ジリリリリリリリリッジリリリリリリリリッ
「もう朝……?」
うるさい目覚まし時計を止めてベッドから体を起こす。
「カジっちゃん先輩おはようございます。もう7時半ですよ」
同室のチームメイト、メジロエスキモーがそう声をかけてきた。彼女はとっくに起きていたみたいで既に制服姿だった。
「早く着替えないとッス……」
寝ぼけ眼を擦りながら朝の身支度を始める。寮の共用洗面所で顔を洗い、軽く寝癖を梳かし着替えのために部屋に戻る。
うるさい目覚まし時計を止めてベッドから体を起こす。
「カジっちゃん先輩おはようございます。もう7時半ですよ」
同室のチームメイト、メジロエスキモーがそう声をかけてきた。彼女はとっくに起きていたみたいで既に制服姿だった。
「早く着替えないとッス……」
寝ぼけ眼を擦りながら朝の身支度を始める。寮の共用洗面所で顔を洗い、軽く寝癖を梳かし着替えのために部屋に戻る。
「とりあえず着替えて、髪は……」
「せっかくなんで私がお団子作ってあげますね。手空いてますし」
「エスキモーちゃんありがとうッス。じゃあお願いするッス」
エスキモーちゃんは中等部で自分は高等部なはずなのに、どんどんお世話される側に回ってしまっている。どうしてこうなった……
「せっかくなんで私がお団子作ってあげますね。手空いてますし」
「エスキモーちゃんありがとうッス。じゃあお願いするッス」
エスキモーちゃんは中等部で自分は高等部なはずなのに、どんどんお世話される側に回ってしまっている。どうしてこうなった……
「……っと、これで出来上がりかな。崩れちゃってたらすみません」
手鏡で見てみたらそれはもう綺麗なお団子が頭の上に乗っかっていた。
「完璧ッスよ。じゃあ早く下りて朝ごはん食べないと……あっ、忘れてたッス」
香水をシュッシュと吹きかける。毎朝のルーティーンを忘れるところだった。
「その香水ってもしかしてトレーナーさんからお返しでもらった物ですか?」
「あれはもう無くなっちゃったんでこれは自分で買ってきた分ッスよ〜……あっ」
顔を後ろに向けると、ニマニマした顔がそこにあった。
「へぇ〜、その匂い気に入ったんですね……なるほどなるほど」
「なんスかその顔!?」
「あっ、外にトレーナーさんいますよ。声かけちゃいましょうか」
「ちょっ!? エスキモーちゃんやめて……」
「ってウソですよ、冗談です冗談」
朝から焦らせないでほしい。心臓に悪いッスよ、エスキモーちゃん……
手鏡で見てみたらそれはもう綺麗なお団子が頭の上に乗っかっていた。
「完璧ッスよ。じゃあ早く下りて朝ごはん食べないと……あっ、忘れてたッス」
香水をシュッシュと吹きかける。毎朝のルーティーンを忘れるところだった。
「その香水ってもしかしてトレーナーさんからお返しでもらった物ですか?」
「あれはもう無くなっちゃったんでこれは自分で買ってきた分ッスよ〜……あっ」
顔を後ろに向けると、ニマニマした顔がそこにあった。
「へぇ〜、その匂い気に入ったんですね……なるほどなるほど」
「なんスかその顔!?」
「あっ、外にトレーナーさんいますよ。声かけちゃいましょうか」
「ちょっ!? エスキモーちゃんやめて……」
「ってウソですよ、冗談です冗談」
朝から焦らせないでほしい。心臓に悪いッスよ、エスキモーちゃん……
「あっ、ウソで思い出したんですけど、ちょっと話聞いてくれません? 下行って朝ご飯食べながらでいいんで」
「よく分かんないですけどいいッスよ」
「ありがとうございます。これは数日前のことなんですけど──」
「よく分かんないですけどいいッスよ」
「ありがとうございます。これは数日前のことなんですけど──」
─────
トレーニング終わってね、いつもどおりトレーナーの部屋、部屋っていっても学園の方ね、そこでミーティングするために向かってたんですよ。今晩の夕食とか考えつつ部屋のドア開けようとしたら、
トレーニング終わってね、いつもどおりトレーナーの部屋、部屋っていっても学園の方ね、そこでミーティングするために向かってたんですよ。今晩の夕食とか考えつつ部屋のドア開けようとしたら、
「それで相手の人はなんて言ってたん? ……そう、そっか。今度の日曜日お会いできるのを楽しみにしてますって伝えといて。うん、じゃ日曜に」
ってトレーナーの声が聞こえてきたんです。
「トレー……ナー……? 今の話って……」
「楽しみやなあ……ってエスキモーか。もしかして聞かれちゃってた?」
「あー、うん……誰かと会う約束してたの?」
「ちょっと親からお見合いセッティングされちゃってさ」
「えっ、お見合い……? トレーナーが……?」
ってトレーナーの声が聞こえてきたんです。
「トレー……ナー……? 今の話って……」
「楽しみやなあ……ってエスキモーか。もしかして聞かれちゃってた?」
「あー、うん……誰かと会う約束してたの?」
「ちょっと親からお見合いセッティングされちゃってさ」
「えっ、お見合い……? トレーナーが……?」
その時の私たぶんすごい顔してたと思います。血の気が一気に引いていった感覚ありましたから。
「オレ姉が1人いるんだけどさ。その姉が結婚したから次はオレだーって。若いうちにしとかないと後々苦労するからって押し切られちゃってさ」
「でも、さ……トレーナーも楽しみだって言ってたじゃん」
「オレも最初は乗り気じゃなかったんだけど、相手の写真見たらちょっと気が変わっちゃってさ。ちょっと見てみるか?」
「オレ姉が1人いるんだけどさ。その姉が結婚したから次はオレだーって。若いうちにしとかないと後々苦労するからって押し切られちゃってさ」
「でも、さ……トレーナーも楽しみだって言ってたじゃん」
「オレも最初は乗り気じゃなかったんだけど、相手の写真見たらちょっと気が変わっちゃってさ。ちょっと見てみるか?」
なんかもうその時点で絶望感しかなかったんですけど、トレーナーが惹かれる人ってどんな人なのか気になって見ちゃったんですよね。
「あっ、綺麗……」
「だろ? オレにはもったいないぐらいだよ。相手の人もウマ娘のレース好きみたいで気が合うなって」
たぶんトレーナーと同い年ぐらい、それでいてモデルさんかと見間違うほど綺麗な顔をしていました。髪も整えてもらったんでしょうけど美しいロングヘアでした。もうその時点で負けたって思ったんです。
「あっ、綺麗……」
「だろ? オレにはもったいないぐらいだよ。相手の人もウマ娘のレース好きみたいで気が合うなって」
たぶんトレーナーと同い年ぐらい、それでいてモデルさんかと見間違うほど綺麗な顔をしていました。髪も整えてもらったんでしょうけど美しいロングヘアでした。もうその時点で負けたって思ったんです。
「へ、へぇー……いいじゃん。話も合うんだったら言うことなしじゃない?」
なんとか声が震えないように、トレーナーに気づかれないようにしてたつもりだったんですけど、
「……エスキモー? もしかして泣いてるのか?」
「えっ? やだなんで私……」
知らないうちに泣いちゃってたみたいでした。堪えたつもりだったんですけど。
なんとか声が震えないように、トレーナーに気づかれないようにしてたつもりだったんですけど、
「……エスキモー? もしかして泣いてるのか?」
「えっ? やだなんで私……」
知らないうちに泣いちゃってたみたいでした。堪えたつもりだったんですけど。
「この涙は……その、なんでもない。じゃあトレーナーはその人と幸せになるんだね……」
「こんなの初めてだから分からないけど、もしかしたらそうなるかもしれないな」
「そっか……どうなったかちゃんと教えてね。ここまで聞いちゃったら気になるから。じゃあミーティング始めよっか」
無理やりにでも気持ち切り替えなきゃって思って話も切り替えたんです。そうしたらトレーナーが作業してたパソコン見せてきて、
「こんなの初めてだから分からないけど、もしかしたらそうなるかもしれないな」
「そっか……どうなったかちゃんと教えてね。ここまで聞いちゃったら気になるから。じゃあミーティング始めよっか」
無理やりにでも気持ち切り替えなきゃって思って話も切り替えたんです。そうしたらトレーナーが作業してたパソコン見せてきて、
「分かった。ミーティングなんだが、ちょっとこれ見てほしいんだ」
そこに書いてあったのは、
「? 分かった。えーっと……ドッキリ? えっ?」
「今日はなんの日だと思う?」
そこに書いてあったのは、
「? 分かった。えーっと……ドッキリ? えっ?」
「今日はなんの日だと思う?」
そう、その時思い出したんです。
「あっ、エイプリルフール! じゃあお見合いの話は全部……」
「そう全部ウソ。な、母さん」
「えっ?」
『この子があんたの担当の子? 写真では見たことあるけどやっぱり可愛いなあ。はじめまして、この子の母親やってます。今度うちの家来んの楽しみにしてるからなあ』ブツッ
「えっ、トレーナーのお母様? ちょっとこれってどういう……」
「今度オレの実家一緒に行くだろ? そのことで母さんに電話かけたらエイプリルフール近いからって話持ちかけられてさ。オレもその時酒入ってて変なテンションだったからトントン拍子に話進んじゃってさ」
「……じゃああの写真の女の人は?」
「いとこだよいとこ。流石に姉のはアレだし、じゃあって声掛けてみたら案外乗り気で写真撮って送ってくれたんだよ」
「今日この日のこの時のためだけに……?」
「まあアイツも婚活始めるかーって言ってたしそれも兼ねてたんじゃないかな……ってどうした?」
「ほんっっっっっとにトレーナーが結婚しちゃうんじゃないかって思ったんだからっ!!! 私が大人になるなんてずっと先だし、写真の人は綺麗だったし、ほんと……ほんと……うぅっ……」
そこでまた泣いちゃったんです。ほんとにトレーナー酷いと思いません?
「あっ、エイプリルフール! じゃあお見合いの話は全部……」
「そう全部ウソ。な、母さん」
「えっ?」
『この子があんたの担当の子? 写真では見たことあるけどやっぱり可愛いなあ。はじめまして、この子の母親やってます。今度うちの家来んの楽しみにしてるからなあ』ブツッ
「えっ、トレーナーのお母様? ちょっとこれってどういう……」
「今度オレの実家一緒に行くだろ? そのことで母さんに電話かけたらエイプリルフール近いからって話持ちかけられてさ。オレもその時酒入ってて変なテンションだったからトントン拍子に話進んじゃってさ」
「……じゃああの写真の女の人は?」
「いとこだよいとこ。流石に姉のはアレだし、じゃあって声掛けてみたら案外乗り気で写真撮って送ってくれたんだよ」
「今日この日のこの時のためだけに……?」
「まあアイツも婚活始めるかーって言ってたしそれも兼ねてたんじゃないかな……ってどうした?」
「ほんっっっっっとにトレーナーが結婚しちゃうんじゃないかって思ったんだからっ!!! 私が大人になるなんてずっと先だし、写真の人は綺麗だったし、ほんと……ほんと……うぅっ……」
そこでまた泣いちゃったんです。ほんとにトレーナー酷いと思いません?
「ごめん、悪かったよ。オレも悪ノリが過ぎた。あとで母さんにも言っとくから許してくれないか?」
「やだ。それだけじゃ許さない」
「じゃあ何したら許してくれる? できることならなんでも」
「……今度のお休み遊園地連れて行って。私のやりたいこと全部ノーって言っちゃ駄目だから」
「……分かった」
「それと二度とこういう系のドッキリ禁止。絶対ね」
「うん、もう君も悲しませるウソはつかないよ」ナデナデ
「んっ……じゃあ許してあげる……遊園地楽しみにしてるから」
「ありがとう、エスキモー。君を楽しませられるよう頑張るよ」
「やだ。それだけじゃ許さない」
「じゃあ何したら許してくれる? できることならなんでも」
「……今度のお休み遊園地連れて行って。私のやりたいこと全部ノーって言っちゃ駄目だから」
「……分かった」
「それと二度とこういう系のドッキリ禁止。絶対ね」
「うん、もう君も悲しませるウソはつかないよ」ナデナデ
「んっ……じゃあ許してあげる……遊園地楽しみにしてるから」
「ありがとう、エスキモー。君を楽しませられるよう頑張るよ」
─────
「──ってことがあったんです。ほんとああいうことされると困っちゃいますよねー それでもちゃんと許してあげましたけどっ」
「まあそうッスね……」
エスキモーちゃん本人は怒ってるつもりだろうけど、これは……
(まあ末永くお幸せにってことッスかね……本人には言わないけど)
「──ってことがあったんです。ほんとああいうことされると困っちゃいますよねー それでもちゃんと許してあげましたけどっ」
「まあそうッスね……」
エスキモーちゃん本人は怒ってるつもりだろうけど、これは……
(まあ末永くお幸せにってことッスかね……本人には言わないけど)