ケイトリンを
縛血者に変え放任した
血親を探す調査の中、
トシローは手掛かりとなるケイトリンを一度は捕捉するも、不意を突かれ彼女を探していた
アンヌが何者かの手で血族にされてしまう。
K&M探偵社の奥、トシローとシェリルは、棺桶の中で少女が順調に「死体」として肉体が変質する様子を見つめていた。
「この子を拾って、これからどうするのか」───問いかける相棒に、
トシローは一個人として、「出来得る限り彼女の意思を尊重し、その望みを叶えてやりたい」と告げる。
「この子は悪い友達を持った。ろくでもない事に巻き込まれた。あんたは助けようとしたけど駄目だった」
「運が悪かった。仕方なかった――それで終わりになる話だと思うのよ」
しかし、シェリルは行きがかり上出会ったに過ぎないこの少女の境遇に対し、
トシローが拘りを見せた事に「らしくない」と、相棒の行動に納得が行かない様子であった。
「だって、これってこの子の運命……なんじゃないかな。これ以上あんたやあたしが干渉するのは、何か違う気がして」
「あたしもあんたも、運命を受け入れて今ここにいる。
何分かに一人の割合で、誰かが誰かに殺されているっていうらしいこの世界でね」
「たまたま、この子の順番が来たってことよ……あたしたちの時と同じように」
そう語るシェリルの横顔には、何処か寂しげで、諦めの色が滲んでいた。
いつもは快活な彼女が見せる否定の感情に、トシローは「所詮は他人事。そうかもしれない」と言いながらも……
「だが、俺には他人事ではないのかもしれん。
この娘を襲った理不尽に、俺はかつての自分自身を重ねている気がする……」
「俺達は確かに、結果として運命を受け入れた。だが、それはあくまで結果としてに過ぎないはずだ」
自ら求めて血族の世界に飛び込む者もいるだろう。
たまさか授かった運命を幸運と思う者も。
だが、少なくとも俺はそうではなかったのだ。
そんなトシロー・カシマが、今この状況に対して生まれた想いがあるとするなら。
「俺は……この娘を救うという建前の元、
その運命とやらにただ意趣返しを……一矢報いる復讐戦を挑みたいだけなのかもしれん」
相棒のそんな言葉に、沈黙していたシェリルは挑むような眼差しを向けて。
「もし、アンヌが自分の意思で選んだとしたら? 縛血者になる事を」
「……先の事は判らない」
相棒の問いに答を出せぬ男は、個人ではなく立場として、問題の血親は掟破りとして誅殺する可能性が高いだろうと告げるに留まり。
「……この子も元通りで、めでたしめでたしって訳だ」
女は珍しく皮肉気な口調で呟き……すぐに自らの発言を自嘲して。
「ま、あたしの基本方針はいつも通り。あんたに付いてくよ。そう決めたんなら、反対はしない」
そういつもの調子で笑ってみせたが――二人の間には微妙な空気が流れたままであった。
- どっちも無理矢理夜に引きずり込まれ、ろくでもない毎日送ってきたからな。それらの上で今の二人のコンビがあるとはいえ、偶然とタイミングがあったが故の結果論に過ぎない。 -- 名無しさん (2020-09-11 11:53:58)
最終更新:2023年11月01日 13:02