私の事はリーザと呼んで。私をそう呼ぶ人間は、家族以外にはもう誰もいなくなってしまったから……




ねえ……私が今考えてる事、当ててみない………?


俺達、ずっとこのまま──────



回復を続けるネイムレスから逃れ、脱出路を見つ出す為……
互いに深手を負っていた凌駕とエリザベータは、一時休戦し墜落した都市の地下道を探索していた―――

凌駕は出口を探し当てる事は出来ていなかったものの、
三度出会った“兵士”とは異なる顔のエリザベータと、穏やかな対話の時を持つことができていた。


“淑女”としての彼女は語る―――

連続していない“私”という歪な存在、切り替えの度に揮発する想いの数々。

この在り方を当然のものと受け入れたはずが、どこかの誰かさんのせいで迷ってばかり。

そう、現実と等身大の自分で向き合える凌駕(あなた)は強い、本当に妬ましく、羨ましいと。

そして……向き合えない自分は、なんて―――


「自分自身を二つに裂いて、二つの顔を演じ分けて……
 挙句の果てに得たものは、断面しかない瞬間の人生だけ。
 二つを繋ぎ合わせても、完全な一人にはなれない。片面だけの不完全な二人(・・)がいるだけ」

「自分の演じる役柄に、人生を支配される女優……
 彼女(・・)に、もう本当の自分なんていうものは認識できないの」

だから―――こんな得体の知れない、顔のない女(・・・・・)なんて、誰も愛せないし、愛されるわけがない。


自嘲するエリザベータ(少女)を放っておけず、凌駕は何かを言わなくてはと……拙くも言葉を紡ぐ。


「そんな事はないよ、エリザベータを……その、なんだ……きな奴だって、きっといると思うし」

「私を………何?」

「いや、だから……今、言ったその……人を好きになったりなられたりって奴さ。
 エリザベータは自分に出来ないって言ったけど、そんな事もないだろって……それだけの話だよ」


照れ臭さと、居た堪れなさと……そして自分でも輪郭の掴めない想いを吐き出し、
自分は一体何を言っているのかと、冷静さを必死に取り戻そうとする。


―――もしかして、私……今あなたに慰められているのかしら?」

「悪かったかな……ちょっと上手く言えなくて」

「うぅん……そんな事なくてよ。嬉しいわ」


そうした中、彼の言葉を受けた彼女は、体と心を再び、少年の元へと近づけていく。
凌駕を一人の“男”にした二度目の出会いの時の様に、
エリザベータの纏う雰囲気が、雄を誘い込む甘ったるい蜜のように蕩け始める。

しかし、凌駕は告げる――「待ってくれ」と。

流れを断ち切られ戸惑う女に対し、彼は制御できない自分自身に困惑し、
自棄になりながらも、切れ切れの感情を言の葉に乗せてゆく。


「だからっ────嫌じゃないけど嫌というか!
 エリザベータとこういう風にこういう事をするのは、なんかこう……個人的にしっくり来ないというか……」

「どうしてか、判らないけど……とにかく、おざなりは駄目だろう?
 いや、重たいのが良いというわけではないんだが………」

「………不思議と、何だ、変に気まずい」

「仮面や化粧は、無い方がそれらしい、というか……ああ、ったく


そうして、混乱しているはずなのに、妙にスッキリした感覚を覚えて……
情けない姿を晒したのではと、凌駕は視線を逸らしてしまう。
だが、その想いの芯は、目の前の女性には届いていたらしく……


「ぷっ────うふふふ……ああ可笑しい

何か変だったのか――笑う彼女に問おうとした少年の唇は人差し指で封じられていた。


「いいから、もうお黙りなさい? 口下手さん」

「あなたの言いたい事なら、ちゃんと私には伝わってるから……」

「本当に、こんなの反則だわ……素顔がいいなんて言われた日には、ね」


「だから──────お願いがあるのだけど、凌駕」


そうして、琥珀色の瞳で少年をしっかりと見つめて、「素顔」のエリザベータは、囁いた。



「私の事はリーザと呼んで。私をそう呼ぶ人間は、

  家族以外にはもう誰もいなくなってしまったから……



そのまま、二人の唇は遮るものなく、優しく触れ合ってゆく………



  • ニヤニヤが止まらねぇ… -- 名無しさん (2019-05-06 08:17:02)
  • (二人の関係の進展に)ワクワクが止まらねぇ! -- 名無しさん (2019-05-06 09:03:51)
  • (二人のぐっちょりねっちょりイチャラブックス)にムラムラが止まらねぇ!! -- 名無しさん (2019-05-06 15:03:38)
  • イヴァンさん特攻後ですもんな。 -- 名無しさん (2019-05-11 06:33:06)
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