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【2ーC リートルード時計塔:機械室】
「……美弥子。美弥子も、ここにいたんだ」
こんな場所で会わなければどんなに良かったか、苦笑いの恭也。
「言ったでしょ、いつも一緒にいるって」
頬を染め寄り添う美弥子。鏡を介さなくとも話せる事だけは、これを仕組んだ人間に感謝している。
「首輪、どうしたんだよ?無いみたいだけど……」
何でもないように笑って見せてもどこか影を隠せない、そっと首筋を撫でる手からも伝わる気持ちに美弥子は答える。
「大丈夫。あいつが言ってた殺し合いなんて、恭也はしなくていい。私は、優しい恭也が好き」
より強く力を込めて恭也の腕を抱き締める美弥子。それはまるで恋人が遠くへ行ってしまう事を恐れているような素振りだった。
「……当たり前だろ?俺が殺すのはあいつらみたいな奴だけだよ」
笑い会う二人、交差する視線。そしてだんだんと唇が近付いて……
……と、さすがに僕も腹が立ってきた。止めよう。
「もうっ、二人ともそんなことしてる場合じゃないでしょっ!?」
そうだ、僕らは今町の外にいた殺人人形(僕のバッグに入ってた刀の説明書きによると『日和号』という人を斬り倒す物騒な機能とは全然噛み合わない名前があるらしい)に追いたてられて時計塔の中に閉じ込められている最中。
僕も恭也…………だと恭介と被るか。……須田くんが偶然僕を見つけて突き飛ばしてくれなければ、確実に死んでいただろう。今も歯車に混じってあの馬の蹄みたいな音は聞こえてくる。何故か中には入って来ないけど、でもイチャイチャしてる余裕はないのは確かだ。
「恭也が助けなきゃ、死ぬとこだったくせに」
「う……それはそうだけど。というか須田くん怪我は?」
「あ、いや!えっとぉ…………それは、大丈夫……頑丈なんで」
何をそんなに焦ってるんだろう? というか美弥子さんはいつからいたんだろう?風景から浮かび上がるように出てきたように見えたけど…………
いや、よく見えなかったけどきっと時計塔に入った時合流したに違いない。そんなことは後でいい。今はここから出てみんなを探しに行く方法を考えなくては。 頭に手を当ててよく考えるんだ!
「正面から出るのは……ダメだ、危険すぎる。じゃあ何かで陽動して……」
「ここから出るのってそんなに難しいか?」
「いや、そうでもないよ。ただあいつ、よく解らない見え方だし。それで迷ってるんじゃないかな?」
「ふん、じゃあぐずなだけか」
ムッ、失礼な。少しの自己紹介と一緒に逃げただけで見方がおかしいだとか出来が悪いなんて事解るもんか。関わりのある人達が殺し合いに巻き込まれてるっていうのに冷静でいられる君らの方が理解できないよっ!
「この非常時に何のんきにやってるのさ!須田くんも知り合いが来てるんじゃないの!?」
「…………いない、と思う」
「私はまだ見てないぞ」
「いや嘘でしょ流石に。あり得ないよ」
どうやったかは知らない。けど70人もの人間を誘拐して何処かの無人島に放り込むなんて、仮にあのバレンタインという人が何処かの国の王様だとしても事前に計画してないと不可能だ。
だから多分これを仕組んだ犯人グループはターゲットを絞って行動してる。犯人の側に立って考えるなら、例えば同じ地域に住んでいるとか、家族友人の関係でよく会ってるだとか、そういう監視しやすい対象を選ぶはずなんだから。
「覚えてないだけかもしんないけど、多分居ない。俺のいった村の誰かが来てたら、美耶子が知ってる筈だし」
「えっじゃあ………………」
もしかするといつかみたいに恭介が裏で糸を引いているかもしれない────────
さっき野原で寝そべって現実味の無い今の状況を考えながら、僕が真っ先に切り捨てた考えだった。いくらなんでも『殺し合い』なんて物騒な事は恭介だってしないだろうと。とはいえもし、僕ら『リトルバスターズ』以外が全員ランダムに選ばれてるとしたら話が違う…………。
『恭也』を『須田くん』と呼び直したのは、恭介が……『
棗恭介』の名前を名簿に見つけたからだ。恭介と合流したら今度こそ肩を並べてこの厄介事を片付ける時、名前の読み方が似てたら困ると思ったから。
でも、逆に恭介と戦わなきゃならない場合もあるのか……。首輪も、死んだ二人も今回のこの一件は全部夢みたいなもので、あの中世貴族みたいな人と恭介が作った『世界』なのかもしれないんだ。
本当にそうなら僕が説得しなきゃ、まだ仮定の話だけど。説得に応じなければどうしよう?筋肉バカの真人を相手にした時のようにちょっと懲らしめるか。
いや、相手はあの恭介だ。中途半端な作戦じゃすぐ見破られる。それこそ殺す気でかからないと引っ掛かってくれないだろう。
恭介を、殺す…………?僕が?
いったい何を考えてるんだ僕はっ!よろめきながらゆっくりと意識を落ち着ける。克服したはずの、できれば思い出したくなかった感覚が僕を襲ったからだ。
ナルコレプシー《眠り病》
両親を喪った時に発病して、恭介を助けるために乗り越えた病気。今更なんで……酷い目眩が……………………
……ダメだっ!こんなところで寝てる訳にはいかない!
さっきまで美耶子さんと、なにやら痴話喧嘩してた須田くんが声を掛けてくれる頃には少し落ち着いた。
「大丈夫、大丈夫だから……」
「そっか、ならいんだけど。あ、そだ、もしかして他人の視界が覗けたりとかしたこと無い?」
いきなり何を言うんだろうこの人は……さっきまで『世界』がどうとか推察してた僕が言うのもなんだけど、当然そんなのは幻想とかおとぎ話じゃないんだから無い。やたらと壮大な力を持った兄妹は知ってるけど、それでも僕自身はただ少しだけ騒がしい毎日をおくる一般的な男子高校生をやってるんだ。
今なら大鷲ぐらい倒せちゃうけど、それでも普通だ。
「やっぱ、使えないんだ。えと、じゃあさ、俺の後に着いてきてよ」
話が噛み合ってない。外にあいつがいて出れないから困ってたのに着いて来いっていうのもそうだけど、まるで使えるのが普通みたいな態度だ。
ん?まてよ?そう言えばさっきも……
疑問を声に出そうと思ったけどやめた。須田くんが、酷く人間味の褪めた目をしてることに気づいてしまったから。
「そろそろ行こうか。こっちも1人、会わなきゃいけないのがいたからさ」
【終了条件:「リートルード」から「C-1駅方面」への脱出】
【2-C・リートルード時計塔:機械室/1日目/深夜】
【
直枝理樹@
リトルバスターズ!】
[状態]: 健康、精神疲労(小)
[装備]: 無し
[道具]:ランダム支給品(1~3)、基本支給品一式、刀の在りかを書いた紙(2-C・リートルード、微刀『釵(日和号)』)
[思考・状況]基本行動方針:『リトルバスターズ』の仲間達と合流してこの誘拐事件を終わらせる。
1:もしかして須田くんも何か不思議な力が…………?
2:恭介はどう考えてるのかが気になる。敵になる状況は考えたくない。
3:他のみんなも心配。
4:ところで美耶子さんは何処へ行ったんだろう?
【須田恭也/神代美耶子@
SIREN】
[状態]:赤い水、神代の血、強い決意
[装備]: 無し
[道具]:ランダム支給品(1~3)、基本支給品一式、刀の在りかを書いた紙(4-E・不明、不明)
[思考・状況]基本行動方針:
八尾比沙子の完全抹殺、この世界と化物を終わらせる。
1:またあいつらみたいな化け物を呼び出す前に、ブッ殺してやる!
2:とにかく町を離れないと、美耶子なら居場所が判るかも。
3:………またいなくなってるけど。
※周囲の警戒のため名簿を見ていませんでしたが、途中から美耶子も名簿を把握しました。
※
神代美耶子は霊体へ戻りました。
※直枝理樹、
須田恭也両名とも本編終了後からの参戦です。
※リートルード内を日和号@刀語が徘徊しています。
どの範囲を徘徊しているのかは次の書き手に託します。
正式名称:完成形変体刀・微刀『釵』(かんざし)\日和号
形状:四季崎記紀が生前もっとも愛した女性を模したからくり人形である。四本の腕と四本の脚を持ち、首が百八十度回転し
口にあたる部位からは槍のような長さの長刀を突き出す。年齢不詳。身長六尺八寸。体重十七貫三斤。
効果:「人間らしさ」に主眼が置かれている。
否定姫は「武器でありながら人である、恋する殺人人形とも言える刀」と称した。
人形殺法と呼ばれた同時に装備状の武器を自在に操り「竜巻」、「旋風」、「春一番」、「突風」、「嵐」、「綱嵐」
「台風」、「カマイタチ」、「微風刀風(最後に登場)」などあらゆる技と高速移動を繰り出し敵を追い詰め切り刻む。
変体刀には限定奥義という『その刀でしかなし得ない奥義』がある。『釵』は「微風刀風(びふうとうふう)」
人形殺法の奥義で、人形殺法の最後に登場する大技。逆立ちの状態になって4本の足を高速回転させ、手のばねで
一気に飛び上がり、そのまま落下して敵を切り刻む。
備考:江戸の不要湖はこの日和号1台で壱級災害指定地域に指定されている。
数百年にわたって徘徊し、射程距離に入った人間を無差別に攻撃する。このため不要湖にはうかつに人間は近づけない。
不要湖に捨てられたがらくたの化身などと言われ、がらくた王女とも呼ばれている。
否定姫は徘徊の理由を
『不要湖のどこかにある四季崎記紀の工房を守り続けているのだろう』と推測していた。
最後は
鑢七花との持久戦による戦いで燃料切れと共に動力が止まり敗北となる。また回収した後もう一度
持ち主の命令に従うようにプログラムされ直した状態で
鑢七花と闘うことになるが彼曰く
「使い手が弱すぎて話にならねぇ」
「微刀」は「美刀」とかけている。自らの愛した女性を象っていることから、四季崎記紀の人間らしさが
唯一かいま見える刀とされる。
最終更新:2013年07月13日 02:42