○○mm砲L××


戦車の主砲である「75mm砲L24」などについての解説。

前の○○mm砲というのは口径(砲の中の直径)のことで、砲の中の幅≒砲弾の大きさのこと。
当然弾が大きい方が威力が高いが、反動や重量が増大してしまう。

第二次世界大戦時は砲弾は榴弾と徹甲弾、その他(曳光弾など)があるだけで、
対戦車戦闘には徹甲弾、一部に榴弾が用いられていた。
砲弾ごとの差異はあまりなかったため、ほぼ口径=砲弾の威力といっていい。

第二次世界大戦時、対戦車戦闘の重要性の
増大から敵戦車を倒せる威力の必要性はどんどん高まっていき、大型化はどんどん
進んでいった。
例えばドイツ軍開戦当初の主力3号戦車は37mm砲だったが、パンターは105mm砲が
搭載され、E-100は150mm砲の搭載が検討されている。

しかし戦後の戦車はほぼ全て120mm砲となっている。
これは砲弾などの工夫で対処したり、戦車の装甲の限界からこれ以上の威力が
必要とされなくなった、ラインメタル社の120mm砲L44が傑作で各国で採用され、
それぞれの国で砲弾などの基準となった、などの理由がある。


では後ろの「L××」とはなんぞや、というと口径長(口径に対する砲身の比率)
を表す。
長さで言えば、75mm砲L24(4号戦車E型)ならば75×24で1800mm=1.8m
75mm砲L43(4号戦車F2型)ならば75×43で3225mm≒3.23mとなる。
本来「口径長」なので「24"口径長"75mm砲」などと言うべきなのだが、砲は
慣例的に「24"口径"75mm」と呼ばれる。

砲身が長ければ長いほど砲弾が加速できて砲口初速を速くでき、同じ砲弾でも
威力・射程・装甲貫通力を高めることができる。
対戦車には向かない榴弾でも、高い初速を得られれば、装甲を打ち砕くことで
対戦車戦闘にも十分な威力を発揮できる。
(例えばKV-IIの152mmHIは152mm野砲(ソ)を戦車砲として乗せたもの)

直接長さで表さないのは、同じ2mでも25mm砲ならば細長く加速が長いとなるし、
100mm砲ならば逆に短い加速となるなど、砲弾に対する比率が問題だからである。

砲弾は同じだし砲身は細いので資源をそんなに使わない、ならば長くすれば
いいやとだれもが考えるが、長い重量物を掲げるということは慣性モーメントや
テコの原理で重量の問題が何倍にも増幅され、砲身や支持部の耐久性、フロント
ヘビーとなる重量バランスなど解決しなければならない問題が多々有るので、
そう簡単にはできていない(4号戦車のように元から裕度があれば別だが)。
ただ対戦車攻撃に砲口初速は非常に重要な点なので、多少の問題があっても
実戦投入された戦車も多々ある。
SU-100はフロントヘビーだったがサスペンション強化で乗り切っている)。

特に問題となるのが砲塔の容積とリングサイズである。
であれば、戦車で最も大きい構造物、即ち車体でで砲を支えればいい。という
発想でできたのがドイツの駆逐戦車となる。

なお急な攻撃力増大の要求に対し、高射砲を戦車の主砲として転用した例は多い。
(一部では榴弾砲を搭載したものもあるが)
これも、高く・遠く飛ばすということは即ち高い砲口初速を得るということであり、
高射砲や榴弾砲は元からできていたためである。

これも終戦時にある程度限界点に達しており、戦後の戦車では砲弾自体の工夫
(弾芯の比重増加、APDS、APFSDSなど)で対応する流れとなった。
最終更新:2021年07月29日 09:09