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テラカオスバトルロワイアル外伝
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戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(前編)

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だれでも歓迎! 編集
「どうしてさ! どうしてルカ姉さんは変身してくれないのさ!」
「だからやだよボクは! いい歳したボクが魔法少女なんてやったら、スキャンダルものだよ!
 朝の芸能ニュース沙汰だよ! 初音ミクどころか他のボーカロイドにも笑いものにされるよ!」
「知らないよ! そんなことより O P I ! O P I ! O P I ! 」
「ルカ……、そこまで否定されると、変身した私の立つ瀬がないのですが……」
「え? あ、いやごめんねシステムちゃん!?」
「ほら! お姉さんに謝る意味もこめて、変身するべきだよ! 
 全 裸 変 身 シ ー ン つ き で ! ! ! 」

ここがバトルロワイアルの会場だと言うのが嘘だというように、非常に賑やかな声が響き渡る。
姉弟の悪ふざけにも見えなくないその光景は……
第三者が見れば、一時であっても今は失った日常を思い出させてくれるかもしれない。
常に人で溢れ、騒々しいほどに人の声が飛び交っていた東京都の日常。
総理大臣――本物か、偽者か、あるいは次期総理として確定していたのかは謎だが――に奪われた日常。
目の前で命を奪われた都知事とのび太少年。そしてこうしている間にも奪われているかもしれない別の命。
賑やかさの中心であるレンも、当初はあまりの恐怖に震え上がっていた。
それが今ではこの笑顔――下心全開の――である。
それにつられるかのように、二人の女性もやれやれといった様子ではあるが、昼時よりも明るくなった。
二人はレンの実の姉ではないが、彼の支えとなっているのは間違いない。
殺し合いの最中に見つけた、平和な日常の一部――おっぱい――は少年の恐怖を紛らわせる。
太古の防衛システムも、レンと出会うことで人間と接することへの恐怖心が緩和された。
並行世界でレンの姉であるルカもまた、口でこそケダモノと罵りつつも、レンを見捨てることはしない。
想い人であるハクには及ばないが、レンの存在そのものが、かつての日常を思い出させている。

極限状態においての、少なからず心の拠り所となる人物達。

無論、全員が心の奥底には不安を感じていることだろう。
この馬鹿騒ぎを見れば、とてもそうは思えないのだが。

ルカは考える。ただの人間であるハクが、もし支給品に恵まれていなかったら? もう死んでいたら?
防衛システムは考える。並行世界にさえ干渉してみせる、総理大臣達の真の力を。
レンは考える。全裸の想像だけで実はいきりたってしまった自分の息子をどうしようか?

それぞれ、思うことは違うだろう。
だが拠り所のおかげか、あるいはこの会場においてはまだ生々しい死体を見ていないからか……
どこかに余裕があったのも確かだ。

出会ったほとんどの参加者は、多少いざこざがあったとはいえ悪人ではなかった。
恐るべきハーフエルフを前に一歩も引かない、自信に満ち溢れたルカ。
来年あたりには警察のお世話になっているかもしれない、ちょっとエッチなレン。
人間に畏怖の念を抱き、どこかちょっと抜けているが、圧倒的な力を持つ防衛システム。
レンとほとんど歳が違わないにもかかわらず、しっかり者のタケシ。
姿こそ太古の力の象徴たる恐竜であるが、子供好きの心優しいガチャピン。

マグニスと名乗った豚及び、レイジングハートと同じく魔法少女契約をもちかけてきた淫獣……
彼らは不安材料ではあるが、どうにかできる範囲内。
割合から考えて、彼らの様な危険因子の方が圧倒的に少ないのではないかというのが、レン達の総意だった。
常識的に考えて、突然拉致された挙句に殺しあえと総理大臣に言われて『よっしゃ乗った!』
などと答える参加者の方が少ないに決まっている。

だからこそ。

「―――――、誰か――――けて――――!! ――を、助け―――!」


「……え?」

こうして、自分達のもとに血塗れの参加者が助けを求めにくるのは……考えていなかった。
いや、考えたくなかったというのが正しいだろう。
ましてや、その参加者の正体が……

「……っ!? リン!?」
「げほっ……あ……レン、お兄ちゃん……? それに、ルカお姉ちゃん……?
 よか……た、無事……で……」
「ちょ、リン!? 一体何があったのさ!?」

レンにとっては実の妹、ルカにしても妹に近い存在であったリンであれば。
その全身に無数の切り傷や打撲痕があり、息も絶え絶えであれば。
驚かないわけがなし、そして直後頭に連想されるは、殺し合いに乗った最悪の殺人者。
子供も平気で殺めようとする、冷酷な殺人者。

「リン! しっかりしてくれ! なにがあったっていうんだ!」

さきほどまでの表情とはうって変わって――ともすればこの日初めて見せる表情で――妹を心配する兄。
並行世界の存在を聞かされてはいたが、レンにはこのリンが自分の大切な妹であることがすぐにわかった。
レンにとって、家族は大切な存在。よく遊びにくる親戚のみんなだって。
幼くして両親を失ってしまった故、父母の代わりを務め一家の柱となっているKAITOとMEIKOも。
底なしの優しさで、文字通り自分を包み込んで、尻を叩かせてくれるルカも。
家族の中で一番の働き者でありながら、時間を作っては遊んでくれるミクも。
自分の歌を楽しみにしてくれて、その膝の上で頭を撫でてくれるハクも。
きゅんきゅんきゅんきゅん叫びながら、何かと世話を焼いてくれるネルも。
とてつもなく厳しいが、自分の将来を本当に心配してくれているがくぽも。
他の親戚も、みんなみんな大切。
だが、一番大切なのは、何をするにも一緒だった妹のリンだった。
同じ時間を共に歩み、一緒に歌を練習してきた、かけがえのないたった一人の妹だ。
その妹が今、こうして自分の目の前に……

「リン! リンってば! 死んじゃ駄目だ!」
「ちょっとは落ち着きなよレン! 血は出てるけど、深い傷はないよ!
 リンも、まずは呼吸を整えて。……何があったんだい?」

取り乱すレンを静止し、ルカがリンの顔を覗き込む。
レンがリンを妹と判断できたように、彼女もこのリンが自分が知るリンとは別人であることを理解していた。
それでも、全く同じ外見の少女が必死になって助けを求めてきたのだ。
レンの手前だからこそ冷静を装うが、内心はルカも動揺している。

「あれ……? お姉ちゃん、なんかいつもと……違う……ね?」
「……それに関しては後で話すよ。だから落ち着いて。誰かに襲われたのかい?
 なら大丈夫さ。そこのお姉さん……システムちゃんとっても強いから。たとえあの豚が相手でも……」
「……っ! 本当……に……? お願い……おじさんを、信長さんを助けて……っ!
 私、すごく怖い触手に襲われて……! でもおじさんが助けてくれて……! 私、必死で走って……!」
「のぶ、ながって……まさか!?」

そして、ルカもついに動揺を隠し切れなくなる。
嗚咽混じりのリンの口からでてきた名前は、確かに覚えがある名前だった。

「……システムちゃん、悪いけど頼めないかな? 信長さんは、ボクにとっても他人じゃないんだ」
「了解しました」

周辺を気にしていた様子の防衛システムは、ルカの願いにすぐに首を縦に振った。
こちらもレンと同じ様にその表情を一変させている。
彼女本来の仕事である世界の防衛、その仕事をこなす時と同じ。
意思を持つとはいえ、今では人間の姿を借りているとはいえ、元は機械。
冷静さの中に、いかな手段を用いてでも敵を排除してみせるという冷酷さが漂っていた。

(この少女の身体に纏わりついているのは、まさか……? それに握っているのは……)

やがて、少し表情を崩してからリンに語りかける。

「初めまして、などと言っている場合でもないようですね。リン、敵の居場所はわかりますか?」
「新宿の、東京都庁……このあたりです……」

差し出されたのは、デイバック内に予め用意されていた簡易地図。
あまりにも大雑把であまり地図の役目を果たせてはいないが、それでもリンは都庁の辺りを指し示す。
彼女の指についた血が、地図に赤い点を作り出した。

「東京都庁か……他の建物より高いし敷地も広いから、目立つっていえば目立つね」
「わかりました。……ではリン、これを少しお借りします」
「あ、それは……」
「知っていますよ。加速装置、でしょう? 忘れるものですか。私を一瞬で叩き伏せてみせた……
 彼らが使っていた品ですからね」

言うや否や、防衛システムは躊躇いなくその魔導エンジンのスイッチを入れる。
1回、2回、3回、4回、5回、6回。
その様子を見たリンはたまらず息をのむが、防衛システムは気にもとめない。

「その傷、加速を制御できずにぶつかったりしてできたものでしょう?
 ご安心を。元より私の世界の産物、それに少なくとも私は貴女よりも丈夫ですからね。
 ……ルカ、私が不在の時にレンとリンを守れるのは貴女だけです。頼みましたよ」

防衛システムが、ルカの手に加速装置とレイジングハートを握らせる。
ルカはそれを黙って頷き、受け取った。
万が一の時は、仮面ライダーの力に加えてこれらも最大限利用して切り抜けろ……
その意図を、しっかりと理解したうえで。

『これから戦場に行くというのに、私を置いて大丈夫ですか? マスター(暫定)』
「……私は、これでも強いですから。それにバリアジャケットでしたっけ? これは有効なままみたいですし」
『どう見てもジャケットじゃなくて全身装甲です。本当にありがとうございました』
「どちらでもいいでしょう。ルカは戦闘可能時間に制限がありますから、武器はあなたしかいないんですよ。
 ……では、また後ほど」

言葉の直後、巻き起こるは暴風。
限界まで速度を高めた防衛システムが駆ける際に発生したものだ。
最初の一踏みですでに道は砕かれ、ビルのガラスは風に耐え切れずに砕け散っていく。
明らかに人の限界を超えているであろう、その力。

「すごい……」

リンはただその言葉を口にすることしかできなかった。
あの加速具合、2回使用しただけの自分がこの有様なのだから、まともな人間ならすぐさま体が千切れ飛んでいるだろう。
だがあの女性は、心配ないと言ったうえで確かに都庁に駆けて行った。
間違いなく、あの触手娘と同じく常ならざる力の持ち主だろう。
なによりありがたいのは、それだけの力を持ちながら彼女が殺し合いに乗らずに自分の家族と共にいてくれたこと。
信長の安否、いくら強いとはいえ初対面の女性を半ば死地に送り出してしまったという不安はある。
だがそれでも……家族と再会できたという喜びは大きかった。

「とりあえずリンの傷の手当てが先かな。どこか近くに病院があればいいんだけど……」
「ぼ、僕探してくるよ!」
「だから落ち着きなって。システムちゃんも言ってたけど、戦えるのはボクだけなんだからさ。
 とりあえず少しリンを休ませたら皆で行動。わかったかい?
 それにシステムちゃんが戻ってきた時にボクらを探し回らないで済むようにもしないとね」
「う、うん……わかったよ……」

ルカの手にレイジングハートが握られても、レンはもう己の欲望を口にしない。
一気に突きつけられた現実に、さすがの彼も消沈せざるをえなかったのだ。
そして、彼をなだめるルカもまた……

(信長さん、システムちゃん……大丈夫、だよね……?)


【千代田区・永田町/一日目・夕方】
【巡音ルカ@VOCALOID】
【状態】健康、僅かな不安
【装備】アクセルメモリ@仮面ライダーW、アクセルドライバー@仮面ライダーW
    レイジングハート
【道具】支給品一式、加速装置(残り11回)
【思考】基本:弱音ハクと合流し、主催にお仕置きをする。
     0:リンを少し休ませ、病院に向かいたい
     1:弱音ハクと、豚へお仕置きする仲間を探す。首輪の解除も急ぎたい
     2:別人でも、VOCALOID仲間は助ける
     3:信長、防衛システムのことが心配
【補足】
※彼女にとってVOCALOIDは『人間に近いロボ』。7期のVOCALOIDみたいなものですが、
 その他の設定(ナノマシンで自動修復等があるか)は後の書き手に任せます。
※弱音ハク以外のVOCALOIDがロワに参加していることを確認していません。
※並行世界の存在を知りました

【レイジングハート@リリカルなのはシリーズ】
【思考】基本:破壊されることなくロワから脱出したい
     1:戦闘が発生した場合、ルカを魔法少女にする

【鏡音レン@VOCALOID】
【状態】:健康、錯乱気味
【道具】:基本支給品一式、禍神のマリネ、たこルカのタコぶつ
【思考】基本:死にたくない
0:リンの傷をはやく治したい
1:他の家族が心配
2:電波お姉さんに家族と正義感溢れる青年(南光太郎)を探しを手伝ってもらいたい
※国会議事堂内で一部参加者の顔を覚えている可能性があります
※並行世界について理解したかどうかは不明です

【鏡音リン@VOCALOID】
【状態】:首及び両手足に痛み、不安と恐怖、裂傷、打撲多数、極大疲労
【装備】:
【道具】:基本支給品
【思考】
基本:家族と共に生還する
 0:今は少しだけ休みたい
【備考】
※鏡音レンと同じ世界から参戦です(=ただの人間)
※名字は『鏡音』ではありません(=KAITO達全員が家族で同じ名字のため、『初音』等は芸名)
※織田信長のことは、『ちょっと変わったおじさん』程度にしか思っていません。
※鏡音レンの参加を確認済みです。
※巡音ルカが昏き海淵の禍神に狙われていると勘違いしました
※加速装置の反動でしばらく動けません

▽



――運よく未来へとやってこれたあの日以来。
――最初に出会ったKAITOはもとより、彼の知り合いとも積極的に異文化交流をした。
――戦国時代にはない、未来の素晴らしい物を沢山教えて貰った。
――今では、VOCALOIDのマスターを名乗るくらいこの時代の世界に馴染めた。
――だが、アレは一体なんなのだろうか……?

「少しはやるようだが、我に挑むには些か動きが甘いな」

触手を持つ少女、その頭部の帽子らしきものから突然噴出されたのは吹雪だった。
それも、純白の美しい雪ではない。穢れたという表現が相応しい禍々しいものだ。
斬りかかった機皇帝の身体が、凍り付いていく。

「散れっ!」

機皇帝も必死で抵抗するが、少女の足元からさらに強烈な大氷嵐が巻き起こる。
二重の嵐に程なくして、機皇帝はその全身も機能も完全凍結されてしまった。
すぐに溶かせばどうにかなったかもしれないが、それは無理難題というやつである。

「他愛もない……所詮は世界樹の狗の狗か。
 さて人間よ、一人になってしまったが、どう死にたい?」
「くっ……!」

凍りつき、ゆっくりと倒壊していく機皇帝をみやりながら少女――
深淵に潜む強大な禍神は、対峙する信長に見下すような口調で問いかける。
その外見とも声とも全く異なるイメージ、もっとどす黒い何か。

――強すぎる

それが信長の、禍神の戦闘力評価。
戦国の覇者として、数々の武将を見てきた。未来でも色々なロボットを見てきた。
だが、それにしてもこの強さはなんなのか? マスコットとはいえあの機皇帝がこうも簡単にやられるとは。
噂の仮面のヒーローの対極に位置する怪人の類かなにかだろうか?

「あいにく、まだワシは死ぬ気はないんだがなー」
「ほざけ」

表面上は余裕に見える信長に、吐き捨てるような一言。
それと同時に、触手の髪は突然に鋭さを増し、少女を中心とした円範囲全てを切り裂いた。

「ぅおっと!?」
「ほう? 手を抜いてやっているとはいえ、我が一閃をかわすか、人間。だが次はないぞ?」

信長は咄嗟に屈むことでこれを回避してみせるが、そこまでだ。
目の前の怪人が言う通り、相手は手を抜いている。見下している故か、あるいは温存のためかはわからないが……
その気になれば、足下、髪、帽子からそれぞれ別の攻撃を繰り出せるのだろう。
今の剛斬で死なずに済んだのも、先程の機皇帝との戦いで一度目にしていたからこそ。
まだ見ぬ技を使われては、信長でも回避は難しい。そしてあの怪人の放つ技はそれぞれが必殺の一撃。

(流石に厳しいな……リンは逃げ切れたのか……?)

信長は、自身の敗北を嫌でも噛み締めることとなった。
リンを逃がすだけの時間は稼げたかもしれないが、再び彼女と出会う約束は果たせそうにない。
支給されたこの光剣であれば触手も切り裂けはするのだが、全て斬る前に人間の身である自分がもつわけがない。

「人間にしてはよく頑張ったと褒めてやろう」

にやりと、少女の口が残虐な笑みを浮かべる。
それは死の宣告。

(あー……すまんKAITO。ワシどうやらここまでみたい)

迫りくる触手を前に、信長は目を瞑り己の最期の瞬間を待った。




「ん?」



その時、禍神が動きを止める。
空気を切り裂くような音が聞こえたためだ。
だが目の前の人間は剣を持ちこそすれ、動いていない。
触手とあわせて360度見わたせる自分の眼にも、異常は映らない。
音は確かに聞こえる。だが発生源は未だに不明。前後左右にも、足下にもない。

「……上かっ!」
「おおう!?」

上空を見上げながら、禍神は咄嗟に飛びのいた。
直後、禍神が直前までいた場所に轟音をあげながら何かが着弾。
その衝撃は凄まじく、それにより飛び上がった信長は飛来物に思わず目を向ける。

漆黒のボディスーツに身を包み、鋼の装甲で武装されたその姿。
仮面をつけていれば噂のヒーローのようであるが、流れる白銀の髪がそれを否定する。

「ぎりぎり……間に合ったみたいですね。貴方が、信長ですよね?」
「う、うむ」

とはいえ、窮地に乱入したその存在は、信長にとっては間違いなくヒーローそのもの。
地面から足を引き抜き、触手の怪人に向ける視線は明らかに敵意をもっている。
それはつまり、信長の味方ということだ。

「リンとルカより、貴方を助けて欲しいと頼まれまして……
 貴方は、永田町近辺で彼女達と合流してください。この敵は、私が仕留めます」
「おお! リンだけじゃなくてルカも無事だったか! しかし、あの娘は強い。いくらお主が強くとも……」

リンだけでなく、ルカの無事も聞き信長の顔が瞬間笑顔となるが、すぐに真剣な表情に戻った。
相手の強さは本物であり、せめて二人で戦うか逃げるべきだと考えたのだ。
しかし、銀髪の女性は汗を拭いながらも信長を制した。

「行ってください。すぐにこのエリアから離れて。
 リンの身体にも残されていたこの瘴気、間違いなく相手は神域の存在です。貴方では勝てませんよ」
「しかしだな!」
「二人が望んでいるのは、貴方との再会です。『あれ』の討伐ではないでしょう?」
「……。確かにリンとは一緒に家族を探すことも、後でまた合流する約束もしたが……」
「家族……ですか。ならばなおさらです。早く行ってあげてください。私なら大丈夫ですよ」
「……すまぬ! ワシには何もできんが、せめてこれを……! 武運を祈る!」
「この剣は……ありがとうございます」

やがて信長が折れる。
二本の光剣のうちの一方を託して、走り去っていった。
後に残されたのは、人間の姿をした人外二人だけだ。


▽


「相談事は終わったか?」
「あえて見逃した、とでも?」
「どの道、この世界にいる人間は全て我が滅ぼす。あの人間も僅かに寿命が延びただけにすぎん。
 ……それよりも貴様、何者だ? ただの人間ではあるまい?」
「貴女こそ、何者です?」

周囲の空気が変化する。赤い瘴気と殺気が混じりあった、常人であればその場に留まることさえできない空気。
新宿の路上に立つは、何も知らない第三者が見ればただの人間二人。
その正体はこの会場において本人と一部の者しか知らない。
だが二人とも、本能で理解していた。こいつは生涯相容れぬ不倶戴天の強敵であると。
一定の間合いを保ったまま。海色の瞳と、左右で色の異なる瞳が、相手を見据える。動きもしない。
世界を滅ぼす者、昏き海淵の禍神。
――僅かに減らされた触手を気にすることなく、両腕を組んだまま仁王立ち。しかし触手は荒ぶらせている――
世界を守護する者、最終防衛システム。
――呼吸を整えつつ、信長より託された自分もよく知る光剣を、しっかりと構えて――

「……我の正体も、貴様の正体も、語るは無意味か。――神たる我に敗れ、貴様はここで死ぬのだから」
「神……神の力は確かに強大でしょう。しかし、人間の持つ可能性と力は神の比ではありませんよ。人間は時に神を討つ」
「戯言を。人間など、我が糧にすぎない。虚弱貧弱無知無能、挙句神の言葉にも耳を傾けぬ愚者どもよ」
「家族と世界を天秤にかけて家族を選んだ、彼らの肉体と意志の強さ……この身にしっかりと刻み込まれてますよ」
「人間の強さなどたかが知れている。皇帝を名乗ったあの人間も、さっきの将軍も、所詮我の敵ではない。
 勿論……貴様もだ!」
「ッ!?」

会話を打ち切り、先にしかけたのは禍神。
とはいえ、本体は微動だにしていない。その背後の触手の髪が地面を穿ち潜行、敵前で再び生えたのだ。
最初に相対した時から仕込まれていた、いわば不意打ち。
コンクリートを易々と貫き縦横無尽に突き出される触手の群れに、防衛システムは成す術なく遠くのビルまで吹き飛ばされる。

「ふん、あっけないものだな。この外見に騙され――ッ!」

言葉を遮るかのように、穴の開いたビルより続けざまに放たれた4色の光が禍神を狙う。
禍神は回避行動をとろうとするが、慢心していたせいか僅かに間に合わない。
触手数本、そして帽子の端を光線がかすめた。

「ち、三属性の力を内包した光線か……小賢しい!」

煙をあげる触手を見ながら、禍神は悪態をつく。
だが、それも許さないとばかりに光線は立て続けに放たれる。
様子がわかっているのか、先程の牽制じみた攻撃ではない、連続射撃。
攻撃者は先程の女とわかるのだが、自分が吹き飛ばしてしまったが故に敵の姿を視認できない。
それがまた禍神をいらつかせた。
そしてそれを嘲笑うかのように、光線が防御にまわされた触手の横を素通りする。

「何!?」

光線は禍神の背後のビル、その窓ガラスにぶつかると軌道を変更。
残りの光線も同様であり、ビル群の窓にぶつかっては乱反射を繰り返す。
まるで機械のような、計算され尽くした攻撃だ。

「これは……!」

乱反射により光線はオールレンジ攻撃と化し、禍神の眼をもってしても全てを捉えることは不可能となっていた。

やがて、無数の光線は飛び交うのを止め、それぞれが一斉に禍神の身体、一点を目指す。
回避は、不可能。無数の光が、禍神を襲った。


▽


「……全弾命中」

一度攻撃を中断し、口の端の血を拭いつつ防衛システムは小さく呟く。
撃っていたのは、威力は決して高くはないが速射性と射程距離に優れたブラスターレーザー。
人間の姿になって以後撃つのは初めてだが、各形態の他の技が使えることを理解していた彼女はすぐに攻撃を始めた。
不意の一撃をまともに受けてしまったのは痛かったが、それを逆手にとっての遠距離攻撃。
いくら控えめの威力とはいえ、並の人間や魔物なら3、4発当てるだけで十分なのだ。
距離を利用して、様子を見ながらこのまま攻撃を繰り返せば……

「……!」

直後、防衛システムはその考えが甘いということを思い知らされた。
ここより離れた場所で一点に集中する光。
赤、青、黄、紫。それぞれの光線は禍神に確かに命中したはず。
しかし禍神に当たる直前、何かに遮られている様子で足止めをくらっている様子だった。
光は禍神を貫こうと見えない壁相手に奮闘を続けるが、一本、また一本と、やがて全ての光は粒となって散ってしまった。

(防壁展開……!? 駄目だ、ブラスター程度ではあの壁を破れない……!)
「ふん、聞こえているか? この程度の攻撃で我を討とうなど、片腹痛いわ!」

姿の見えない防衛システムへ禍神が咆える。
その頭部の帽子は、信長と相対していたときとは異なり閉じきった状態――防御形態――となっていた。
禍神は攻撃と防御を極端に分担する戦術を好み、攻撃時は苛烈な攻撃の代わりに身を守る術を破棄。
そしてこの防御形態は攻撃のほとんどを破棄する代わりに、堅牢な障壁と再生能力を使用できるのだ。

(ならば……これでどうです?)

だが、その圧倒的な防御力を前にしても防衛システムはまだ退かない。
距離が離れている今のうちに試しておきたい攻撃があったのだ。
だが今度は軌道を変えるなどという真似はできない。故に、離れているとはいえ立つのは禍神の正面。

「ッ! そこか!」

攻撃のために集められた光が、目印ともなってしまう。
禍神が光めがけて飛び出し、同時に触手を伸ばす。

「遅い!」

だがそれよりも数瞬早く、防衛システムがその手に光を集め終えた。
収束され、輝きを増した閃光が迸る。白く眩い光の一閃が、禍神の視界、その眼の全てを覆いつくす。
まるで眼を焼き焦がすような……

「なっ!? ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

いや比喩表現などではなく、光は本当に禍神の眼を、全身を焼いていた。
その激痛に禍神は悶え、憤り、触手を振り乱すが、防衛システムを相手に盲目状態の攻撃など当たるはずもない。

「はああああああっ!」

振り回され、禍神本体から距離が離れた――防壁範囲外の――無数の触手。
相手を混沌へと誘おうとするも、防衛システムにそのほとんどを迎撃され、光の剣で焼き斬られていく。
ぼとぼとと音をたてて地面に落下する触手からは煙と、海産物が焼ける香ばしい匂いが立ち昇った。
そして触手を踏み台とし、防衛システムもビルから飛び出す。
空中で再び相対する両者、しかし今度は攻守逆転の状況。
未だダメージから立ち直れていない禍神に対して、振り上げられた防衛システムの拳が叩き込まれた。

「ぐはっ!」

無機質な硬い地面に叩きつけられ、禍神の口から人間と同じ赤い血が吐き出される。
いかに防御形態とはいえ、全ての攻撃の威力を完全に殺しきることはできないのだ。
その痛みよりも、怒りに燃える禍神はすかさずに上空を見やる。
すぐさま視界に映る、鋼鉄のブーツ。こちらを踏み潰して圧殺せんとする一撃だ。

「おのれぇぇぇ!」
「くっ!」

禍神は焼け焦げた触手の奥より、無傷の触手を繰り出してこれを防御。
そのまま触手で防衛システムの足を絡めとり、近場の壁にお返しといわんばかりに勢いよく叩きつけた。
そしてすぐに体勢を立て直して、瓦礫の山を睨みつける。
この短時間攻防で、この程度で倒せる相手ではないということを禍神も実感している。
その想像通り、程なくして瓦礫の中から防衛システムが姿を現した。

「貴様……どうやって我の防御を貫いた!?」
「随分と硬い防壁ですね……殴ったこちらも若干痺れてますよ……
 ですがその防壁、物理的な攻撃と、一部の魔法にしか反応しないんじゃありませんか?」
「…………!」

禍神は思わず言葉を詰まらせた。
つまりは図星。防衛システムが言うように、防御形態時に防御できるのは自然の理の魔法と物理攻撃のみ。
さきほど防衛システムが放った砲撃のような、所謂無属性の攻撃までは防ぐことができない欠点が存在する。

「だったら……どうだというのだ?」
「身を守ったまま勝てると思わないことですね。それにたとえ硬くとも、確実に貴女にもダメージは与えられている」
「確かに、それは認めよう。だがな――貴様が我に攻撃する前に! 殺してしまえばそれで済む話よ!」

再び禍神の帽子が大きく開き、凶悪な波動を辺りに解き放つ。
さらにその背より、無骨かつ禍々しい翼が現出した。
禍神の本気、対峙する存在全ての肉体も心も打ち砕く攻撃形態。

「たとえ相手が神であれ、世界を脅かす存在なればそれを全力で排除せよ――それが私の役目です」

対する防衛システムも、右手で光剣を構え、左手は拳を握り臨戦態勢をとる。
その構えは、自身がかつて敗北した人間達の構えそのものだった。

「愚かな! いくら元は人間ではないのだとしても、今は脆弱な人間にすぎぬ貴様に我が倒せるか!」
「人間が神々に挑むために、人間が産み出した、人間のために存在する数々の武器と技…… 
 ならば、剣も体術も、この姿の方が扱いやすいのは当然の事でしょう?」
「笑止! 人間が取るに足らぬ存在であると同時に、人間の武器も技も同じことよ。
 人間とは次元の違う神の力、その身にとくと刻み込んで果てるがいい!」
」




全力の両者が同時に飛び出す。
たったそれだけで、辺りの空気と大地は悲鳴をあげた。
今この時より、新宿は常人立ち入ること叶わぬ魔の世界と化したのだ。


077:所さんも目がテン 投下順 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(後編)
077:所さんも目がテン 時系列順 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(後編)
065:とある魔法少女の災難 巡音ルカ 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(後編)
076:SQ(星海・戦国CQC)バトル 鏡音リン 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(後編)
065:とある魔法少女の災難 鏡音レン 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(後編)
076:SQ(星海・戦国CQC)バトル 織田信長 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(後編)
076:SQ(星海・戦国CQC)バトル 昏き海淵の禍神 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(後編)
065:とある魔法少女の災難 最終防衛システム 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(後編)
066:脱衣×混沌×騎士 混沌の騎士 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(後編)
062:小さな死神 南千秋 078:戦乱 その忌むべき者より、世界を救え(後編)

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