アイゼルネ・ユングフラウ
「――ならば、私もこれでお相手しよう」
「我が血に応えよ、鉄の姫君」
伊東甲子太郎がクリストヴァン・フェレイラより手に入れた、《葬鬼刀》の一振り。
欧州で《血の伯爵夫人》と呼ばれ恐れられた大血族の魂を埋葬し鍛造された両手持ちの大剣。
巨大な鉄塊の両側面には、まるで特大の鉋のように分厚く武骨な刃が備わっている。
所有者の意思に応え、遠方からでもその手元へと呼び戻すことで、攻撃の軌道を変則的なものにできる事に加え、
伊東の剣士としての技量が、遠近に不利な間合いを生じさせない凶悪な武器としてこの大剣を在らしめている。
両腕を交差させた独特の構えから生じる梃子の作用、および身体全体のねじりで生じる反動を十分に活用し、命を刈り取る縦横無尽の剣戟が常に相手に襲い掛かる。
そして遠心力を無二の加速器として繰り出される一撃一撃は、単純に速く、重い。
葬鬼刀に共通する身体能力強化という恩恵も加わる事で、並みの刀剣では刃を合わせた瞬間に使い手ごと打ち砕かれるしかない。
「闇を翔び往き、我が敵を討て」
さらに、《葬鬼刀》としての独自の能力も当然有しており、《村正》同様に使用者の血を捧げることでその異能が発動する。
血を貪ることで《鉄姫ノ慟哭》の刀身は大きく左右へと分かれ、そこに生じた異空間から、無数の鋭い牙のような突起が形成。
迂闊にもそこに入り込んでしまった対象は武器であれ、生物であれ、獣の顎門……あるいは吸血鬼のように喰らいつかれる。
異空間から生じるそれら鉄の棘は絶えず異空間から吐き出されており、囚われれば逃れることは困難極まる。
こうした力を持つに至った背景について伊東は《血の伯爵夫人》の魂に加え、
彼女が年若い少女達の拷問に愛用した《鉄の乙女》という器具も同時に鋳込まれた結果強い拷問器具としての属性を帯びたのであろうと語っている。
- 策士の癖に大剣使いという伊東さん -- 名無しさん (2021-10-12 01:07:21)
最終更新:2021年12月17日 15:47