ノーマルルート、至門が苦し紛れに放った弾丸を受け、倒れ込む
角鹿。
傷ついたキャロルは絶叫を迸らせながら、信じられないような力で至門の首を絞め砕き……男の元へ這いずっていった。
──至門は自らの意識が無明の闇へと沈んでいくのを実感しながら最後に、思う。
「ずるいじゃねえか……」
それは、相容れない敵同士という立場でありながらも……
道具として尽くす在り方に何か近しいものを感じていた、“魔女”の少女への泣きたくなるような感情。
「俺と同じ奴だと、思っていたのによぉ……」
顧みてほしい誰かに顧みられる事も、報われたい希望が報われる事もなく、死んでゆく。
そんな事はとうに覚悟していたはずなのに……彼の胸にはどうしてか、
裏切られたような口惜しさが残っていた。
「最後の最後で、自分ひとりだけ報われやがって……」
己が目の当たりにしたのは、つまりはそういうこと。
キャロルを殺さないために角鹿彰護は、引鉄を躊躇った。代償に自らの命を落としてまでも。
その結末こそは、キャロルが捧げてきた献身への報いでなくて何だと言うのか。
だからこそ、独り取り残された自分自身の惨めさが、より際立っているのだと。
「畜生……悔しいなぁ……」
胸糞悪いハッピーエンドを見ずにすむ事がせめてもの救いかと……
意識が形を失ってゆく最後の瞬間まで、愛を求め這い足掻き続けた男は自分が笑っているのか、
それとも啼いているのかを知る事なく、その生涯を終えるのだった。
- やっぱこのおっさんかっこいいわ。そして五十年の献身が一方通行で見向きもされないのが切なすぎる -- 名無しさん (2020-08-23 04:43:48)
最終更新:2021年11月17日 08:18