いつもみたいに、俺の事なんか眼中にないってクールな顔でキメててくれよ。俺は、君っていう突っ走る影を夢中で追いかけてただけの……ただのバカ野郎さ



シェリル√、夜会の掟に従い裁きを待つだけの身となったモーガンが、
恋敗れたという揺らがぬ事実を受け止めた上で、未だ過去に後髪引かれる大切な女性(シェリル)に掛けた言葉。


――トシローを探すシェリルは、気配を感じカルパチアの《納骨堂》に足を踏み入れ……
そこで彼女は、施術台に拘束された瀕死のトシローと、シェリルの逃亡を幇助して捕えられたモーガンを見た。
既に呪いにより、濃厚な死の気配を漂わせた相棒を背中に負い、静かに歩み出すシェリル。
見上げた先にある彼女の表情に、これから待ち受ける危険への怯えは見えず、ただ決意が燃えていると―――
全てを理解した上でモーガンは語りかけた。


「……ここを脱出する勝算はあるのか、シェリル?」

「いつもと同じ。出たとこ勝負よ」


そう言って、モーガンにも共に脱出する事を提案したシェリルだったが。
返ってきた答えは、「このまま掟の裁きを受ける」というものだった。
現状に対する諦めから出た答えと判断したシェリルは、説得を続けようと試みた――けれど


「いや……そうじゃないんだ、シェリル……」

「我が身も構わず、惚れた男を助け出そうとする君の姿……
それを見せられちまった今、俺はもうグウの音も出やしない。完敗って奴さ……」


“これ”は自らの意志で選んだ道なのだと。


「だったらせめて、格好だけは付けたいんだ……俺が、君の為にした行為……
その結果って奴を逃げずに受け止める事でな……恋に破れた男に、他に何ができる?」


その言葉に、シェリルは力なく謝罪する―――


「よしてくれ、らしくもないぜ……」


それに対し、モーガンは弱弱しくも、白い歯を覗かせ、見慣れたあの不敵な笑みを浮かべる。


「いつもみたいに、俺の事なんか眼中にないってクールな顔でキメててくれよ。
俺は、君っていう突っ走る影を夢中で追いかけてただけの……ただのバカ野郎さ」


道を開き、今また背中を押してくれた男の言葉に、シェリルはようやく覚悟を決める。
今さらモーガンを巻き込んだことを悔やむなど、それこそ彼の想いに対する侮辱だろう。
だったら上等。ここから先、身勝手と不義理の限りを尽くし、やりたいように突っ走るだけだと……。


「我ながら酷い女だよね……あんたの言う通りかも」

「あたしは、あんたもこの街も、全部おっぽって逃げてく薄情な影なんだ」

「───こんな悪女に引っかかっちゃった、あんたの自業自得よ」


「ああ、全くだ……ったく、何だって飛びきりいい女ってのは、昔から悪女しかいねえんだろうなァ……」


自嘲気味に笑い背中を向けた女と、呟くように苦笑した大男。
これより先、二人の道は完全に分かたれると理解し、そして何より大事な背中の重み()を感じながら―――


「さよなら───モーガン」


噛み締めるような一言を置いて、シェリル・マクレガーは再び疾走を始める。



  • シェリルって本当にヒロイン力が高いよね。美影の次に。 -- √ヒロインの中で1番王道なヒロインだよね!美影の次に。 (2020-05-31 22:25:19)
  • 1に美影2にアイザック3にシェリルで4お嬢 -- 名無しさん (2020-05-31 22:47:36)
  • アイザックはヒロインってよりかは親友兼自分のガチファンって感じでギルベルトとも違う造形だから好き -- 名無しさん (2020-05-31 22:52:03)
  • ↑2 アリヤヒロイン扱いされてなくて草 -- 名無しさん (2020-06-01 01:04:19)
  • ↑2 そもそもトシローさんはアイザックに対してち○ち○ウズウズしてないもんな。恋愛面においては完全にアイザックの片想い。 -- 名無しさん (2020-06-01 08:55:43)
  • モーガンが重んじてるのって、シェリルが長生きする事より短命でも明日を向いてる事を重要視してんじゃね。 -- 名無しさん (2020-06-02 16:12:46)
  • ↑百年や千年生きようと、昨日しか見ていない男と比較したら尚更。 -- 名無しさん (2020-06-02 16:13:59)
  • 作中でも言われてたでしょ -- 名無しさん (2020-06-02 16:22:38)
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最終更新:2021年10月25日 22:05