レオナ√、爪を隠してきた猛禽が野心を爆発させた場面。
米国は
『Electro Arms』の基幹となる
“システム”を完全に掌握すべく、ここまで活動を続けてきた。
種々の益を生み出す利権も、日本政府との関係も、それに比べれば枝葉に過ぎないと見なしている。
抵抗も、勝ち逃げも、その可能性すら認めない。
長い年月をかけて形成された彼らの
正義は、重機の如く“敵”と定めたものを轢殺する……はずであった。
だが、彼らは自分達の内側に、その目的を阻む最悪の存在が潜んでいる事に気づけなかった。
その敵の名は、“猛禽”。清らかな天使の顔の裏に、血塗られた悪魔の本性を隠した、CIA工作員である。
深夜の米国大使館――その一室では、エヴァンと実験体となった真栄城、そして負傷した『長官』の姿があった。
「私に反旗を翻すということがどのような意味を持つか……理解できていない訳でもあるまいッ」
『長官』の短い恫喝に、エヴァンは答えず……傍らの獣と化した真栄城にサインを与え、
まだ傷ついていなかった部分である脇腹の肉を抉り取らせた。
度重なる実験の末、正気を失い、命じられるままに暴力を奮う機能しかなくなった真栄城。
暗黒に墜ちた実験体の姿を、エヴァンは満足気に見つめる。
「システム自体の解析は未だ終わっていない、EAは一介の兵士には過ぎた代物だ」……
苦痛に顔を歪めながら、『長官』はこの行動の目的を問うが―――
「あらら、説教始めちゃう?ここでペラペラ喋っちゃいます?
これまでさんざん合法的な略奪を繰り返してきた米国の言う事なんて、ちょっと聞く価値ないんだけどねぇ」
「開発したEAのシステムクラックが可能な手段、それだって俺がいてこそ形にできた訳じゃん」
「────なら、独り占めはだめだよなァ? 使う権利は俺にある」
エヴァンは、笑いながらそう言い放つ。
米国でもいまだ全容を現すことができていない技術……
EAが人体を媒介としてデータの交換を行うものである以上、適合性を初めとした問題は山積しているというのが大勢の見方だったが。
……新たなウィルスの
被検体が実際にここにいる以上、自分の目的の上では何も問題はないと、エヴァンは考える。
そして、大使館の中核である『長官』を殺せば、予備の『長官』候補がその後釜を巡って内輪で争う事は目に見えている。
それによって、米国側の機能中枢に一時的な混乱を引き起こすことがエヴァンの狙いだった。
エヴァン・アーマライトは滔々と語り出す。自分にとってのEAの“真の価値”を。
「俺に言わせれば誰もがあのシステム自体のハッタリに騙されてるのさ……
木を見て森を見ずとか言うだろ?だけど逆なんだ。あんたらは一人として、その木を見ていない」
「結局のところ、『Electro Arms』に詰まってるのはデータなんだよ。
たとえどれだけ膨大であろうが所詮は情報の集合体、その総量ゆえに制御が必要とされるだけの事。
あんな舐めた態度を取りやがるIgelが重用されてるのだって、それが理由だろ」
――仮に材質が未知の新素材であろうとも、作り出せているということは作り出す分の素材と過程があるという事。
――同じ形をなぞってやれば、同じ機能を果たすものが作り出せる。
「なら人間の脳に収まるだけ……容量内で上手い事圧縮かけて
最適化して、必要な機能だけ詰め込める事ができたら────」
「人体をリアライズ用の独立システム化させることも可能じゃないか?」
「ていうか総ての機能なんていらないね。
現在のEAの仕様、あとはType-Cさえあればそれだけでなんとかなるだろう?」
それこそが
兵士の独自の見解。
EAの仕様……パラメータに基づいた超人的な身体能力、そして7つのアームズ。
それだけでも運用が可能となれば、自分は無敵だと猛禽はほくそ笑む。
単純な個人の戦闘能力として、この地上の誰もが敵わない存在となる。
己の掌中に収めた暁には、十分に達成可能な野望がある。
兵士はとことんまで軍属思想。まず求めるのは力で、他の些末な事など誰かに任せてしまえばいい――
スタンドアローン化したシステムを、新世代の兵装プログラムとして確立させる。
そうすれば、軍事の面で己に及ぶものなどどこにも存在しなくなり……後は好きにすればいいだけのこと。
手に入れた力をどこかの軍に売るもよし、民間軍事会社を立ち上げるもよし。
いずれにせよ、終わる事のない戦いがエヴァンを待ち受けているだろう。
それは、想像するだけで自然と口端が歪んでしまうほどの悦楽だ。
そうだとも。自由に、自由に、自由に、自由に――CIAどころか一国をも相手にできるという実感。猛禽類は解き放たれた。
「……それは所詮子供の戯れ言だ。貴様の望む世界など、戦場という箱庭のみ罷り通る夢想に過ぎん。
いずれ必ず行き詰まるっ……!」
その『長官』の言葉に、エヴァンは双眸を険しく細め―――
「いやー響かないなぁ、あんたの言葉。じゃさ、長官の深淵なる知恵でこの窮地を見事切り抜けてみせてよ……
それすらできない奴の口にする事なんて、それこそ戯れ言だと思うけどね」
―――反論は永遠に返ってこない。血飛沫と共に、床に転がる首が一つ。
そのまま、エヴァンは号令をかけ―――そのまま部屋の扉を蹴破り、配下の部隊が現れる。
彼らはいずれも、エヴァン・アーマライトと同類の碌でなし……暴力の信奉者たちだった。
「――さあやろうか、これから面白くなるぞ……」
手勢を従え、焔に照らされた大使館を後にするエヴァン……猛禽の行軍を止められる者は、そこにはいなかった。
- アカウント譲渡要望の上にこれが並んでて草 -- 名無しさん (2020-08-12 11:44:03)
- 独り占めはだめだよなァ?使う権利は俺にある アカウント譲渡要望について おまえって奴は……なんて、残酷な男なんだ…… -- 名無しさん (2020-08-13 09:18:24)
- 続き おまえって奴は……なんて、残酷な男なんだ…… これからのおまえは、二度と俺を忘れられなくなるからな あばよ別嬪さん───愉しかったぜ。 -- 名無しさん (2020-08-13 09:30:46)
- 脅した結果アカウント譲渡要望引き出して、それに対して残酷や言ってるように思える -- 名無しさん (2020-08-13 09:22:17)
- 独り占めはだめだよなァ?邪神の情報を使う権利は俺にある。寄越せよ、お前の盧生の資格を!それはもともとオレのモノだっ!なに?アカウント譲渡要望について...だと。オレは盧生になれないと!お前はそういうのかーッ!おまえって奴は……なんて、残酷な男なんだ…… -- 名無しさん (2020-08-13 19:25:26)
- 独り占めはダメだよなァ?使う権利は俺にある→やっぱり現実の快感じゃ、仮想遊戯には勝てないのよぉッ -- 名無しさん (2020-09-20 14:19:59)
- ふふ、出来ちゃう(はぁと -- 名無しさん (2020-10-18 00:46:08)
- 独り占めは駄目だよなぁ、使う権利は俺にある(台に乱入→リアルファイト -- 名無しさん (2020-11-06 17:16:58)
- そしてigelの秘蔵っ子だったマスターアーム君もまたエヴァン君にNTRれるのでした・・・ -- 名無しさん (2020-11-06 17:20:02)
最終更新:2021年03月10日 12:40