だいじざいてん・こくうりきのけつじん
「我が墓碑銘をここに謳おう───」
「『大自在天・虚空力ノ血陣』!!」
「これで全部手の内吐き出して、すっきりしたわい――お互い負い目なしで、とことんまでやり合うぞなもしッ!」
吠え猛る原田の叫びと同時に、両者の戦いは怒涛の勢いで再開された。
繰り出される槍の連撃は、比喩ではなく雷火の閃きにも匹敵した。
そして受け太刀ごと委細構わず圧し潰す、重力によって倍加された破壊力。同時に被弾直後、後方へと弾き飛ばされる重力波の洗礼。
隼人が攻防の間の僅かな隙を縫い繰り出した反撃の太刀も……強制的に速度を奪われ、ただ躰に触れる事しかできない。
他の新選組残党と同じく
血族と化した、
原田左之助が開眼した
墓碑銘。
かつて朋輩の心無い挑発に対し、自らの矜持を守るべく腹を切った経験を持つ原田は、既に人間時代から
条件を満たした存在となっており……
発現した能力は、
形ある物質で満たされた宇宙を統べる大自在天の如く、万物に作用する虚空の力……すなわち重力を操る異能であった。
「水は高きから低きに流れ、石を放れば自然と落ちるようになっておる。そいつは、見えず触れずの透明な重石が、この世のあらゆるものにへばり付いているせいだという」
「俺たちがこうして地に足を踏みしめて立っていられるのも、その透明な重石……“虚空の力”みたいなものが働いているからというわけぞな。
なんとも不自由なことだが、その不自由こそが俺の武器になっとるというわけよ」
自らの肉体や槍の先端に重力場を纏わせる事で、拳や突きの一撃一撃の威力を重くすると同時に相手へ一方的に重力波の負荷をかけ押し潰す。
(さらに効果範囲を圧縮し、武器の先端に暗黒の重力球体を形成、重力渦に相手の肉体を飲み込み押し潰すという芸当も可能な模様)
転じて相手の攻勢に際しては命中する部位に力を生じさせ、血族の膂力で振るわれる刃からも勢いを奪い、威力を削ぎ落す。
また無重力場の形成も可能で、それを利用し瞬間的に爆発的な跳躍力を得ることもできる。
弱点としては、重力場は一度に複数の部位、または全身を覆うほどの範囲は形成できず、また直接に攻撃範囲を広げられないという事もあり、
目まぐるしく移り変わる達人同士の攻防では、使用者の技量を要求する能力だが、
原田は長大な槍と強靭な肉体を自在に操りながら、
速度を武器とする墓碑銘を持つ隼人を翻弄――
敗北寸前まで追い詰め、戦闘者としての差を見せつけた。
最終更新:2021年12月24日 14:17