エリザベータ√……イヴァンの戦士としての“格”をうかがわせる登場シーン。
(なお対となる美汐√では、エリザベータと乱丸の操る兵器群が現れている)
囚われた
凌駕救出の為の『作戦』を携えて……礼と美汐、そして
輝装に覚醒したばかりのジュンを加えた3人は、
実働部隊の拠点があると推定された
八紘市の
臨海工業地帯に出撃する。
「ふん、ビビっちゃって情けないわね。あの時あれだけ大口叩いた癖に」
「ビビってないもん」
「いーや、ビビってる」
「ビビってないもん!」
いがみ合う二人の少女の姿に苦笑を浮かべる礼。その強化された感覚が、立ち塞がる“敵”の姿を捉えた。
ジュンと美汐、二人も同じくその存在を確認し、視線を向けると……
常軌を逸した念を見せつけて現れたのは、獰猛な獣が如き気配。
隠すまでもない、告げられるまでもない。一度相対したならば忘れられない戦慄が、礼の脳裏には蘇っていた。
「ようこそ」
刻鋼人機――イヴァン・ストリゴイ。人型をした猛獣……その異貌が、親愛そのものと言った笑みを浮かべていた。
凌駕との一戦で負ったという
損傷の痕は、既に外見上微塵も感じさせてはいない。
「久しぶりだなァ、緋文字礼。両手に花とは羨ましい限りだぜ」
「……本当に君一人で出てきたようだな」
初対面のジュンと美汐がその馴れ馴れしさに面食らっている中、礼の意識は警鐘を鳴らし続ける。
単独での出撃……正気の沙汰とは思えぬし軍属として不適格な行動に思えたとしても、
享楽と義務を両立させているこの男、そこには鋭い牙が潜んでいることは間違いないと。
「応ともよ。お互いどうせ本調子じゃなかろうと思ってなァ。数合わせ的には丁度いい塩梅だろ。
過大評価も過小評価も一切してねえ、これで適性値ってのがこちら側の認識でな」
その挑発的な物言いに、美汐は鋭く男を睨み、怒りを言葉に乗せるも。
「まあ俺も病み上がりだからなァ。せいぜい三対一が限度だ。ハンデが少なくて悪かったな、お嬢ちゃん」
「てめえ……」
続けられたイヴァンの謝罪に、美汐は激発する事を抑えるのがやっとの様子だったが。
「青砥さん。あれは挑発のつもりで言ってるんじゃないよ。
本当の本心からそう言ってるんだ。自分の力を全く疑ってない。――ああいう奴ってやばいんだよ」
ジュンはその皮膚感覚で、初対面ながらも対峙しているイヴァンという男の脅威を感じ取っていた。
それまで黙っていた礼が、イヴァンに語りかける。
「イヴァン……一つだけ訊こう。凌駕君はまだ生きているな?」
虚偽を許さぬ迫真の言葉に対し、イヴァンは喜びに牙を剥く。
「ああ、そこは安心───出来るかどうかは判らんが、保証はするぜ」
「こっちにも色々思惑があってな。少なくとも俺にとっちゃ、早くもその甲斐はあったようだ。
戦場の絆って奴は鉄より固いよなァ。仲間を助ける為なら、わざわざ虎口にも飛び込んで来てくれる……願ったり叶ったりだぜ」
こちらが凌駕を抑えている以上、礼たちの方から行動を起こすのは想定内。
異貌の怪人が嘯く言葉は、要するにそういう意味だ。
その上で罠を張るでもなく、夜の散策の如く無造作に出張り迎え撃つ。いかにもこの男らしい、奇妙な洒脱を感じさせるやり方ではあった。
そうして――大樹のような太首を愉しげに鳴らし、悠然とイヴァンは一歩を踏み出す。
「必要な情報なら、もうくれてやっただろ?無粋なお喋りはもうやめようや。
あとは自らの手で、自らの力で切り拓く領域ということで。───さ、友情の救出劇の始まりだ」
鋼へと変じる肉体。一瞬で戦意は発露され、闇夜に闘争の気を充満させ・・・
「やかましいッ!踏み殺してやるから涙流して悦びやがれッ!」
「行くぞ、ジュン───奴は手強い、決して油断はするな」
「はい!」
四色の閃光が夜霧を切り裂き、今宵、鋼鉄戦機たちの殺人舞踏は開幕を告げるのだった。
- 字面だけなら礼さん側が言ってそうなセリフなのを包帯男側が言ってるのじわじわくる -- 名無しさん (2025-09-16 02:43:23)
最終更新:2025年09月16日 02:43