《ラプター》と
それに同調した者達の引き起こした争いが鎮圧され―――
図らずも、一EAプレイヤーの枠から完全に逸脱してしまった零示とレオナ。
現実さえ歪められる力を得た彼らには、きっとこれから先、そこから生まれる利益を恐れ求める者達に、日夜狙われ続ける事だろう。
それを理解していた二人は――刻んできた数多の思い出を胸に、
EAに残した
最後の心残りを果たすべく、最初の出会いの場所へと降り立っていた───
「────いい鉄火場ね」
「一触即発、火薬の匂い……一対多数って絵面も、まぁ悪くはないでしょう」
「けれど、勝負としては燃えないわね。だって、結果なら見ただけでもう、判りきってしまっているもの」
――その魅力を、オレは誰よりも知っている。こいつの強さと美しさを、世界中の誰よりも知っているから。
「そうは思わない、そこの少年?」
「ああ。全く同感だな」
女の視線がオレを向いた。あの時と変わらずに──そして、あの時から何も変わらずに。
オレたちは互いに全力疾走しながらここまで来れた、それ以上の幸福はない。
「───あんた一体何者だい?」
「レオナ・K・バーンズ」
「───あなたの名前は?」
「桐原零示……見ての通りの学生だ」
手を大仰に広げて、どこかおどけるように答えた。
――初めまして、どうかよろしく。そんな自己紹介を、それっぽくなぞってみせて………
「ふふ……」「はは……」
おかしくて、面映ゆくて、思わず顔を見合わせながら笑ってしまっていた。
――零示の胸に去来するのは、レオナと出会ってからの約三か月ほどの日々。
ギラつく瞳で、“獲物”と自らを呼んだおっかない女性とこんな関係になるとは……
奇妙な巡り合わせではあったが、しかし彼ら二人には今のこの関係が、何よりもしっくりくるように思えていた。
「長かったのか、あるいは短かったのか……」
「不思議ね……最短距離を駆け抜けた気もすれば、ずっと遠回りしていた感覚もある」
互いの胸には、感慨深さが深く胸に染み渡る。共に重ねた思いは、いったいどれほどであろうか。
「それでもいま、ワタシの瞳にはあなたがいるわ───」
「オレの前にも、最高の女が立ちはだかってるぜ───」
―――ゆえに、約束していた決着を、ここでつけるとしよう。
終わらせるためじゃ断じてない。より輝くために、そして求めた自由を互いが互いへ刻むために。
湧き上がる戦意と共に、高まっていく友情愛情信頼欲求……どれ一つとして混じり合わず、個別に極限の域へと入る。
『リアライズ────』
そして───言葉と共に、顕現する。
───《謳われぬ蒼穹》
───《舞い踊る紅蓮》
無意識の海から出でし、彼らのみの精神結晶。
さあ、この出発点を超えていこう。
新しい明日へとおまえと一緒に踏み出すために。
「それでは、いと麗しきお嬢様」
紳士のようにオレは気取って手を伸ばし───
「素敵な殿方、手を取って」
淑女のようにレオナは指先をしならせて───
踊り狂おう、夜が明けるまで。
無粋な韜晦、もはや不要。おまえの全てを暴くまで。
『ダンスはお好き?』
『──なら踊ろう、苛烈に熾烈に華々しく!!』
―――観客のいない星空の元……激突する蒼穹と紅蓮。
オレたちの出会った最高の舞台で、ついに約束が遂げられた。
- やはり高濱ァ!は腐男子のフリをしたNLガチ勢だよな…。 -- 名無しさん (2020-07-17 19:24:09)
最終更新:2020年07月17日 19:24