概要
皇帝即位と独眼竜の死
戦乱の終幕が近づくと並行して、この大陸を襲った寒波は、年々その勢力を強めていた。
ベルザフィリス国が天下を統一した頃には、戦乱による苦しみがなくなるのと入れ替わるかのように、天災による民の苦しみが大きくなり、その日の食料にも困る土地が出てくる。
この頃の餓死者は、戦乱の戦死者とは比較にならないほど多かったとの記録もある。
そんな中、
ガイヴェルドは、皇帝の位を復活させ、
ベルザフィリス帝国の建国を宣言し、自ら初代皇帝に就くことを発表。
713年1月5日には、盛大な皇帝就任の式典を行った。
隠居生活を送っていた
ルーディアは、突如山を降りて
ガイヴェルドの元を訪れると、いまは皇帝になる時期ではない、まずは民の生活を安泰させるべきだと忠告するが、
ガイヴェルドは、この様な時代だからこそ自分が皇帝となり権力を集中させ国を富ませるのだと、頑として聞き入れなかった。
元々権力や地位に対して人一倍強い執着心を持っていた
ガイヴェルドは、この時より
ルーディアを疎み始める。
その後
ルーディアは、隠居後に非常事態に備えて長年かけて備蓄しておいた食料を周囲の民に分け与え民衆の支持を受けていたが、この行為が
ガイヴェルドを更に怒らせる。
ある民が、
ルーディアこそ帝位に就くべきだったと洩らした事がある。
これは勿論本心ではなく、感情的に咄嗟に発した言葉だが、これを聴きつけた
ガイヴェルドはその発言者を見つけ出して家族もろとも処刑すると、この言葉を真に受けて、皇帝が二人いてはならないと
ルーディアの存在に危機感を覚える。
ただし、
ルーディアが、隠居後に領地を持っていたのならともかく、わずかな供と単身で隠居していたのなら、民衆を救うほど食料を備蓄していたというこの話には無理がある。
その辺の資料は乏しく、史実なのか後世の創作なのかはわからないが、どちらにしても、
ガイヴェルドの性格が豹変すれば、相対的に
ルーディア時代への懐古から、彼女の人気が高まっていたことは事実であった。
国崩れの乱
こうして
ガイヴェルドの元に引きずり出された四将は、その場で処刑されることとなった。
自分を裏切ろうとした彼らに対する
ガイヴェルドの怒りは凄まじく、
ヴィルガス、
ディグドは生きたまま手足を切断され、
バイアラスは目をくりぬかれ、
レニィラは耳を焼ききられた。
かつて戦場を駆けた英雄である四人は、苦しみながら息絶えていき、
ガイヴェルドはその光景を見下ろして笑みを浮かべながら優越感に浸っていたという。
同じ頃、四将の一族も囚われ、各地で連座処刑されていた。
バイアラスの妻は、奴隷から将軍の妻になり、
リディを挟んで三角関係の恋話を摘むんだことで有名な
シルであるが、彼女の命も奪われた。
そして、三歳の誕生日を迎えたばかりの
レニィラの養子も彼女の目の前で串刺しにされ、密告者
セドゥも
レニィラの一族として数えられ、本人の哀願も無視されて処刑された。
その報告を帝都に向かう途中で聞いた
リディは、ショックのあまりその場で気を失ったという。
こうして
蜉蝣時代最後の嵐「国崩れの乱」は幕を下ろした。
蜉蝣時代の終焉
国崩れの乱の後、
ガイヴェルドの独裁によって帝国は統治されるが、彼自身の政治力の高さと、冷酷な処罰を行なうのはあくまでも自分の地位を狙う者だけであり、それ以外は比較的公平な統治と裁きを見せたことから、本来ならば帝国の初代皇帝として、多少強引ながら名君として歴史に名を刻む筈であった。
しかし、この地を襲った冷害は一向に収まらず、それどころかついに長雨、火山噴火といった天変地異を起こし、数多くの将兵が血と戦で作り上げた国の歴史を一瞬にして崩壊させた。
人々は次々と南の地へ逃れ、
ガイヴェルドが民衆の流出をどれだけ抑えこもうとも限界があった。
結局、
ガイヴェルド自身も735年に遷都を宣言し、
ベルザフィリス帝国は一つの役目を終え、ここに多くの英雄、豪傑、知将が綺羅星の如く輝いた
蜉蝣時代は終わりを告げた。
シーザルス国の食客に近い状態でありながら、最後まで実権なき「皇帝」の地位を名乗り続けた
ガイヴェルドも748年に没した。
時は流れ 彼らの熱き魂も 全ては歴史の一頁となる
炎の宴も 大地のゆらめきも 風の哀唄も 全ては歴史の一頁となる
兵士の叫びも 軍師の遠謀も 将軍の決断も 全ては一行の言葉となる
言葉は魂までも残すことはできない だが、その一頁に、一行の中に、彼らは確かに生きていた
関連項目
最終更新:2024年08月12日 22:37