人違いだ。俺は、ただの弱者(にんげん)だよ、アイザック



ニナ√終盤、自らの破滅を恐れず、どこまでも信じた目標(ヒーロー)求めた親友()に対し、トシローが粛かに告げた断絶の言葉。
信じる事で、満たされぬ渇望に自己を没入させる事で、どんな地平にでも行けるのだと―――
己は無敵そのものだった“あの日”のおまえの姿から、それを教えられたのだと―――
そう告げるようなアイザックの飛翔(墜落)を前に、それでもトシローは、かつてのように妄執に縋るのではなく、
信じられる主を、帰るべき場所を護り、この地で流された数多の血に贖う道を歩むため、友を斬り捨てるのだった。
を鞘に納めながら、剣士トシロー・カシマは胸に去来する数多の想いを噛み締め……友に二度目にして真なる死を告げた


本編より
「人違いだ。俺は、ただの弱者(にんげん)だよ、アイザック」

超越者(ヴァンパイア)などではない。傷つき、失い、過ちに逃げ込んだだけの……捻くれ者さ」


だから、おまえの理想像は間違っている。
俺は永遠に走り続けられる者などではない、止まる事を恐れ続けた臆病者でしかないのだから。

喪失が恐ろしく、無為になるのが耐えられず、何かに成りたいと叫び続けた悪童に過ぎないのだ……


故に、今その妄執を断つ。


飛び散る血の飛沫。肉片の一つさえ刃に付着していない、神速の横一文字が走った。
アイザックの胴が飛ぶ。切り離された上半身は空を舞い、地に着くよりも速く俺は刀を上段に構えた。
腰を落とし、息を吐く。唐竹割の姿勢から振り下ろす───刹那。


「ハ――――」


目が、合った。そこにあったのは狂気ではなく、納得の笑み。
ほんのわずかな悔しさと、それを上回る爽快さに満ちた表情だった。


「先に待ってる。その時に、またもう一戦だ……」

「ああ――去らばだ、友よ」


───そして、断頭台の一閃が落ちる。
磁性反発の力を借りて墜落した刃は、残るアイザックの上半身を文字通り二つへと断ち切った。

裏切りがあった、狂気があった。最後には死別が待ってもいた……それでも、友情の日々も確かにあったのだ。
……溢れ出す想いは、とても言葉では言い表せない。




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最終更新:2024年05月15日 01:12