青臭い想いのまま、奇跡の一つでも成し遂げてみるといいさ。青春ぱわー、って奴でね

発言者:草笛切
対象者:秋月凌駕



“敵”であったエリザベータと言葉と情とを交わす中、胸にこれまで感じた事のない熱の滾りを感じる凌駕。
しかし、彼女が自分から離れ、再び戦士として決着を着けると告げる姿に、明確な答えを示せず彼は仲間の元へと帰還するのだった。

途中、他のから僅かに怪しまれつつも、自室に戻る事ができた凌駕に、訪問者が一人。
検診(メンテナンス)に来たと告げる切は、他の女性メンバーが察知していなかった、
少年の身に染みこんでいた香水の香りから、“空白の時間に誰と何をしていたのか”という真相に一人辿り着いていた。

止む無く凌駕はエリザベータと己の間にあった経緯を事細かに話し、
いつものように無表情でそれを聞いていた切は、“女を忘れたいなら違う女の肉体に溺れてみるかい?”
そう艶やかな視線と共に身体を摺り寄せていくが……少年の心は、未だ胸に燻る炎の真実を求め揺れていた。


凌駕は語る―――


「言い訳なくその手の情を交わしましたし、実際その通りなんですが……」

「それ以上に、強い感情があるんです。身体の欲望などより先に、自分の中で自己主張し続けている衝動が」


―――彼女を救いたい。これ以上、心が摩耗しないように」


「何となく……いえ、もう本当は分かっていたのかもしれない」

「彼女の精神(ココロ)はもう瀬戸際だ。このままだと壊れるか、原形を失うまで擦り切れてしまう」


そのことが―――俺は、どうしても、我慢がならない」


迷いを断ち切り、行動の道筋を打ち立てるべく、熱を言の葉に乗せていく。


その今まで見せたことのない彼の姿を前にして、呆れたのか、驚いたのか、それとも……
凌駕の発言を受けて、切は悟ったように告げる。


「……うん、何と言うか青春だ」


「やってみればいいじゃない。その道(・・・)には、逆境が付き物だよ」

「話を聞いてしまったからには、ワタシももう共犯者だからね。だから、キミに頑張ってもらわないと色々困る」


そう言って切は、凌駕の髪をくしゃりと掻き混ぜ、立ち上がって部屋を去ろうとして―――


「『青春の偉大さとは……全てを成しうる事ではなく、全てを成しうると思わせる事』……」

「女学生の頃読んだ小説に、そんな言葉が出てきたのを思い出してね。キミに贈るよ」


「青臭い想いのまま、奇跡の一つでも成し遂げてみるといいさ。青春ぱわー、って奴でね」


「それと、これはあくまで私見だけど……」

「キミは、女性を育てるタイプだね。泥にまみれていようが、傷ついていようが、
相手が前を向けるよう無理やりにでも引き上げると思ったから」

「本当の意味での、尽くしたがりってやつじゃないかな? 秋月凌駕が女性に対する接し方は」


そうして、“検診”は終わり、掴みどころのないエージェントへと彼女はまた戻っていく………




  • 無理ゲーだろうと適当なアドバイスしたらしっかりゲットして戻ってきたブッダ系主人公(ただしバグった -- 名無しさん (2019-10-06 22:11:46)
  • ツルゲーネフの初恋だね。昏式作品には純文学からの引用が結構多い -- 名無しさん (2020-04-10 15:29:36)
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最終更新:2020年06月16日 15:52