概要
ソドムとは、英雄の時代、最も優れた錬金術師が創り出した古代人、三種族に連なる新たなる人の形。禁忌の魔法にて生み出されし、理の逸脱者。故に、存在自体が神に仇なすものとされ、多くの教団、宗派から"悪魔"と呼ばれ憎悪の対象とされた。しかし、そのデザインは不完全な人間の紛い物。最優の錬金術師が犯した唯一の失態とも称される。そしてその事実や、詳細は全て禁書庫にて封印され、二度とこのような生物が生まれないよう厳重に管理されている。
詳細
人の魂は、まだ生きたいと願う感情に影響を受け、亡霊、半霊体へと変ずる。そしてその願いは、今世で犯した罪が深く、咎が多く蓄積された悪人の魂であるほど、実体に近いとされる。
その魂を死霊魔法によって、死産した赤子の肉体と融合させる。本来なら反発し合い、せめぎ合う魂と肉体の融合、それらを可能にするのは紛れもない憎悪と悪意。そして、"ソレ"は反転する。表の世界で生きる生者から、冥府の底でしか息ができない死者へと。死んでいるのか、生きているのか、曖昧な肉体。しかし魂の在処が、その泡沫のような存在を現世に縛り付ける。仮にソドムという存在を呼称するのであれば、"霊人"と呼ぶのが相応しいだろう。
ソドムについては虚数空間も参照のこと。
能力
表の世界では、肉体の現実強度を底上げする魔装を身体に纏わなければ5分と経たずに霧散する。故に、裏の世界と生まれながらにして接続されている。つまり、彼等は本能で、冥界の力、"虚"の魔法を操るのだ。
また彼等は人との間に子を為す事を可能としており、人とソドムの間に生まれた子は、より表の世界に対しての耐性を持って産まれてくる。それを繰り返すことによってゆくゆくは、最優の錬金術師が目指した表の世界にありながら、裏の世界の力を用いる最強の魔法生物が産まれるとされている。しかし、人との間に生まれた子は、それを繰り返すことにより徐々にソドムの特性が薄れ、現実への耐性を持つ代わりに虚属性の適性が消失していく。故に彼等は失敗作である。
また彼等は自身の魂の力、つまり、罪を犯した魂の咎を解放することにより、より獣種や竜種に近い姿へと変貌することがある。この能力はディーアの完全獣化に近いものだが、ディーアのように元の姿に戻るというものではなく、人の身から逸脱し、"進化"するという意味合いの方が強い。但しこの力は寿命をすり減らすことと同義であり、長時間の使用は出来ないとされている。
また現代のソドムは表の世界で生活する為に独自に現実強度を引き上げる魔法を扱う者もいる。だがそれが出来ない者達は魔装に頼って生きていくしかない。
その他
現在、大陸に存在するソドムの数は数百人程度とされている。彼等の殆どは人目につかない山奥や、秘境で生活を行っている。彼等の多くは人間に対し憎悪と嫌悪を抱いており、関わることは無い。
ネームドキャラでは、ヴァンがソドム。彼は"悪魔"と呼ばれ、忌み嫌われたソドムという種族の血を引く者であり、ソドムの父と、人間の母の間に産まれた子供である。両親は古臭い魔法と伝統を好む秘密教団"悪魔祓い(エクソシスト)"に殺され、命からがら逃げ出し、辿り着いた鎮堂の森で泥をすするような生活をしていた。その為人間の魔法使いに対して激しい憎悪を抱いているが、母の遺言で「人を憎んではいけません」と言われ、今も尚、どちらの正義に従うべきか葛藤している。また、彼が着ている魔装は母の形見である。
メタ的な話
本編に出てくるソドムはフェンリスとヴァンくんだけです。魔導学院編が終わって、三馬鹿達が大陸で活躍するお話があったら会うこともあるかもしれませんが、現状は出す気は無いです。
またヴァンくんの魔装は両親の形見です。多分どっかに書いたと思いますが。現代のソドムは表の世界でも魔装なしで30分くらいは生きられるので外してもすぐ死ぬことはありません。まぁ、外した瞬間魔法とか使えなくなるので実質詰みですけど。
シスター・セスの悲劇
《あらすじ(後世に伝わってるもの)》
主人公は緑髪の男の姿をした悪魔、フェンリス。ヒロインは聖ジニア修道院に務めていたシスター、セス。
大陸を放浪して人間を堕落させて回っていた(*1)悪魔フェンリスは、ヴィルへネス島に赴いた際に、偶然、修道院の庭にいたセスと出会う。
フェンリスはセスを堕落させようと、「お前の願いを3つ叶えてやる代わりに、俺に魂を差し出せ」、と要求する。
セスは1つ目の願いに「他の修道士に手を出さないこと」、2つ目に「孤児院の子達がずっと幸せに生きられること」、3つ目に「貴方が悪魔でなくなること」を望んだ。
フェンリスは今まで堕落させてきた者達と異なり、自分の為の願いを言わなかったセスに驚き、「そんな願いを言う奴の魂を奪っても面白くない」と言って契約を破棄してしまう。それによって「嘘をついてはいけない」という悪魔の掟を破ることになり、フェンリスは悪魔としての力を封じられ人間として過ごすことになってしまう。結果的にセスの3つ目の願いは叶えられたこととなる。(ここのセスの台詞がフェンリスの心を揺らすとかそういう描写があっても良い)
悪魔としての力を取り戻す為に、人間界での暮らしを余儀なくされたフェンリスだったが、魔法も満足に使えないフェンリスは、島から出ることも出来ない。そこで唯一島の中で関わりがあったセスの下に半ばヒモのような形で転がり込み、奇妙な共同生活が始まる。始めは悪魔としてのプライドがセスに冷淡な態度を取らせることもあったが、徐々に人間としての自分に向き合い、そんな自分を献身的に支えてくれたセスに心を開き始める。
3年が経った後、フェンリスはセスに自分の想いを告げる。セスはフェンリスのその告白を受け入れ、こうして2人は結ばれることとなった(この告白の場所が後の旧礼拝堂)。
暫くしてフェンリスとの子を授かることになったセスは(*2)、同じ時期に、ある問題を抱えていた。それは、許嫁である"グレイプニール"(*3)との婚姻が迫っていたことである。当然ながらセスはフェンリスとの関係を親族や友人に隠す必要があった。その為グレイプニールと結婚し、島の外に嫁いでしまえばもう二度とフェンリスとは会えなくなってしまうだろう。当然、フェンリスとの間に授かった我が子にも。そして、その事はフェンリスには伝えていなかった。
しかしただのシスターであったセスに、それに抗う力はなく、セスは苦悩し、とうとう、結婚式の前日にグレイプニールとの婚約(*4)の話をフェンリスに打ち明けてしまう。セスはフェンリスが自分の話を受け入れ、助けてくれることを望んでいたが、フェンリスはセスの話を聞いた後に、家を飛び出し姿を消してしまう。
悲しみにくれるセスは産まれたばかりの我が子を抱いて泣き続ける。一晩経ってもフェンリスが帰ってくることは無かった。
迎えた結婚式当日。純白のドレスに身を包んだセスの表情は暗かった。式はつつがなく進み、いよいよグレイプニールとの誓いを交わす時。グレイプニールの手がセスのヴェールをめくり━━━━━━
━━━━そこで、いきなり式場の扉が乱暴に開かれる音が響いた。式場にいた全員がそちらに視線を向ける。そこに居たのは、ボロボロの黒い布を身にまとった男。フェンリスだった。フェンリスの眼は獣のように爛々と輝き、その視線はセスに注がれていた。
フェンリスは家を飛び出した後、霊廟に住まうとされている巨大な霊狼(*5)と契約を交わした。それは自分の魂と引き換えに、一度だけ悪魔としての力が使えるというもの。しかし、時間が足らず、契約の最中で飛び出してきてしまったた為、その力は不完全なものだった。
フェンリスはグレイプニールからセスを奪うと、そのまま式場からの脱出を試みる。その場にいた修道士達からしてみれば、悪魔が花嫁を攫っていったという異常事態。グレイプニールを始めとする強力な魔法使い達がフェンリスに攻撃を浴びせる。フェンリスは魂を削りながら悪魔の力でその攻撃からセスの身を守る。
後一歩で式場から出られる、というところでフェンリスは腕を切断され、抱えていたセスを落としてしまう。容赦なく降り注ぐ魔法の雨。フェンリスはセスを己の身を挺して守ろうとセスの前に躍り出る。
死を覚悟し、セスに逃げろと告げたフェンリスは目を瞑る。だが、いつまで経っても、己の肉体が崩壊することは無かった。
フェンリスが目を開けると、そこには、串刺しにされたセスが倒れていた。目の前の現実を受け入れられず、呆然とし、膝を着くフェンリスにセスは「いいんです......来てくれて、そんなにボロボロになって、私を守ってくれて......嬉しかった、ありがとう」と伝え息を引き取る。
フェンリスはその時初めて、後悔、という言葉の意味を知った。何故あの夜、自分勝手に家を飛び出してしまったのか。セスを連れて島の外に出るという選択肢もあった筈だ。冷たくなったセスの目が赤く腫れているのは何故だ。あの夜、自分に置いていかれたセスがどんな想いだったのか。
自分は何故そんなことを......そうだ、これは、己の傲慢だ。自分の力が戻れば、全てが上手くいくと思い込んだ傲慢。セスを救い出し、気に入らない奴らを全部殺せると思い込んだ自分の愚かさ。
喉が引きちぎれるくらい叫んで、叫んで、叫んでも、目の前で毀れ落ちる命の雫を掬いとることは出来ない。自分の罪を自覚した時、フェンリスは再び、悪魔としての力を取り戻した。
セスの亡骸を抱え、立ち上がったその背中には真っ黒で歪な翼が一対。身体は狼と竜が混ざったようなおぞましい姿に。フェンリスは本当の意味で、"悪魔"になってしまった。(ここで最初のセスの台詞が伏線となっていたことが分かる)
逃げ惑う式場の人間を鏖殺したフェンリスは、セスの亡骸を持って、2人が暮らしていた家に戻る。そこには穏やかな顔をして眠る我が子が居た。フェンリスは2人を優しく抱え上げると、霊廟の中に姿を消した。
これが後世に伝わるシスターセスの悲劇。副題、"悪魔の原罪"の顛末である。