装備者を、おそろしくスピードアップさせる青い靴。
攻撃する際にも逃げる際にも有効。
【支給品解説『羽柴秀吉の剣』】
カオスロワより。
戦国武将、羽柴秀吉愛用。一本目はストライダー飛竜に永遠に借りパクされた過去を持つ。
どこぞの暗黒卿が使っているような、赤色のレーザー剣。
フォースとかは関係ないので、やる気さえあれば誰でも剣を生み出せる。
【支給品解説『カレイドセイバー』】
サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINYより。
超密度の荷電粒子で形成される緑色のレーザー剣。
安定した威力を誇り、装備者が素早いほどその切れ味は増していく。
見た目はそっくりだが、やはりフォースとかは全く関係ない。
新宿の街を、リンは凄まじい速さで走っていた。
もちろん、普段のリンにはこれほどの速さはない。信長に渡された加速装置のおかげだ。
あのあとさらにもう一回スイッチを押し、リンの速度はさらに上がっている。
その代償として、リンの体は経験したことのない筋肉酷使により悲鳴をあげはじめた。
それでもリンは、止まらない。
もちろん、普段のリンにはこれほどの速さはない。信長に渡された加速装置のおかげだ。
あのあとさらにもう一回スイッチを押し、リンの速度はさらに上がっている。
その代償として、リンの体は経験したことのない筋肉酷使により悲鳴をあげはじめた。
それでもリンは、止まらない。
「待ってて、おじさん……!」
自分があの触手少女から逃げるためではなく、信長を救うために、だ。
信長の剣技も、機皇帝も凄いのは幼い少女にもよくわかる。
だが、自分があの触手に捕まったからこそ、相手はさらに危険だということもわかっていた。
実質二人がかりとはいえ、勝てると言いきれない程の相手。
ならば、三人、四人ならどうだろうか。
恐ろしい力をもった触手少女がいるなら、同じような力をもった英雄がいてもいいのでは?
そんな僅かな希望を胸に、リンは体に鞭打ち走り続ける。
信長の剣技も、機皇帝も凄いのは幼い少女にもよくわかる。
だが、自分があの触手に捕まったからこそ、相手はさらに危険だということもわかっていた。
実質二人がかりとはいえ、勝てると言いきれない程の相手。
ならば、三人、四人ならどうだろうか。
恐ろしい力をもった触手少女がいるなら、同じような力をもった英雄がいてもいいのでは?
そんな僅かな希望を胸に、リンは体に鞭打ち走り続ける。
力を持った善人どころか、再び力を持った悪人に出会ってしまう可能性……
その恐怖と戦いながら。
その恐怖と戦いながら。
【新宿区・路上/1日目・夕方】
【鏡音リン@VOCALOID】
【状態】:首及び両手足に痛み、不安と恐怖、加速装置効果(×2)
【装備】:
【道具】:基本支給品、加速装置(残り17回)
【思考】
基本:家族と共に生還する
0:おじさんを助けてくれそうな人をはやく見つけたい
1:おじさん及びルカお姉ちゃんが心配
2:家族を探す。
3:信長に疑念。だが助けたい
4:首輪を外す手がかりを見つける。
5:触手の女の子(禍神)に恐怖
【備考】
※鏡音レンと同じ世界から参戦です(=ただの人間)
※名字は『鏡音』ではありません(=KAITO達全員が家族で同じ名字のため、『初音』等は芸名)
※織田信長のことは、『ちょっと変わったおじさん』程度にしか思っていません。
※鏡音レンの参加を確認済みです。
※巡音ルカが昏き海淵の禍神に狙われていると勘違いしました
【鏡音リン@VOCALOID】
【状態】:首及び両手足に痛み、不安と恐怖、加速装置効果(×2)
【装備】:
【道具】:基本支給品、加速装置(残り17回)
【思考】
基本:家族と共に生還する
0:おじさんを助けてくれそうな人をはやく見つけたい
1:おじさん及びルカお姉ちゃんが心配
2:家族を探す。
3:信長に疑念。だが助けたい
4:首輪を外す手がかりを見つける。
5:触手の女の子(禍神)に恐怖
【備考】
※鏡音レンと同じ世界から参戦です(=ただの人間)
※名字は『鏡音』ではありません(=KAITO達全員が家族で同じ名字のため、『初音』等は芸名)
※織田信長のことは、『ちょっと変わったおじさん』程度にしか思っていません。
※鏡音レンの参加を確認済みです。
※巡音ルカが昏き海淵の禍神に狙われていると勘違いしました
【支給品解説『加速装置』】
サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINYより。
ゲームバランスを完全に無視した市販の救済アイテム。奥歯に仕込む必要はない。
使用すれば一定時間だけ素早さがぐんと上昇し、しかも重ねがけが有効。
合計20回押すと壊れてしまう。
サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINYより。
ゲームバランスを完全に無視した市販の救済アイテム。奥歯に仕込む必要はない。
使用すれば一定時間だけ素早さがぐんと上昇し、しかも重ねがけが有効。
合計20回押すと壊れてしまう。
| 075:パルマーD「いこうカービィ! 星に乗って」パルマーE「見たこともないロワへ」 | 投下順 | 077:所さんも目がテン |
| 075:パルマーD「いこうカービィ! 星に乗って」パルマーE「見たこともないロワへ」 | 時系列順 | 077:所さんも目がテン |
| 073:海淵!マガツ神 | 昏き海淵の禍神 | 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(前編) |
| 059:マシンでつきぬけろ! | 織田信長 | 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(前編) |
| 059:マシンでつきぬけろ! | 鏡音リン | 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(前編) |