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【船】航海 - (2015/01/17 (土) 12:36:58) のソース

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*16世紀の地球

16世紀ヨーロッパの地図はかなり完成されてたけど、世界地図はまだまだ未知の地が多くて正確じゃなかったです。
日本なんて巨大な四国。
なんたって世界一周したのが[[フェルディナンド・マゼラン>http://en.wikipedia.org/wiki/Ferdinand_Magellan]]と[[サー・フランシス>http://en.wikipedia.org/wiki/Francis_Drake]]の2人だけだもんね。

|&ref(16世紀_地球儀.JPG,,height=250)1541年|&ref(16世紀_世界地図.JPG,,height=250)1570年|
左:地理学者[[ゲラルドゥス・メルカトル>http://en.wikipedia.org/wiki/Gerardus_Mercator]](フランドル)が作った地球儀。1569年メルカトル図法の世界地図「[[Nova et Aucta Orbis Terrae Descriptio ad Usum Navigantium Emendate Accommodata>http://en.wikipedia.org/wiki/Mercator_1569_world_map]]」も作成。
右:スペイン王フェリペ2世の地理学者[[アブラハム・オルテリウス>http://en.wikipedia.org/wiki/Abraham_Ortelius]](フランドル)が作った世界地図「[[Theatrum Orbis Terrarum>http://en.wikipedia.org/wiki/Theatrum_Orbis_Terrarum]]」。

#region(close,16世紀の地球儀)

こちらは数学用器具(コンパスや砂時計)と兵器の製造者[[エメリー・モリノー>http://en.wikipedia.org/wiki/Emery_Molyneux]](イングランド)の地球儀です。
海の湿気に負けないように作ったので、船乗りの皆さんがご利用。
えっ、地図って湿気で延びるの? ホントはビセンテの地球儀が見たかったけどぜーんぜん分かりませんでした。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Globe]]

&ref(16世紀(地球儀).JPG)エメリー・モリノーの地球儀(1592年)

エメリー・モリノーは船乗り[[フランシス・ドレイク>http://en.wikipedia.org/wiki/Francis_Drake]]や[[ウォルター・ローリー>http://en.wikipedia.org/wiki/Walter_Raleigh]]、数学者[[エドワード・ライト>http://en.wikipedia.org/wiki/Edward_Wright_(mathematician)]]とお知り合いです。
1592年初のイングランド製地球儀は女王エリザベス1世に献上。
王族や貴族の間でも大人気。その後、船乗り達のためにもうちょっと小さい地球儀を作ってます。

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#region(close,16世紀の地球の中心は赤道とトルデシリャス条約)

いくつか16世紀の世界地図を眺めてみたところ、16世紀の緯度0度は赤道、経度0度は[[トルデシリャス条約>http://en.wikipedia.org/wiki/Treaty_of_Tordesillas]]みたいです。
トルデシリャス条約はスペインとポルトガルで勝手に地球を半分っこしてるアレ。
アブラハム・オルテリウスの世界地図は、地球の中心がこんな感じに描いてあります。

&ref(16世紀(地球の中心).JPG)

ちなみに21世紀はロンドン北緯51度30分28秒×西経0度07分41秒、マドリード北緯40度25分08秒×西経03度41分31秒です。
経度が地図とぜーんぜん違うのは[[グリニッジ天文台>http://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Observatory,_Greenwich]]が経度0度だから。
16世紀の世界地図って大陸の形がちょびっとオシイけど、緯度×経度はけっこうイケテルんじゃないかしら?

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#region(close,16世紀の海には怪獣が住んでる)

16世紀の地図には神話や伝説の怪獣が描かれてます。[[イッカク>http://en.wikipedia.org/wiki/Narwhal]]を目撃した船乗りが「怪獣見たー!」とかあるのかも。
こちらは怪獣だらけな北欧の海図(1572年に印刷されたもの)。
1583年アメリカ航海中の冒険家[[H.ギルバート>http://en.wikipedia.org/wiki/Humphrey_Gilbert]]([[ウォルター・ローリー>http://en.wikipedia.org/wiki/Walter_Raleigh]]の義母兄)も「ライオンみたいな怪獣」に遭遇してます。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Sea_monster]]

&ref(16世紀(海の怪獣).JPG,,height=250)地理学者オラウス・マグヌス画「[[Carta marina>http://sv.wikipedia.org/wiki/Carta_marina]]」(1539年:スウェーデン)

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#region(close,16世紀の海にはゴブリンが住んでる)

ブッカブーは[[コーンウォール伝承>http://en.wikipedia.org/wiki/Cornish_folklore]]の[[いたずら好きゴブリン>http://en.wikipedia.org/wiki/Hobgoblin]]([[妖精>http://en.wikipedia.org/wiki/Fairy]]の1種)。鉱山や嵐の海に出没します。
ご親戚は[[ノッカー>http://en.wikipedia.org/wiki/Knocker_(folklore)]](デヴォン…)、 Bwca(ウェールズ)、[[プーカ>http://en.wikipedia.org/wiki/P%C3%BAca]](アイルランド)、[[コボルト>http://en.wikipedia.org/wiki/Kobold]](ドイツ)…もーうじゃうじゃ。
[[ジル・ペイトン・ウォルシュ>http://en.wikipedia.org/wiki/Jill_Paton_Walsh]]著「Thomas and the Tinners」(1995年)では食べ物と引き替えに願望を叶えます。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Bucca_(mythological_creature)]]

&ref(16世紀(海のゴブリン).JPG,,height=200)コボルトの1種「クラバウターマン」

北海やバルト海の船乗りは「[[クラバウターマン>http://en.wikipedia.org/wiki/Klabautermann]]が宿る船は沈まない」と信じて、幸運の証としてマストに彫ったりします。
溺れた船乗りを助ける良いゴブリン。
ふだん船乗り達が姿を見ることはないけど、逆に見ちゃったときは船がヤバイ!とってもヤバイ!超ヤバイ!の時です。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Sailors%27_superstitions]]

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**地図を作るスペインの通商院

通商院(セビリア)は[[コロンブスの新大陸発見>http://en.wikipedia.org/wiki/Voyages_of_Christopher_Columbus]]で、1503年カスティーリャ女王[[イサベル1世>http://en.wikipedia.org/wiki/Isabella_I_of_Castile]]が設立した植民地統治の政府機関です。
ポルトガルの[[Casa da Índia>http://en.wikipedia.org/wiki/Casa_da_%C3%8Dndia]](1434-1833年:リスボン)に対抗したもの。
重要なお仕事の1つが地図製作。航海で発見した知識はぜーんぶここに集結されて、地図に反映されて、厳重に管理されます。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Casa_de_Contrataci%C3%B3n]]

&ref(16世紀_通商院.JPG,,height=200)通商院と[[商品取引所>http://en.wikipedia.org/wiki/Archivo_General_de_Indias]](1572年)。奥は[[セビリア大聖堂>http://en.wikipedia.org/wiki/Seville_Cathedral]](1507年)

#region(close,優秀な地図には優秀な航海、優秀な航海には優秀な航海士が必要)

通商院は航海術学校(Universidad de Mareantes)も運営。たぶん[[セビリア大学>http://en.wikipedia.org/wiki/University_of_Seville]]の中にあるんだと思います。
天文学・数学・戦術・大砲学などなどをお勉強。
そして航海士として海へ。え”ーっ!ビセンテも航海術学校に通ったのかしら!?詳しいことはぜーんぜん分かりませんでした。

&ref(16世紀_通商院(セビリア大学).JPG)セビリア大学(1505年)

アメリカ探検した初代・航海士総監(Pilot major)[[アメリゴ・ヴェスプッチ>http://en.wikipedia.org/wiki/Amerigo_Vespucci]](1454–1512年:イタリア)も通商院で働いてます。

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**F&B時代の世界地図

F&B時代の一番スゴイ世界地図は、スペインの天文学者[[ファン・ロペス・デ・ベラスコ>http://es.wikipedia.org/wiki/Juan_L%C3%B3pez_de_Velasco]]の世界地図(1575年)らしいです。
日本は相変わらず巨大な四国。
サラゴサ条約、[[トルデシリャス条約>http://en.wikipedia.org/wiki/Treaty_of_Tordesillas]]。[[北回帰線>http://en.wikipedia.org/wiki/Tropic_of_Cancer]]、[[赤道>http://en.wikipedia.org/wiki/Equator]]、[[南回帰線>http://en.wikipedia.org/wiki/Tropic_of_Capricorn]]。緯度×経度っぽいゲージが描かれてます。

&ref(16世紀_一番スゴイ世界地図.PNG)歴史学者[[A・エレラ・イ・トルデシリャス>http://en.wikipedia.org/wiki/Antonio_de_Herrera_y_Tordesillas]]著「Descripción de las Indias」(1601年)に載ってるベラスコの世界地図

#region(close,巨大な四国ハポン)

ビセンテが思い浮かべる日本が巨大な四国だなんて悲しいです。
中国で活躍したイエズス会宣教師[[マテオ・リッチ>http://en.wikipedia.org/wiki/Matteo_Ricci]](イタリア)の世界地図[[坤輿万国全図>http://en.wikipedia.org/wiki/Kunyu_Wanguo_Quantu]](1602年)には日本っぽい形が登場。
こちらは日本バージョンの坤輿万国全図(1604年?)。ビセンテ!日本はこんな感じなんですよ♥

&ref(16世紀_一番スゴイ世界地図(ハポン).PNG)

とはいえ、そもそも日本人が日本の正確な形を知りません。ビセンテを責めるのはお気の毒でした。ごめんなさい。
現存する日本最古の地図は村上勘兵衛の行基図(1656年:徳川家綱)。
深海生物!?ヨーロッパみたいにちゃんと測量するのは[[伊能忠敬>http://en.wikipedia.org/wiki/In%C5%8D_Tadataka]]の大日本沿海輿地全図(1821年:徳川家斉)までお待ち下さい。

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#region(close,世界地図の種類)

世界地図は目的に合わせて種類がいっぱい。ってことで、航海に関係しそうな角度・距離・面積に注目してみました。
地図に描いてる赤マルは[[テイソーの指示楕円>http://en.wikipedia.org/wiki/Tissot%27s_indicatrix]]。
形がマルいほど、大きさが揃ってるほど[[投影法>http://en.wikipedia.org/wiki/Map_projection]]の歪みは少ないです。他にも[[色々な投影法>http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_map_projections]]がいっぱい。ビックリ!
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Map]]

|&ref(16世紀_世界地図(種類:メルカトル図法).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):正角図法(Conformal Projection)|
|~|A地点とB地点を線で結んだときの方向(角度)が正確な地図。&br()海図に便利。|
|~|例えば[[メルカトル図法>http://en.wikipedia.org/wiki/Mercator_projection]]。&br()1569年地理学者[[ゲラルドゥス・メルカトル>http://en.wikipedia.org/wiki/Gerardus_Mercator]](ネーデルラント)が発表。&br()でも地球規模になると角度は正確じゃない。&br()これを改善したのが1942年Osborn Maitland Millerが考案した[[ミラー図法>http://en.wikipedia.org/wiki/Miller_cylindrical_projection]]。|
|&ref(16世紀_世界地図(種類:地球儀).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):正距図法(Equidistant Projection)|
|~|A地点とB地点を線で結んだときの長さ(距離)が正確な地図。|
|~|正確っぽいのは色々あるけど、ビシッと正確なのは地球儀だけ。&br()っていうか、地球儀は角度・距離・面積が全部正解。国の形も正解。&br()&ref(16世紀_世界地図(種類:国連旗).JPG)[[正距方位図法>http://en.wikipedia.org/wiki/Azimuthal_equidistant_projection]]も正距図法(1000年頃:これは国連旗)|
|&ref(16世紀_世界地図(種類:ベールマン図法).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):正積図法(Equal area Projection )|
|~|A国とB国の大きさ(面積比率)が正確な地図。&br()分布図に便利。|
|~|例えば[[ベールマン図法>http://en.wikipedia.org/wiki/Behrmann_projection]]。&br()1910年地理学者[[ウォルター・ベールマン>http://en.wikipedia.org/wiki/Walter_Behrmann]](ドイツ)が考案。&br()&ref(16世紀_世界地図(種類:サンソン図法).JPG)[[サンソン図法>http://en.wikipedia.org/wiki/Sinusoidal_projection]]も正積図法(1570年)|
|&ref(16世紀_世界地図(種類:ロビンソン図法).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):擬図法(Pseudo Projection)|
|~|地球はタマだから角度・距離・面積が全部正解の平面地図はムリ。&br()ってわけで、ほどよく妥協して合体した地図。&br()(小難しく言うと「2つの投影法を採用」ってコトだそうです)&br()世界全体を把握するのに便利。|
|~|例えば[[ロビンソン図法>http://en.wikipedia.org/wiki/Robinson_projection]]。&br()1963年地理学者[[アーサー・H・ロビンソン>http://en.wikipedia.org/wiki/Arthur_H._Robinson]](アメリカ)が考案。|

#blockquote(){&u(){&bold(){こんな地図もあります}}

こちらはポーランドボールの世界地図です。ぱっと見ただけで国々の関係が分かっちゃう。カワイイ♥
[[wikipedia>http://simple.wikipedia.org/wiki/Polandball]]

&ref(16世紀_世界地図(種類:ポーランドボール).JPG)
}

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*どこ行くー? 西インド諸島へ行こう♥ By 船長ジェフリー&ビセンテ

海には道路も案内標識もない。陸地から離れたら目印がなんにもない。ボヘーっとしてたら迷子になって死んじゃいます。
ってことで、西インド諸島に辿り着くには、船を進める方向がとーっても重要。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Navigation]]

&ref(どこ行く.JPG,,height=200)どっちを向いても海


**航海で使う地図は海図

F&B時代の海図は、方向・距離・面積を全部スルーの&bold(){港や海岸線が正確に描かれた羅針儀海図(ポルトラノ海図)}です。
船を修理できる砂浜はどこ? 嵐を避ける港はどこ? 港がないんだけど入り江はどこ? 航海に海岸線の情報はとっても重要。
方位を示すマルは[[コンパスローズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Compass_rose]](羅針図)、いっぱい描いてある線は[[方位線>http://en.wikipedia.org/wiki/Rhumb_line]]、紙は[[羊皮紙>http://en.wikipedia.org/wiki/Vellum]]。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Portolan_chart]]

&ref(どこ行く_海図.PNG)地理学者[[Domingos Teixeira>http://pt.wikipedia.org/wiki/Mapa-m%C3%BAndi_de_Domingos_Teixeira]]の羅針儀海図(1573年:ポルトガル)

これを作ってるのが地球を半分っこしてるスペインとポルトガルです。新大陸を発見しながら水深も追加。
とーぜん国家最高機密!
ってことで、イングランドはスペインから海図を盗んでました。

#blockquote(){&u(){&bold(){でもヨーロッパの海図なら他の国だって作れるわ♥}}

こちらは航海士[[Lucas Janszoon Waghenaer>http://en.wikipedia.org/wiki/Lucas_Janszoon_Waghenaer]]の海図本「Spieghel der zeevaerdt(1584年:ネーデルラント)」です。
西ヨーロッパと北西ヨーロッパの近海がバッチリ。

&ref(どこ行く_海図(ヨーロッパ).JPG,,height=250)イングランド南部(1588年:英語版)
}

#region(close,F&B時代ヨーロッパの地図ってどれくらい正確だったの?)

こちらは測量士[[ロバート・アダムス>http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Adams_(architect)]]画「Charts of the Spanish Armada」(1590年)の地図と21世紀の衛星写真です。
けっこうスゴーイ。
場面は1588年プリマス沖海戦([[アルマダ海戦>http://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_Armada]])。プリマスから出航したイングランド海軍がスペイン海軍と海戦の状況です。

&ref(どこ行く_海図(ヨーロッパ:精度).PNG)

#endregion

#blockquote(){&u(){&bold(){そしていつまでもスペインに頼るつもりもないわ♥}}

サー・フランシスの世界一周に成功したイングランドは、1599年自力で世界規模の「エドワード・ライトの海図」を作成します。
メルカトル図法を採用してるから、方向がとっても正確な地図。
羅針儀海図では不可能な&bold(){いつでもどこでも出発地と目的地を結んだ直線で方向が分かる}が使えるようになります。

&ref(どこ行く_海図(世界).PNG)エドワード・ライトの海図(1599年:イングランド)
}

#region(close,メルカトル図法を採用したエドワード・ライトの海図)

F&B時代の羅針儀海図は「地球がタマ」を全然考えてない「地球が平面」の地図。方向も距離も正確じゃないです。
これにツッコミを入れたのが数学者[[エドワード・ライト>http://en.wikipedia.org/wiki/Edward_Wright_%28mathematician%29]](イングランド)。

&ref(どこ行く_海図(メルカトル図法).JPG,,height=200)ツッコミ本「Certaine Errors in Navigation:航海の致命的エラー(仮)」(1599年)

ライトは1589年女王エリザベス1世から航法研究の依頼を受けて、アゾレス諸島でスペインを襲撃する私掠船に乗船します。
なんやかんやで、1599年ツッコミ本と世界初の[[メルカトル図法>http://en.wikipedia.org/wiki/Mercator_projection]]を採用した地図を発表。
女王にライトを紹介したのは親友のエセックス伯[[ロバート・デヴェルー>http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Devereux,_2nd_Earl_of_Essex]](ウォルシンガムの娘にアタック中のアホアホ)です。

#blockquote(){&u(){&bold(){エドワード・ライトの海図はこんな感じ}}

メルカトル図法は1569年地理学者[[ゲラルドゥス・メルカトル>http://en.wikipedia.org/wiki/Gerardus_Mercator]]が考案した&bold(){距離はウソだけど方向は正確}な地図です。
海図に引いた出発地と目的地の直線が船の進む方向。
ってことで、ライトの海図と等角航路でグローリア号もサンティアゴ号もビシッと目的地に到着します。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Mercator_projection]]

&ref(どこ行く_海図(メルカトル図法:等角航路).PNG)北に行くほど距離の拡大率が大きい

ツッコミ本に書かれた&bold(){緯度ごとの経度縮小率表はとっても正確}。縮小率が正確だから&bold(){方向もとーっても正確}です。
縮小率の[[計算式>http://en.wikipedia.org/wiki/Integral_of_the_secant_function]]はちんぷんかんぷん。
エドワード・ライトもゲラルドゥス・メルカトルも数学が得意ってコトだけは分かりました。
//こういう表を使う航海を中分緯度航法(トラバース表)、漸長緯度航法(漸長緯度表)というのだそうです。
}

#endregion

#region(close,メルカトル図法ってなに?)

メルカトル図法は1569年地理学者[[ゲラルドゥス・メルカトル>http://en.wikipedia.org/wiki/Gerardus_Mercator]](ネーデルラント)が考えた正角円筒図法です。
&bold(){海図に引いた線の方向に船を進めると必ず目的地に着く}という地図。
距離は正確じゃないです。ガンガン登場する容赦ない用語は、親切な説明のこちら[[世界地図を作ろう>http://atlas.cdx.jp/index.htm]]をどうぞ。

&ref(どこ行く_海図(世界:回り灯籠).JPG)鮮斎永濯画「回り灯籠」(1888年:子供遊び画帖)

#blockquote(){&u(){&bold(){メルカトル図法で地図を描いてみよう}}

ホントのメルカトル図法は電球ペカーの投射図法(※)じゃなく、[[ウニャウニャ計算>http://en.wikipedia.org/wiki/Mercator_1569_world_map]]する非投射図法です。
ウニャウニャがちんぷんかんぷん。
ってことで、電球ペカー。光は「メルカトルが小難しい計算をウニャウニャしてる」と思って下さい。考えるな、感じろ♥ 

&ref(どこ行く_海図(世界:メルカトル図法).JPG)
}

#blockquote(){&u(){&bold(){正角図法で地図を描いてみよう}}

正角図法は&bold(){海図に引いた線と船が進む方向が同じ}ってコトです。黄線は船がAからBへ航海するコース。
地球もメルカトル図法もバッチリ南西45度。
ってことで、今回はミカンの登場。あっ、ホントのメルカトル図法は舟型多円錐図法と無関係です。考えるな、感じろ♥

&ref(どこ行く_海図(世界:正角図法).JPG)

海図に描いたABの黄線([[等角航路>http://en.wikipedia.org/wiki/Rhumb_line]])は近道っぽいけど、実際に船が進んでる地球の黄線を見ると遠回りです。
ホントの近道は地球に描いたABの赤線([[大圏航路>http://en.wikipedia.org/wiki/Great_circle]])。
メルカトル図法は距離がウソ。距離がウソだから面積もウソ。これが弱点です。ナイジェル!ビセンテ!気をつけてー!
}

#blockquote(){&u(){&bold(){簡単な等角航路と近道な大圏航路}}

メルカトル図法に大圏航路の赤線を引くとこんな感じ。ジーっと見ると緯度毎に線の方向が違ってます。
ってことで、大圏航路は「小まめに船の方向を変更」が必要。
位置を知るのが苦手なF&B時代に、近道な大圏航路は超ムズカシイです。GPSが登場するまで簡単な等角航路で我慢だ!

&ref(どこ行く_海図(世界:等角航路と大圏航路).JPG)

世の中には等角航路と大圏航路が一緒の[[心射方位図法>http://en.wikipedia.org/wiki/Gnomonic_projection]]もあります。BC6世紀哲学者[[タレス>http://en.wikipedia.org/wiki/Thales]](古代ギリシャ)が開発。
地球規模の航海に便利らしい。へー。
16世紀も21世紀も海図はメルカトル図法が一般的です。あと今さらですが、線は全部テキトーなの m(_ _;)mゴメンね
}

#endregion


**コンパス

コンパスは[[中国4大発明>http://en.wikipedia.org/wiki/Four_Great_Inventions]](あと火薬・紙・印刷)の1つ。最初は占いの道具だったけど、兵士が海や陸で使い始めました。
ヨーロッパも12世紀から使い始めて、14世紀&bold(){ドライ・コンパス}を発明。
F&B時代は波や風でプカプカ揺れる船でも使える&bold(){水に浮かべたコンパス}で、船長、航海長、操舵手が持ってたようです。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Compass]]

|&ref(どこ行く_コンパス(水浮きコンパス).JPG,,height=200)水コンパス(1570年:イタリア)|&ref(どこ行く_コンパス(ドライ・コンパス).JPG,,height=200)ドライ・コンパス(1876年頃:アメリカ)|

私達が知ってるコンパスは針が動くけど、こちらのコンパスはコンパスローズ(羅針図)が動きます。
[[ジャック・スパロウ>http://en.wikipedia.org/wiki/Jack_Sparrow]](パイレーツ・オブ・カリビアン)が持ってるアレ。


**錨を上げたら等角航路

道路も案内標識もない海で、ちゃんと西インド諸島へ行くには&bold(){等角航路}を使います。
等角航路は&bold(){羅針儀海図に描いてあるコンパスローズ(羅針図)から延びた方位線の方向に船を進める}ってコト。
大航海時代はコレであっちこっち行きます。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Rhumb_line]]

&ref(どこ行く_海図(メルカトル図法:等角航路).PNG)コンパスローズ(羅針図)から延びた方位線

とはいえ、F&B時代の羅針儀海図は正しくねーだし、そもそも今いる場所が簡単に分からねーです。
結局は船長と航海長の腕次第っぽい?

#blockquote(){&u(){&bold(){陸地が見えるときは沿岸航法}}

結局は船長と航海長の腕次第っぽいから、陸地が見えるときは沿岸に沿って航行する沿岸航法(Coastal Navigation)を使います。
今いる場所はクロス方位法、四点方位法、船首倍角法…で確認。
F&B時代はどれでしょ?ってことで一番簡単っぽそうなクロス方位法を。

&ref(どこ行く_等角航路(沿岸航法).PNG)今いる場所がバッチリ分かる
}


**風と海流

F&B時代の船は風で進みます。風はとっても大事♥
世界一周のフランシス・ドレイクはバンクーバーで風を見つけてフィリピンへ。[[奴隷の三角貿易>http://en.wikipedia.org/wiki/Triangular_trade]]も風を上手に使ってビシバシ航海。
あと[[海流>http://en.wikipedia.org/wiki/Ocean_current]]も大事です。21世紀のエンジンで動く船だって速度に影響しちゃうんだから侮れませんわよ。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Winds_in_the_Age_of_Sail]]

&ref(どこ行く_風と海流(風).GIF)風(赤点線は[[熱帯収束帯>http://en.wikipedia.org/wiki/Intertropical_Convergence_Zone]])
&ref(どこ行く_風と海流.PNG)16世紀の海上貿易
&ref(どこ行く_風と海流(海流).PNG)5大海流

#region(close,世の中にはいろんな風がございます)

風は「地球の[[大気循環>http://en.wikipedia.org/wiki/Atmospheric_circulation]]」「海と陸地の温度差」…高気圧と低気圧の差で吹きます。へー。
こんな小難しく考えるようになったのは18世紀から。
うーん、語るより見る方が分かるっぽい?今の風はこちら[[Earth an animated map of global wind and weather>http://earth.nullschool.net/jp/]]をどうぞ。

|&ref(どこ行く_風と海流(風の種類).PNG)|>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:風の種類(他にもいろいろ)|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:気圧帯|
|~|BGCOLOR(lightgrey):[[卓越風>http://en.wikipedia.org/wiki/Prevailing_winds]]|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:対流圏の循環|||[[極高圧帯>http://en.wikipedia.org/wiki/Polar_high]]|
|~|~|~|[[極東風>http://en.wikipedia.org/wiki/Polar_easterlies]]|[[極循環>http://en.wikipedia.org/wiki/Polar_vortex]]||
|~|~|~|||亜寒帯低圧帯|
|~|~|~|[[偏西風>http://en.wikipedia.org/wiki/Westerlies]]|フェレル循環||
|~|~|~|||[[亜熱帯高圧帯>http://en.wikipedia.org/wiki/Horse_latitudes]]|
|~|~|~|[[貿易風>http://en.wikipedia.org/wiki/Trade_wind]]|[[ハドレー循環>http://en.wikipedia.org/wiki/Hadley_cell]]||
|~|~|~|||赤道低圧帯&br()[[熱帯収束帯>http://en.wikipedia.org/wiki/Intertropical_Convergence_Zone]]|
|~|~|BGCOLOR(lightgrey):局地循環|[[季節風>http://en.wikipedia.org/wiki/Monsoon]]|||
|~|~|~|[[海陸風>http://en.wikipedia.org/wiki/Sea_breeze]]|||
|~|BGCOLOR(lightgrey):[[低気圧>http://en.wikipedia.org/wiki/Low-pressure_area]]|BGCOLOR(lightgrey):[[温帯低気圧>http://en.wikipedia.org/wiki/Extratropical_cyclone]]|>|>|[[温暖前線>http://en.wikipedia.org/wiki/Warm_front]]、[[寒冷前線>http://en.wikipedia.org/wiki/Cold_front]]|
|~|~|BGCOLOR(lightgrey):[[熱帯低気圧>http://en.wikipedia.org/wiki/Tropical_cyclone]]|>|>|[[台風>http://en.wikipedia.org/wiki/Typhoon]]、ハリケーン、サイクロン|
|~|BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):|>|>|無風(Calm wind)、凪|

#endregion

#region(close,イギリス海峡には潮流もございます)

海水の流れには海流と潮流があります。
海流はいつも一定方向に流れる大きな流れ。潮流は潮の干満(干潮/満潮)で周期的に流れの方向が180度変わる流れ。
海峡や湾は潮流がビシバシ影響してるっぽいです。アルマダ海戦でも皆さん潮流に泣いたり笑ったり。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Tide]]

&ref(どこ行く_風と海流(潮流).GIF)イングランド海峡の潮流図

#blockquote(){&u(){&bold(){ふぇー!潮流って複雑なのね}}

潮流は[[潮汐力>http://en.wikipedia.org/wiki/Tidal_force]]で起こります。月や太陽や自転が複雑にウニャウニャしたもの…ふぇー!ちんぷんかんぷん。
今日と明日は違う。アッチとコッチでも違う。
こちらは[[BBC Weather>http://www.bbc.com/weather/]](Tide Tables)さんの[[潮流表>http://en.wikipedia.org/wiki/Tide_table]]です。航海用に潮流表の本もあるけどF&B時代はあったのかしら?

&ref(どこ行く_風と海流(潮流の違い).PNG)

プリマスはアルマダ海戦でイングランド艦隊が出航したトコ。[[マーゲイト>http://en.wikipedia.org/wiki/Margate]]はスペイン艦隊が目指したトコです。
同じイングランドでもこーんなに違う。
あとこんな言葉も覚えとくとタイムスリップしちゃったとき何かのお役に立つかもしれません。私は初めて知りました。

|BGCOLOR(lightgrey):上げ潮流|干潮から満潮に変わる最中の最強となる方向の潮流。|
|BGCOLOR(lightgrey):下げ潮流|満潮から干潮に変わる最中の最強となる方向の潮流。|
|BGCOLOR(lightgrey):転流時|潮流が流れの方向を変える時刻。|
|BGCOLOR(lightgrey):憩流時|転流時の前後に潮流が止まる時刻。|
}

#endregion


*いま何時? だいたいだけど♥ By キャビンボーイのカイト&レオ

F&B時代にも時計はありました。時間が分かれば海のど真ん中でも「いま自分はどこにいるのか?」がバッチリです♥
んが、プカプカな船では時間が狂う。航海で時計はダメダメorz
ちゃんと使える時計は18世紀までお待ち下さい。生死に関わる大問題なのに…どうするジェフリー!どうするビセンテ!

|&ref(いま何時(ゼンマイ式時計).JPG,,height=200)16世紀|&ref(いま何時(クロノメーターH4).JPG,,height=200)1759年|
左:時計職人[[ピーター・ヘンライン>http://en.wikipedia.org/wiki/Peter_Henlein]](1480-1542:ドイツ)のゼンマイ式時計
右:時計職人[[ジョン・ハリソン>http://en.wikipedia.org/wiki/John_Harrison]](1693–1776:イギリス)のクロノメーターH4

#region(close,犬時計(犬好きさんには不快なお話です))

16~17世紀には&bold(){共感の粉}を研究してる人達がいました。治療薬デス。
血液には精気が住んでて、たとえば怪我して流れた血は、離れた場所にいる持ち主の血と共感するってことらしいデス。
だから流れた血に粉をかけたら、持ち主がどこにいても傷が治るってわけデス。本気デス。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Powder_of_sympathy]]

#blockquote(){&u(){&bold(){航海中にどーしても時間が知りたいから「犬時計」}}

共感の粉を応用したのが犬時計。
1687年「Curious Enquiries」に書かれてたもので、実験記録ないデス。ただの風刺かもしれないデス。

&ref(いま何時(犬時計).JPG,,height=200)左:船の犬、右:ロンドンの包帯

+わざと怪我させた犬を船に乗せて、ロンドンには手当した時に使った包帯を置いておく。犬可哀想です。
+ロンドンが12時になったら、包帯に付いた血に&bold(){共感の粉}をかける。
+実はこの粉には激痛の副作用があって、犬が痛がってキャーって叫ぶ。犬可哀想です。
+船の人達は「あっ、ロンドンはお昼だ」って分かる。
}

#endregion


**砂時計とベル(船鐘/号鐘)

F&B時代はデッキの&bold(){ベル}の横に[[30分砂時計>http://en.wikipedia.org/wiki/Marine_sandglass]]を置いてます。ひょえー!なんとこれが時計ですっっっ!
キャビンボーイ(Grommet/Grummet)が砂時計をチェックして、ひっくり返したらベルをチン。当直の8回(4時間)で1サイクル。
サボったりズルしたらアウトだけど、カイトならキッチリしてそう。レオなら最後の砂一粒までキッチリしてそうです。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Ship%27s_bell]]

&ref(いま何時_砂時計とベル.JPG,,height=200)[[アルブレヒト・デューラー>http://en.wikipedia.org/wiki/Albrecht_D%C3%BCrer]]画「[[メランコリア I>http://en.wikipedia.org/wiki/Melencolia_I]]」(1514年:ドイツ)

|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:鳴らし方|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:夜半直|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:朝直|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:午前直|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:午後直|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:折半直|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:初夜直|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:備考|
|BGCOLOR(lightgrey):1点鐘|.|&color(blue){0:30}|&color(gold){4:30}|&color(blue){8:30}|&color(gold){12:30}|&color(blue){16:30}||&color(blue){20:30}|ベルの音はチンって感じ。|
|BGCOLOR(lightgrey):2点鐘|..|&color(blue){1:00}|&color(gold){5:00}|&color(blue){9:00}|&color(gold){13:00}|&color(blue){17:00}||&color(blue){21:00}|ベルの音はチンチンって感じ。|
|BGCOLOR(lightgrey):3点鐘|.. .|&color(blue){1:30}|&color(gold){5:30}|&color(blue){9:30}|&color(gold){13:30}|&color(blue){17:30}||&color(blue){21:30}|ベルの音はチンチン・チンって感じ。|
|BGCOLOR(lightgrey):4点鐘|.. ..|&color(blue){2:00}|&color(gold){6:00}|&color(blue){10:00}|&color(gold){14:00}|&color(blue){18:00}||&color(blue){22:00}||
|BGCOLOR(lightgrey):5点鐘|.. .. .|&color(blue){2:30}|&color(gold){6:30}|&color(blue){10:30}|&color(gold){14:30}||&color(gold){18:30}*|&color(blue){22:30}|*当直は2時間でシフト。|
|BGCOLOR(lightgrey):6点鐘|.. .. ..|&color(blue){3:00}|&color(gold){7:00}|&color(blue){11:00}|&color(gold){15:00}||&color(gold){19:00}|&color(blue){23:00}||
|BGCOLOR(lightgrey):7点鐘|.. .. .. .|&color(blue){3:30}|&color(gold){7:30}|&color(blue){11:30}|&color(gold){15:30}||&color(gold){19:30}|&color(blue){23:30}||
|BGCOLOR(lightgrey):8点鐘|.. .. .. ..|&color(blue){4:00}|&color(gold){8:00}|&color(blue){12:00}*|&color(gold){16:00}||&color(gold){20:00}|&color(blue){0:00}|*船長か航海長が太陽で正午を確認してからベルを鳴らす。|

#region(close,30分砂時計はそこまでデカくなさそう)

30分砂時計は14世紀から記録が残ってます。1380年フランス王[[シャルル5世>http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_V_of_France]]の財産目録にも「30分砂時計=Sea clock」が登場。
こちらは航海道具をアレコレ研究してるFlavio Amalfitano。
あと[[砂時計>http://en.wikipedia.org/wiki/Hourglass]]は「人の寿命」の象徴としても使われます。だから天使が憂鬱な「メランコリア I」の砂時計はデカイの?

&ref(いま何時_砂時計とベル(砂時計).JPG)[[Philips Galle>http://en.wikipedia.org/wiki/Philip_Galle]]画「Lapis Polaris Magnes」(1590年頃:ネーデルラント)

#endregion


**当直

水夫達は2グループに分かれて、労働(4時間)→休憩(4時間)→労働→休憩…の1日12時間労働。これで24時間航海できます。
16~20時([[折半直>http://en.wikipedia.org/wiki/Dog_watch]])は2時間で当直を交代。お夕飯もこの時間。
折半直(英:Dog watch)の由来は「犬も寝る時間だから」「夜、最初に輝く[[シリウス>http://en.wikipedia.org/wiki/Sirius]]の別名がDog Starだから」だそうです。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Watch_system]]

&ref(いま何時_当直.PNG)シフトは毎日やってたみたい


*ここはどこですかー? 俺にまかせろ♥ By 航海長ナイジェル&ビセンテ

海には道路も案内標識もない。陸地から離れたら目印がなんにもない。そんな海の現在地は&bold(){緯度×経度が合体したトコ}です。
ってことで、アレコレ使って「いま自分はどこにいるのか?」をチェック。
なんか緯度×経度って書くと受け攻めにしか見えません。個人的には緯度が受け、経度が攻め。

&ref(ここはどこ.PNG)

GPSも電卓も時計もないF&B時代の緯度×経度は簡単に分からねーだし、正確じゃねーです。でも分かんないと死ぬし。
簡単に分からねーの調べ方はこちら[[【船】航海(緯度×経度)>【船】航海(緯度×経度)]]をどうぞ。


**航海テキスト

航海テキストは緯度×経度を調べる時に大活躍。&bold(){南中時太陽赤緯表、三角関数表…}がてんこ盛りの[[航海表>http://en.wikipedia.org/wiki/Nautical_almanac]]です。
ナイジェルが借りた航海術の教本(女王陛下の海賊たち)はたぶんコレ。
世界一周中のフランシス・ドレイクはポルトガル商船を襲うと、真っ先にコンパス・アストロラーベ・最新版の航海テキストを没収したそうです。

|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:ビセンテご愛用|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:ナイジェルご愛用|
|&ref(ここはどこ_航海テキスト(ビセンテご愛用).JPG,,height=200)スペイン(1551年)|&ref(ここはどこ_航海テキスト(ナイジェルご愛用).JPG,,height=200)イングランド(1574年と1576年)|
左:宇宙構造論学者[[マルティン・コルテス>http://en.wikipedia.org/wiki/Mart%C3%ADn_Cort%C3%A9s_de_Albacar]](スペイン)が実用化した航海テキスト。イングランド初の航海テキスト「The Art of Navigation(1561年英訳)」にもなった。
右:数学者[[ウィリアム・ボーン>http://en.wikipedia.org/wiki/William_Bourne_(mathematician)]](イングランド)が簡略化した航海テキスト。表紙は航海用アストロラーベ。


**緯度を調べる道具

緯度を調べる道具はいろいろあるけど、例えば大活躍なのが&bold(){航海用アストロラーベ}。南中高度を測定、ついでに正午も確認できます。
モデルになったのは恐ろしく面倒な[[天体用アストロラーベ>http://en.wikipedia.org/wiki/Astrolabe]]。
プカプカな船ではムリ!ってことで、ポルトガル王の天地学者[[マルティン・ベハイム>http://en.wikipedia.org/wiki/Martin_Behaim]](1459-1507:ドイツ)が楽チンに改造しました。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Mariner%27s_astrolabe]]

|&ref(ここはどこ_緯度(天体用).JPG,,height=200)天体用(16世紀:スペイン製)|&ref(ここはどこ_緯度(航海用).JPG,,height=200)航海用(1608年:ポルトガル製)|


**経度を調べる道具

経度を調べる道具はいろいろあるけど、例えば大活躍なのが&bold(){トラバース・ボード}。1ベル毎に船の方向、2ベル毎に速度を記録します。
読み書きできない水夫達(多くの水夫がそうだった)でもバッチリ使える。
トラバース・ボードの記録は操舵手が担当。超多忙な航海長は、シフトの時まとめてこの記録を[[ログブック>http://en.wikipedia.org/wiki/Logbook]](航海日誌)に書きます。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Traverse_board]]

|&ref(ここはどこ_経度(トラバース・ボード).JPG,,height=200)トラバース・ボード|&ref(ここはどこ_経度(ログブック).JPG,,height=200)ログブック(18世紀)|

|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:穴|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:使い方|
|BGCOLOR(lightgrey):上の円|1ベル毎(=8回)*32方位|30分ごとに&bold(){船の方向}(星の形はコンパスと同じ32個の方向)を記録。&br()ベルが鳴ったらコンパスをチェックして、船の方向の穴にプスッと釘を刺す。|
|BGCOLOR(lightgrey):下の四角|2ベル毎(=4回)*nノット|1時間ごとに&bold(){船の速度}(ノット)を記録。&br()ベルが鳴ったら速度を計って、速度の穴にプスッと釘を刺す。&br()例:10半ノット=左から10個目の穴+1/2と描いてある穴にプスッと刺すの。|

#region(close,ナイジェルやビセンテはログブックにどんなこと書いてるの?)

こちらは[[フランボローヘッドの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Flamborough_Head]]([[アメリカ独立戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/American_Revolutionary_War]])の3日後、1779年9月26日[[HMS Winchelsea>http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Winchelsea_(1764)]]のログブックです。
トラバース・ボードの情報をキッチリ記載。
世の中にはスッカスカのログブックもありました。キッチリ書かないと迷子になっちゃいますよー!

&ref(ここはどこ_経度(トラバース・ボード:記入).PNG)戦闘中はどうするの?

#blockquote(){&u(){&bold(){21世紀の航海長はますます大忙し}}

1805年からログフックには「風速」を13段階に数値化した「[[ビューフォート風力階級>http://en.wikipedia.org/wiki/Beaufort_scale]]」が追加になります。
イギリス海軍提督[[フランシス・ボーフォート>http://en.wikipedia.org/wiki/Francis_Beaufort]]が提唱。
あと1917年(?)から気象部長[[パーシー・ダグラス>http://en.wikipedia.org/wiki/Percy_Douglas]]提唱の「風浪」「うねり」を段階化した「[[海況>http://en.wikipedia.org/wiki/Sea_state]]」も追加されてます。

&ref(ここはどこ_経度(トラバース・ボード:天気図).JPG,,height=200)イギリスの[[天気図>http://en.wikipedia.org/wiki/Weather_map]](嵐でござる)

海上に等圧線が描けるのは、船や極軌道気象衛星から観測データをもらって解析してるからだそうです。ほー!
21世紀は[[海洋気象ブイロボット>http://en.wikipedia.org/wiki/Weather_buoy]]も浮かべて定期的にチェック。
日本気象庁のブイロボットも日本の周りを漂流してます。UFO見たいな形でカワイイ。
}

#endregion


*測れー! アイ・アイ・サー♥

15世紀には&bold(){イングランド周辺諸国で共通のサイズ}があったみたいです。なんたって世界地図をスペインから盗んでたんだもんね。
船乗りが使うのは不思議な単位。
陸者は「あーら、この大根2ファゾムでお買い得だわ」なんて一生言わない。不思議な単位はこちらで測ります。

&ref(測定.PNG)

|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:単位|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:大航海時代|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:国際標準(1929年)|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:備考|
|BGCOLOR(lightgrey):[[ファゾム>http://en.wikipedia.org/wiki/Fathom]]|水深やロープの長さの単位|5~5.5ft(1.5~1.7m)|6ft(1.8m)|●両手を左右にいっぱい伸ばした幅。&br()●日本の尋(ひろ)と同じ単位。|
|BGCOLOR(lightgrey):[[ノット>http://en.wikipedia.org/wiki/Knot_%28unit%29]]|速度の単位(1海里/時)|1.536km/h&br()&color(silver){1.4ft/s(0.42m/s)}|1.852km/h&br()&color(silver){1.69ft/s(0.51m/s)}|●大航海時代はログライン測定から計算。&br()1ノット=7ファゾム*6ft=42ft&br()42ft÷30秒≒1.4ft/s|
|BGCOLOR(lightgrey):[[海里>http://en.wikipedia.org/wiki/Nautical_mile]]|距離の単位|5,040ft(1,536m)|1,852m|●大航海時代はログライン測定から計算。&br()42ft*60分*2(←30秒砂時計だから)=5,040ft|

#region(close,ウィリアム・シェイクスピアも使ってるファゾム)

[[ウィリアム・シェイクスピア>http://en.wikipedia.org/wiki/William_Shakespeare]]著「[[テンペスト>http://en.wikipedia.org/wiki/The_Tempest]]」にもファゾムが登場します。
こちらは妖精エアリエルが元・ミラノ大公プロスペローの命令で、ナポリ王子ファーディナンドをおびき寄せるために歌った魔法。
実はナポリ王子のお父さん生きてます。

#blockquote(){&u(){&bold(){魔法の歌「[[Full fathom five:5ファゾムの深い海底に >http://en.wikipedia.org/wiki/Ariel%27s_Song]]」}}

&ref(測定(ファゾム).PNG)嵐で難破する船。もちろん嵐も元・ミラノ大公が命じたエアリエルの魔法

&u(){Full fathom five} thy father lies;  &color(silver){深い深い海の底にあなたのお父上は眠っています。}
Of his bones are coral made; &color(silver){骨は珊瑚になりました。}
Those are pearls that were his eyes; &color(silver){両目は真珠になりました。}
Nothing of him that doth fade, &color(silver){お体は朽ち果てはしませんでしたが}
But doth suffer a sea-change &color(silver){海の不思議な力を受けて}
Into something rich and strange. &color(silver){貴くも不思議な宝となりました。}
Sea-nymphs hourly ring his knell: &color(silver){海の妖精は毎時に弔いの鐘を鳴らします。}
Ding-dong, &color(silver){ディン・ドンと}
Harke now I heare them, &color(silver){ほら、聞こえるでしょう}
Ding-dong, bell. &color(silver){ディン・ドン・ベル}
Ding-dong, bell. &color(silver){ディン・ドン・ベル}
}

#endregion


**速度を計るログライン(Log line/Chip log) By 航海長ナイジェル&ビセンテ+時間係Aさん

ログラインは先っぽにログ(板)の付いたロープ。7ファゾム毎に[[ノット(結び目)>http://en.wikipedia.org/wiki/Knot]]が付いてます。
船尾からドボーンと投げ入れて&bold(){30秒間に流れ出したノットの数で船の速度を測定}。
ちなみに21世紀のログラインは地球のご事情で考えたサイズ。ノットの間隔:47.3feet、砂時計:28秒、誤差:0.02%以下です。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Chip_log]]

|&ref(測定_ログライン.PNG)|&ref(測定_ログライン(やり方).PNG)|

|&ref(ここはどこ_経度(トラバース・ボード).JPG,,height=200)|BGCOLOR(lightgrey):準備|BGCOLOR(lightgrey):1|航海長はログを海へ投げ入れる。ロープはスルスル流れ出さないように握ってる。&br()※他に船首から白い布を投げて船尾までの到着時間を計る方法もあります。|
|~|BGCOLOR(lightgrey):計測|BGCOLOR(lightgrey):2|航海長は握ってたロープを放してスルスルをスタート。&br()それと同時に航海長の「スタート」の合図で、時間係は砂時計をひっくり返す。|
|~|~|BGCOLOR(lightgrey):3|航海長は手から滑り落ちるノットを「いーち、にー、さーん…」と数える。|
|~|~|BGCOLOR(lightgrey):4|時間係の「ストップ」の合図で、航海長はロープを握ってスルスルをストップ。|
|~|BGCOLOR(lightgrey):記録|BGCOLOR(lightgrey):5|速度(=滑り落ちたノットの数+端数)を&bold(){トラバース・ボード}に記録する。|


**深さを測る測深鉛(Hand lead/Lead line/Sounding Lead) By 測深手ヒュー 

測深鉛は先っぽに測鉛(7~14ポンドのオモリ)が付いたロープ。2、3、5、…20ファゾムにマークが付いてます。
[[チャンネル>http://en.wikipedia.org/wiki/Chains_(nautical)]]からドボーンと投げ入れて&bold(){目盛りで海の深さを測定}。
マークの素材は色々だから夜も感触でバッチリ。ヘコミに獣脂を塗れば海底の砂が付着して「これはリスボンのだ!」と分かります。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Depth_sounding]]

|&ref(測定_測深鉛.PNG)|&ref(測定_測深鉛(やり方).PNG)|

|BGCOLOR(lightgrey):1|測深鉛を船の進行方向へ弧を描くように投げ入れる。ちゃんと船の速度を考えなくちゃダメだ!&br()・右舷チャンネルで測る:右手で投げる。&br()・左舷チャンネルで測る:左手で投げる。|
|BGCOLOR(lightgrey):2|船が進んでロープが垂直になった瞬間にササッと目盛りを読み上げる。もちろん測鉛が海底に着いてなくちゃダメだ!&br()プカプカな船ではムズカシイけど、船はどんどん進んでるし、海流で測鉛が流されちゃうコトもあるからとにかく急いでね。&br()・目盛りがMARKのトコ:「&bold(){バイ・ザ・マーク・××}」と読み上げる。&br()・目盛りがDEEPのトコ:「&bold(){バイ・ザ・ディープ・××}」と読み上げる。|
|BGCOLOR(lightgrey):3|次の測定のためにロープを回収する。お洋服のビシャビシャを気にしちゃダメだ!冬でも我慢だ!|


*ごはんよー♥ By 料理長ダニー

船は家畜を乗せて、卵・ミルク・新鮮なお肉を提供してもらってます。 
とはいっても強欲な商人(食料がすぐ腐る)、不誠実な役人、身勝手な船長(食料をケチる)のせいで、水夫達の食事はけっこう悲惨。
こちらは[[Historic Food>http://www.historicfood.com/]]さんが再現した食事です。[[タンカード>http://en.wikipedia.org/wiki/Tankard]]はビールを飲むコップ。
&link_wikipedia(近世イギリス海軍の食生活){wikipedia}

&ref(ごはん.PNG)16世紀の船乗りの食事([[バックランド・アビー>http://en.wikipedia.org/wiki/Buckland_Abbey]]に展示中)

#region(close,お野菜がイングランドにやって来た♥)

1942年[[クリストファー・コロンブス>http://en.wikipedia.org/wiki/Christopher_Columbus]]の新大陸発見から始まった「[[コロンブス交換>http://en.wikipedia.org/wiki/Columbian_Exchange]]」でヨーロッパの食生活は豊かになります。
F&B時代はもっちろん[[スペイン経由>http://en.wikipedia.org/wiki/Early_impact_of_Mesoamerican_goods_in_Iberian_society]]でヨーロッパへ。
こちらはイングランドの食べ始め(年代は諸説アリ)です。ちなみに[[カレー>http://en.wikipedia.org/wiki/Curry]](1773年)、[[フィッシュ&チップス>http://en.wikipedia.org/wiki/Fish_and_chips]](1858年頃)。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/British_cuisine]]

&ref(ごはん(イングランド).JPG,,height=200)トマトとキュウリを運び込むイギリス海軍(21世紀)

|>|>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:[[ブリタンニア時代>http://en.wikipedia.org/wiki/Roman_Britain]](-410年)|
|BGCOLOR(lightgrey):主食|[[雑穀パン>http://en.wikipedia.org/wiki/Bread]](BC3700年頃)|[[オーツ麦>http://en.wikipedia.org/wiki/Oats]](BC1000年頃)|[[小麦>http://en.wikipedia.org/wiki/Wheat]](BC500年頃)||
|BGCOLOR(lightgrey):果物|[[サクランボ>http://en.wikipedia.org/wiki/Cherry]]|[[西洋ナシ>http://en.wikipedia.org/wiki/Pear]]|[[ブドウ>http://en.wikipedia.org/wiki/Grape]]|[[プラム>http://en.wikipedia.org/wiki/Plum]]|
|~|[[リンゴ>http://en.wikipedia.org/wiki/Apple]](?)||||
|BGCOLOR(lightgrey):野菜|[[アスパラガス>http://en.wikipedia.org/wiki/Asparagus]]|[[エンドウ豆>http://en.wikipedia.org/wiki/Pea]]|[[カブ>http://en.wikipedia.org/wiki/Turnip]]|[[キュウリ>http://en.wikipedia.org/wiki/Cucumber]]|
|~|[[ケール(キャベツ)>http://en.wikipedia.org/wiki/Kale]]|[[コリアンダー>http://en.wikipedia.org/wiki/Coriander]]|[[西洋ネギ>http://en.wikipedia.org/wiki/Leek]]|[[セロリ>http://en.wikipedia.org/wiki/Celery]]|
|~|[[タマネギ>http://en.wikipedia.org/wiki/Onion]]|[[チャイブ(ネギ)>http://en.wikipedia.org/wiki/Chives]]|[[パースニップ(ニンジン)>http://en.wikipedia.org/wiki/Parsnip]]|[[ニンニク>http://en.wikipedia.org/wiki/Garlic]]|
|BGCOLOR(lightgrey):肉|[[キジ>http://en.wikipedia.org/wiki/Pheasant]]||||
|BGCOLOR(lightgrey):香辛料|[[スペアミント(ハーブ)>http://en.wikipedia.org/wiki/Spearmint]]|[[マジョラム(ハーブ)>http://en.wikipedia.org/wiki/Marjoram]]|[[ローズマリー(ハーブ)>http://en.wikipedia.org/wiki/Rosemary]]||
|BGCOLOR(lightgrey):嗜好品|[[ワイン>http://en.wikipedia.org/wiki/Wine]]||||
|>|>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:[[サブローマン・ブリテン時代>http://en.wikipedia.org/wiki/Sub-Roman_Britain]](410-1492年)|
|BGCOLOR(lightgrey):主食|[[ライ麦パン>http://en.wikipedia.org/wiki/Rye_bread]](500年頃)||||
|BGCOLOR(lightgrey):果物|[[オレンジ>http://en.wikipedia.org/wiki/Orange_(fruit)]](1290年)|[[桃(輸入)>http://en.wikipedia.org/wiki/Peach]]|||
|BGCOLOR(lightgrey):野菜|[[サトウキビ>http://en.wikipedia.org/wiki/Sugar_cane]](14世紀)|[[ニンジン>http://en.wikipedia.org/wiki/Carrot]](15世紀)|||
|BGCOLOR(lightgrey):肉|[[薫製ニシン>http://en.wikipedia.org/wiki/Kipper]]||||
|>|>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:[[大航海時代>http://en.wikipedia.org/wiki/Age_of_Discovery]](1492年-)|
|BGCOLOR(lightgrey):主食|[[食パン>http://en.wikipedia.org/wiki/Sliced_bread]](1930年)||||
|BGCOLOR(lightgrey):果物|[[バナナ>http://en.wikipedia.org/wiki/Banana]](1633年)|[[桃(栽培)>http://en.wikipedia.org/wiki/Peach]](16世紀)|[[レモン>http://en.wikipedia.org/wiki/Lemon]](1577年)||
|BGCOLOR(lightgrey):野菜|[[砂糖ダイコン>http://en.wikipedia.org/wiki/Sugar_beet]](1914年頃)|[[トマト>http://en.wikipedia.org/wiki/Tomato]](1750年頃)|[[ジャガイモ>http://en.wikipedia.org/wiki/Potato]](1586年)|[[パセリ>http://en.wikipedia.org/wiki/Parsley]](1548年)|
|~|[[ブロッコリー>http://en.wikipedia.org/wiki/Broccoli]](1724年頃)|[[ホースラディッシュ>http://en.wikipedia.org/wiki/Horseradish]](16世紀)|[[ルバーブ>http://en.wikipedia.org/wiki/Rhubarb]](19世紀)||
|BGCOLOR(lightgrey):香辛料|[[カイエンペッパー>http://en.wikipedia.org/wiki/Cayenne_pepper]](1548年)|[[白砂糖>http://en.wikipedia.org/wiki/Sugar]](1540年頃)|||
|BGCOLOR(lightgrey):肉|[[七面鳥>http://en.wikipedia.org/wiki/Turkey_(bird)]](1524年)||||
|BGCOLOR(lightgrey):嗜好品|[[アイスクリーム>http://en.wikipedia.org/wiki/Ice_cream]](1672年頃?)|[[紅茶>http://en.wikipedia.org/wiki/Tea]](1610年頃)|[[コーヒー>http://en.wikipedia.org/wiki/Coffee]](1650年)|[[チョコレート>http://en.wikipedia.org/wiki/Chocolate]](1650年頃)|
|~|[[マーマイト>http://en.wikipedia.org/wiki/Marmite]](1902年)||||

#endregion


**F&B時代の典型的な1日の割当て

ビスケット(ハードタック、乾パン)はカッチカチに焼いた保存パン。通常は2回、航海用はより長く保つように4回焼きます。
21世紀に再現した皆さんの感想は「愛犬用ビスケット級の固さで味はマズイ」とすこぶる不評。
食器は1545年[[ソレントの海戦>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_the_Solent]]で沈没した[[メアリー・ローズ号>http://en.wikipedia.org/wiki/Mary_Rose]]で発見されたものです。
~[[The Golden Hind>http://www.goldenhind.co.uk/index.php]]より~

|&ref(ごはん_割当て(ビスケット).PNG)ビスケットと[[穀象虫>http://en.wikipedia.org/wiki/Maize_weevil]]|&ref(ごはん_割当て(食器).JPG,,height=200)食器|

|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:お魚の日|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:月曜日・水曜日・金曜日|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:お肉の日|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:火曜日・木曜日・土曜日・日曜日|
|~|[[ビスケット>http://en.wikipedia.org/wiki/Hardtack]]|1ポンド(0.5kg)|~|ビスケット|1ポンド(0.5kg)|
|~|[[ビール>http://en.wikipedia.org/wiki/Beer_in_England]]|1ガロン(4.5リットル)|~|ビール|1ガロン(4.5リットル)|
|~|魚|干し魚1/4匹 または [[リング>http://en.wikipedia.org/wiki/Common_ling]](タラ科の魚)8切れ|~|牛肉|2ポンド(1kg)|
|~|バター|1/8ポンド(57g)|~|||
|~|チーズ|1/4ポンド(113g)|~|||

#region(close,子供も飲めるエール)

昔のエールはホップを使わないビール。アルコールの殺菌力で「水より安全」な子供も飲める飲み物です。
F&B時代は[[マイルド・エール>http://en.wikipedia.org/wiki/Mild_ale]]と[[オールド・エール>http://en.wikipedia.org/wiki/Old_ale]]があった?
マイルドはアルコール少なめ。オールドはバブのオヤジが調合する熟成したエールらしいです。詳しくは分かりませんでした。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Ale]]

&ref(ごはん_割当て(エール).JPG,,height=200)樽からゴブレットに注ぐフール(1600年頃:ネーデルラント)

ゴブレット(Goblet)は、金属やガラス製の取っ手がないビールを飲むコップのことです。

#endregion


**壊血病(かいけつびょう)

壊血病は歯が抜けたり、出血したり、…最悪は死亡の病気です。原因はビタミンC不足と分かったのは20世紀になってから。
大航海時代は海賊以上に恐れられた謎の病気。
[[ヴァスコ・ダ・ガマ>http://en.wikipedia.org/wiki/Vasco_da_Gama]]のインド航海(1497-1499年)では116/170人、[[フェルディナンド・マゼラン>http://en.wikipedia.org/wiki/Ferdinand_Magellan]]の地球一周(1519-1522年)では208/230人が壊血病で落命という記録あり。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Scurvy]]

&ref(ごはん_壊血病.JPG,,height=200)[[HMSエンデバー号>http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Endeavour]]の樽(サワークラウト、塩漬け肉、じゃがいも)

#region(close,船長って大変ね)

1753年イギリス海軍軍医[[ジェームズ・リンド>http://en.wikipedia.org/wiki/James_Lind_%28physician%29]]は「柑橘類・新鮮野菜が壊血病の予防」を実証します。
とはいえ果物も野菜も航海の間に腐っちゃうし現地調達も難しい。海軍省は効果ありそうな食料をバンバン試しまくり。
史上初の「壊血病による死者なし」は、海軍士官[[キャプテン・クック>http://en.wikipedia.org/wiki/James_Cook]]の南太平洋探検航海(1768-1771)。

&ref(ごはん_壊血病(ジェームズ・リンド).JPG,,height=200)ジェームズ・リンド

#blockquote(){&u(){&bold(){船長って大変ね}}

海軍省から[[サワークラウト>http://en.wikipedia.org/wiki/Sauerkraut]]を支給されたキャプテン・クック。でもみんな得体の知れないモノを食べたがらない。
こまった…。
そこで最初にエライ人達にだけ提供。それを見た船員達が「もしかして美味しい?」と食べたがるように仕向けたそうです。

&ref(ごはん_壊血病.JPG,,height=200)キャプテン・クックはHMSエンデバー号の船長

サワークラウトってすごーい。でも海軍省は「なんか麦汁が効いたみたい?」と勘違いして、その後も死亡者が続出です。
あと南太平洋探検航海も「壊血病による死者なし」とはいえ、病気や事故で乗員36/94名が帰港までに落命。
18世紀になっても航海は命がけ。
}

#endregion

#region(close,ライムジュースを飲ませろー!)

1593年海軍大将[[リチャード・ホーキンス>http://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Hawkins]](ジョン・ホーキンスの息子)はオレンジとレモン・ジュース飲め!を推奨してます。
本格的にイギリス海軍にライムジュースが登場するのは18世紀末になってから。
[[スピットヘッドとノアの反乱>http://en.wikipedia.org/wiki/Spithead_and_Nore_mutinies]]で海軍兵士がレモンジュース常備を要求したのが始まり。海軍本部は高価なレモンをライムで代用。
 
&ref(ごはん_壊血病(スピットヘッドとノアの反乱).JPG,,height=200)待遇改善を求めた海軍水兵の反乱(1797年)

イギリス人を「Limey:ライム野郎」、ドイツ兵を「Kraut:キャベツ野郎」と呼ぶのは壊血病防止策が由来。
ついでにスペイン人、ポルトガル人、イタリア人の「Dago:ディーゴ野郎?日本語には無いかも」はお名前にDiegoが多いから。
フランス人の「Frog:カエル野郎」はカエルの足を食べるから。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_ethnic_slurs]]

#endregion


*その他


**シーチェスト

シーチェストは船乗りの洋服、貴重品、お茶…いろいろ仕舞える鍵付きの箱。日本だと船箪笥です。船の中では水夫達のイスに変身。
ササっと見たところ、15~18世紀のシーチェストはこんな感じ。
鍵はフツーと南京錠の2タイプ。持つところはロープ、材質は[[オーク>http://en.wikipedia.org/wiki/Oak]](家具やワインの樽にも使用)が多かったです。 
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Chest_(furniture)]]

|&ref(その他_シーチェスト.PNG)|&ref(その他_シーチェスト(鍵).JPG)鍵(16世紀)|

#region(close,金庫チェスト)

金庫チェストは貴重品を仕舞う鉄製のチェスト。実際はゴチャゴチャしてる鍵が板(たぶん鉄製)でカバーされてます。
お城とか邸宅で御使用。
正式なお名前は分かりませんが、皆さんアルマダ・チェスト、ドイツ・チェスト、[[ニュルンベルク>http://en.wikipedia.org/wiki/Nuremberg]]・チェストとか呼んでます。

&ref(その他_シーチェスト(金庫).PNG)金庫チェスト(16世紀後半-17世紀中頃)

#endregion


**望遠鏡(古語:遠眼鏡(とおめがね)

望遠鏡っぽいモノは科学者[[ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタ>http://en.wikipedia.org/wiki/Giambattista_della_Porta]]著「[[博学史>http://en.wikipedia.org/wiki/Natural_Magic]]」(1589年:ナポリ)で紹介されてます。
一般的な望遠鏡は1608年レンズ職人[[ハンス・リッペルスハイ>http://en.wikipedia.org/wiki/Hans_Lippershey]](ドイツ)が発明。倍率は3倍。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_the_telescope]]

&ref(その他_望遠鏡.JPG,,height=200)リッペルスハイはネーデルラントでお店を開業(2010年:オランダの切手)

#region(close,日本に初めて来た望遠鏡)

1613年[[イギリス東インド会社>http://en.wikipedia.org/wiki/East_India_Company]]の[[クローブ号>http://en.wikipedia.org/wiki/Clove_(ship)]]が交易を求めて来日しました。日本に初めて来たイングランド船です。
イングランド王[[ジェームズ1世>http://en.wikipedia.org/wiki/James_VI_and_I]]から託された望遠鏡を徳川家康にプレゼント。
近藤正斉著「外藩通書」によると「長一間程之遠眼鏡六里見之ト見ユ」。徳川家康は岩井与左衛門の甲冑をプレゼントします。

#blockquote(){&u(){&bold(){復刻した望遠鏡}}

その後、日本はプレゼントされた望遠鏡を紛失しちゃいました。あちゃー。
400年後イギリスは「永遠の友好と尊敬(The Japan400)」を願って望遠鏡を再現。望遠鏡メーカ[[IR Poyser>http://www.irpoyser.co.uk/]]が製造。
真ちゅう製(オリジナルは銀メッキ製)で長さ約1mです。三脚の上に乗せて使うみたい。

&ref(その他_望遠鏡(徳川家康).JPG)復刻版望遠鏡と甲冑(2013年:[[ロンドン塔>http://en.wikipedia.org/wiki/Tower_of_London]])

望遠鏡を覗いてる2人は平戸藩主[[松浦隆信>http://en.wikipedia.org/wiki/Matsura_Takanobu]]の御子孫(左)、ソールズベリー伯[[ロバート・セシル>http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Cecil,_1st_Earl_of_Salisbury]]の御子孫(右)です。
クローブ号が到着したのが平戸。
ロバート・セシルは「イングランドが初めて日本へ行くクローブ号」の企画をサポートしてました。
}

#blockquote(){&u(){&bold(){現存する日本最古の望遠鏡}}

現存する日本最古は[[徳川義直>http://en.wikipedia.org/wiki/Tokugawa_Yoshinao]](徳川家康の息子)所有の望遠鏡です。世界で4番目に古いシルレ型望遠鏡。
1646年頃レンズ職人[[アントン・マリア・シルレ>http://en.wikipedia.org/wiki/Anton_Maria_Schyrleus_of_Rheita]](ネーデルラント?)が発明。
徳川義直はこの望遠鏡で[[尾張徳川家>http://en.wikipedia.org/wiki/Owari_branch]]の上屋敷にある池(21世紀は防衛省本省市ヶ谷地区)を覗いてたらしいです。

&ref(その他_望遠鏡(徳川義直).JPG)徳川義直の望遠鏡([[徳川美術館>http://en.wikipedia.org/wiki/Tokugawa_Art_Museum]])
}

#endregion


**ランタン

ランタンは手で持ち運べるランプ。日本だと提灯です。
F&B時代は蝋燭を使ったキャンドル・ランタンで、扉はたぶんガラスや[[雲母板>http://en.wikipedia.org/wiki/Mica]](ストーブとかのちょっと曇った窓も雲母板)。
こちらは[[火薬陰謀事件>http://en.wikipedia.org/wiki/Gunpowder_Plot]](カトリック教徒の政府転覆未遂事件)の実行犯[[ガイ・フォークス>http://en.wikipedia.org/wiki/Guy_Fawkes]]が使ったランタンです。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Lantern]]

&ref(その他_ランタン.PNG)キャンドル・ランタン(1605年:イングランド)


**燭台/カンテラ(オランダ語:kandelaar)

燭台は蝋燭立て。うーん、手で持ち運ばないのが燭台?
F&B時代の[[蝋燭>http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_candle_making]]は香りがオエッの[[獣脂蝋>http://en.wikipedia.org/wiki/Tallow]]。お金持ちは[[蜜蝋>http://en.wikipedia.org/wiki/Beeswax]]を御使用。どっちも夏の暑さでグニャっとなる虚弱体質らしい。
イングランドには[[獣脂蝋ロウソク組合>http://en.wikipedia.org/wiki/Worshipful_Company_of_Tallow_Chandlers]](1462年設立)と[[蜜蝋ロウソク組合>http://en.wikipedia.org/wiki/Worshipful_Company_of_Wax_Chandlers]](1330年設立)があります。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Candlestick]]

|&ref(その他_燭台(ドイツ).JPG,,height=200)燭台(1551年:ドイツ)|&ref(その他_燭台(イングランド).JPG,,height=200)メアリー・ローズ号(1545年)|


**猫水夫

紀元前の頃から船には猫がいたそうです。
ネズミは木とロープだらけの船をかじるし、大切な食料を食べるし、病原菌を持ってるし、とにかく船の天敵。ってこで猫大活躍。
他にもオウム、豚、マングース、ワラビー、猿、熊…人種を越えた水夫達がいっぱい。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Ship%27s_cat]]

&ref(その他_水夫猫.PNG)

#region(close,猫水夫の迷信)

時代は分からないけど、猫水夫の迷信もあります。

&ref(その他_水夫猫(ブラッキー).JPG,,height=200)猫水夫ブラッキーをナデナデするチャーチル首相(HMS[[プリンス・オブ・ウェールズ>http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Prince_of_Wales_%2853%29]])

・デッキで猫水夫に話しかけられると幸せがくる。げーっ!って避けられると幸せがこない。
・指の数が多い猫水夫は誰よりも先にペストになってくれる。
・猫水夫はしっぽパワーで嵐を呼ぶ。もし猫水夫が海に落っこちたら、ウルトラスーパー嵐で船が沈没する。沈没を逃れても9年間たたられる。
・猫水夫が嫌々に毛を舐めたらアラレ、くしゃみをしたら雨、元気に飛び回ったら風が吹く。

#endregion


**税金

イングランドの税金は[[アングロ・サクソン時代>http://en.wikipedia.org/wiki/Anglo-Saxon_England]](5-11世紀)からバッチリ徴収されてます。法律[[Law of Æthelberht>http://en.wikipedia.org/wiki/Law_of_%C3%86thelberht]]で規定。
1303年イングランド[[王エドワード1世>http://en.wikipedia.org/wiki/Edward_I_of_England]]は世界で初めて商船の積荷に課税。
その後[[王エドワード3世>http://en.wikipedia.org/wiki/Edward_III_of_England]]が輸入ワイン1[[タン>http://en.wikipedia.org/wiki/Tun_(unit)]](21世紀:[[英トン>http://en.wikipedia.org/wiki/Long_ton]])/3シリング(21世紀:£103.58)を課税しました。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_taxation_in_the_United_Kingdom]]

&ref(その他_税金.JPG)[[クエンティン・マセイス>http://en.wikipedia.org/wiki/Jan_Matsys]]画「徴税吏たち」(1501年頃:ネーデルラント)

#region(close,「ワイン樽をどれだけ積めるか(積載量)」が船の大きさ)

イングランドでは「課税だー!課税だー!この船はワイン樽を最大で何タン積めるんだー!?」が船の大きさになります。
ちなみに輸入ワインはフランスのボルドーらしい。
[[検数人>http://en.wikipedia.org/wiki/Tallyman]]が[[タリー・マーク>http://en.wikipedia.org/wiki/Tally_marks]]や[[タリー棒>http://en.wikipedia.org/wiki/Tally_stick]]を使ってワイン樽を数えてたそうです。検数人の詳細は分かりませんでした。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Builder%27s_Old_Measurement]]

&ref(その他_税金(積載量).PNG)[[イギリスのワイン樽容積>http://en.wikipedia.org/wiki/English_wine_cask_units]]

1678年テムズ川にある造船会社が船の大きさを「[[満載排水量>http://en.wikipedia.org/wiki/Displacement_(ship)]]の3/5[[トン>http://en.wikipedia.org/wiki/Tonnage]]」にします。「トン」は課税の「タン」が由来。
その後も計算式はアレコレ進化。
21世紀は総トン数、純トン数、責任トン数、パナマ運河トン数、スエズ運河トン数、…1隻にいろいろなトンがあります。

#blockquote(){&u(){&bold(){サイズが違うワイン樽とビール樽}}

いちいち「ワイン樽」と書くのは[[イギリスのワイン樽容積>http://en.wikipedia.org/wiki/English_wine_cask_units]]([[表>http://en.wikipedia.org/wiki/Template:English_wine_casks]])と[[イギリスのビール樽容積>http://en.wikipedia.org/wiki/English_brewery_cask_units]]([[表>http://en.wikipedia.org/wiki/Template:English_brewery_casks]])が違うからです。
うーん、なんででしょ?
おまけに同じ単位でもサイズが違います。更にビール樽は1454年までエール樽でサイズが違います。ふえー。

&ref(その他_税金(積載量:ワイン樽とビール樽).PNG)
}

#blockquote(){&u(){&bold(){日本のビール瓶も不思議なサイズ}}

日本で初めてビールを飲んだ人は将軍[[徳川吉宗>http://en.wikipedia.org/wiki/Tokugawa_Yoshimune]]です。1724年オランダ商船使節団が献上。
1800年後半から全国で100社近くの醸造所が設立。
現存する日本最古のビールは1877年発売「サッポロビール赤星」です。赤星は北極星をイメージした開拓使の旗「五稜星」。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Beer]]

&ref(その他_税金(積載量:日本のビール).JPG)サッポロビール赤星

日清戦争(1894年)、義和団の乱(1900年)、日露戦争(1904年)、…日本は軍備増強でお金がいっぱい必要でした。
酒税は財政の玉手箱。
1901年明治政府はビールに1石(180L)/7円(21世紀:7万円)のビール税を開始。最大の税収源になります。
負担に耐えられない中小の醸造所は姿を消していきます。

&ref(その他_税金(積載量:日本のビール瓶).JPG)サイズって結構てきとー!?

1939年WW2が始まると昭和政府はインフレ防止に価格統制令を施行します。1940年酒税法の改正でビール税も一本化。
でもメーカー毎に[[ビール瓶>http://en.wikipedia.org/wiki/Beer_bottle]]のサイズがバラバラ。
あらま!ってことで、「一番小さいビール瓶に合わせれば皆さんそのまま使えるね♥」と最小3.51合(633ml)に決まります。
~[[ビール酒造組合>http://www.brewers.or.jp/index.html]](ビールの豆知識:ビールの歴史)さんより~
}

#endregion

#region(close,イングランドだけが使う「イギリスの単位」)

「イギリスの単位」はイングランドだけで使ってる重さや長さの単位です。F&B時代は国々で単位がバラバラ。
エールを飲む[[パイント・グラス>http://en.wikipedia.org/wiki/Pint_glass]]もイングランドの単位。
でもバラバラだと海外旅行したときに困っちゃいます。ってことで、21世紀は[[国際単位系>http://en.wikipedia.org/wiki/International_System_of_Units]]で世界共通です。いちおう。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/English_units]]

&ref(その他_税金(パイント・グラス:21世紀).JPG)パイント・グラス(21世紀:イギリスのパブ)

#blockquote(){&u(){&bold(){「パイント」ってなに?}}

1パイントは「パブのビール1杯=パイント・グラス1杯」です。[[ピューター>http://en.wikipedia.org/wiki/Pewter]]製[[タンカード>http://en.wikipedia.org/wiki/Tankard]]も16世紀のパイント・グラス。
生ビール、サイダー、瓶入り牛乳は21世紀もパイント。
私達がピンと来ないのはパイントが[[ヤード・ポンド法>http://en.wikipedia.org/wiki/Imperial_units]](日本は国際単位系[[メートル法>http://en.wikipedia.org/wiki/Metric_system]]のml)だからです。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Pint]]

&ref(その他_税金(パイント・グラス).JPG)ピューター製タンカード(17世紀:スコットランド)

「イギリスの単位」は法律で決まってます。法律は1496年、1588年、1758年…と変更。
ちなみに21世紀は1パイント=568ml。
元イギリスのアメリカ、カナダ、オーストラリア…もパイントを使ってるけど量はバラバラ。メンドクサイですorz
}
 
#endregion


*もうちょびっと早くにあったら

こんなのあったらジェフリーやビセンテに役立つんじゃない?って思ったら、F&B時代にはまだ登場してなかったorz


**気圧計

嵐がくると海が荒れる。嵐がくるときは気圧が下がる。これを計るのが気圧計です。
が、しかし、これが登場するのは17世紀になってから。
これを発明したのはガリレオ・ガリレイの弟子、物理学者[[エヴァンジェリスタ・トリチェリ>http://en.wikipedia.org/wiki/Evangelista_Torricelli]](イタリア)。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Barometer]]

&ref(まだない_気圧計.JPG,,height=200)トリチェリは井戸でピーンときたそうです。でか!


**無線機

登場はドラえもんくらい未来になってから。
ってことで、船と船は信号旗で会話。夜は発光信号(カンテラ)でペカペカ、霧は音響信号(笛)でピーピーするそうです。
ペカペカやピーピーは、モールス符号(F&B時代にはまだない)っぽい感じ?
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/International_maritime_signal_flags]]

&ref(まだない_信号旗.JPG,,height=200)HMSヴィクトリー号の信号旗

#region(close,各艦で大歓声がおこった信号文)

こちらは超有名な信号文。1805年10月21日[[トラファルガー海戦>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Trafalgar]]で旗艦HMSヴィクトリー号が掲揚した信号旗です。
&italic(){&color(silver){England expects that every man will do his duty}}
&italic(){&color(silver){英国は各員がその義務を尽くすことを期待する}}
文章を考えたのは大英帝国の超有名な提督[[ホレーショ・ネルソン>http://en.wikipedia.org/wiki/Horatio_Nelson,_1st_Viscount_Nelson]]。
Dutyは義務の中でも「責任をもって遂行すべき責務」です。こんな単語が最後にきたら盛り上がっちゃいますよね。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/England_expects_that_every_man_will_do_his_duty]]

&ref(まだない_信号旗(信号文).PNG)信号文

#blockquote(){&u(){&bold(){ブレーキランプ5回点滅「ア・イ・シ・テ・ル」のサイン}}

信号旗は大昔からある船の通信手段。とーっても単純な指示旗が[[ペロポネソス戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Peloponnesian_War]](BC431年頃)でも使われてます。
複雑な会話ができる信号旗は1790年海軍大将[[リチャード・ハウ>http://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Howe,_1st_Earl_Howe]]が考案。
自分の艦隊でピーチクパーチク。これはスバラシイ!っと、1799年海軍本部がイギリス海軍共通の信号旗を作りました。
[[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Naval_flag_signalling]]

&ref(まだない_信号旗(海事信号書).JPG,,height=200)海事信号書(時代不明:イギリス海軍)

信号旗はコード(0-9の組合せ)と単語が対応してます。コード「253」なら単語「England」ってこと。
コード対応一覧表が載ってるのが海事信号書(Signal-book)。
それぞれの船の[[信号手>http://en.wikipedia.org/wiki/Signalman]]は海事信号書をバラバラめくりながら解読します。海事信号書はもちろん国家最高機密。
}

#blockquote(){&u(){&bold(){どうやって信号旗で会話してるの?}}

旗艦は信号文「England expects that every man will do his duty」のお知らせに信号旗を12回掲揚してます。
Dutyはコードが無い単語だから一文字ずつ掲揚。
①England、②expects、③that、④every、⑤man、⑥will、⑦do、⑧his、⑨d、⑩u、⑪t、⑫y。たいへーん。

&ref(まだない_信号旗(やり方).JPG,,height=200)信号旗でか!

それぞれの船は解読したら「回答旗をスルスル揚げ」て、送信側の信号旗が降ろされたら「また半揚に戻し」ます。
コンピュータの[[通信プロトコル>http://en.wikipedia.org/wiki/Communications_protocol]]みたいな感じ。
C.S.フォレスター著「[[ホーンブロワー>http://en.wikipedia.org/wiki/Horatio_Hornblower]]」では、相手がずーっと半旗のままで「信号理解不可と言ってます」と信号手が報告してます。
}

#endregion

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※ものすごーくお世話になったサイト。詳細はこちらをご覧下さい。
・[[世界地図を作ろう>http://atlas.cdx.jp/index.htm]]
・[[田代博のホームページ>http://homepage3.nifty.com/tasiro/]]
・[[John C. Fremont>http://www.longcamp.com/index.html]](http://www.longcamp.com/nav.html)
・[[The Golden Hind>http://www.goldenhind.co.uk/index.php]](http://www.goldenhind.co.uk/navigation.php)
・[[Landsat Science>http://landsat.gsfc.nasa.gov/]](Feature:Geographia)
・[[Introduction to Tropical Meteorology>http://www.goes-r.gov/users/comet/tropical/textbook_2nd_edition/index.htm]](http://www.goes-r.gov/users/comet/tropical/textbook_2nd_edition/print_3.htm)

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